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俺は/私は オタク友達がほしいっ!  作者: 左リュウ
第2部「2年生編」:第6章 新入生と新入部員
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第61話 風紀委員

感想欄にてコメントをいただきましたので、「楠木南央美」の名前を「楠木南央」に変更しました。

「風紀委員にスカウト?」


 華城先輩から突然、持ちかけられた提案は、まさに爆弾とも言うべき代物だった。俺は、目の前にいるのが先輩であるにも関わらず、何こいつ頭わいてんじゃねーの、と思った。


「先輩、失礼だとは思いますが、このロリコンに風紀委員は無理です。むしろ風紀が乱れます」

「おいこらそこのシスコン」


 美羽さん、出来ればもう少し言葉をオブラートに包んでくれませんかね。もう今更ロリコンは否定しないけど。いや、むしろ俺はロリコンと言う名の紳士であることを誇りに思う。そう、俺たちは紳士であり、騎士なのだ。幼女を守る、誇り高き騎士。ナイトオブスピアー。


「えっと……そもそも、華城先輩はどうして海斗くんを風紀委員に?」


 姉とは違って、まともな美紗がごもっともなことをきいてくれた。隣の姉にも見習ってほしいものだ。


「去年の文化祭で、君があの二人組を鎮圧させた手際に一目惚れしてしまってね。新学年になって風紀委員も次の新メンバーを探さなきゃならなくなっていたところだし、君に声をかけてみた、というわけさ」

「はぁ……そっすか」


 去年の文化祭の、あの時か。それはまた微妙なことを思い出させる。とはいえ、あの一件のおかげで俺は前に一歩、進むことが出来たわけなんだけども。


「つーか、華城先輩は俺の学園内での評価は知っているでしょう?」


 ていうかそもそも、どうしてこの先輩は俺のことを知っているんだ? 前に会った時も、俺の正体というか、本心を知っていたふうだったが。


「だからこそ、だよ。風紀委員に入って真面目なところを見せてやれば、君の学内での評価も風向きも変わるかもしれない。それに、無理に入ってくれとは言わない。まずは見学からでも構わない」

「そうですか。せっかくですけど、俺は別にそこまで必死になって自分の評価を向上させようとは思いません。ただ、俺のことを知ってくれている人が、少しでもいてくれていますから。そもそも、今の現状は自業自得ですしね」

「海斗くん……」


 加奈の感慨深そうな声が漏れた。

 まあ、こいつらのおかげで俺は色々と変わることが出来たというか。こいつらだけでも、分かってくれていれば俺はそれでいい。


「そうか。ちなみに、ここに私の幼少期の写真があるのだが……」

「まあ、何事も挑戦ですよね。で、いつから風紀委員の見学をさせてくれるんですか? 俺は今すぐでもOKですよ! HAHAHA!」


 仕方がないよね。だって幼女の写真だもの。


「海斗くん……」

「かいくん……ここでそう出る?」

「…………変態」

「最低ですねこのロリコン」

「あはは……」


 BBA共がなんと言おうと、そして蔑んだような目で俺を見ようと、俺は構わない。すべては幼女の写真のため。そのためならどんなことでもしてみせよう。例え火の中だろうが、水の中だろうが、草の中だろうが、森の中だろうが、土の中だろうが、雲の中だろうが、BBAのスカートの中だろうが、幼女の写真一枚あれば、俺はどんな死地にだって赴くことが出来る。


「そうか。それは私としても嬉しいよ。しかも、今すぐにとはとてもやる気がありそうだ」

「ええ、勿論ですよ! で、幼女の写真は?」

「まあ、そう焦らないでくれたまえ。それは成功報酬と行こうじゃないか」

「は? なんだとこの………………………………ええ。そうですね。俺もそれが良いと思います」

「……今、BBAって言おうとした」


 南帆さんや。俺には何のことだかまったく分かりませんな。


「ふむ。では、本人のやる気もあることだし、後に連絡をするよ」


 そういうと、くるりと長い黒髪を振りまわして華麗にターンすると、華城先輩はスタスタと歩いて行った。俺はジトッとした目をBBA共に向けられながら、まだ見ぬ幼女の写真に思いを馳せていた。

 連絡は、その日の夜にメールで来た。……いや、待て。


「ちょっと待て! 俺あの人にアドレス教えてねーぞ!?」


 素直に怖いわ! 思わず、自分の部屋で一人で叫んでしまった。

 どうして俺のアドレスを知っているのか謎だ。今度、きいてみよう。


 ☆


 次の日。

 朝のHRが始まる一時間前。

 俺は、華城先輩の言うとおり風紀委員室の前を訪れていた。なぜか、新入部員である雨宮小春と楠木南央美を含めるBBA共がついてきたけど。流石に少し緊張して、深呼吸してからノックをすること数度。


