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幼馴染み

 「しょうがないな! 将来俺のお嫁さんにしてやるよ!」


 昔、幼馴染みの拓也君が言ってくれた言葉。

 その言葉は私の胸の奥に刻まれている。

 隣の家の幼馴染みの拓也君とは小さい時によく一緒に遊んでた。

 活発でヤンチャでイジワルな拓也君。

 そんな拓也君に私は小さいながらも『好き』って感情があったんだと思う。

 いわゆる初恋……。


 小さい時、鈍臭い私はいつも転んだりして泣いていた。

 いつもは私にイジワルする拓也君も私が泣くと慰めてくれる。

 なんだかんだ言って拓也君は優しかった。


 そんなある日、拓也君と近所の友達と何気ない会話で将来の夢を聞かれた。

 私の将来の夢……それはお嫁さんだった。


 「こんな鈍臭い奴、お嫁さんにもらってくれないって!」

 

 私は男友達に言われた言葉を聞いて大声で泣いた。

 そんな時に拓也君が言ってくれた言葉。


 「しょうがないな! 将来俺の嫁さんにしてやるよ!」


ーーーーー


 「どうしたんだよ、舞?」

 「ううん、なんでもない」


 私は今高校一年生。

 拓也君とは違う高校に行っている。

 今日はたまたま帰りの電車が一緒で駅から家まで一緒に帰っている。

 別々の高校に通ってもう三ヶ月。

 結局、中学の最後に想いを伝える事が出来ずに想いを胸にしまったままだ。


 「ふーん、まぁいいや」


 拓也はそう言って両手を頭の後ろに組んで歩いている。

 その姿は昔のヤンチャな少年の面影を残している。


 「ねぇ、拓也君……」

 「ん? なんだ?」

 「拓也君が昔言ってくれた言葉……覚えてる?」


 私は久しぶりに拓也君と会った嬉しさと、次いつ会えるか分からないという気持ちからつい胸の中にしまっていた事を言葉にしてしまう。


 「……」

 

 拓也君は無言で私の顔を真剣な顔で見つめる。


 「昔、拓也君が言ってくれた……将来俺のお嫁さんにしてやるよって言葉……それって今も……」

 

 私は押さえていた感情を、聞きたかった事を言葉にしてしまった。

 私の胸の鼓動が速くなる。

 しかも、最後まで言葉に出来きなかった。

 私は顔が赤くなるのが分かり俯く。

 

 二人の間に流れる沈黙。


 すると、拓也君が立ち止まった。

 私も立ち止まり振り返る。


 「舞……ゴメン、その言葉は今は無理」


 そっか。

 やっぱり昔の事だもんね。

 いつまでも間に受けてた私が悪いんだもん。


 「いいよ、別に。気にしないで! 冗談だから!」

 

 私は言葉を口にすると自然と目から涙が流れてくる。

 ダメ……泣いたら拓也君を困らせるーー。


 「いや、違うんだ! 俺たちもう子供じゃないだろ? だから無責任な事は言えない。……だから今は『お嫁さん』じゃなくて『彼女』になってくれないか?」

 「え……?」


 私の思考は拓也君の言葉についていけない。


 「それって……」

 「俺はずっと舞の事が好きだった。付き合ってください」


 拓也君は真剣な顔で言葉を口にする。


 「……はい、こちらこそお願いします」


 私の目から涙が溢れ出る。

 でも、さっきと違って温かい涙。


 「な、泣くなよ」

 「……ゴメンね」

 「……やっぱり舞は大きくなっても泣き虫だな!」


 拓也君は私に背を向けて言葉を放つ。

 でも、私は分かった。

 それが照れ隠しだって。

 だって、頬が赤いから。


 「もぅ〜!!」


 私は拓也君の腕に抱きついて歩き出した。

 何年も胸にしまっていた想い。

 それを言葉にしてようやく通じた想い。

 これからどんな事があるか分からないけど、拓也君と一緒ならなんでも大丈夫な気がする。


 幼馴染みの壁を越えた私たち。

 そんな私たち二人の夏がもうすぐ始まるーー。


 

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