ほっとけない
「あいたたた……」
「彩花ってホントどんくさいよな!」
「うるさいわね! ほっといてよ!」
弘樹はいつも私の事をどんくさいって言ってくる。
確かに私はどんくさいけど、いつもいつも言われると腹が立つ。
今だってたまたまつまづいてこけただけ。
それに何だっていつも私がミスとかするところにいるのよ!?
今だって別に一緒に帰ってる訳じゃないのに。
「そんなに怒るとシワになるぞ?」
「うぅ〜……うるさーーい!!!」
「おぉこわっ!!」
弘樹はいつもそんなやりとりばかり。
本当は弘樹の事が好きだけど、弘樹があんな態度だから素直になれない。
私はなんだかんだ恋にもどんくさいのかもしれない。
「はぁ〜……」
私はなんだか気分が落ち込んでしまった。
「痛っ! あっ、すいません」
自分が嫌になって下を向いて歩いていたら前から歩いて来たサラリーマンの人にぶつかってしまった。
「大丈夫だよ。それより君可愛いね、いくつ?」
なに、この人?
なんだか気持ち悪い……。
「すいませんでした!」
「ちょっと待ってよ、ちょっとくらい話そうよ」
私が謝って通り過ぎようとしたら腕を掴まれた。
「わ、私急いでいますので……」
「いいじゃん、ちょっとくらい」
嫌っ! 誰か助けて!!
「おっちゃん、俺の彼女に何か用?」
「えっ? いや、その……何もないよ」
えっ? どういう事?
それになんで弘樹が……?
「じゃあいいかな? 彩花は今から俺と出かけるところなんだから」
「そ、そうなんだ。君も次からは気をつけなよ。じゃあ」
弘樹に睨まれたサラリーマンは急ぎ足でその場を去って行った。
「ったく、本当にどんくさいだから……大丈夫か?」
弘樹はサラリーマンをが去ると振り向いて微笑んでくれた。
「あっ、ありがとう……でも、なんで……?」
「そりゃまぁ……おまえがいつもどんくさいからな!」
「そっか……ありがとうね」
「本当だ! しっかりしろよ?」
「う、うん……さっきの彼女ってのは……?」
「そりゃまぁ勢いってか何ていうか……ほっとけないんだよ!!」
弘樹はそう言うと前を向いてしまった。
「ご、ごめんね? 私がどんくさいから……私頑張るからほっとかないでくれる?」
「お、おうよ。しっかりしろよ! あんまりにどんくさかったらほってくからな!」
「……うん!!」
私が答えると弘樹は手を差し出してくれた。
私はその手を取り拓也と二人で歩き出した。