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俺は/私は オタク友達がほしいっ!  作者: 左リュウ
第7章 先輩と後輩
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第65話 ありがとう

 歓迎会は夜になってもまだ続いていた。というより、もはや歓迎会でもなんでもなく、ただのパーティみたいになっていたが。それでも、一年生二人は楽しそうにしていたのでよしとするか。

 こういう時は、みんなでゲーム大会でもしようというのが俺の頭の中で思い浮かぶのだが、ぶっちゃけ俺たちの間では無理だ。何しろ楠木姉妹が無慈悲なまでの圧倒的な力で他のみんなを捻じ伏せてくるのだからやる気がちょっとアレである。

 恋歌先輩と正人、葉山は着替えを取りに一度、それぞれの自宅に戻った。三人が戻ってきてからまた歓迎会が再開し、夜遅くまでそれは盛り上がった。

 歓迎会をするとのことで用意しておいた布団の数は、何とか足りた。隣の部屋に住んでいる加奈のところから持ってきたという事情もあって、何とか数が足りた。問題は誰がベッドを使うということになった。女子陣は一緒の布団でみんなと寝たい、というのが希望だったので、必然的に俺のベッドは使えないことになる。

 というわけで、正人と葉山が同じ布団で寝てもらうことになったのだが……。


「嫌ぁあああああああああああああああああああ! 頼む! 頼むからそれだけは勘弁してくれ!」

「はぁ? どういう意味だよ。そんなにも俺のベッドで寝るのが嫌か。言っとくけどな、ちゃんと洗濯も普段からしてるし、今日に備えて念入りに洗っておいたんだぞ」

「そういう意味じゃない! そういう意味じゃないんだ!」

「じゃあどういう意味だよ」

「察しろよ!」


 怒られた。なぜだ。わけがわからないよ。


「葉山、悪い。俺のベッドで寝るのが嫌か?」

「僕は構わないよ? いや、むしろ良い……」

「葉山は優しいなぁ。正人も見習えよ」

「無理に決まってんだろうがぁあああああああああああああああああああ! 見習ったら逆にお前が危ないからな!?」

「仕方がない。正人はベッドで寝るのは無理らしいから別のところで寝てくれ」

「ああ、そうしてくれ……ふぅ。これで俺の貞操は守られ」

「ほら、ア〇ゾンのダンボール。公園で寝るのに必要だろ?」

「……………………………………………………………………………ベッドでお願いします」


 よろしい。

 まあ、俺はリビングの床で寝るけど。ちなみに女子たちは別の空き部屋。まあ、姉ちゃんが色々と支援してくれて今のマンションに住んでいるわけだけど、過保護な姉ちゃんが選んだせいか、俺一人で住むにはちょっと広い。何しろこれだけの人数でパーティが出来るわけだし。それ故に余っている部屋がある。この部屋は、俺が集めている二次元グッズ及び、幼女アルバムの保管スペースが三部屋目に突入したら使おうと思っていた部屋だ。

 正人と葉山は俺の部屋のベッドで寝てもらうとして、あとは俺がリビングの床で寝ればいいだけである。

 誰もいなくなり、暗くなった部屋で俺は掛布団の中にくるまって眠ることにした。もう深夜二時を過ぎている。さっきまでトランプしたり人生ゲームしたりして盛り上がっていたからなぁ。

 そろそろ疲れた。


 ……思えば、高校に入ったばかりの頃は、こんなことになるなんて予想しなかったなぁ。

 春休みに姉ちゃんに色々と鍛えてもらって、それから中学時代に俺を苛めていたやつに仕返ししたらなんだか自信がついて、思い切ってイメチェンしてみて。だけどやっぱり中学時代の経験からか誰かと積極的に関わる事が怖くなって、無理にDQNを演じて。まあ、途中から本物のDQNに絡まれて返り討ちにするうちに名実ともにDQNになったけど。それでも、友達は欲しかった。なんだかんだあって正人と友達になった時は、表情にこそ表さなかったけども死ぬほど嬉しかった。でもそれからしばらくは何も進展がなくて(ホモ的な意味ではない)、友達が欲しいくせに周りの人間から自分を遠ざけて。

