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遭遇

 

「ディアナって、すごい魔導士なんだね……」

「あら、私はそこまででもないわ。確かに女性の中では一、二を争うくらいだったけど、今はルナが飛び抜けて強い魔力を持っていることがわかったもの。ちなみにお兄ちゃんは私が知る限りでは殿下に次いで魔力が強かったのよ。もちろん今はルナのほうが強いけどね」

「ごめん」

「どうして謝るの?」

「何となく?」

「ルナっておもしろいよね。思考が私たちと全然違って。でもそこも好き」

「ありがとう、ディアナ」


 美少女に告白されたらもう喜ぶしかないよね。

 幸せ気分で目の前の美少女を見つめ、そういえばディアナも来年くらいには結婚しようと思えばできるんだと気付く。

 ということは、あの騎士さんたちはロリコンというわけでもないのかも。

 だとしても、私とは相容れないな。うん。


「隊長さんがどうしてルナを王都に連れて行くのかわからなかったのも、今なら説明がつく気がするわ。秘密を知る者は少ないほうがいいもの」

「……だとしたら、もっとこっそり行くんじゃないかな?」


 私が神官説の推理を再開したディアナには悪いけど、こんなに堂々と神殿の馬車が騎士さんたちと走ってたら目立つと思うんだ。


「だって相手は魔法騎士よ? 普通は敵に回そうなんて思わないわ」

「そうなの?」

「ええ。魔法騎士といえば、魔力強し、家柄良し、陛下の覚えも当然良しだもの。まず勝てないし、勝てたとしても彼らの後ろには国家権力が控えているのよ」

「あー、それは確かに面倒だね」

「でしょう?」


 しかも私が暮らしていた日本とは違って、王様や貴族が絶対的な権力を握っているような世界だよね?

 日本でも闇から闇へ葬られた事件なんてあっただろうに、ここだと闇どころか白日の下に葬られそうだよ。


「それでもルナに害を為すつもりなら容赦しないけどね」

「あ、ありがとう……」


 にっこり笑うディアナの発言はやっぱり怖い。

 国家を敵に回すようなものなんだよね?

 でもそれは私のためで、どうしてそこまでしてくれるのかはわからないけど、好意は素直に受け取っておこう。

 私もディアナとアスラルのためなら何でもする。

 その決意は揺らがないけど、そもそもその必要があるのかどうかはわからない。

 初めて出会ったのがディアナとアスラルだから、二人がこの世界の標準かと思っていたけど、どうやら違うみたいだし。


 村の人たちはディアナやアスラルのことを神様みたいに崇めていたけど、それは魔導士という職業柄だと思ってた。

 だけど家柄も魔力も良しの魔法騎士の人たちでさえ二人に憧れているみたいで、それってやっぱり二人はかなりすごいってことだよね。

 そんな二人が辺境の地で結界を張ってのんびりスローライフって……。

 いや、ハロウズ殿下の力が届かない場所だから重要なのかもしれないけど、何か違う気がする。

 だからといって、あんまり踏み込んで質問するのもなあ。


「フードは邪魔かもしれないけど、できるだけ被っておいてね。でも今なら外しても大丈夫よ?」

「あ、うん。そうだったね」


 無意識にフードを触ってたからか、ディアナが気を使って声をかけてくれた。

 見習い魔導士はローブは必須でもフードは絶対というわけではないらしい。

 ただ私の顔はトラブルの元になりそうなので、できるだけ隠しておこうとなったんだよね。

 そこまでかなとは思うけど、二人の言うことにはちゃんと従うつもり。

 まあ、私がフードを被ってても、みんなディアナの美しさに目がいっちゃうみたいで、目立たないのはありがたい。


 フードを下ろした私はほっと息を吐いた。

 視界が悪いと不安だし、肩が凝るんだよね。

 幸いだったのは馬車の乗り心地がすごくいいこと。

 前世でのあのテーマパークの馬車みたいだったら今頃はもう酔っているか、お尻が痛くなってたはず。

 魔法ってほんとすごいよ。


「早く記憶が戻ればいいのになあ」


 そうすればディアナやアスラルに迷惑かけなくてすんだのに。

 それに魔法だってちょちょいのちょいで操れたんじゃないかな。

 自分の不甲斐なさが嫌になって思わず呟いたら、ディアナが私の手を励ますように握ってくれた。


「大丈夫。きっと思い出せるわよ」

「うん、そうだね。ありがとう、ディアナ」

「ルナってば、『ありがとう』ばかりね。」

「だって、ディアナが優しいんだもん」

「こんなの普通よ。だけどルナが『ありがとう』って言ってくれると心があったかくなって嬉しくなるの。だからありがとう、ルナ」

「え? 私は何もしてないよ!」


 突然ディアナからお礼を言われてびっくりだったけど、確かに心がほんわか温かくなった気がする。

 私も嬉しくなってディアナと顔を見合わせ、二人でくすくす笑った。

 そのとき急に馬車が揺れて止まったから、慌ててフードを被る。


「どうしたのかな?」

「やっぱり敵襲じゃない?」


 休憩にしては雰囲気が違うのは外の騒がしさでわかる。

 なのに不安になる私と違って、ディアナはちょっと楽しそう。

 心配性で慎重派な兄のアスラルと違って、妹のディアナは楽天的で好奇心旺盛なんだよね。

 って、あれ? 何だろう、胸がもやもやする。

 何か思い出しそうなのに、頭に思い浮かぶのはディアナと性格がよく似た前世でのお兄ちゃんの顔。


「あら、大変。魔物が襲ってきたんだわ」

「ええ!?」


 窓の外を覗いたディアナはちっとも大変そうじゃない調子で呟いたけど、大変だよね?

 話には聞いていたけど、魔物とは初遭遇だよ!

 私もディアナの後ろから窓の外を覗いて思わず悲鳴を上げそうになった。

 たぶんここは大きな街道の途中なんだろうけど、街道を外れた少し先にある森から狼がすごい勢いで現れたから。

 いや違う。狼みたいな魔物なんだ。

 だって姿は狼だけど、大きさはトラックくらいもあるから。




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