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俺は/私は オタク友達がほしいっ!  作者: 左リュウ
SS④ なんちゃってDQNと元気っ娘
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ifストーリー 恵ルート④

今回の話は蛇足です。


砂糖を吐きながら書きました(´・ω・`)


 ねんがんの カノジョをてにいれたぞ!

 と、喜んではみたものの、実際のところ、やることといったら普段とはあまり変わらなかった。周りが余計に騒がしくなりそうなので、とりあえず学校の連中には俺たちの関係は伏せておくことにした。正人を含めた本当に親しい友達には知らせたけど。あ、でも本当に親しい友達って高校だと正人か葉山ぐらいしかいないや。

 夏休みが終わり、季節は秋に変わり、そして冬に変わった。二人きりの時間を作れるのは、下校の時と放課後、あとは休日ぐらいだ。学園の中でおおっぴらに会うことが出来ない以上、必然とこうなってしまう。やはり、こういった経験が初めてだからだろうか。授業を受けている間、授業内容を頭の中に叩き込みながらも、その傍らで俺は恵のことを考えていた。休み時間になると授業内容を頭の中に詰め込む必要がないので完全に恵のことで頭がいっぱいになる。ぼーっとして窓の外を眺めることぐらいしか出来なくなる。そうしていると、前の席に座っている正人がぐるりと俺の方に向きを変えてきた。


「おう、リア充。朝からぼーっとしてどうした」

「リア充にはリア充の悩みがあるんだよ。察しろ」

「ほう。ではその悩みとは?」

「恵のことで頭がいっぱい過ぎて辛い」

「そうか。なら、爆発すればいいんじゃないか?」

「フッ。勝利者となった今では、その言葉なんて負け犬の遠吠えにきこえるぜ。勝てばよかろうなのだ」

「くっ……何も言い返せない自分が憎い……ッ!」


 勝った! 彼女いない歴=年齢編、完ッ!


 ここ最近の俺の楽しみといえば、下校時刻と放課後だった。今までもはやく放課後にならないかなと放課後に対する気持ちはあったわけだが、今はその意味も違ってくる。

 帰りのHRも終わって解散になると、俺はぞろぞろと廊下を歩く生徒たちに混じって一人、速足になっていた。下校、といっても校門から出てすぐに一緒に歩くわけにもいかないので、帰り道の途中にある、人けのない公園が集合場所になっていた。俺はそこに着くと、適当なベンチに腰をおろして恵を待つ。俺が公園についてから数分後。同じように少し速足になっていた恵が公園にたどりついた。俺と同じように速足になってくれたことに、かすかな喜びを感じる。


「お待たせ、かいくん」

「……ん。じゃあ、帰るか」


 合流した後は、互いに手をつないで帰りの道を歩く。心なしか、ゆっくりの速度で。互いに指をからめあって繋ぐ。手を通してお互いの体温を交換しあっているみたいだ。手袋はしていないけど、温かかった。

 こうやって歩いていると、自然と黙ったままになる。恥ずかしくて。でも幸せだ。ただこうして一緒に歩いているだけで幸せだ。

 恥ずかしさからか、俺も恵もやや俯きがちになる。


「今日は……どっちの家に行く?」


 俺は、いつものように、そしていつものタイミングで提案を持ちかける。最近は、下校時にどちらかの家に寄って、放課後を過ごしている。俺は今のところ一人暮らしだし、恵の母親は忙しくてあまり家にはいない。


「んー。昨日はかいくんの家だったから、今日は私の家に来る?」

「じゃあ、そうするか」

「うんっ」


 笑顔で返事をした恵は嬉しそうな笑みを浮かべていた。その表情にすら心臓がドキンとはねる。こういうのは、惚れた弱みというやつなのだろうか。わからん。

 恵の家は夏休みの間に散々、通い詰めたけど、それでもいまだに緊張する。自分の家とは違う香りが漂ってくるのだ。


「ただいまー。しろちゃん」


 恵が家に帰ってくるや否や、さっそく牧原家の新しい家族が出迎えてくれる。子猫たんである。

 あの時の子猫たんの名前は『しろ』にしたらしい。安直だなぁとは思ったが、変に捻ってDQNネームになるよりはマシだ。あの時の薄汚れていた毛並みは、今では驚きの白さである。かがくのちからってスゲー!

 子猫たんこと、しろはみゃーんと可愛らしく鳴くと恵の足元にすり寄ってきてすりすりと頬ずりしてくる。そして、どうやら嬉しいことに俺のことも覚えてくれていたのか、俺の足元にも駆け寄ってきてすりすりと頬ずりしてくれた。か、可愛い……!