 そうしているうちに加奈と出会って。その後も南帆や恵、美羽や美紗。葉山とも友達になって。

 国沼なんていうリア充と普通に話せるようにもなった。中学時代の俺では想像も出来なかったことだ。

 それから今は後輩が二人に恋歌先輩がうちに来ている。


「……よく考えたら、本当に凄いよな」

「何がですか?」

「!?」


 いきなりすぐ隣から声がきこえてきたから思わず驚いてしまった。

 一人でいる時はありえない、なんだか甘い香りがするなと思って、声の聞こえてきた方向を振り向く。


「海斗くん、どうしたんですか?」

「……なあ、加奈」

「はい。なんでしょう」

「なんでお前がリビングここにいるの?」


 しかも、床で寝ている俺の布団にわざわざ潜り込んできている。

 意味が分からん。戻れよ。自分の部屋に。


「はぁ。相変わらず海斗くんは鈍いですね」

「どこぞのカードゲームアニメじゃないんだからQ&Aぐらいはちゃんと成立させような?」


 Q.なんでお前がリビングここにいるの?

 A.鈍いですね


 見事に成立していないこのQ&A。もう少し成立させる努力はしてほしい。


「ていうか、勝手に人の布団の中に潜り込んでくるなよ」

「えー。どうしてですか?」

「俺が一緒の布団に入るのを許すのは幼女だけだ。BBAお断り」

「むぅ。相変わらずのロリコンさんですね。一年前から全く進歩がないじゃないですか」

「バカを言うな。俺の進化は光より速い。俺は常日頃からロリの道を往きロリを司る紳士として進歩しているんだよ」

「ちょっとハイパーク〇ックアップして過去の海斗くんを真人間に戻してきます」

「無駄だ。過去に戻っても未来から別の俺が駆けつける」

「なにそれちょっと恐いんですけど」


 俺も怖いわ。つーか、そんなことは問題ではない。紳士にとってはこれぐらい朝飯前なのである。問題は、どうして別の部屋にいるはずのこのBBAがこうやって勝手に俺の布団にもぐりこんでいるのか、だ。


「というか海斗くん。何が凄いんですか?」


 きょとんとした顔で、真正面にいる加奈がきいてくる。しかし、この体勢はいかがなものか。同じ布団に潜り込んでいるので、その距離はかなり近い。パジャマから除く胸元も少し見えている。暗くても白い肌で割と映えるんだなーなどとのんきに考えていた。

 しかし目を覚ませ黒野海斗。目の前のこいつはBBAだ。幼女ではない。そりゃ、加奈は可愛いと思う。しかし所詮はBBA。


「はぁ……」

「どうしてこのタイミングでため息をつかれなくちゃならないのでしょうか?」

「そりゃお前、布団に潜り込んできたのがBBAだったらそりゃため息も出るだろう。それに、」

「それに?」

「いくら可愛くてもBBAはBBAだしなー。そりゃ仕方がねーよ」


 くそっ。空から幼女が降ってこないかなぁ! そうすれば落下時の衝撃で両腕の骨が粉砕しようが優しく受け止めてあげるのにぃ!


「か、かわいい、ですか……」

「あ? お前なにぼーっとしてるんだよ」

「か、海斗くんっ! わたし……私って、海斗くんから見て本当に可愛いですか!?」

「だからお前Q&Aはちゃんと成立させろよ」


 まったく、これだからBBAは。


「『まったく、これだからBBAは』とか考えているのはもうこの際スルーしますから、その、私の質問に答えてくださいっ!」


 なんだかやけに必死だったので、俺も、もうこの際同じ布団で一緒に寝ているとかそんなことは今の間は忘れることにして、質問に答えることにした。


「うん。まあ、普通に可愛いとおもうぞ。お前は」


 実際、ルックスは相当物だし、スタイルだって良いことは今一番よく分かっている。状況的に。何しろわざわざ一枚しかない布団にもぐりこんできてぎゅうっと体を密着させてくるのだから。


「た、例えば……ど、どういうところが?」

「んー。そうだなぁ。まあ、見た目からして普通に可愛いし、髪だって綺麗だし、料理だって出来るし、実際お前の手料理美味しいし。まあ、中身はどうしようもないロボオタのモデラーだけど、それもお前の一部だしな。あと、誰にでも優しいし割と器用に何でもこなすし、頑張り屋さんだし。そういうの諸々含めて可愛いと思うぞ」


 だが悲しいことに女という生き物は中学生以上になると、それだけで全てが帳消しになる。ただのBBAという存在に成り果ててしまうのだ。ろりっこ万歳。オール・ハイル・幼女!


