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俺は/私は オタク友達がほしいっ!  作者: 左リュウ
第7章 先輩と後輩
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第72話 課題

更新が遅れて申し訳ありませんでした。



 スーパーに行ったら、美人先輩とデートすることになりました。


 この一文だけ見ると、わけが分からないな。うん。

 なぜか突然デートに誘われた俺はそのままスルーして帰ろうとしたが、恋歌先輩に拘束され、強制連行されてしまった。

 任意同行なんてなかった。


 ちなみに、部室のジュースや菓子類の補充分の袋と、恋歌先輩風紀委員の買い出しとやらの袋はどちらも俺が片手で持っている。恋歌先輩は最初、自分で持つと言っていたのだが……まあ、さすがに女の子に荷物持ちをさせるわけにはいかない。

 姉ちゃんが言っていたからな。


 それに、デートといっても学園に帰るまでだし。

 問題ないだろう。


「それより、荒島はよかったんですか?」

「ん。ああ、彼なら先に帰ってもらったよ。さすがに突き合わせるのは悪いしね」


 その割にはやけにあいつの背中がしょぼくれていた気がするのだが……。まあいいや。

 今、俺は左手で荷物を持っている。

 そして右腕は恋歌先輩に拘束されている。


 拘束とはいっても、ジャッジメントですの! なんてかわいらしいもんじゃない。

 言うなれば、そう。

 ディバ○ンストライカーのクローに挟まれているような感じだ。


 だってなんか腕からギリギリ……って音が聞こえてるもん(変身の方ではない)。

 これ絶対に大丈夫じゃないよね? パッと見はそれこそデートっぽく、普通に腕を組んでいるようには見えるのだろう。

 だけど実際はただの物理攻撃である。


 勘弁してくれ。俺の腕はVPS装甲じゃないんだよ。耐えられるわけがない。

 電圧で色が変わるわけでもないんだよ。白から赤に色が変わるわけでもないんだよ。

 どちらかというと発砲金属装甲だ。軽いぜ!


「あの、恋歌先輩……そろそろ拘束を解いてくれませんかね」

「君が逃げるかもしれないだろう?」

「逃げませんから」

「ふむ。そうか。なら……」


 バカめ。拘束を解いたらすぐに逃げるに決まっているだろう。フハハハハハ!


「もしも逃げたら、君の自室の机の右側にある、下から二番目の引き出しの中に大切に保管している幼女もののゲームのイベント限定イラスト集を焼却しよう」

「逃げるなんてことは微塵も考えていませんよ、HAHAHAHA!」


 怖い。風紀委員超怖い。


「ていうか、なぜそのことを!?」

「ふふふ。そこはほら、乙女の秘密ってやつさ」

「人のプライベートが危険に晒されるような乙女の秘密ってなんですかねぇ!?」


 なんてことだ。紳士にはプライベートすら守られないっていうのか?

 そんなのあんまりだ。ひど過ぎる。

 俺たちは自分のプライベートを幼女に捧げているというのに……その何がいけないんだ。


 そんなことを考えながら、俺と恋歌先輩は学園までの道を(何故か)遠回りしながら歩いている。

 まあ、学園の生徒たちにこの状況をじろじろ見られるのは……なんか嫌だし。というより、素直に恥ずかしい。

 別に付き合っているわけでもないのに。


「それで、恋歌先輩。これからどうするんですか?」

「どうするもなにも、デートするんだよ」

「だからデートってどういうことですか……」

 

