第66話 L’s(LPO)
今回は大半が会話となっております。
寝たか。
俺は、暗闇の中むくりと上半身を起こした。隣で加奈はすやすやと眠っている。
このまま朝が訪れたとしよう。そしてBBA共がこの状態の俺と加奈を見たとしよう。
俺の人生は確実にそこで終わる。
そんな予感がする。つまり、俺は自分の生命を守るために今からこのBBAの輸送任務を成功させなければならない。
加奈が眠っていることを確認しながら、俺は加奈を抱きかかえる。俗にいうお姫様抱っこという体勢だ。ああ、もう。お姫様抱っこは幼女にしてあげたいのにぃ!
「ん……」
起きるかどうかの瀬戸際でヒヤヒヤする。そんな俺の気苦労も知らないでこいつはぐっすりと眠っている。
くっ。これだからBBAは。
なんだか俺の部屋の中から正人の唸り声がきこえるけどそれは無視。
そろりそろりと抜き足差し足忍び足というやつでBBA共の寝室と化した部屋へと侵入していく。ゆっくりこっそりとドアを開けることは普段から慣れているので問題ない。隠密行動、つまり人目につかないように、こっそりと行動するのも慣れている。普段の行いの賜物だな。
部屋に入ってみると、BBA共はすやすやとお休みしていた。空いているスペース、つまりそこでは本来は加奈が寝ていたであろうスペースに加奈の体をそっと下ろす。
ふぅ。ミッションコンプリートだぜ。
「何をしているのですか?」
「…………さらばっ!」
「待ちなさい」
がしっ、と襟首を掴まれた。
敵の動きが想像以上にはやい!? このままでは捕まるっ! ていうか普通に捕まってしまった。
俺を捕まえたBBAは……美羽だ。
「まったく、ふと目が覚めてちょっと外に散歩しに行こうとしてたら誰かが入ってきて……どうして眠っている加奈を、よりにもよってお姫様抱っこして入ってきたんですかね?」
「そ、それには色々と事情があってだな……」
「ええ。ゆっくりきかせてくださいね? リビングで」
「い、いえすまいろーど……」
リビングに帰還。その後、俺は膝詰で説教された。理不尽だ。
「もうっ。本当に、あなたは何を考えているのですか?」
ぷんすかという擬音が似合いそうな様子で美羽が怒る。俺のせいじゃないんだけどなぁ。
「この幼女に欲情する犯罪者っ!」
「違う! 俺は幼女に対して浅ましい感情を抱いてなどいない!」
「分かりやすい嘘ですね」
「バカめ。これだからBBAは……。そもそもお前は、犯罪者とロリコンの区別がついてないだろう?」
「似たようなもんでしょう」
「だから違うっつってんだろ! いいか、そもそもロリコンというのは、幼女を愛で、見守る聖なる騎士なんだよ。属性でいったら光属性だ」
「闇属性の間違いでは?」
「ちなみに幼女は神属性」
「そうなんだ。わたし、散歩にいくね」
「ちょっとまて。お前の誤解はちゃんと解いておかなきゃならない」
「解くもなにも言葉のままでは……」
「いいか? 俺たちは騎士だ。幼女を守る守護者で守護神だ。電柱の陰から幼女を見守り、その成長を画像や映像に収め、保存する。それが俺たちの役目だ。決して危ない人なんかじゃない」
「危ない人じゃないですか」
「そもそも幼女とは天使だ。女神だ。この世に顕現した奇跡だ。そんな幼女を愛でこそすれ、欲情するなど紳士の風上にもおけない。俺たちはきっちりと犯罪とそうでないことのラインは引いている。だが、犯罪者はそのラインを越えたゴミクズ共だ。仲間が悪しき道に堕ちてしまったのは俺だって悲しい。けど俺たちは、昨日まで味方だったやつらと戦う。何故なら幼女を守る事こそが俺たちに課せられた十字架だからだ」
「(シャカシャカシャカ)あ、終わりました? それじゃ、私はそろそろ散歩に行ってきますね?」
「きけよっ! スマホで音楽きいてないで俺の話をきけよ!」
これだからBBAは!
