表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/9

第四話

 自動ドアが開いて思わず仰け反ってしまうような大きな音が俺の周りを囲う。俺はまっすぐメダル貸し出し機の前まで行き、今日の狩りの成果をメダル貸し出し機に突っ込む。今日はいつもよりも多くの成果があったのでいつもより多くのメダルを借りる。勢い良くメダルがセットしたバケツに放り込まれる。俺はこのバケツに放り込まれるメダルの音がメダルゲームをやっていて一番好きだ。出来ればジャックポットを当ててこの音を聞きたいのだが、なかなか上手くいかない。もうゲーセンの中心になりたいと思い、狩りを始めて2か月半が経つが、一度も当てたことがない。それでも俺が辞めないのは俺のゲーセン通いのきっかけを作ってくれた人が俺がゲーセンに来る度にいるからだ。メガネをかけていてタンクトップ。かなり太っていて首にはタオルを巻いている。見た目はちょっとあれだが、いつ行ってもゲーセンでメダルゲームをやっていて、何度かジャックポットを当てているところも初めて見たとき以降も見ている。恐らく毎日ゲーセンに来ては朝から晩までやっているのだろう。噂ではメダルバンクに10万枚以上貯めているらしい。

 メダルでいっぱいになっているバケツを両手に持って席に着く。俺がいつもやるゲームは競馬ゲーム。ジャックポットと言う概念はないが、競走馬を一から育て上げ、G1レースで優勝させて周りの注目を浴びるのを目標にしている。ジャックポットを当てたいと最初は思っていたが、やっていく内に始めに当てた人がいるわけだから後から当てても注目を浴びにくいことに気がついたのだ。だから別のゲームで凄いことをして注目を浴びようと考えた。そう、俺はあの時のような栄光をもう一度浴びたいのだ。俺は空手一筋の空手人間だった。高校もスポーツ推薦で入った。だが、怪我が原因で空手を辞めると蜘蛛の子を散らしたように周りの人間は去っていった。今では両親も距離を置いている。俺はただ慰めて欲しかった、相手をして欲しかっただけなのに、周りの人間は空手をやって結果を出している俺しか見ていなかった。今、空手を辞めて金髪の俺をしっかり見てくれているのは後輩たちだけだと俺は思っている。


 しばらくメダルゲームで遊んでいた。今日はずいぶんと調子が悪い。勝てそうなレースをことごとく逃している。こんなんじゃG1馬を作るには程遠い。俺にはもっと金が必要だ。もっと狩りをしなければならない。だがここのゲーセンでやってしまうと普段から出入りしている俺がやったことがバレる可能性が高くなってしまう。狩り毎にゲーセンを変えたりしてなるべくリスクが少ない方法でやってきたのが全て無駄になってしまう。それに一朝一夕でG1馬を作れるほどこのゲームは甘くない。ほぼ毎日ゲーセンに通って血統を熟知し、効率の良い調教を編み出してやっとトップクラスのプレイヤーと肩を並べられる。だからこそ、G1馬を作って大量のメダルを手に入れれば注目の的になる。ゲーセンの中心。空手をやっていた時の栄光をもう一度取り戻せる。だから俺は今日も筐体にメダルを投入する。だが今回は調子が悪すぎる。今日のところは大人しく帰るとしよう。そう思って席を立った。メダルの入ったバケツを片手にメダルバンクまで歩いていると見馴れた二人が目に写った。

 吉井? 三星?

 心の中で嫌な予感がした。吉井と三星は今日、コング役をやってくれた山田以外のコング役で俺の狩りの手口を知っているのは俺以外にはこの三人しかいない。その内の二人が俺を介さずに一緒にいる。二人は同級生なので一緒にいて当然なのだが、いる場所の具合が悪い。狩りの場所にするべきのゲーセン。それも俺が普段からゲームをするために出入りしているゲーセン。それも奴らときたら、狩りをする格好ではなく、髪の色は茶髪にして、ドクロをあしらった服を着てピアスにブレスレット、指輪など付けれる装飾品を付けてジャラジャラ音を鳴らしている。明らかに狩りをするのには不適切な格好だ。実際、周りからも浮いている。普通に遊びに来たのなら安心出来るが、普段のあいつらの行動範囲からして、俺を抜いてでの狩りだろう。二人だけで何度かやっているのか、吉井が遠くのじいさんを指差して、三星が頷いて吉井がじいさんに話しかけて隣に座った。やばい、完全に俺が考えた狩りの手口だ。勝手にやっている割には粗が目立つ。これならすぐにバレる。バレて逮捕されればすぐに俺の元に警察が来る。だが、ここであいつらの狩りを止めたとしても周りから目立ちすぎて今後の狩りがやりにくくなる。ここのゲーセンは他のゲーセンと比べて大きい。遠征に来るじいさん、ばあさんも多い。やばい。そんなことを考えている間に三星のバカがじいさんに近づいている。そっと近づいてはいるが、装飾品がチャラチャラ鳴っている。このままだと鞄を盗ろうとしていることを気付かれる。止めるか、否か、判断は俺にしか出来ない。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