 デートというのは、たぶん何かの例えのような事なんだろうけども。

 恋歌先輩は、「ふむ」と何か考えるような仕草を見せて、ブツブツ独り言をいっている。


「テスト、みたいなものかな……」

「は? テスト? なにをどうテストするんですか」 

「そうだな。たとえば――――」


 恋歌先輩は腕の拘束を緩めると、かわりにむぎゅっと俺の腕に胸を押し付けてくる。いや、胸だけじゃない。なんというか、体を俺の預けるかのようにして抱きついてくる。


「たとえば、こういう時に君はどのような反応を示すか、とか?」


 恋歌先輩はスタイルが良い。そのことは見て分かっていたけど、こうやって体を密着されるとそれを実感してしまう。物理的な意味でも。

 周りは一応、あまり人けがない。

 都合が良いのか悪いのか。


 ていうか、こういうことぐらい今までに何度もあった。

 そもそも、加奈たちだってよくこうやって押し付けてくるじゃないか。

 気にするな。気にしなくていいんだ。


 そう、例えばこの腕から伝わってくるむにゅっとした駄肉の感触も、ぷにぷにして柔らかく白い肌も、なんだかよくわからないけど漂ってくる良い香りも。

 ……それにしてもおかしいな。前ならこんなこと意識しなくても普通に平気だったはずなのに。


 ていうか、恋歌先輩にこういうことされると、加奈たちにされた時のことを思い出してしまってどうにもペースが乱れるというか……。

 わからん。またもやもやのせいかもしれない。


「おや、思っていたよりも面白い反応だね」


 人の気持ちも知らないで、恋歌先輩はクスクスと楽しそうに笑っている。

 うん。やっぱりこれってただ単にからかわれているだけなんだろうな。

 だったらなんとなくまだ平静を保てるかも。


「なるほど……攻略は順調、と」

「攻略?」

「ん。気にしないでくれ。さあ、私たちはデートを続けようか?」


 何やら意味深な笑みを浮かべているが、結局デートとは言っても、恋歌先輩からすれば、暇つぶしのただのお遊びだろう。


「ていうか、俺だって買い出しの途中だったんですからすぐに帰してくださいよ」

「つれないな。私だって買い出しの途中だというのに」

「だったらすぐに帰りましょうよ……」


 なにを言ってるんだこの先輩は。


「それはそれ。これはこれ。私は確かに買い出しの途中だったが、君とのデートも楽しみたいんだ」

「はいはい。それは分かりましたからさっさとデート(笑)を済ませて帰りましょうね」

「まったく。私は本気だというのに……」


 わけのわからないことをテスタメント先輩が言っているが無視。

 とりあえず、さっさとこの先輩を満足させて帰られるようなことは何かないかな……。

 あたりを探ってみるが……この辺りには特にこれといった物がない。


 やはり人けの無いような場所だと、必然的にそうなってくるか。

 暇つぶし出来るようなものがあるならそこそこの人通りになっているはずだし。


「あそこはどうかな?」


 恋歌先輩が指したのは、学園とは反対方向にあるアミューズメント施設だ。

 最近オープンしたところで、そこそこの人気を博している。


「……あの、学園とは反対の方向なんですけど」

「気にするな。私も気にしない。まあ、あくまでも任意だ。強制はしない」


 任意で、強制じゃないと。

 ……おかしいな。心なしか、メキッという音が腕からきこえてきたような気がした。

 選択権は、ない。


 任意と言ったな。あれは嘘だ。

 とりあえず俺はポケットからスマホを出して、文研部のLineにメッセージを送っておく。


『悪い。恋歌先輩につかまったから遅くなる』


 俺はそのメッセージを送信すると、スマホをポケットにしまいつつため息をついた。


「はぁ……あとで加奈たちに怒られたら恋歌先輩のせいですからね」

「ふふっ。そうか。でも、どうして君は加奈さんたちに怒られるのかな?」


 にこっ、と恋歌先輩は笑いつつ、意味のわからない質問をしてきた。

 恋歌先輩と遊びにいっただけで、どうして俺が加奈たちに怒られるのか。


「そもそもどうして、君は怒られるんだ? 私とデートしているだけなのに」

「それは……買い出しの帰りにかってに遊びに行ったからじゃないですか?」

「なるほど。君はそう考えるわけか」


 恋歌先輩はまたもや意味の分からないことを言っている。

 俺の考え以外に、ほかに考えがあるのだろうか。

 ……ある、のだろうか。


「確かにそれもあるかもしれない。でも、もしかするとそれ以外の理由もあるのかもしれない」

「それ以外の理由?」


 思わず首をひねる。

 恋歌先輩はそんな俺を、かわいい教え子を見守る教師のような目で見ていた。

 不思議と、恋歌先輩の言葉は、ストンと俺の中に違和感なく落ち着いた。


「さあ、考えてごらん。私と君がデートをして、彼女たちが怒るような理由。それは、何かな」


 ていうかこれ、デートじゃないしなぁ。

 そもそも前提からして間違っている気がするけど……それでもなぜか、俺は恋歌先輩の質問に対して考え込んでいた。


 これに答えを出せば、何かが変わってしまう気がする。

 そして、俺の心の中にあるもやもやが晴れる気がする。


「それじゃあ、行こうか」

「え、ああ。はい」

「私が連れて行ってあげるから、あそこにつくまでじっくり考えてごらん。私がだした、『課題』をね」


 そういうと、俺は恋歌先輩に連れられながら、アミューズメント施設へとフラフラと歩いて行った。

 到着するまでの間、俺は恋歌先輩から出された『課題』についてずっと考え込んでいた。



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