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俺は/私は オタク友達がほしいっ!  作者: 左リュウ
第2部「2年生編」:第6章 新入生と新入部員
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第57話 新学年

というわけで、第二部「二年生編」スタートです。


追加される新ヒロイン一人目は、文化祭編に出てきたあの子です。

 俺は、まだ春休みボケが治っていなさそうな頭を必死にたたき起こして、体をベッドから引きはがした。

 あの文化祭の後、学園内でも微妙な立ち位置になった俺は、今までの穴埋めをするかのように少しずつ、あの学園に馴染もうとした。文化祭の後にあった体育祭、冬休み、三学期などを使ってゆっくりじっくりと時間をかけたおかげなのかは知らないが……それでも何とか、少なくとも同じクラスの生徒とは、まあそれなりに歩み寄れた気がする。それというのも加奈や正人たちが協力してくれたおかげなんだけど。

 ……うーむ。俺ってば「なぁ、こいついつも一人でいるんだけどさ、ちょっと混ぜてやってくれない?」みたいな感じでリア充に情けをかけてもらってるぼっちみたいだ。

 だがそんなリア充のおかげで俺はクラスメイトと挨拶程度はかわせる仲になった。……そのクラスメイトたちとも、新学期のクラス替えでおさらばになるのだが。

 憂鬱な気分を振り払うかのように、俺はいつも通り朝の支度をして、いつも通りロリコン御用達のアニメをつけた。え? 朝はニュース番組だろって? どこの世界の常識だそれは。朝は幼女の笑顔を見て幼分をとるのが常識だろ?

 一日のはじまりである朝はちゃんと幼分をとらなきゃな。養分じゃない。幼分だ。誤字るなよ。ここ、テストに出るからな。……出ないか。

 時間ギリギリまで幼分の補給に努め、そして登校時刻が訪れた。俺は既に用意しておいた鞄を持つと、家を出た。そのタイミングで、隣の部屋の扉も開く。


「あ、海斗くん。おはようございます」


 隣の部屋に住んでいる加奈は今日も、相変わらず美少女だった。にっこりと微笑んでくるその美貌に何人もの男子生徒が虜になっているときいているが、俺としてはどうしてそこまで夢中になれるのかが分からない。むしろ今の場合だと、


「…………チッ」

「すみません。どうして朝一番から舌打ちをされなきゃならないのか分からないのですが」

「そりゃそうだろ。こっちは、ついさっきまで美幼女たちの笑顔と声と存在に癒されていたのに、現実に戻って扉を開けた瞬間にBBAの笑顔だぜ? しかもロリBBAこと、合法ロリならいざ知らず、ロリですらないただのBBAだ」

「学年が一つ上に上がっても、海斗くんは海斗くんのままでしたか……はぁ。去年は色々とあったのに、何の進歩も見られませんね」

「それはこっちのセリフだ。いつになったら幼女に逆戻りしてくれる? タイムふ〇しき持ってくるか?」

「うーん。海斗くんなら次元の壁を捻じ曲げても本当にタイムふろ〇きを持ってきそうで怖いんですよね」


 幼女の為なら次元の壁を捻じ曲げるぐらい朝飯前さHAHAHA!


 とりあえず雑談も程ほどに、それぞれの部屋の鍵を閉める。そして二人揃ってマンションの下まで降りていき、そのまま学園までの道を歩き始めた。


「ふふっ」

「なに笑ってるんだよ」

「んーん。なんでもないですよ?」

「明らかに何かあるだろ」

「……正直に言うとですね、嬉しいんですよ」


 ふふっ。と、加奈はまた笑う。通りすがりの学生がそんな加奈の笑顔に見惚れて電柱に顔面をぶつけていた。


「嬉しい? もしかして、ついに幼女に対する愛が芽生えたのか。そりゃ確かに喜ばしい。お前は今まで、一種の洗脳状態に陥っていたんだ。それが解けて、ついに幼女の魅力に気づいた。それが嬉しいんだな?」

「違いますよ。どうしてそんなに愉快な頭になってるんですか海斗くん。その頭には人の言葉を都合の良いように変換する機能しかないのですか? それ以外の機能をオミットしたばかりに殆どが空っぽなんですか?」

「バカだな。頭空っぽの方が夢詰め込めるんだよ。そんなことも知らないのか」

「チャラへっちゃら……じゃないですよねぇ!? 全然へっちゃらじゃないですよねぇ!? 絶対に何か大切なことがすっとんでますよねぇ!?」


 こんなことを話している間にも、足だけは動かしているので、もうすぐいつも正人と落ち合うところまでやってきそうだった。それを加奈は察したのか、なぜか慌てたように、


「こ、こうやって、海斗くんと一緒に登校できることが嬉しいんですっ」

「はァ?」


 なんでこいつはそんな程度の事で嬉しがるの? バカなの? アホの子なの?


