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俺は/私は オタク友達がほしいっ!  作者: 左リュウ
第2部「2年生編」:第6章 新入生と新入部員
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第62話 イベント

 あんなにも適当に決まったイベントなのに、開催はあっという間だった。すぐに放課後の体育館が手配され、ギャラリーも三年生を中心にしてすぐに集まった。大丈夫か三年生。お前らは今年から受験生だろう。体育館の中央に集まった俺と文研部一年生二人は、風紀委員の荒島を中心とした選抜メンバーと向かい合い、その中央。サッカーでいうなら審判のようなポジションに華城先輩はいた。そして、その隣には新生徒会長である楠木南美先輩もいる。

 そして俺たちの背後。体育館の壁際に急きょ設置されたチーム応援スペースには文研部二年生勢が勢ぞろいしていた。


「では、さっそくイベントをはじめようじゃないか。ルールは単純。生徒会側が用意したルールに則ってゲームをし、互いの得点を競い合う。三本勝負で、二本選手したチームが勝ちだ」

「……ただし、三本目の勝負は既に決まってる」


 南美生徒会長が静かに言葉を紡いだ。


「……三本目の勝負は、両チーム大将によるボクシングゲーム」

「ボクシングゲーム?」


 なんだそれ。ただのボクシングとは違うのか。


「……それだと、ボクシング部である向こうのチームの大将が有利」


 南帆が、きっ、と自身の姉である南美先輩を睨み付ける。だが、南美先輩はそれを軽くかわし――――そして南帆がそういってくることも予想していたのだろう。クールな無表情を保ったまま、


「……それはちゃんと考慮してる。ルールは、相手の頭の上にあるバルーンを割れば勝ち。そして、文研部側の大将は、生徒会側が用意した武器の使用が認められてる。ただし、風紀委員側は武器の使用はなし」


 ああ、なるほど。一応、その辺はバランスをとってるんだな。武器なんていらないけど。


「もうだいたいわかったんで、さっさと試合を始めましょう。はやく帰りたいんですけど」

「……わかった」


 南美先輩は静かに頷くと、傍にいた正人に二言、三言、何かを告げる。すると、正人が走って体育館の舞台上に駆け込んでいった。

 そして、華城先輩が南美先輩から引き継いで、ルール確認を行う。


「今回は名目上、『新入生に対する歓迎イベント』となっている。よって、文研部側からも風紀委員側からも大将以外は一年生を出してもらおう」


 というわけなので、俺たちは予め決めておいた雨宮小春を出す。


「いけっ、雨宮小春。君に決めた!」

「はいっ……じゃないですよ! なんで私がポ○モン扱いなんですか!?」


 いや、何となく。

 そうこうしている間に生徒会側も準備が終わったらしい。体育館の壇上には巨大スクリーンが展開されていた。そして、その下に一台のゲーム機が置いてある。ギャラリーが何事なのかと騒ぎ始めたところで、正人がマイクを持って説明し始めた。俺は、壁際にあるチームの応援席に腰を下ろす。


「えーっと、今回の対決は今朝、急きょ決まったことらしいので、時間がないので勝負方法は簡単にしておきました。今回の第一戦と第二戦の対決ルールは、ゲーム対決です。生徒会側が用意したゲームを使って、互いのチームで対戦してもらいます。これなら、男女の力の差に関係ない対決が実現できます」


 チームの応援席に座っている俺の隣で南帆がガタッと立ち上がるのが分かった。「……どうして私は一年生じゃないの……」無理すんなBBA。第一、若返りの方法があるなら俺が真っ先に使って迷子を装って幼稚園か小学校に潜入してるしな。


「ゲームですか。タイトルは?」


 雨宮小春がさっそくチェックする。あー。こいつ、ゲームとかやりこんでそうだなぁ。


「えーっと、練習なしでもいけるように出来るだけメジャーでみんながやっているような物を選びました。『少林寺ファイター』です」


 少林寺ファイターとは、最近爆発的ヒットを記録した格ゲーである。実際に存在する少林寺拳法の動きをゲーム的にアレンジして、派手なエフェクトやモーションを追加して撃つことが出来る。言ってしまえば、少林寺拳法版テ○プリとかそんな感じである。なので、相手をKOすれば勝ちだ。

 風紀委員側が何やら盛り上がっている。やはりそこは男の子。こういったゲームはみんなで遊んで盛り上がっているらしい。


「よーし、私このゲーム、けっこうやりこんでるんですよ。絶対に勝ちますからね、先輩!」

「おー。まあ、勝敗はどっちでも……いやまて。むしろ負けた方が俺にとっては都合がいいな」


 そもそも、この勝負ってどうやって決まったんだっけ。華城先輩たちの重傷なデュエル脳のおかげでこんなことになってしまったのだが、ただ単に荒島が俺の実力を認めないというだけで、俺としてはそれでも普通に構わないのだ。そうだ。さっさと降参して華城先輩の麗しき幼女時代の写真だけをいただければ……、


