第71話 このままでいいのかな
最近、黒ニーソorタイツをはいたツンデレ系金髪お嬢様幼女に踏まれたいと考えはじめたんですけど普通ですよね?
合法ロリポーター、雨宮小夏さんと会った次の日。
夏休みも残すところあと僅か。
朝からやるべきことはたくさんあるというのに、俺は一人ベッドの上に寝転んで、考え事をしていた。
先日、小夏さんとの会話で俺は約束した。
俺の心の中にあるもやもや。
それについてゆっくりと考えて、そのもやを晴らす。
合法ロリとの約束事。
真剣に考えなければならない。
俺はあの時、合法ロリポーターである小夏さんに質問されて、ちゃんと、そして真剣に考えてみた。
好きな人のこと。
もちろん、俺の好きな人とはこの世に生きとし生ける幼女だ。
最初はそれを即答するつもりだった。あと小夏さん好き好き大好きとも言うつもりだった。
だけど、俺はその時に疑問を感じた。
小夏さんという合法ロリの質問に真剣に考えすぎるというほどに深く考えていたせいだろうか。
俺はもしかすると、幼女以外にも好きな人がいるのではないのだろうかという気持ちがわいてきた。
これが、もやもや。
俺の心の中にある、俺にもわからない感情。
それを自覚し始めた時から、もやもやが俺の中に居座ってしまった。
「うーん……わかんないなぁ……」
なんだろうこのもやもやは。
俺は幼女を愛している。
それだけでいいじゃないか。
俺が尊敬し、同時に嫉妬してやまない某バスケコーチが言っていた。
ノー小学生ノーライフ。
小学生の汗は高級料亭のお吸い物。
つまり小学生、ひいては幼女は最高だぜということなのだ。
そんな幼女が大好きだということでいいじゃないか。
なのにどうしてこんなにも、もやもやするんだろう。
今でも幼女は大好きだ。
それは今も微塵も変わっていない。
それどころか、先日は小夏さんという合法ロリに会ったせいか幼女に対する愛は日に日に深まっている。
ようじょ! ようじょ! ようじょ!
それはともかくとして。
このもやもやについては分からない。
だから俺は小夏たんとの約束を守って、焦らずゆっくりじっくりと考えるのだ。
「っと、もうこんな時間か」
時計を見ると、もう朝の十時を指していた。
そろそろ部室にでも行こう。あそこには俺の幼女グッズがあるわけだし、それを堪能すればきっとこのもやもやも晴れるに違いない。
俺のサイドエ〇ェクトがそういってるね。
そんなわけで、俺は準備をしてから部室へと向かった。
☆
『…………』
部室につくと、既に俺以外の部員たちは揃っていた。
だが、みんなぽけーっとしている。
まあ、それでも加奈は塗装ブースの前で手だけは動かしてプラモをエアブラシで塗装していたし、南帆はコントローラーをカチカチしていたし、恵は錠前をかちゃかちゃしているし、渚姉妹は揃ってBL漫画と百合漫画を読んでいて、小春はイラストか何かをサラサラと書き、南央は携帯ゲーム機をしている。
だけどやっぱりみんなどこかぼーっとしていて、心ここにあらずという感じだ。
さすがに気になった俺はいつもの席につくと、とりあえずBBA共に向かって、
「どうしたんだ? 幼女の素晴らしさに目覚めて衝撃でも受けているのか?」
『そんなわけないでしょう』
えらい仲がいいなおい。
全員、見事にハモったぞ。
どうやら俺の心配は杞憂だったらしい。
俺は思う存分、幼女を堪能することにした。
鞄から携帯ゲーム機をひっぱりだし、ゲームを起動させる。
ピロン♪ という軽快なメロディーと共に、音声が携帯ゲーム機から流れる。
『ぷりてぃりとるぷりんせす~小学生と恋しよっ♪~』
あ、やべ。イヤホンつけ忘れてた。
まあいいや。公共の場所でボイステロするよりはマシか。
それに今更こいつらに聴かれてもいまさら……、
『……………………』
何故か全員の視線が俺に向いていた。