「やあ、待ってたよ。とにかく、入ってくれたまえ」


 華城先輩に出迎えられ、俺たちは風紀委員室へと初めて足を踏み入れた。俺はこの学園に入って風紀委員室、なんてものを初めて知った。ていうか風紀委員って、生徒会室みたいな部屋を与えられるってことは体感ではだが……珍しいことだと思う。

 この学園は、一クラス四十人、それが一学年につき八クラス。全校生徒数は九百人以上にも及ぶ。

 それだけの人数がいる学園ともなると、個性豊かな生徒も多い。例えば、ちょっとはっちゃけてしまうような生徒とか。また、部活動の予算は戦争の如く奪い合いを行っているし、特に運動部になると部長同士の対立もあったりする。

 基本的には平和な学園ではあるが、運動部には向上心の強い生徒が多く、また、互いの部で成績を競い合うことでその能力の向上を促している面もあるので、たまに生徒同士の喧嘩というか、乱闘まがいのことが怒ったりする。

 それを抑えるのが風紀委員の役目だ。

 そんな風紀委員には、運動部所属の生徒も多いし、運動部に所属していなくても、腕っぷしに自信のある生徒も所属している。たまにDQNみたいなのも混じっているというが、現在は華城先輩が、学園内で騒ぎを起こしたDQN(なんで頭の良いDQNっているんだろうね)を叩きのめし、逆に叩きのめされたDQNが華城先輩に忠誠を誓い、今では立派なスポーツマンとして、まっとうな汗を流して青春を送っている……というやつらも多いらしい。華城先輩、あんた何者なんだよ。マジで。

 まあともかく、だからこそだろうかは知らないが、風紀委員は生徒会と同等に近い権力を与えられており、待遇も生徒会とほぼ同質なのだろう。一番地位が高いのは生徒会長で間違いないが。

 案内された風紀委員室の中は、生徒会室とあまり変わらなかった。だが、部屋に入った瞬間に風紀委員室にいる生徒たちが一斉にこちらに注意を向けたのには気が付いた。

 思えば、学園の美少女達が一気にやってきたんだもんな。当然か。しかも、噂の大人気アイドル様までいるし。

 風紀委員室の中にいた生徒は、男子が多かったが、驚くべきことに女子も割といた。だが、男子生徒はどいつもこいつも目つきが悪い。ガタイだって割としっかりしている。


「うう……先輩……」


 雨宮小春が俺の背中に隠れるようにして、きゅっ、と制服の背中をつまんできた。


『………………チッ……』


 おい誰だ今、舌打ちしたの。


「わ、私も……」


 雨宮小春に習うようにして、楠木南央も同じように俺の背中に隠れるようにして、制服の背中をつまんでくる。


『………………クソが……ッ!』


 幻聴が聞こえてきた。……きっと幻聴だろう。幻聴だと信じたい。

 つーか、男子共は俺の苦労をわかっていない。この背中に隠れていてほしいのは、BBA二人ではなく、幼女なのだ。


「ふむ。ではみんな、少しいいかな」


 華城先輩がそういった瞬間。風紀委員室にいる生徒たちが全員、一斉に起立した。爪先を開く角度も、両手の指もピンとして、親指を閉じている。どこの軍隊だよここ。華城先輩、こいつらに何を仕込んでいるんだ?


「……まったく。いつも言っているが、そんなにもかしこまらなくてもいいのだが?」

『いえっ! 私たちにはそんなこと、恐れ多くてできません! 総帥!』

『総帥!?』


 文研部二年生勢から一斉にツッコミがあがった。

 いやいやいや。総帥て。総帥て!


「だからその恥ずかしいあだ名はやめてくれ。はぁ……すまないね。急に驚かせてしまったみたいで」


 うん。めっちゃ驚いたわ。


「とにかく、みんな。今日は私がスカウトした黒野海斗くんと、彼の付き添いの彼女たちが一日、風紀委員の仕事を見学する。よろしく頼むぞ」


 その瞬間。


「…………ッ、名前で……」

「……?」


 なんだ。いや、それよりも。

 ざわっ、と空気が変わった。そしてそのざわめきは次第に大きくなっていく。なんだなんだ。


「バカな……あんなただの問題児を、総帥自らがスカウトなされただと?」

「そもそも総帥はなぜ、あの問題児を今まで放置していたんだ?」

「わからん……いつものことだが、今回ばかりは総帥が何をなされたいのか……」

「というより……あいつはいったい、何を企んでいるんだ?」

「そもそも、やつが大人しく見学をするのか?」


 おうおう。言われたい放題ですねぇ。俺。まあ、別にいいけど。そんなことよりも俺にとっては幼女の写真の方が死ぬほど大事だ。そんな周囲の反応を気にすることなく、華城先輩は俺に対して、にっこりと微笑みながら、