「ああ、そうそう海斗くん。試合に勝たないとあの写真の件はなかったことになるから。何しろ、今日は風紀委員の仕事を見学するどころじゃなくなってしまったからね」

「雨宮小春ぅううううううううううう! 絶対に勝てよ! 絶対だぞ!」

「先輩!?」


 困る。写真の件がなかったことになるのは本当に困る。

 風紀委員側が、自信満々といった雰囲気で、一年生を一人送り出した。風紀委員は既に一年生を確保しているというのに、生徒会ときたら……。

 ゲーム機の前に立って、コントローラーを握る。すると、雨宮小春の目つきがきりっとした、鋭い表情になった。確かにこのゲームをやりこんでいるようだ。気迫を感じる。


「それでは、第一試合……」


 バーン。

 と、不意に、体育館の扉が開いた。そのままスーツに身を固めたおじさんが入ってくると、雨宮小春のもとまで駆け寄ってくる。


「ま、マネージャーさん?」


 雨宮小春が突然の来客に驚いていると、そのマネージャーという男が雨宮小春に息を切らしながら事を告げる。


「え、今から特番の収録? いや、でも今日はスケジュールが空いていたはずじゃ……え、予定が変わった? いやでも、今から大切な対決が……」


 結局、そのマネージャーとやらに雨宮小春は連れ去られてしまった。当然のことながら、まさかまさかの結果に体育館は微妙な雰囲気に包まれていた。マネージャーさんも、芸能関係者ならもう少し空気というものを読んでほしかった。


 第一戦 チーム文研部:不戦敗 チーム風紀委員:不戦勝


 チーム文研部:0勝一敗 チーム風紀委員:一勝0敗


 仕切り直しと言うことで、すぐに第二戦が始まった。今度は楠木南央である。向こうのチーム風紀委員側からは、男子生徒の一年生が出てきた。

 その男子生徒が出てきた瞬間に、ギャラリーの一部がざわめきだした。


「おい……あいつ、ゲーム雑誌で見たことあるぞ」

「確か、『少林寺ファイター』の全国大会で優勝してたよな」

「うわぁ。あの子、可哀相だな」

「こりゃ、一方的な試合展開になるぞ……」


 マジかよ……。これは、雨宮小春が一勝できなかったことが悔やまれるな。俺はとりあえず、隣にいる南帆にきいてみることにした。


「なあ、あいつそんなにも強いのか?」

「……私は家庭版しかやったことないし、大会にも出てないからわからないけど……でも、確かに雑誌で何度かあの一年生のことを見たことがある」

「ちなみにお前と対戦した場合はどっちが勝つ?」

「……私。あの一年生の全国大会決勝のプレイ動画を見てみたけど、雑魚にも程があるレベル」

「お前、ゲームの事になると辛辣になるよな……」


 楠木南央はというと、傍から見てもガチガチに緊張しているのが分かる。大丈夫か。この試合には華城先輩の幼女時代の写真がかかっているんだぞ。


「楠木南央って、普段からゲームはするのか?」

「……普段から私のサンドバ……げふんげふん。練習相手や対戦相手になってもらってる」

「お前いまサンドバッグって言おうとしたよなぁ!?」

「……気のせい。南央は私の良いカモ……じゃなくて練習相手」

「練習相手と書いて練習相手カモと読むんですねわかります」


 酷い姉もいたもんだ。うちの姉ちゃんなんかそんなことしないのに。そういえば最近、姉ちゃんあんまり家に帰ってこないな。どうしたんだろう。連絡も一昨日にあったきり、かかってこないし。心配だなぁ。


「南央ちゃん、かなり緊張してますね」

「うーん。なおっち、もっと気楽にやればいいのに」

「そうですね。別に負けても特にこれといったリスクもないのに」

「何か、私たちにしてあげられることってないのかな……」


 おい。リスクとかありまくりじゃねーか。こっちは幼女の写真がかかってるんだぞ。そうだ。一昨日以降、まったく連絡のない姉ちゃんも気になるけど、今はとりあえず目先の幼女の写真だ。


「おーい、楠木南央」

「は、はいっ!?」

「こっち来てみ」


 手招きしていると、楠木南央がやってきた。まだ緊張しているようだ。肩が強張っている。俺はそんな楠木南央のほっぺを人差し指でついてみた


「ていっ」

「!?」


 指は思ったよりも簡単に、楠木南央の頬にくいこんだ。感触としては、柔らかくてぷにぷにする。それに温かい。つっついていると、どんどん頬が桜色に染まっていく。おお、なんだこれ面白い。そして、現状把握が済んだのか、楠木南央がばっ、と飛び退くと、俺の指から頬も離れてしまった。残念。面白かったのに。