 その後、俺は恵と一緒にしろを連れて二階に上がった。恵の部屋に入るのは、この家に入ることよりも、もっと緊張する。しかも、やはりというか何というか、いまだに慣れない。

 この家の家族であるしろは、しゅたっ、と俺の腕から軽やかに飛び降りると慣れた様子で恵の部屋に入って行った。俺にもその余裕が欲しい。

 恵は部屋に入ると、エアコンをつけて、鞄を置き、ブレザーを脱ぐ。エアコンが効いてくると邪魔になるからだろう。あと、シワにもなる。俺も恵にならって制服の上を脱いだ。


 二人で床に隣り合わせに座る。ここから特にこれといって何かをするわけでもない。せいぜい、授業で出された課題ぐらいだ。

 それを一緒に片づけていく。俺も恵もそう成績は悪い方ではないし、いくら恵のことを考えていたといっても授業の内容は頭の中に入っている。課題は順調に終わりつつある。が、俺のペースは恵に比べるとやや遅い。

 そりゃ、隣に恵がぴたっ、とくっついた状態で課題をしてもそうなる。何しろブレザーを脱いでしまったので、シャツになってしまった。シャツになると、スタイルの良い恵の体の露出が少し増える。男ならこの状況に緊張しても当然だと思わないか。


「終わったぁ~」


 いつも通り、恵は先に課題を終わらせた。ちゃかちゃかとノートや筆記用具を鞄にしまいこむ。さりげなく明日の授業に必要なものを鞄に詰め込んでいる。


「よーし、これでかいくんとらぶらぶできるねっ」

「いや待て。俺はまだ課題が終わっていない」


 らぶらぶという単語に更に緊張が走る。やばい。なんだこれ。顔が熱い。暖房がききすぎているのだろうか。そんなことを考えつつも、ノートにシャーペンを走らせていく。あと少し。

 そう思ったところで、するりと二本の腕が首をまわして、更に背中に柔らかい感触が。


「ぎゅ~っ」


 恵が無遠慮にそのスタイルのおよろしい体を押し当てるように、背後から抱きついてきた。その顔が満面の笑みを浮かべていることぐらい、見なくてもわかる。


「ちょっ、お、俺は今、課題をだな……」

「かいくん、遅いよ~。この前のテスト、私より上だったじゃん」

「つっても一つだけだろうが。それになぁ、男にはいろいろと事情があるんだよ」


 朝の正人との会話を思い出す。そういえば、あった。悩み。

 恵は部屋で二人っきりになると割と無遠慮にぎゅっと抱きついてきたりする。それが悩みといえば悩みだ。贅沢な悩みなのだろうが、これでも必死に理性を保っているのだ。男はつらいよ。


「じじょーって?」

「えーっと……」

「答えなきゃ、このままずっとぎゅーってしちゃうよ?」

「そりゃ魅力的な提案だことで」


 恵は小柄の割に意外と胸は大きいということを改めて実感する。いやいやそんなんじゃなくてだな。まずは目の前の課題を終わらせないと。


「あ、かいくんそこ間違ってるよ」

「…………お、おう」


 ミスった。ああ、くそっ。集中できん。恵はいつも、課題がはやく終わるとこうやってちょっかいを出してくる。だけど、それは決まって俺の課題があとほんのもう少し終わるぐらいの時だけだ。本当に集中したいとき、勉強したいときはこうやってちょっかいを出してこない。最低限のラインだけは守っているのだ。だからこそ怒りづらいし、そもそも怒るほどのことでもない。なにしろこの量なら家に帰ってからちょこっとすれば終わる。


「集中できん……」

「んー? なんでなんで?」


 恵がにこにことしながら、明らかに分かっていてきいてくる。くそっ。たまには反撃してやる。


「そりゃ、恵がこんなことをしてくるからだろ?」

「ふにゃっ!?」


 俺は軽く恵の腕を解くと、今度は彼女の小柄な体を軽々と持ち上げて、立ち上がる。そのままベッドに座って、膝の上に恵を座らせて、さきほどとは逆の体勢。俺が、背後から恵を抱きしめているような形にした。


「ううう~……なに今の」

「まあ、これぐらいは軽い軽い」


 ちなみに、しばらくこの状態から解放してやるつもりはない。何しろこっちは課題を邪魔されたのだから、それ相応の報いは受けてもらおう。


「は、離してよ~」

「駄目だ」


 柔らかい体を抱きしめながら、頭をそっと撫でる。すると恵は珍しくされるがままになって、大人しい。そうしていると、緊張感が一気に吹き飛んだような気がした。もうかなり自然にいられる。


「なでなでしないでよぉ」

「やだ」

「うぅ~……」

「つーか、なんで撫でちゃいけないんだよ」

「なんか……恥ずかしいから」

「今更だなぁ」


 思わず苦笑が漏れる。そっちから言ってきておいて、今更何をいってるんだこいつは。

 ふと、何を思ったのか、恵に対して試しに耳元をで囁いてみる。


「ひゃぅっ」

「ん。どうしたんだ?」

「耳元で囁かれるとなんか……くすぐったくて……」

「そうか」

「ううっ……かいくんのいじわる」


 普段こっちのことを引っ掻き回している恵を困らせるのはなかなか面白いな。

 しばらくした後、落ち着いたところでささっと課題を終わらせた。そうすると、本格的にやることがなくなってくるので、あとは二人でまったりと時間まで部屋で一緒に過ごすだけになる。


