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俺は/私は オタク友達がほしいっ!  作者: 左リュウ
第2部「2年生編」:第6章 新入生と新入部員
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第59話 楠木南央



 ―流川学園入学式 二日前―




 私、楠木南央くすのきなおには二人の姉がいる。どちらも私にとっては大切な姉だけど、二人とも何ていうか……変な人だ。まあ、二人とも、妹目線から見ても可愛いとは思うけどね。

 私はよく、中学一年生に間違われる。本当はもう、中学三年生なのに。お母さんもお姉ちゃん二人も小柄だからか、私も少し小柄だ。そのせいか、中学生の制服を着ていると、よく一年生に間違われる。

 これはもう、慣れたことなので問題ない。

 ただ、明後日からは高校一年生。流石に高校生なのに中学生と間違われると少しむっとなるかもしれない。


「……ただいま」


 私がリビングでテレビを見ていると、お姉ちゃんが帰ってきた。二人いる内の、二人目。私のいっこ上の南帆お姉ちゃん。私の眼から見ても、正直に言って南帆お姉ちゃんはお世辞抜きでとびきりの美少女だと思う。去年、お姉ちゃんの高校で行われていた文化祭にこっそり行ってみると、メイド服姿で頑張っていた。とても可愛かったけど、あまりの人に私はその店に並ぶのを諦めた。だって、その並んでいる時間があれば他のところを回れるし。

 結局、その日しか文化祭にはいかなかった。南帆お姉ちゃんのお店はとても料理が美味しかったらしく、行かなかったことを少し後悔した。


「お帰りなさい、南帆お姉ちゃん」

「……ただいま。南央」


 これは私の二人の姉に言えることだが、どちらもクールなキャラクターである。かくいう私は違う。二人の姉を反面教師(?)として育ったせいか、普通に育った。ていうか、そもそも普通ってなんだろね。

 昔、幼稚園の頃。

 南帆お姉ちゃんはよくお隣さんの子と遊んでいた。私と南美お姉ちゃんは公園とかで遊んでいたけど、南帆お姉ちゃんだけはお隣さんの子とよく遊んでいたし、その子のことをよく見ていた。幼稚園を卒園する前に引っ越ししちゃったし、その頃は引っ越しが多かったらしいから、そのお隣さんのところにいたのも僅かな期間だったらしいので、私と南美お姉ちゃんは覚えていないけど。

 でもたまに、南帆お姉ちゃんがその頃の写真を大切そうに見ているのを私は知っている。


「南帆お姉ちゃん。今日は朝からゲーセンに籠ってたけど、何百連勝してきたの?」

「……555連勝」

「スマートブ〇インに就職できるね」


 うーん。今日は控えめだなぁ。いつもはもう少しぶっ飛んでるけど。

 ワンコインでこれだけ遊べるのだから、お姉ちゃんにとってのゲーセンはさぞかしコスパが良い事だろう。私のお姉ちゃんは、中学の頃に卒業イベントで開催された、とある対戦格闘家庭用ゲームの大会で『楠木南帆に勝てたら図書券一万円分贈呈!』という、南帆お姉ちゃんVS在校生のイベントで、すべての試合をノーダメでクリアして完封したこともある。懐かしい。あの日は私の中学での伝説になった。


「……南央」

「ん。どーしたの、南帆お姉ちゃん」


 珍しく、南帆お姉ちゃんが私のことを真剣な目で見てきたので。

 私も思わず、南帆お姉ちゃんに向き直った。


「……明後日は、入学式」

「うん。そうだね」

「……高校、楽しみ?」

「うんっ。楽しみだよ。高校に入って、南帆お姉ちゃん、楽しそうだもん」


 これは本心だ。

 高校に入ってから、私の姉は二人とも、とっても楽しそうにしている。だから、私は高校に入るのがとっても楽しみだ。文化祭も、参加している生徒たちがみんな、いきいきとしていた。来場客である私が羨ましいと思えるぐらいに。


「……そう。よかった」

「ていうか、そうじゃなかったらあんなにも必至こいて受験勉強しないよ。ね、南帆お姉ちゃん。南帆お姉ちゃんの通ってる高校って、楽しい?」

「……うん。とっても楽しいよ。南央もきっと、楽しめると思う」


 そう言ったお姉ちゃんの顔は、とても優しかった。




 ―流川学園入学式 一日前―




「……ただいま」


 私がリビングでテレビを見ていると、お姉ちゃんが帰ってきた。二人いる内の、一人目。私のふたつ上の南美お姉ちゃん。南美お姉ちゃんは生徒会に入っている。今日から三年生なわけだけど、お姉ちゃんは先代の会長さんから役職を引き継いで生徒会長になったらしい。……まあ、南美お姉ちゃん曰く、『消去法』で生徒会長になったらしいけど。