「なっ、なななななななななな!? せ、せせせせ先輩、何するんですか!?」

「いや、緊張しているからほぐしてやろうと思って」

「だ、だからってなんでほっぺをつっついたんですか!?」

「柔らかそうだなーって思って」

「柔らかそうって……!?」

「つーかさ。俺だって好きでお前の頬をつついたわけじゃない。本当ならば幼女の頬をつつきたいんだ。そして『むー。やめてよー』ってちょっと怒られたところをなでなでしてあげて『こどもあつかいしないでっ』って怒られて……くうううううううう! たまんねぇなオイ! 夢が広がるな!」


 なんという夢の世界。くそっ。本当にどうして俺の元に幼女が降ってこないんだ。

 空から美少女なんて降ってこなくていい。そんなもんいらん。だからその代わりに空から美幼女が降ってきてほしい。


「お姉ちゃん。海斗先輩っていつもこうなの?」

「……気にしないで。いずれ慣れる」

「あんまり慣れたくないんだけど……」


 はぁ、と楠木南央がため息をついた。


「……まあ、一応、緊張感は解れたと思います。ありがとうございます、先輩」

「え? あ、そう」


 途中から夢の世界にトリップしてた……。ここは適当に合わせておこう。


「まったく。適当に合わせようとしているのがみえみえですね」

「面目次第もございません……」


 あれ? おかしいな。なんで俺、後輩に説教されているような雰囲気になっているんだろう。


「まあいいです。それじゃ、行ってきますね」

「おう。頑張れ。絶対勝てよ」

「絶対は保障できませんが……ベストは尽くします」


 そう言い残し、楠木南央は体育館のステージに向かって歩いて行った。


「ところで、南帆」

「……なに?」

「実際のところ、そして真面目な話……南央って普段からどれぐらいゲームはやりこんでるんだ?」

「……南央は基本的に私やお姉ちゃんとしかゲームしない。ゲーセンに行っても、私かお姉ちゃんのプレイを眺めているだけ」

「おいおい大丈夫かよ」

「……わからない」


 俺たちの不安をよそに、ゲームはスタートした。

 相手の風紀委員側のキャラクターはいわゆる強キャラというやつだった。手段を選ばずに勝ちをとりに来ているようだ。まだ入学して間もない一年生だからこそ、プレッシャーもそれなりにあるのだろう。

 対する楠木南央が使うのは、初心者が使うような、バランスはとれているものの、決め手にやや欠けるキャラだ。まずは相手の強キャラが動いた。さっそくコンボをしかけようとしてくる。だが、楠木南央のキャラはそのコンボを鮮やかにかわすと、


「えいっ」

『天地拳! 天地拳! 龍王拳りゅううおうけん! 天地拳、三倍だあああああああああああああああああああ!』


 どががががーんという、実在する少林寺拳法のモーションを参考にしている割に派手すぎる動きとエフェクトで(というか名前だけで、実際の少林寺拳法の動きをガン無視していた。大丈夫かこのゲーム。スーパー少林寺拳法にしてくださいとか言われないのか。つーか名前がかっこいいからそのまま使っているだけだろ!)、相手の強キャラが吹き飛んだ。その後も、楠木南央のキャラは相手の強キャラに対して一方的に虐殺を続けた。

 あっという間に風紀委員側のキャラクターの体力ゲージは0になり、KO。瞬殺である。だが、次のラウンドはもっと早かった。

 相手の風紀委員側の生徒は魂が抜けたかのようにぼーっと、燃え尽きている。ただブツブツと「な、何もさせてもらえなかった……バカな……こんなやつ、全国大会にだって……」だのなんだの意味不明な供述をしている。

 凍り付いたかのように静かになった体育館。楠木南央はただ一言。


「あ、なんだ。お姉ちゃんより全然弱いですねっ! これなら私でも余裕で勝てますっ」


 物凄い笑顔だった。


「…………」

「…………」

「なあ、南帆」

「……なに?」

「よかったな。お前の妹に対するサンドバッグは無駄じゃなかったみたいだぞ」

「……うん」


 どうやらあの妹、普段からあの姉たちと対戦しまくっているおかげで物凄い実力をみにつけてしまっているらしい。ええい、楠木家の三姉妹は化け物か!


 第二戦 チーム文研部:完封勝利 チーム風紀委員:精神崩壊


 チーム文研部:一勝一敗 チーム風紀委員:一勝一敗


 

ちなみに少林寺拳法をやっている友達から天地拳と龍王拳なる形?があるときいて「やだなにその名前かっこい」と思って今回の話に使わせていただきました。(※ただし、実際の動きなどは完全に無視した演出)

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