「……今、『なんでそんな程度の事で嬉しがるの? バカなの? アホの子なの?』とか思っていたでしょう」

「なんでわかったんだよ。お前マジでNTかよ」

「まったく。何もわかってないですね。こうやって、海斗くんと一緒に歩いて、堂々と登校出来るのが嬉しいんですよ」

「いや、だから何でそれが嬉しいんだよ」

「……まったく、本当に何もわかっていないですね海斗くんは。例えばですよ? 海斗くんは、合法ロリな子と一緒に登校出来たらどう思いますか」

「すっっっっっっっっっっっっっげぇ嬉しいッ……!」

「まあ……そういうことですよ、はい……」


 物凄く複雑そうな顔をしていた。どういうことだ。

 まてよ……今の言葉……もしかして……。


「加奈……お前……もしかして」


 俺は、隣を歩く加奈の顔をじっと見据える。なんてことだ……俺は、今までこいつの気持ちに気づいてやれなかったなんて……。


「ふぇっ!? あ、あのっ……」


 俺がじっと加奈を見つめてやると、加奈は顔を真っ赤にして……それでも、俺の顔をじっと見つめ返してくれた。


「俺は合法ロリと一緒に登校して、凄く嬉しい。そんな俺の気持ちと、お前の今の気持ちが同じということだよな?」

「は、はい。そういうことです……」

「そうか……ということは、加奈、お前……!」

「はいっ!」


 ぱあっと笑顔になった加奈の顔を見て、俺は自分の考えが間違いではないことを確信する。そうか。そういうことだったのか!


「お前……やっぱり、幼女に対する素晴らしさに目覚めていたんだな! 幼女覚醒したんだな!」

「違いますよ!」


 即座に否定された。おかしいな。間違いないと思ったんだけど。

 その後、正人と合流し、そして南帆たちとも合流して、学園までの道を歩いて行った。加奈は、みんなと合流する直後、「はぁ……どうして毎朝チャンスがあるのにいつもこうなるんでしょうか……」と意味不明な供述を敷いた。チャンスってなんだ。俺をガ〇プラビルダーの道へと引きずり込むつもりか。そうはいかないぞ。俺の日常生活は幼女に捧げると決めている。ガン〇ラに捧げる時間はパチ組にスミ入れしてトップコートをふくぐらいしかない。

 今日から始業式。明日は入学式。まあ、新入生なんざどうでもいい。合法ロリがいるなら話は別だが。

 問題は……クラス分けだ。もし、正人や葉山と離ればなれになったら……というより、もしぼっちになって、正人たちが全員、俺とは別の同じクラスにでもなったら……朝から憂鬱だ。きっと俺はぼっちになってしまうのだろう。それだけは嫌ああああああああああああああああああああああ!

 ていうか、こんなことを考えていること自体が既にコミュ障なのかもしれない。

 学内に入ると、生徒たちの視線が俺たち集中する。まあ、加奈たちと一緒に歩いていればこうなるし、それに、俺に対するイメージというか、そういった物が未だ払拭されていないのも原因だろう。とはいえこれは自業自得だし、ほんの……ほん――――の一部の生徒たちにはまあ、普通に挨拶ぐらいはしてくれるようになったし。


「はぁ……」

「どーしたの、かいくん。元気ないねぇ」

「……新学年なのに」

「新学年だからこそだよ。何しろ……恐怖のクラス替えが……」

「えー。そーかなぁ。私は楽しみだけどなぁ」

「……私も」

「お前ら……怖いものしらずなのか!?」


 いや、まあ、こいつらならいくらでも友達ぐらい作れそうだけど。南帆はまあ、アレだけど、学内での人気は高いわけだし。恵は普通にコミュ力が高い。


「だってさだってさ、私となほっちは、今までみんなと一緒のクラスになれなかったんだよ~? もしかしたら、今回のクラス分けでみんな一緒になれるかもしれないじゃんっ!」

「あのなぁ。そんな都合よくいくわけ……」

「あ、みんな同じクラスですよ、海斗くん!」

「マジで!?」


 やばい。嬉しいBBAとはいえ、知り合いがいるというのはこんなにも心強いのか……!