なんだ。ボイステロしてしまったからなのか。
わからん。
「か、海斗くん……」
「ん? どうした加奈」
「あ、あのっ……今でも、幼女は好きですか?」
「はぁ?」
何を言っているんだこいつは。
「当たり前だろ? 俺は幼女を心から愛している。いや、小夏さんと会ったことでその想いは更に深まるばかりだ。嗚呼、小夏さんかわいいよ小夏さん。まったく、幼女って素晴らしいよな。大人ぶって背伸びしようとする姿もかわいい。健気に頑張ろうとしてくれる姿もかわいい。無邪気な笑顔を浮かべているのもかわいい。すべてが愛くるしい。まさにこの世に生まれた奇跡といっても過言じゃない。そしてそんなかわいい幼女を愛でるのは紳士として以前に人間として当然のことだと思わないか? 人間は誰しもかわいいものが好きだろ? たとえば猫を見てかわいいと思う人間がいる。それと同じだ。俺は幼女を見てかわいいと思っている。これは自然の摂理なんだ。そもそもロリコンというだけで変な目で見られるのはおかしいことなんだよ。幼女をかわいいと思うのは当然のことだ。その当然のことをしているだけで俺たちは周囲から変な目で見られ、おまわりさんを呼ばれる。本当に、世の中間違っているよな。ロリコンと犯罪者の区別もつかないやつが多すぎる。俺たちロリコン紳士はYESロリータNOタッチ! をしっかり守っている。だが犯罪者たちはその鉄の掟を破り、幼女を性的な目で見た、ただの犯罪者だ。俺たちは犯罪者たちじゃない。幼女を愛し、幼女を影から見守り、幼女の平和をまもる。時にはおまわりさんと戦うときだってあるだろう。だけどそれは俺たちが望んでいることじゃない。俺たちだっておまわりさんとは戦いたくない。だが、あいつらはロリコンと犯罪者の区別もついてない。撃ちたくない……撃たせないで、というやつだ。全国の小学生以下の少女の犯罪に巻き込まれた件数がここ数か月で0になっているのは、俺たち同士たちの日々の努力が形になったものだ(男子? 知らね)。それをおまわりさんにも分かってもらいたい。つまり結局なにが言いたいのかというと、まったく、幼女は最高だぜ! ということだ。ぺったんこな幼女も、巨乳な幼女も、太ももの素晴らしい幼女も、ニーソをはいた幼女も、タイツをはいた幼女も、みんな最高だということなんだ。ようじょっ、ようじょっ、ようじょっ!」
「あ、いつも通りの海斗くんですね」
気が付けばBBA共がいつも通りの雰囲気に戻っていた。
「……むしろパワーアップしている」
「あいかわらずかいくんはロリコンさんだねぇ」
「この前の一件で少しは変わったのかと思いきや……」
「あはは。相変わらず、だね」
「海斗先輩って……やっぱり心の底からロリコンなんですね」
「うん。私も今ので改めてそう認識したよ。小春ちゃん」
好き放題言ってくれる。
ていうかロリコンで何が悪い。
まったく、これだからBBAは。
俺はあらためてゲームに集中することにした。
このゲームは小学生お嬢様の執事となった主人公がお嬢様小学校で執事として小学生ヒロインたちとの仲を深めていくゲームだ。
今はツンデレお嬢様である、凪ちゃんというヒロインのルートに入ろうとしている真っ最中。
凪ちゃんは不器用なのに必死に主人公の為にお料理のお勉強をして、手作りお弁当を主人公に手渡してくれている。
――べ、別にアンタのために作ったわけじゃないんだからっ。…………アンタが体を壊されると、私が困るのよ。ご飯ぐらい、しっかり食べなさいよね。
選択肢
①ありがとうございますお嬢様。
②お嬢様のお料理を、私如きが食べてもよろしいのでしょうか……
③踏んでくださいお嬢様!
……ふむ。
③だな。
――ふぇっ。な、何言ってんのよこの変態! で、でも……アンタがそこまでいうなら、踏んであげてもいいけど……。
選択肢
①是非ともお願いしますお嬢様!
