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騎士

 

 また転移するのかなと思っていたら、二人は普通に動き始めた。

 ディアナはお茶を淹れているし、アスラルは寝室に入っていく。

 寝室というのは少し大きいベッドがあって、今はそこでディアナと一緒に私が寝させてもらってる部屋。

 でもみんなの服とかもあるからアスラルは誰も寝室にいないときは出入り自由。

 ちなみに私の服は村の娘さんのお古をディアナ用にともらったやつ。

 アスラルが何をしに行ったのかと思ったけど、寝室の壁に掛けていたローブを持ってきてくれた。


「これ、念のために羽織っといたほうがいい」

「ありがとう、アスラル。それで、駆けつけなくてもいいの?」

「ああ。きちんと歩いて村に入ってきたやつらだし、敵意はなさそうだからな」

「私たちに用事か、村長さんに用事かはわからないから、構えていても仕方ないしね」

「そっか。私みたいな不審者じゃないんだね……」

「いえ、だってルナの魔力は尋常じゃなかったし、森のすぐ傍にいきなりだったからね!」


 落ち込んだつもりはなかったけど、声に元気がなかったのか、ディアナが慌ててフォローしてくれる。

 優しさが心に沁みるよ。


「そうだな。ルナの魔力は今やって来た五人を足しても全然及ばないからな」

「……ありがとう」


 アスラルまでフォローしてくれたけど微妙だ。

 私の魔力は尋常じゃなくて、五人分足してもまだまだなんだ。

 あ、私じゃなくて、この体か。

 にしても、この体の持ち主さんはどこにいったのかな?

 そもそもどこから来たんだろう?

 考えだすと止まらないけど、私は今を精一杯生きるしかないよね。

 何度も落ち込んで、何度も考えて、何度も出した結論。

 何度目かの決意を固めたところで、私にもさすがに五人の気配がわかった。


「ねえ、こっちに向かって来ていない?」

「そうねえ。五人分もカップがないわ」

「こんな時間にやって来るんだから、もてなしてやる必要はないだろ」


 五人がこっちに向かって来てて不安になったけど、ディアナの心配は呑気なものだったので大丈夫らしい。

 アスラルはちょっと機嫌が悪くなってる。

 確かにこんな時間に――といってもたぶん夜の七時くらい? に他人の家を訪ねるのは失礼かもしれないけど、旅人さんなら仕方ない気もする。

 この世界は魔法のある昔のヨーロッパな感じだから……いや、ちょっとアラビアンが混じってる?

 うん。よくわからない。

 そうこうしているうちに、五人の気配はドアの前で止まって、ノックの音がする。


「はい。どちらさまですか?」


 アスラルが答えれば、ちょっと渋い男性の声がする。

 だけど驚いたのはその答え。


「私はガーナント王国魔法騎士団第一隊隊長レイス・クレイス。他、私の部下である隊員が四名おります。こちらは魔導士のアスラル殿とディアナ殿のお宅で間違いないでしょうか?」

「――はい」


 アスラルは一度ディアナと私を見てから答え、ドアを開けた。

 するとドアの向こう側に立っていたのはザ・ナイトな人。

 映画で見たことがある首とか手首とか何か重たそうなのをつけていて、腰には剣がある。

 当然、私のテンションは上がりまくっていたけど、どうにか平静を装った。

 だってディアナは私を心配してか、傍に寄って私の手を握ってくれる。

 こんなときに「ひゃっはー! 本物のナイト!」なんてことは言えないよね。

 ごめん、ディアナ。そして、ありがとう。


「私がアスラルです。そしてこちらが妹のディアナ。その隣は私たちが指導している見習いです。申し訳ないですが、あなたたちに座っていただく席がありません」

「いえ、それはどうかお気になさらないでください。お邪魔するのは私だけですから。もちろん私は立ったままでかまいませんので、皆さんはおかけになってください」

「……ありがとうございます。では、ご用件を伺います」


 入ってきたのは私のお父さんくらいの年齢の隊長さんだけで、他のナイトさんたちは外で待つことにしたらしい。

 がっかりしてないと言えば嘘になる。――から、あとでお見送りするときに外に出てみよう。

 なんて邪なことを考えていたから、肝心の用件を聞いていなかった。

 気がつけば三人の視線がこっちに向いててびっくり。


「あの……?」

「お名前をお伺いしてよろしいですかな?」

「あ、はい。私はルナです」

「ルナさん」

「はい」


 この世界では魔導士は尊敬されてるって聞いたけど、見習いまでこんなに丁寧に扱われるのかな。

 それとも隊長さんがナイトだからかな。

 って、フードを被ったままだったけど失礼だよね。

 そう思ってフードを取ろうとしたら、アスラルが私の手を摑んで止めた。


「それで、ルナが何か問題でも? ただの見習いですよ」


 魔導士はフルネームを名乗らないらしい。

 それがなぜかはよくわからないけど、それとは別に名前は基本的には自分から名乗るものらしい。

 だからわざわざ訊かれたんだけど、アスラルとディアナのことは最初から知られてたな。

 有名なのかな。――ってそうじゃなくて。


 現実逃避をしてる場合じゃない。

 私に用事ということは、私の存在を知られてたってことで。

 それはかなりヤバい状況なのではないかな。

 さすがに王国騎士団の隊長さんが私を娼館に連れ戻しに来たってことはないだろうけど――そもそも娼館から逃げたのかもわからないけど――何かの人体実験的なものだったらどうしよう。

 そうだったら逃げる?

 でも、アスラルやディアナに迷惑がかかる?

 あれこれ頭の中で考えていたけどそれは一瞬で、隊長さんの返事をどきどきしながら待った。


「ルナさんに、というわけではないのです。ただ殿下がおっしゃるには、この地域に不思議な魔力を持つ者がいるようだということで、我々がお迎えにあがったのです」

「どうしてですか?」

「何のことでしょう?」

「不思議な魔力を持つってだけで、どうして迎えにきたのですか?」


 どうやら王子様は私の魔力に気付いたということはわかった。

 でも、それでどうして私を――この体を迎えにきたのかがわからない。

 だって王都には王子様がいて、何か困ってるわけでもないんだよね?

 だとしたら、理由をはっきりさせてくれないと、大切なこの体でそう易々と王都に行くわけにはいかないよね。……王子様には会ってみたいけど。




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