 南帆お姉ちゃんがいうには、南美お姉ちゃん以外の生徒会の二年生は『ドMかドSかの二択』らしい。

 うん。大丈夫かな。私の高校生活。

 因みに、南帆お姉ちゃんと南美お姉ちゃんはやや仲が悪い。理由は、昔、南美お姉ちゃんが南帆お姉ちゃんのゲームのセーブデータを初期化リセットしてしまったことらしい。そりゃ、ゲームの死神に魂を売っている南帆お姉ちゃんにそんなことすればそうなるだろう。

 私からすればかーなーり、どうでもいい理由だが、南帆お姉ちゃんからすれば絶許だ。


「……お姉ちゃん。屋上へ行こうぜ……久々にキレちまったよ」


 というのが南帆お姉ちゃん談。


「お帰りなさい、南帆お姉ちゃん」

「……ただいま。南央」

「今日も生徒会の仕事? 大変だねぇ」

「……大丈夫。楽しいから」


 楽しい、かぁ。羨ましいなぁ。そんなにも楽しいのかな。

 ああ、はやく入学式がこないかなぁ。明日が待ち遠しい。


「……南央は、生徒会に入ってみる気、ある?」

「生徒会? うーん。生徒会にも興味あるんだけど、部活動にも興味あるんだよね」

「……そう」

「ごめんね、南美お姉ちゃん」

「……ううん。誘ってみただけだから。それに、どの部に入っても、きっと楽しいよ」


 でた、「楽しい」。ああもう。姉妹揃って楽しい楽しい言うから、ますます入学式が楽しみになってきちゃったよ。


「うーん。私、そろそろ寝るっ!」

「……もう?」

「だって、もう待ちきれないんだもん。はやく寝て、明日になるように祈るのっ!」


 我ながら遠足を楽しみにしている小学生みたいだなぁと思った。




 ―流川学園入学式 当日―




 ついに、入学式当日。

 私はワクワクしながら真新しい制服に袖を通した。流川学園は偏差値が高くて、中学からの友達は一人もいない。そこは寂しい。もう友達と一緒にアニメ談義をすることも難しくなるのだから。

 一つ上の南帆お姉ちゃんの影響からか、私もアニメやゲームなどが大好きになった。中学の頃は同じ趣味の友達がいたけど……高校でも出来るといいな。そんな友達。

 どうやらお姉ちゃんが所属している日本文化研究部というところは、名前こそこんなんだが、その実態はサブカルチャーが好きな人たちが集まって、毎日楽しくダラダラしているらしい。私もそこに入ってみたいけど……でも、せっかくだから色んな部活動を見学してみるのもいいよね。


 入学式、か。

 去年は、南帆お姉ちゃんについていったことがある。けど、その時と雰囲気が違っていた。というのも、まさかまさかの大人気アイドルがいたのだ。え!? なんで!? なんであの雨宮小春ちゃんがこんなところにいるの!?

 当然、学内はざわめきに包まれていた。同じ制服を身に着けているということは、もちのロンでこの学園の新入生なのだろう。新入生だけでなく、保護者のひとたちも次々と携帯を取り出してカメラで小春ちゃんを撮っていた。

 アイドルも大変だなぁ。入学式に参加するだけでこんなにも大騒ぎになるんだもん。……ちょっと気の毒だな。だって、せっかくの入学式なのにこんなにじろじろ見られて、ちょっとぐらい静かにしたいよね。高校ぐらい。

 せめて私は、周りの人みたいに撮影は控えることにした。教師たちは、撮影は禁止ですとか、講堂に進んでくださいなど、注意をしていた。


 入学式にはいると、南美お姉ちゃんが在校生を代表して挨拶をしていた。そして、最後に学園長からの挨拶がはじまったのだけど。

 その時、不思議なことがおこった。

 ……いや、てつをがどうとかじゃなくて。

 どっちの変身シーンもカッコいいよね。私はあのギリギリが特に好きだけど。

 壇上を見てみると、喋っているはずの学園長の姿が見えない。録音かな? でも、入学式に録音なんて使うかな。


 入学式が終わり、クラス分けが終わった。

 なんと、私は小春ちゃんと同じクラスになった。やった! 嬉しいっ!