 クラス分けが張り出されている掲示板の前で、生徒たちが俺と同じようにクラス分けの結果に一喜一憂していた。


「よっしゃぁ! 天美さんたちのクラスだ!」

「くそっ……どうして今年だけ、二年の超美少女達が一つのクラスに固まってるんだよ……!」

「ッシャラァ! 四組きたああああああああああああああああああああ!」

「それで、四組になる権利はおいくら万円ですか?」


 無事、そしてあっさりとクラス分けが終わり、俺たちは二年四組の教室へと向かった。俺たちが入ると、様々な意味のこもった視線を向けられる。加奈たちと一緒のクラスになれて嬉しいとか、正人や葉山、国沼みたいなイケメンズと一緒のクラスになれて嬉しいとか……あとは、俺とのクラスになってアンラッキー、みたいな。まあ、こうなるのはあらかじめ予測できた。こうなったら、また時間をかけて、クラスに馴染んでいこう。

 クラス分けが終わり、教室に入ってしばらくしてから、担任教師がやってきた。簡単に自己紹介と連絡事項を伝えた後、始業式の為に行動に移動し、始業式が始まった。

 学園長からの挨拶は相変わらずだった。姿が見えず、声だけが聞こえてくる。だが不思議と、俺はこの声が好きだった。なんでだろう。

 始業式が終わると、また教室まで戻ってくる。担任教師が改めて自己紹介した。

 担任教師の挨拶が終わり、今度はクラスの生徒たちが順番に挨拶を始めていた。俺の番が来たときは、かなり緊張したが……まあ、割と無難に返せた。

 色々と胃が痛くなるような一日だったが、なんとか無事に乗り切った。その日は精神的にかなり疲れてしまい、そのまま家に帰った。その日は、部員の皆もそれぞれの用事があったらしいので、都合がよかった。

 そして、また次の日。入学式が訪れた。入学式に参加するのは、新入生と保護者、教師、そして生徒会メンバーに、風紀委員。なので、それ以外の生徒たちは参加しない。『それ以外』に入っている俺たちのような生徒は、普通に授業だ(授業といっても、新クラスでの役割を決めたり、新学年における連絡事項など、勉強そのものは進まない)。

 担任の教師が連絡事項を伝えている。俺はそれを頭に入れつつ、窓の外に視線を向ける。教室の窓の外には、ちょうど入学式が終わったのか、新入生たちが真新しい制服に身を包んで、去年まで俺たちが使っていた教室までの道のりを歩んでいた。

 そういえば去年は、周りの生徒に見た目だけでビビられながら歩いて行ったっけ。懐かしい。

 ……今も大してかわってねぇじゃん。

 悲しい事実に気づいたところで、俺は新入生たちの様子が少しおかしいことにも気が付いた。何やら、みんな興奮したようにざわざわとしている。入学式の興奮……でもないな。何やら皆、ある一点を見ているように思える。

 それが気になって、俺も思わず目でその視線を追う。そこにいたのは、周りとは明らかに違う……女の子だった。人はそれを美少女と表現するのだろう。まず目をひいたのは、綺麗なツインテールだ。それと、アイドルばりのルックス。

 いや、それもそうだ。アイドルばりのルックスどころか、本物のアイドルなのだから。

 新入生の行列の中。

 大人気アイドル、雨宮小春がそこにいたのだ。


 ☆


「こはるちゃんだぁ~!」


 文研部の部室。俺たちは、文化祭以来のお客様を迎え入れていた。

 ついんて~ること、雨宮小春。

 大人気アイドルで、今やあらゆるメディアにひっぱりだこ。サブカルチャー知識が豊富で、オタク系アイドルとして売り出している。知識もさることながら、一般の人にも分かりやすく、それでいて楽しく、興味を引き付けやすい見事なトーク力で、その才能はただのアイドルとして留まるところを知らない……とかなんとか。

 幼女LOVEの俺だって知っているぐらいのアイドル様である。

 というか、未だに実感がわかない。あの大人気アイドルが、この部室にいるのだ。恵は無遠慮にむぎゅぅぅぅぅと抱きついている。


「お、お久しぶりです」


 恵にぎゅっと抱きつかれていた雨宮小春は苦笑する。


「それにしてもびっくりしました。あの文化祭で、もう会うこともないと思っていたのですけど」


 加奈が本当にびっくりしたように言っている。

 この部のBBA共はどいつもこいつもこの雨宮小春のファンだし、去年の時にこいつらが俺の家に泊まりに来た時も、『こはるタイム』という雨宮小春の冠番組をみんなで見た。かくいう姉ちゃんも雨宮小春の大ファンである。そのせいか、俺もその番組だけはよく見ていた。