「ま、今日一日じっくり見学してくれたまえ。私としては、君が風紀委員に入ってくれると、とても嬉しい」

『!?』


 あ、この先輩また何か爆弾を落としたぞ。


「そ、総帥がそこまで高く評価しているのか!?」

「バカな……何故あんなやつを?」

「く……総帥のあんなにも美しく、そして可愛らしい笑顔を向けられるなど……うらやまけしからん!」


 華城先輩が喋るごとにどんどん、この部屋に俺の敵が出来ていく。

 くそっ。いくら幼女の写真のためとはいえ、なんでこんなことに……。


「ふむ。では、そろそろ朝の見回りにでもいこうか。では、海斗くんたちは、私についてきてくれたまえ」


 俺たちはそそくさと風紀委員室から抜け出そうとした。俺の背中には、BBAたちの冷たい線が突き刺さっていた。……どうしよう。俺の周りに味方がいない。

 そして俺たちが扉の前についたところで、


「納得いかねぇ!」


 突然、大声を出して一人の男子生徒が立ちあがった。華城先輩が振り返る。その視線の先にいたのは、一人の男子生徒だ。


「ん。どうした、荒島あらしまくん」

「総帥! やはり俺には、そいつが風紀委員に相応しいとは思えません!」


 おおっ。ここにきて何という援護。いいぞ、もっとやれ!

 俺は申し訳ばかりの見学さえ終われば、あとは幼女の写真をいただいて帰りたいんだ。ここで見学がお流れになって、速やかに幼女の写真さえいただければそれでいいんだ。

 荒島くんとやらは俺でも名前がきいたことがある。確か、二年生のボクシング部に所属していて、去年の大会では一年生でありながら、全国大会にも出場したことのある猛者だ。風紀委員に所属しているってきいてたけど、まさかここまで華城先輩に入れ込んでいるとは……。だが、今は俺にとっての唯一の味方。荒島頑張れ超頑張れ。


「そうかな? 彼は去年も特に学内で暴れたことはなかったと思うが」

「ですけど、学外での態度が問題なんです。去年、こいつが病院送りにした他校の生徒の数を知っていますか?」


 あったなぁ。そんなこと。そういえばその頃に正人に出会ったんだっけ。懐かしい。


「ふむ。では、君は海斗くんの何が気にくわないのかな?」

「……だから、学外での態度が、」

「学外の態度なんて、ぶっちゃけどうだっていいだろう? 学外まで生徒を拘束する必要はない。学外でどのような態度をとろうが、学園の不利益にならない限りはある程度、はめを外したっていいだろう。それにその病院送りにされた輩はみんな、向こうから手をだして来たに過ぎないし、彼は正当防衛をしたまでだ。ちょっと過剰だったかもしれないけどね」


 おい待て。なんでそんなに細かい事情まで知っている。俺は今、華城先輩が本気で恐いぞ!?


「…………」

「それに私からすれば、荒島くん。君は彼の態度以外にもどこか気に食わないことがあるみたいだけど?」


 しばらくの間、荒島は沈黙していた。おい何してるんだ。頑張れ、押されるな! 霊圧が消えかかっているぞ!


「……実力」


 やがて、絞り出したかのように漏れた荒島の一言。


「実力?」

「そうです。風紀委員は荒事が多い。こいつには、それを治めるだけの実力があると思えません」

「わかった。それなら決闘デュエルで決着をつけよう」

「望むところです」

「まてまてまてまてまて!」


 は? なに? 何なの?


「なんだ今、とても自然な流れで決闘とかいう不自然な単語が聞こえてきたんですけど!?」

「フッ。風紀委員では、代々もめごとの決着をつける時は決闘デュエルでという決まりがあってね」

「安定にして重傷な決闘デュエル脳だな!」

「安心しろ。決闘デュエルといっても、ただのガチンコの殴り合いだ」

「そっちの決闘かよ! いや、ある意味で安心したけども!」


 あの世界、世界の命運さえもカードゲームで決めるからな。それにしても何で最近の遊〇王は毎回バイクに乗らないんだろう。不思議だ。やっぱバイクに乗って決闘デュエルしてもらわないと満足できないぜ!


「ここは、風紀委員伝統のルールにしようじゃないか」

「あ、ちゃんとルールがあるんですね。安心しました」

「当然さ。代々、風紀委員が受け継がれている決闘デュエルルール。どちらかが降参するか、気絶するまで、ただひたすらに殴り合う」

「えらい物騒だな!」

「冗談だよ」

「冗談でよかったですよ本当に……」

「本当は、ただのイベントさ。決められた対決内容に沿って生徒同士が競いあうのさ」

「うわ、まためんどくさそうな」


 結局、そのイベントとやらに出場することになってしまった。

 というか生徒会もだけど、割と風紀委員会も大丈夫じゃなかった。

 こうして、なし崩し的に俺の……いや、後からすれば俺達・・のイベントへの参加が決まってしまったのだった。


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