くそっ。平然とした顔をしていると思ったらいつの間にかどこから取り出したのかスマホに差し込んだイヤホンで音楽きいてやがった。
「くそっ。お前が妙な誤解をするから俺たち『L’s』が誤解を受けるんだ」
「なんですかそのミュ〇ズみたいな単語」
「スクール紳士だ」
「アイドルじゃなくて!?」
「バカ野郎。それだとミ〇ーズと被るだろ」
「そういう問題じゃないですよね!?」
「まあ、加奈ならここで『なんですかそのE〇Sみたいな単語』とか言ってただろうな。なるほど。人によって返しが違うもんだな」
「EL〇って……地球外変異性金属体か何かですかあなたは」
「地球内変異性紳士体だ」
「ブレないですね!」
「照れるぜ」
「褒めてませんよ!?」
「なん……だと……?」
「そんなオサレな驚き方をされても」
「人類を導くのは、この俺だ!」
「人類も変態には導かれたくないでしょうね!」
「バカを言うな。だから俺たちは変態じゃないと言っているだろう」
「さっきの『L’s』というのは?」
「この俺が組織した、幼女を守護する団体の名前だ」
「変態じゃないですか!」
「安心しろ。警察の目をごまかすために表向きは『LPO』と名乗っている。やましいことは何もない」
「警察の目をごまかさなくてはならない時点でやましいことだらけなのでは」
「え?」
「なんで『何を言っているんだこいつ』とでも言いたそうな顔をしてるんですか? ていうか、何ですか『LPO』って」
「NPO法人にならってつけたんだ」
「なぜにNPOをチョイスしたんですか」
「お前、仮面ラ〇ダー響鬼を見てないのか?」
「ああ、なるほど。そういえば猛〇って表向きはオリエンテーリングを主催するNPO団体でしたね」
「それにならったんだ。鍛えれば鬼になるように、俺たちは鍛えて紳士になったんだからな」
「そんな集団にならわれたとなっては〇士もNPOも迷惑してるでしょうね」
「あと、言ってみた感じちょっとLPOとNPOって似てるだろ?」
「似ているかどうかは分かりませんが……ということは、何かの略称ですか?」
「ああ。『Little girl Patron Organization(幼女守護団体)』の略だ」
「今すぐNPOに謝ってください」
は? なんでだ?
まったく、人が立ち上げた組織にケチをつけるとは。やれやれだぜ。これだからBBAは。
それにしても俺は何回『これだからBBA』はと言っているのだろうか。これだからBBAは。
「ていうか、よくもまあそんな団体を脳内で立ち上げることが出来ましたね」
「ああっ! 美羽の中で俺が可哀相な人になってる!?」
「違うんですか?」
「違うよ! 現実だよ!」
「まったく、コミュ障のあなたがよくもまあそんなことが出来ましたね」
「ああ。あの日から俺は友達を増やせるように努力を始めたんだ。その結果、俺には立派な紳士友達が出来た」
「努力する方向を間違えてませんかねぇ!?」
「俺たちは日々活動している。交代で街をパトロールし、幼女に降りかかる危険を排除している」
「何をしてるんですか? 詳細に教えてください」
「おっ。お前も興味が出てきたのか?」
「はい。あなたたちの犯罪を詳細に記録しておこうかと」
「おいばかやめろ。考え直せ。こっちに来い。L’sは来るものは拒まないぜ」
「そうですか。丁度良かったです。では警察を呼んでおきますね」
「ライフで受ける!」
「拒まないんじゃなかったんですか?」
「サツは俺たちの敵だ。この前も、俺たちの仲間が牢屋にぶち込まれた」
「アウトじゃないですか!」