 だからこそ、テレビの中の大人気アイドルがこの部室にいることが信じられない。


「えっと、私、去年の文化祭でこの学園を見て……楽しそうなところだなぁって。それで、この学園に入りたいって思って、頑張って勉強しました。事務所の人たちも応援してくれて」


 この学園は、割と全国的にも有名だ(テレビ取材が入る影響で)。偏差値だって高い。事務所側としては、この学園に入ってくれれば、それだけで話題になるし、しかも雨宮小春がそれなりに頭が良いことも知られる(この学園に入れたからには『それなり』どころか、『かなり』といってもいいだろう)。

 イメージアップもできる。

 そりゃ応援するよな。


「……凄い。もうニュースになってる」


 南帆のスマホを覗き込む。するとそこには確かに、ニュースサイトの『雨宮小春、流川学園に入学』うんぬんかんぬん……がトップを飾っている。


「あはは……。直前まで秘密でしたから」

「もしかして、そのうちお前の受験勉強のドキュメンタリーでも放送するんじゃないか」

「海斗先輩、どうして知っているんですか?」


 雨宮小春が心底驚いたように目を丸くしていた。


「ただの予想だよ。お前のイメージアップに都合が良いだろ。この学園の知名度も偏差値も」


 これまでの会話の端々から何となく分かったが、それなりに頭良さそうだし、形だけのドキュメンタリーをでっちあげたんだろう。編集と演出でさぞかし苦労したようにしているのだろうが。

 ニュースサイトをみたところ、どうやら仕事も少し減らすらしい。本人にきいてみると、


「えっと、お父さんとお母さんから心配されちゃって……勉強もそうだけど、もう少し学生を楽しみなさいって言われちゃったんです」


 えへへ、と照れたように雨宮小春が言う。


「まあ、俺から見てもお前はちょっと働き過ぎだしな。お前の両親も、そう考えたんじゃねーの」


 ぽん、と俺は雨宮小春の頭に手を乗せた。何ていうか、確かにこいつは大人気アイドルだろうけども、正直、俺からすれば働き過ぎに見える。まあ、それは事務所側としてもアイドル雨宮小春からしても嬉しいくて、良いことなんだろうけども、あの文化祭で実際に会って、俺なんかの料理だって美味しいって言って食べてくれて。だからこそ、もう少し自分の体を大事にしてほしい。

 まあ、姉ちゃんが「こはるちゃんちょっと働き過ぎだよね。私、心配だなぁ」って言ってたのか、一番大きな理由だけど。前者の理由なんて些細過ぎるぐらいに些細なものだ。


「あ、ありがとうございますです……先輩」

「ほら、やっぱりお前は働きすぎなんだよ。熱出してるんじゃねーのか? 今日はもうゆっくり休めよ」


 無理してるからか。雨宮小春の頬が僅かに赤色に染まっていた。ふと、誰かの視線を感じて部室の中を見渡す。


『…………』


 雨宮小春を除いたBBA共にジトッとした目で見られていた。


「海斗くん、さっそく新入生に手を出すんですね」

「……最低」

「かいくん。いい加減、フラグを建造するのを控えたら? イベント前に資源が枯渇しちゃうよ?」

「本っっっっっっっっっ当に、あなたという人は見境がないですね」

「うぅ……少しは近づけたと思ったのに」


 こいつらはどうしてそんな目で俺を見てくるんだ。

 まったく、新学年になったばかりだというのに、BBA共は変わらないな。


 しばらくして。


「そういえば、小春ちゃんはこの部に来たということは……その、うちの部に入るということでいいのですか?」


 一応、この部の部長である加奈が質問する。それに雨宮小春はこくりと笑顔で頷き、


「はいっ。勿論ですっ!」


 加奈たちは笑顔で、新入部員を迎える。本当に嬉しそうだ。かくいう俺も、後輩が出来て素直に嬉しい。いくらアイドルとはいえ、BBAであることが残念だが。


「あのぅ……それで、その、先輩たちに相談したいことがあるんですけど……」


 雨宮小春はもじもじとしながら、言いにくそうに切り出した。まるでそれが本題だというように。

 それを察した俺たちは、改めて新入部員である後輩に注目する。

 少しの間、言いにくそうにしていた雨宮小春は……決意したように、一言。


「……あの、私のオタク友達作りに、協力してくれませんか?」





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