「かいくん」

「ん。どした」

「なでなでして、なでなで」

「お前……さっきはするなって言ってただろ」

「そ、そーだけど……き、気持ちよかったから……」

「はいはい」


 恵さまのご命令通りに頭を撫でてやると、恵は身を委ねるかのように頭を俺の肩にもたれかかってきた。その表情が本当に気持ちよさそうに、にこやかになっていく。


「かいくん、かいくん」

「今度はなんだ」

「ちゅーして?」

「……はいはい」


 我が儘なお姫様と付き合うと大変だな、と苦笑しつつ、彼女と唇を重ねる。そっと触れるだけのキス。


「もっと……して?」


 その言葉に応じるように、今度は長く。互いの顔を離して、目を開けてみると、そこには顔を真っ赤にした恵がいた。自分から誘ってくるくせに、いまだにキスをした後はこんな風に恥ずかしがる。それが分かっていながら、俺は少し彼女をからかってみた。


「顔が赤いけど、熱でもあるのか?」

「もうっ。わかってるくせに」

「ごめんごめん」


 あんまりしつこくからかうと本格的に拗ねてしまうので、あっさりと切り上げる。しかし、恵はそれでもその真っ赤な顔を隠すためか、今度は恵の方からまた俺の抱きついて、俺の胸に顔を埋めてくる。その時に、バランスを崩しそうになって、慌ててバランスを支えようとするが……変に力を加えてしまったせいで、今度は恵の方がバランスを崩してしまった。

 そのまま、ぼすっ、とベッドに二人揃って倒れこむ。俺はかろうじて腕で恵の上に倒れこむようなことだけは阻止したものの、形的には完全に俺が恵を押し倒してしまったような形になっていた。今、俺の両手は彼女の体の左右外側にある。恵はきょとんとした顔をしていて、おそらく俺も同じような顔をしていた。だが、なかなかその体勢を元に戻すことは出来なかった。

 まるで時間が静止したように、俺たちは互いを見つめ合っていた。この時、恵は何を考えていたのだろうか。俺には分からない。だが、俺の頭の中には色々なことがぐるぐると回っていた。さっきも言ったが、俺だって男の子だ。健全な高校生男児なのだ。可愛い彼女とこんなシチュエーションになって、そりゃ色々と考えてしまうことはある。


「か、かいくん……」


 ドキドキドキドキと心臓の鼓動がうるさい。だけどその中でも、恵の声だけはハッキリと聞こえていた。恵の髪は僅かに乱れていた。だが、今はそれすらも色っぽい。白くて健康的な太もも。顔をほのかに赤くし、仰向けに寝転がっていてもはっきりと形のわかるその小柄にしては豊満な胸。何も思わないはずがない。彼女はただただ俺の目を見ていた。俺も、彼女の瞳に吸い込まれそうになる。


「もういっかい……ちゅー、する?」


 このままだと色々と危ないような気がしたが、その魅力的な提案を断れるはずもなく、自然と彼女の唇に自分の唇を重ねていた。恵の体温が唇越しに伝わってくる。が、このまま本能に任せて行動していいはずもなく。俺は精いっぱいの理性を働かせて、彼女の隣に倒れこんだ。……キツいな。色々と。

 隣を見ると、僅かにむすっとした顔の恵がいた。


「なんか、不満そうだな」

「……かいくんのヘタレ」


 グサッ、とその言葉が俺の脳天にクリティカルヒットした。


「お、お前な……俺がどれだけの精神力を振り絞ったと思ってるんだよ。もう少し自分の体を大事にしろよ」

「わ、私は……かいくんになら、何されても良いよ……?」


 頼むからそういうこというのはやめてくれよ。なんだかもう、色々と壊れそうになる。

 俺はそんな感情を押し殺すように、恵の手を握る。彼女もそれにこたえるように、指を絡めてくる。一つのベッドの上で、俺たちは隣同士に寝転がっていた。


「私、幸せ」


 唐突に、恵がその言葉と共に笑みを漏らした。ふにゃっとした、俺だけが知っている恵の表情。


「パパが死んでから私、心のどこかにぽっかり穴が開いた気分だったんだ……でも、それをかいくんが埋めてくれた。だから私、いまは心の底から幸せ」

「まだ俺たちは高校生だぞ。心の底から幸せになるには早すぎるだろ」

「うんっ。だからかいくんは、これからもっともっと私を幸せにしてくれるんでしょ?」

「よく知ってるな」

「ふふっ。私はかいくんの恋人さんだからねっ。でもね、かいくん。私も、かいくんをもっともっと幸せにしてあげる」


 ――――かいくんは今、幸せ?


 彼女の言葉に、俺の答えはもう既に決まっていた。

 それを口にすると、恵がまたぎゅっと抱きついてくる。それに応えるように。そして離れないように、俺も彼女を抱きしめた。





かいくんが鋼鉄のメンタルをもっていなかったら今頃ノクターン行きになってたという展開。



体のあらゆる場所がリア充爆発しろと悲鳴をあげている……!(´・ω・`)

だけど持ってくれ……あと少し!(´・ω・`)


次から本編に戻ります。


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