「うう……」


 せっかくお望み通りのことをしてやったのに、当のご本人様はもぞもぞと布団で自分の顔を隠していた。だが、同じ布団に入っているので完全には隠しきれない。暗い中で目を開けていたせいか、暗さに目が馴染んでいたおかげか、加奈の顔がほんのり……ではなくまるでリンゴのように真っ赤になっているのが見えた。


「おい、どうしたんだよ。暑いのか?」

「そ、そうじゃありません……ただ、ちょっと、やっぱり……恥ずかしくて」

「あっそ」


 だったら何故わざわざ言ってきたし。


「あ、あの、海斗くんっ」


 話題を逸らそうとしているのか、加奈が布団からちょっと顔を出して、上目使いできいてきた。


「一年前の……勉強会の事を覚えていますか?」

「あー。そういえばあったな。そんなことも」


 あの時の恵は前のテストでは赤点をとって次のテストがやばい恵が泣きついてきたんだっけ。実態は教育ママな母親に対する反抗心からわざと赤点をとったというオチだったけど。ちなみに今の恵の成績は美紗と同じ点数の学年トップである。やれば出来る子ってレベルじゃねーぞ。


「一年生二人のテストの成績は良かったらしいな。二人とも学年上位十人に入ってるってきいたぞ」

「はい。それに最近はみんなで一緒に勉強する機会もないので……一年前が懐かしいです」


 そりゃ、確かになんだかんだでうちの部の部員はみんな勉強が出来るし。

 勉強会もする意味があんまりないんだよな。


「そ、その、一年前の勉強会でも……こうなっていましたよね?」

「そういえばあの時はお前がお話ししようとか言ってきたんだっけか」

「はい。ふふっ。ちゃんと覚えてくれてたんですね」

「そりゃな」


 去年一年間の事は俺の人生の中で、おそらく一番楽しい一年だったと思う。そんな一年の事を忘れるわけがない。忘れたくても忘れようがない。例え某霊長兵器に乗り続けてルーンを吸われ続けたとしても……あ、無理。その条件だと絶対に忘れるわ。


「……そーいえばさ。お前、言ってたよな。『今までこうやって友達と一緒に部活でお喋りしたり、お泊り会をしたりしたことがなかったので、今日はとても楽しかったです』って」