「俺たちは全世界の幼女たちの平和を願って活動しているのに……昨日だって、活躍してきたんだぜ」
「例えば?」
「ゲーセンにいる台を占領しているア〇カツおじさんの排除とかな」
「あれ? 割とまともなことしてる?」
「当然だ。俺たちは台占しているアイ〇ツおじさんの除去から幼女のいる街を狙うテロリストや犯罪者を抹殺するところまで幅広く全世界で活動している」
「幅広すぎやしませんか!? ていうか、抹殺って!?」
「やだなぁ。抹殺っていっても武器を取り上げてから一通り痛めつけ、幼女の素晴らしさを説いた後、警察に引き渡してるだけだって。そんなに本格的なことまではしてないよ」
「本格的過ぎる!」
「おかげで、犯罪者たちに罪を償わせると同時に俺たちと同じ紳士と化すことも出来た」
「最近ニュースで噂になっている捕まった犯罪者がいきなりロリコンに豹変するという事件が多発しているっていうのはあなたたちの仕業ですか!」
「へへっ。俺たちも有名になったもんだな」
「なんか複雑です!」
「俺たちL’sの戦いはこれからだ!」
「打ち切りエンド!?」
「俺たちは犠牲になったのだ……犠牲の犠牲にな」
「ていうか、L’sの『L』ってもしかして『Lolita Complex』からですか? あれって和製英語では?」
「それは分かってるんだけどな。『Pedophilia』からとって『P’s』にしてしまうとロリコン紳士たちの集団じゃなくてPヘッドの集団になりそうだからな。一仕事終えたあとの挨拶が『闇に飲まれよ!』になってしまう」
「PV最高でしたね」
「まったくだ。だが師匠も動いてほしかったなぁ……しかし、師匠は十四歳ッッッ!」
「私は動く蘭〇ちゃんが見られて満足でした」
「俺もあれはあれで満足だけどな。〇子ちゃん可愛いよな。あのPVの蘭〇ちゃん見て一瞬心臓止まったわ」
「同感です」
「そういえば映画楽しみですね」
「まったくだ」
Pの力が試されるな!(リピーター的な意味で)
「あー、そろそろ眠くなってきたわ」
「そうですね。では、おやすみなさい」
「ああ」
「はい……って、散歩しようと思ってたのになんだかんだと話し込んでしまいました」
「散歩なぁ……もう遅いだろ」
「でも、好きなんですよ。散歩。夜はまた涼しくて」
「危ないな……お前、普段から深夜徘徊してるんじゃないだろうな」
「してませんよ! ただ、ベランダに出て風に当たっているだけです。今回はなんだか眠れないのでちょっと軽く散歩しようと思っただけです」
つってもなぁ。夜に女一人で歩かせるわけにもいかないし。
「分かったよ。じゃあ、俺も一緒に行くよ。いくらBBAとはいっても、女の子一人で出歩かせるわけにもいかないし……」
「つ、ついてくるんですか!?」
「なんだよ。嫌だっつっても無理やりついていくからな。夜の一人歩きは危ないんだぞ」
「いや、じゃないですけど……」
なんだこいつはいきなり。顔を赤くして。そんなにも俺と二人っきりになることが嫌なのか。
美羽は、あー、うー、と照れたような顔をしながら何かを考えている。
「……も、もしかするとこれはチャンスかも……加奈だって、きっと、何かあっただろうし……ここでは何かあるかもしれませんし……雰囲気も……」
ブツブツと小声で何を言ってるんだこいつは。どいつもこいつも、言いたいことがあるならちゃんと聞こえるように言えよ。
美羽はしばらく考え込んだあと、何かを決意したかのように、
「それでは、い、一緒に、行きましょう」
と、顔を真っ赤にしながら言った。
モバマスはやってませんが友達にモバマス勢のPがいたのでなんとなく。
蘭子ちゃんかわいい




