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黙れ! 子ども

 とてつもないインパクトにぼくは呆然とした。授業が終わってからも教室からでてゆくことができず、サカナの帰りを待った。誰もいない教室。ふいに誰もいないセカイのなかに、たったひとりぼっちで目覚めたような気がした。さみしくて、冷たかった。

 教室が藍色に染まる夕暮れになり、窓のそとに橙色が色濃くあふれだす時間になってもサカナは戻ってこかった。

 ぼくは顔を上げた。そこにはサカナではなく、西陽のオレンジにふちどられて先生がたっていた。中学生の女の子みたいに先生はほほえんでいる。


「伊藤さんなら、ちゃんとお家に帰ってるから心配しないで」


「あ、はい、電話してくれたんですか」


「ううん。電話なんかしない」


 ぼくは首をひねった。


「じゃあ?」


「バイク、飛ばして伊藤さんちに行った」


「えっ」


「帰ってくるなり寝ちゃったそうよ。お母さんと話したんだけど、ときどき、学校から帰るとバッタリ倒れて、ぐうぐう寝ちゃうときがあるんだって。病気じゃないから心配しないで」


「あ、はい。そうなんだ。あ、だったら、先生、伊藤のカバン、持っていってくれればよかったのに」


 というと、彼女はゲンコツを頭の上に落とした。


「黙れ、子ども! 先生だってパニクっていたのだ」


「そう、……なんですね」


 そういうと先生はサカナのカバンを胸にかかえた。


「もう遅いから帰ってね。君んとこにも、ちょっと遅くなりますから、って電話しといた」


「あ、ありがとう。先生」


 べつに何かが変化したってわけではないけど、ぼくは気持ちがだいぶ楽になった。笑いが少し漏れた。暗い教室で先生も笑っている。


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