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お母さん

作者: 山桜 笛

穏やかなお話を書きたい。

私にとって「お母さん」という存在はとても大きく、とても優しく、大人で、自分とはかけ離れた存在だ。周りの人からは「お母さんによく似て綺麗に育つわよ。楽しみだわ。」とか言われるけれど、中身も見た目も全く母とは真逆と言って良い存在だと自分では思っている。成長して大人になってもそれは、変わらないはずだ。

 母と料理教室に行くことになった。今回作ったのは少し凝っている茶碗蒸し。母はずっと働いていて、あまり料理が得意でない。そのため定期的に料理教室に通っている。今日は私も学校が休みだったためお母さんについて行った。

 お母さんは、人付き合いが上手だから料理を習っている間、ずっとニコニコして先生とお話をしたり同年代の女性と話したりしている様子を、私は見ていた。

 私は、慣れない所に初めて来て緊張していた。すると

「あら、お子さん?可愛いわねーお母さんそっくり。」

 料理教室のスタッフさんが話しかけてくれた。

「そうです。ごめんなさいね。恥ずかしがり屋なんです。」

 また、似ていると言われてしまった。嬉しいけど嬉しくない。


 料理教室は順調に進んで茶碗蒸しが完成した。私もスタッフさんに手伝って貰って小さなカップで茶碗蒸しを作った。

「お母さん、私でも出来たよ!見て!美味しそう。」

「良く出来たわね!美味しそう!!」

 お母さんは、優しい笑顔で褒めてくれた。嬉しい。

「母さんの茶碗蒸しはね、上手く出来なかったの分離しちゃったの。何故かしら。母さんより上手いなんて母さんも頑張らなきゃね。」

 私は、驚いた。お母さんが見せてくれた茶碗蒸しは確かに分離してしっまっていた。しかし、それよりも私が驚いたのは、お母さんの表情。お母さんは、今まで私に見せたことがないような暗い表情をしていた。さっき見せてくれた優しい表情はなく、悔しいような悲しいような何とも言えないが、綺麗な顔が綺麗に歪んでいた。私は、その表情を見たとたん思った。お母さんも子供の時代があって、まだお母さんの中には子供が残っているのだと。ずっと大人で子供の時のお母さんなんて想像も出来なかったけれど、お母さんも上手く出来なくて悔しくなったりするんだ。

「何笑ってるのよ。母さんが失敗してそんなに嬉しいの?もう、やあね。」

 私はいつの間にか笑っていたらしい。

「そうじゃないよ。お母さんが失敗して嬉しいわけないよ。」


「そうじゃないよ。すごく遠い存在だと思っていたお母さんがもしかしたら、私が思っているよりは近い存在なのかなって思えたから嬉しい。これからはもう少し皆が言ってくれる言葉を、素直に受け入れられるかもしれない。そう出来たら良いな。」

 なんて心の中で思った。




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