②出来れば罵りながら踏んでくださいお嬢様!
おかしい。なぜ『ニーソをはいて踏んでくださいお嬢様!』がないんだ。
開発者もツメが甘い。仕方がない。ここは①を選んでおくか。幼女に罵倒されるとか二次元でも心が折れる。
その後もカチカチとゲームを進めていく。フヒヒ……。
――ダメじゃないちゃんとたべなきゃっ! もうっ、じれったいわね。私が食べさせてあげるっ
きゃわわ!
ああ、なんてかわいいんだ凪ちゃんっ!
あ~、やっぱり幼女は最高だな!
「あ、もうジュース切れてる……」
ふと、美紗の声がきこえてきた。
ジュースが切れてる、というのはこの部室の冷蔵庫にぶち込んでおいたジュースのことをいうのだろう。
これはみんなが喉が渇いた時に好きに飲むもので、ジュースはぜんぶ部費で購入している。
「じゃあ、俺が買ってくるわ」
「あ、私も行くよ」
「いや、大丈夫だ。ジュースってまとめ買いすると結構重いだろ。美紗は休んでろ」
俺はとりあえずゲームを中断して、近くのスーパーまでジュースの買い出しに向かった。
だけどそんな俺の頭の片隅には、相変わらずあのもやもやが未だ住み着いていた。
☆
私、楠木南央は考えていた。
何を、と言われると、このままでいいのかな、ということを。
私はまだ一年生。
海斗先輩と過ごした時間は、二年生の先輩方の方が長い。
だけど先輩たちは同時に、みんなが仲良しだ。
その絆というか、友情と言うか。
そういったものも、海斗先輩と過ごしていくうちに育まれていったのだろう。
だからだろうか。
海斗先輩が変わり始めていた。
そのことに先輩たちは、恐怖しているようにも私は考えている。
隣の小春ちゃんに視線を移してみると……どうやら小春ちゃんも、同じ考えのようだ。
私たちはまだ二年生の先輩方との交流は少ない。
だからこそ、この違和感に気づいてしまったのかもしれない。
先輩たちは怖いのだ。
今の私たちの関係を壊してしまうのは。
仮に。
海斗先輩が幼女だけでなく、普通の女の子も意識しはじめていたとする。
そうなると、いつか海斗先輩は恋をするだろう。
もしもその相手が、もしも私たちのうちの誰かだったら?
もしも私たちのうちの誰か一人と海斗先輩が恋人になったら?
もしもそれで、この文研部が壊れてしまったら?
わからない。
それは、実際にその時が訪れてみないとわからない。
もしかすると私たちの関係は続くかもしれない。この中の誰かと海斗先輩が恋人同士になっても、私たちは良い友達でいられるかもしれない。
だけどそうならなかったら?
そうならなかったらきっと、この部は終わるだろう。
それに、私たちの誰かと海斗先輩が恋人にならなくても、海斗先輩は誰か他の人と恋人になるかもしれない。
その時も、この部がどうなるかわからない。
私たちの中心は海斗先輩で、二年生の先輩たちは海斗先輩を中心にして出会った。
その中心が欠けてしまった時。
この部がどうなるのか分からない。
きっと海斗先輩は私たちとも良い友達でいてくれるのだろう。
だけど私たちは『良い友達』では嫌なのだ。
好き。
大好き。
恋人になりたい。
それは失恋としていつか思い出の中に消えていくのだろうけれど。
だけどそれでも。
今の関係を失うのは怖い。
海斗先輩との関係もそうだけど、今の私たち、海斗先輩を除く部員同士の友達としての関係を壊すのも怖い。
だから、どうしようもない。
普通は恋人というものは誰か一人の女の子にしかなれないものだから。
だからこそさっき、いつものロリコンな海斗先輩に安心した。
いつも通りだと。
海斗先輩は変わってない。
だったら今のままの関係を、私たちは続けられる。
でも……このままで、いいのかな?