 でも、小春ちゃんはクラスのみんなから注目されていて、あっという間に囲まれてしまった。大変だなぁ。にこやかにしながらも、小春ちゃんはなんとかクラスメイト達を振り切ったようだ。

 本当に、アイドルというのも大変だなぁ。とりあえず私は、その日は部活動の見学をいくつかして、家に帰った。日本文化研究部は最後にしよう。




 ―流川学園入学から次の日―




 今日から授業が始まる。そして、学園生活の為に仕事を減らしたらしい小春ちゃんは、当然のことながら教室にやってくる。小春ちゃんは教室に入ってくるなり何やらじろじろと教室の中を観察し始めた。私は思わず、好きなライトノベルの最新刊を鞄から出す手を止める。

 なんだろう。何か、気になる事でもあるのかな。が、私が小春ちゃんの行動の真相を知る前に、クラスメイト達が一気に小春ちゃんを取り囲んでしまった。小春ちゃん、今日も大変だなぁ。せめて、教室の中ぐらいはそっとしてあげればいいのに。

 一応、僅かな支援ではあるけど、私は出来るだけ小春ちゃんをじろじろと野次馬丸出しの眼で見ないことにした。でも騒がしすぎるからラノベも読むこともできないから、昨日、担任の先生から配布された部活動の一覧表を眺めることにした。

 そして、私は今日も色々な部活動を見学しに行った。南美お姉ちゃんからは毎年、部活動の勧誘は凄まじいときいていたけど、まさにその通りだった。校門から校舎までの道のりの間に、各部活動の部員と思われる先輩たちが手作りのチラシを持って凄まじい勢いで勧誘してくる。

 私はチラシを受け取るのが精いっぱいで、そこを抜けると順番に、目星をつけた部活を見学しにいった。どこも楽しそうだった。うーん。悩むなぁ。でも、やっぱりメインは南帆お姉ちゃんのいる日本文化研究部だよねっ。


 その日。

 私は家に帰ってきた。勧誘の嵐で少し疲れたのだ。制服を脱いで、部屋着に着替える。そして遠慮なくベッドにダイブ。疲れた。疲れはしたけど……これは、嬉しい疲労というか。何というか。


「ふへへ……」


 あのお姉ちゃんたちと同じ学園に通うことが出来て嬉しい。雰囲気だって悪くないし、見学していった部活だって、とても楽しそう。今の時点でも満足している私だけど、何だかこれからもっともっと楽しくなりそう。それになにより、同じクラスに小春ちゃんだっているしねっ!

 私が一人でニヤけていると、誰かが帰ってきた気配があった。二階にある部屋から出て、一階のリビングまで降りてくると、ちょうど南帆お姉ちゃんが帰ってきたようだった。


「あ、南帆お姉ちゃん。お帰りなさい」

「……ただいま」


 今日もクールビューティな南帆お姉ちゃん。そのまま一緒に二階の部屋までいく。私たち三姉妹の部屋は別々だけど、私はそれぞれのお姉ちゃんの部屋に溜まる時がある。今もそうだ。着替えを始める南帆お姉ちゃんをよそに、私は南帆お姉ちゃんのベッドに腰掛ける。


「……南央。もう図書室には行ってみた?」

「ううん。まだだけど?」

「春休みの間に、南央の読みたがってたラノベが入ってた。まだ誰も借りてなかったから寄ってみるといいよ」

「えっ、本当!?」


 お姉ちゃんは無言で頷く。やった! あのシリーズ、もう結構な数の巻数が出てたから、集めるかどうか悩んでたんだよね。


「ありがとう、お姉ちゃんっ! さっそく明日の放課後に、図書室に寄ってみるよ!」

「……うん。そうしてみて」


 わざわざ私の読みたかったラノベのタイトルを覚えて、それに加えて図書室に入ってるかどうかまで教えてくれるなんて。お姉ちゃんは優しいなぁ。

 よほど嬉しいことがあったのか、「……計画通り」なんて言ってるけど、なんのことだろう?




 ―流川学園入学から更に次の日―




 私は、部活動見学を早めに切り上げて、図書室へとやって来た。初めて来てみた図書室はかなり綺麗で広い。それだけでなく、置いてある本の数も多い。私は目的の本を探して、図書室の中を探索してみる。すると、すぐにそれは見つかった。

 よかった。ちゃんと全巻揃ってる。安心したところで、さっそくその一巻目を手に取ってみる。


「確保ぉ――――!」

「!?」


 次の瞬間、私は物陰から出てきたやたらと可愛い、ロリ巨乳な人に抱きつかれた。というより、セリフから察するに確保されたらしい。


「この子がなほっちの妹かー! むふふ。可愛いのう~!」

「え? え?」


 なんだこれ。わけが分からない。更に、混乱状態でいる私の前に現れたのは……、


「……南央」

「な、南帆お姉ちゃん!? ちょっ、これ、どういうこと!?」

「……ごめんね。理由は後で話す」

「え、り、理由!? ていうか、謝るぐらいならはじめからしないでよ!」

「……恵、連行して」

「ブリッツンデーゲン!」


 こうして、私は変なド○シア軍人モドキの美少女生徒に、連行されることになった。連行っていうより拉致だよね。これ。





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