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永遠


 アスラルが私を好き。

 今のは空耳かと思うところだけど、女神な私の耳は何でもしっかり聞こえるから間違いないはず。

 ってことは、アスラルは私を好きなんだ!


 どうしよう。嬉しすぎて泣きそう。

 ずっと、私も好きだったから。

 だけど私よりもアスラルのほうが私を好きな体感時間は長くて――って、それはどうでもいいことだよ。

 ずっと好きでいてくれたんだもの。

 ……ん?


「ずっと……?」

「ああ。一緒に暮らしていた頃からだから、二十年以上前からだな」

「あの頃から……」

「出会った頃のルナはとんでもない魔力を持ってるのに、とんでもない無知で制御もできないで、それでも前向きに頑張っていただろう? 何とか助けてやりたいって思っているうちに好きになっていたらしい。だがルナがディアナと旅立つまで気付かなかった。間抜けにもほどがあるよ」


 苦笑交じりに話すアスラルの告白にどきどきする。

 あの頃から好きでいてくれたってことは両想いだったんだ。

 うわー! 両想いとか! 

 じたばた暴れたいけど暴れるのは心臓だけにする。


「それじゃあ……どうしてあんなによそよそしくなったの? そりゃ女神だったなんてびっくりしたと思うけど、私もびっくりだったし……」

「確かに驚いたが、それ以上に罪悪感のほうが強かった」

「罪悪感?」

「ああ。ルナは魔法が制御できないことより何より、記憶がないことに苦しんで悲しんでいただろう? それが俺のせいだと思うと――」

「違うよ! アスラルは関係ないよ! あれは自業自得で、私のミスなんだから!」

「それでもルナを巻き込んでしまったのは俺だ。あの頃の俺は、どんどん強くなっていく魔力に驕っていたんだ。だからルナへ――月の女神へ祈願しようと思ったのも、月の女神が人間の願いを叶えるのは千年に一度あるかないかだと言われていたからなんだ。そんな女神に願いを叶えてもらえたらなら、さらに俺の力の証明になると思って……。傲慢だろう?」


 自嘲するアスラルの顔は後悔に満ちている。

 だけどアスラルは間違ってる。


「違うよ、アスラル。きっとアスラルは罪悪感からそんなふうに考えてるのかもしれないけど、邪な願いが私たちに届くわけはないんだよ。横着な私をわざわざアーサーが呼びにくるほど、アスラルの願いは純粋で綺麗だったよ。だから私も惹かれたんだから」

「だが……」

「本当だよ」

「……そうか」


 アスラルは肩の荷が下りたようにほっとしてほほ笑んだ。

 ひょっとしてずっと気にしてたのかもしれない。

 それならもっと早く話を聞いて伝えるべきだったね。

 拒絶されることを怖がってた私が馬鹿だった。


「ごめんね。もっと早く伝えればよかったね」

「いや、これは俺にとって必要な時間だったんだよ。犠牲になったみんなは還ってこない。だけど生き残ったみんなと一緒に国を立て直すことで、それぞれが気持ちにケジメをつけることができたと思う。だから俺は今、ここにいることができるんだ」

「うん。頑張ったね」


 って、なんだか偉そうに言ってしまった。

 何様だよ――って、女神様だけど。

 アスラルは嬉しそうに笑ったからよしとしよう。


 ……あれ? というか、私ってばさり気なく告白しなかった?

 惹かれたって言ったよね。

 でもあの流れなら気付かれてない可能性大?

 もう一度告白したほうがいいかな……って、するの?

 そもそもアスラルの告白自体流れてない?

 いや、でも、やっぱり……。


 一人であわあわ考えて、やっぱりきちんと自分の気持ちを伝えようと決めた。

 このまま何もなかったことにするのもありだけど、限りある時間を後悔で終わらせたくない。


「アスラル、あのね……」

「どうした?」

「わ、私もすきゃ、好きっです!」


 噛んだ! すごい噛んだ!

 大失敗だよ。

 でも初めて告白したんだから、仕方ない! よく頑張った!

 と自分を褒めてみたけど、ここからどうすればいいのかわからない。


「……アスラル?」

「ルナ、お前……正気か?」

「告白したのにその答えは失礼だよ!」

「いや、だって俺、おっさんだぞ?」

「私は女神ですけど?」

「俺、すぐに死ぬぞ」

「私にしたら、生まれたばかりの赤ちゃんだってすぐだよ」

「だけど……」

「迷惑ならそう言ってよ」

「迷惑なわけないだろ!」


 勇気を出して告白したのに正気を疑われるなんて。

 ちょっと傷ついたけど、アスラルは私を心配してくれたらしい。

 それなら遠慮はしないよ。


「じゃあ、アスラルが死ぬまで一緒にいてもいい?」

「俺は……嬉しい。だけどルナはいいのか? 俺が死んだあと……」

「私は今までたくさんの人間を見送ってきたから大丈夫」


 本当はそんなの噓。

 人間になんて興味がなくて、死なんて概念は女神なルナにはなかった。

 でも月奈は見送られる側で、それがつらかったことは覚えてる。

 そんな気持ちをアスラルにさせてしまうのはつらいから、平気だって笑っていればいい。


「アスラルが嫌だって言うまで一緒にいるからね」

「……ルナが嫌だと思うまで一緒にいてくれ」


 開き直った私の言葉に、アスラルは真摯に答えてくれた。

 それなら覚悟しておいてほしい。

 永遠に一緒にいることはできないけど、永遠に想うことはできるんだからね。




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