確かにどうしようもないけれど。
でも、だからといって、私たちのこの気持ちを押し殺しているままでいいのかな。
私ですらこんなにも好きなのに。
先輩たちは、私なんかよりも、もっと先輩の事が好きなのに。
その気持ちを押し殺してまで今の関係を保つ道を選ぶのは、正しい事なのかな?
☆
買い出しに向かってみると、意外な人物と遭遇した。
華城恋歌先輩だった。
「こんにちは。恋歌先輩」
「やあ、海斗くん。久しぶりだね。この前は楽しかったよ」
「ああ、それはなによりです」
今は学園の近くにあるスーパーの中だ。こんなところで会うなんて珍しい。
俺はとりあえず目的であるジュースや、ついでにお菓子なども買い込んでいく。学園祭でかなり稼いだので予算的にはかなり余裕がある。
「君はどうしてここに?」
「ああ、部室においておく用のジュースやお菓子を。恋歌先輩は?」
「まあ、ちょっとした散歩だよ」
散歩でスーパーまで寄ってくるのだろうか。かわった人だな。
「先輩、こっちは買い出しが終わりました……ってお前は!」
恋歌先輩と話していると、聞き覚えのある声がきこえてきた。
その声の主は、新入生歓迎イベント以来の荒島だ。
「てめぇ! こんなところで何してやがる!? まさか、先輩を狙っているんじゃないだろうな」
「はぁ?」
何を言ってるんだこいつは。
この単細胞め。
なぜ俺が幼女ではなく、BBAを狙わなきゃならないんだ。
「…………?」
ん。なんだろう。
なんだかちょっとした違和感。またもやもやが再発してきた。
本当に何だろう。今のどこに違和感を感じるんだ?
落ち着け。冷静になった考えるんだ。
狙う? なにを? 幼女と……幼女、『と』?
『と』ってなんだ。幼女『だけ』じゃないのか。あれ?
「……ね、狙うも何も、俺はただ恋歌先輩とは偶然出くわしただけだ」
とりあえず、考えるのはやめだ。
落ち着いて、ゆっくり考えればいいんだから。
「そういうことだ、荒島くん。落ち着いてくれ」
「くっ……先輩がそういうなら」
わけのわからないうちに突っかかれ、わけのわからないうちにその矛を収めてもらった俺。
なんだこれ。なんであいつ勝手にキレてんの? カルシウム不足過ぎるだろ。
それにしても、さっきのもやもや再発はなんだったんだろう。
もしかして、もやもやが晴れるきっかけでもさっきの会話の中に含まれていたのかな?
「……………………」
「な、なんですか」
気が付けば、俺は恋歌先輩に見つめられていた。
なんだかこの人の目を見ていると落ち着かないんだよな。
色々と見られている気がして。
「海斗くん。最近、なにか変ったことでもあったのかな?」
「えっ」
ドキッとした。
ピンポイントで言い当てられた。図星、というやつだ。
隠そうとするが、目の前の人はそれを許すはずもなく、また、確実に見抜かれている。
「ふむ。もう少しかかると思っていたが、思ったよりも早い雪解けだな……」
ぼそっ、と恋歌先輩が何かをつぶやいた。
が、あまりにも小さくて声がよく聞こえない。
なんだったんだ?
「…………チッ」
荒島はイライラしながら俺のことを忌々しげな目で見ている。
なんでそんなにイライラしているんだ。わからんやつだ。
しばらく恋歌先輩は何かを考えるような仕草をし、そして、思い切ったような表情をしたあと、
「海斗くん。ちょっと、私とデートでもしないか?」
「は?」
「え?」
ハーレム系のラノベを読んでると好きなキャラとかが出来るんですけど、僕の場合は割と好きになるキャラが一人じゃないことが多いんです。
なので、読んでいるとたまに「ああ、この中の一人しか最終的に選ばれないのかー……」と感じることがあるんですよね。
だからというか、『生徒会の一存』の終わり方は個人的には好きでした。
この作品ではそのことについて考えながら書いています(ラストというか、着地点はもう用意してます)。