「は、はい」


 ん。どうしたんだ。なんか加奈の様子がちょっと変だぞ。擬音で表すなら「ドキドキ」とか、そういう感じの表情をしている。まあいいや。


「その時のお前の気持ちさ、今ならすげぇよく分かるよ」


 小学校の頃はこんなにも仲の良い友達はいなかったし、中学時代なんか言うまでもない。


「お前が部活を作ろうって言ってくれなかったらさ、俺はきっと今はこんなことしてないと思う。だから今のうちに言っておく。今日は凄く楽しかった。ありがとう」


 今日って言うか日付的には昨日だけど。


「……別に、今お礼を言わなくてもいいじゃないですか」

「なんでだよ」

「だって、これからも今日みたいに楽しいことがたくさんあるはず……ううん。あるんです」

「そうだな……」


 まだ高校生活はあと二年も残っている。いや、二年しか、かな。この先がどうなるか分からないけど、少なくともまだ二年はこのメンバーで過ごせずはずだ。


「あ、あの……海斗くん」


 そろそろ眠るか、と思った所で、まだ何か言いたいことがあるのか加奈が声をかけてきた。


「どうした? つーか、そろそろ眠いから寝たい」

「も、もう少しだけ……一年前の勉強会のこと、なんですけど……もう一度、質問したいことがあるんです」

「なんだよ。さっさと言え」

「海斗くんはどうしようもない変態で紳士でロリコンで犯罪者予備軍のストーカーだということは分かってます」

「思わぬ高評価をありがとうよ」


 なんで俺は同じ布団に入っている相手に罵倒されているんだろう。


「そんな海斗くんは……私には、興味がありませんか?」

「全くない」


 これだけは自信を持って言える。微塵もない。一年前の勉強会の時と同じように、即答である。

 加奈はむぅ、と不満そうに唇を尖らせる。すると、何を思ったのか、一年前と同じようにもそもそと布団の中で動いたかと思うと、寝ころんでいる俺の上に馬乗りになってきた。

 これで完全に、一年前とシチュエーションが同じである。


「お前……そういえばそのパジャマも一年前のやつと同じやつか」

「そ、そうですよっ。今更気が付いたんですか? ちょっと苦しいけど、頑張って着たんですよ?」


 だから胸元のボタンが空いてたのか。納得。


「なんかお前、一年前より駄肉むねがデカくなってね?」

「か、海斗くんのえっち!」

「なんでだよ!?」


 駄肉には微塵も興味がないのだが。


「そ、そういうトコしか見てないんですか!?」

「んなわけあるか!」


 ただこの体勢だと、俺が下から見上げる形になってしまうわけで。そうなってくると必然的に窮屈そうにパジャマに収まっているボリュームのある駄肉がどうしても視界に入る。

 だが、このままだと俺が駄肉にしか興味のない変態になってしまう。俺はロリコンを名乗ろうとも、ただの変態に堕ちたくはない。変態は変態でも、胸を張って幼女を影から見守り、幼女の神聖な御姿を写真やビデオカメラの中に収める変態でありたい。

 そうあるためには、駄肉以外にも一年前との相違点を見つけなければ。


「そうだなぁ……。あとはちょっと、色っぽくなったんじゃねーの」

「ほ、本当ですか?」

「あくまでも俺目線でな」

「それがいいんですよ」


 にこっ、と加奈は笑顔を浮かべる。……ていうか、馬乗りにされたまま何を話してるんだ俺は。


「じゃあ、これも一年前と同じことをききますけど……」


 そう前置きすると、加奈はやや前屈みになって、顔を少しだけ近づけてくる。太ももの感触がパジャマ越しに伝わってきて、一年前もそういえばこんな感じでむちむちしてて柔らかい感触だったなぁ。なんてことを思い出していた。


「……ホントに、私には興味がないんですか?」


「ないけど?」


 即答してやった。


「…………」

「…………」


 何この空気。ていうかそろそろ寝たいんですけど。加奈が「あれー?」みたいな、おかしいこんなはずではなかったとでも言いたげな表情をしている。


「そろそろどいてくれ。馬乗りにされたままだと寝れん」

「……はぁ。進歩がないですねぇ」

「失敬な!」


 これでも俺だって色々と進歩しているんだぞ! PCにある幼女フォルダは、もうフォルダがパート(21)にまで達しているし、そこから厳選して画像をプリントしてラミネート加工した画像を収納した幼女アルバムも、もう二百十冊には到達しているのだ。これが成長として言わず何という。まさに紳士たちの軌跡。


「違いますよ。私の事です」


 加奈は苦笑いを浮かべていた。進歩がない? 加奈が? まあ、確かにこいつは割と初めから何でもできてるチート野郎だけど。


「――――でも、最後にはちゃんと勇気を出します」


「は? お前、何を言って――――」


 るんだ。と、言い切ることは出来なかった。そのままどんどん前屈みになってきた加奈が止まる気配を見せることはなく、そのまま……あろうことか、俺の頬に、そっとキスをしてきた。唇の温かい感触が額にじんわりと伝わってくる。


「……おやすみなさいっ」


 勝手に人の頬にキスをした後、加奈はそそくさと馬乗りを止めて布団をすっぽりと被ると、そのまま無理やり眠りについた。

 俺はただ一人、


「俺の初ほっぺにちゅーは幼女に捧げると決めていたのにッ……! 畜生……畜生ッ!」


 血の涙を流して悔しがっていた。




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