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俺は/私は オタク友達がほしいっ!  作者: 左リュウ
第5章 新学期と文化祭
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第45話 始まる新学期

 夏休みが明け、ついに文化祭の季節がやってきた。学校は夏休みが明けて名残を惜しむどころか、「やっと夏休みが明けたか」と言わんばかりの賑わいだ。

 この夏休みは色々とあった。だが、だからといって俺の学校内での扱いが変わるわけではない。変えて欲しいとも思わない。今は今でこの状態がベストだからだ。「あの黒野海斗が本当は変態紳士だった!」なんて噂が他の奴らに知れたら大惨事になる。

 また襲いかかってくるバカ共を蹴散らす日々が始まってしまうのだ。それだけはどうしても避けたい。俺は起床すると、大学の部活動か何かから帰ってきた姉ちゃんの朝食を食べて、学校に向かった。姉ちゃんはまた文化祭にはくるらしい。それまでは大学が忙しいらしいのであまりここには来れないらしい。

 何が忙しいかについては考えるのはよそう。俺の精神衛生上の問題で。


「おはようございます、海斗くん」


 俺が家を出るのと同じタイミングで、隣の部屋から加奈が出てきた。どうやらこいつは、ここ最近は深夜遅くまでプラ版で強襲用大型コンテナを作ったりはしていないらしい。


「珍しいな」

「はい。海斗くんと一緒に登校するのは確かに珍しいですね。私、海斗くんと一緒に登校したくてがんばって早起きしましたっ!」

「いや、そうじゃなくてお前が深夜遅くまで作業せずにこの時間に学校に行くのが」

「ああ、そっちですか……」


 露骨にガッカリした顔をされた。どうしてそのタイミングでガッカリするんだこのBBAは。


「つーか、一緒に登校するとか勘弁してくれ。俺とお前が揃って登校すると色々と目立つだろ」

「海斗くん、Bグループに入りたいんですか?」

「ちげーよ。いや、最初はそうなりたかったけどちげーよ。お前と一緒に登校すれば俺がどんなイメージを周囲からもたれるかわかんねーだろ」


 さっきも言ったが、もし俺の「喧嘩をうるとSATSUGAIされるおっかないDQN」というイメージが崩れ、逆に「黒野海斗は幼女を心から愛する紳士」という本性がバレると非常にめんどくさいことになる。大事なことなので二回目を言いました。


「えー。今更じゃないですか」

「そりゃね。お前らのせいでまた変な噂が追加されてるからね」


 例えば親睦会の時とか。俺が無理やり脅して加奈と渚姉妹を班に入れたことになっているらしい。まあ、噂の方は正人に頼んで誇張させてもらったのだが。その方が俺の日々は守られやすいし、近づくやつも減るはずだ。余計な詮索をする者も。


「じゃあ、大丈夫ですねっ!」

「大丈夫じゃないからね? そもそもいきなり一緒に登校とかありえんだろ。女の子と一緒に登校するなら赤いランドセルを背負ったロリロリした女の子とがいいよ」

「うーん。どうすれば海斗くんを正常に戻せるのでしょうか。軽くマイクロウェーブでも当てればいいのでしょうか」

「やめて蒸発しちゃう。そもそも俺はどこのGXだよ」

「あなたに、力を?」

「本当に来たら俺、神様信じるわ」

 

 かっこいいけどねGX。最盛期なら中継基地からマイクロウェーブを受信して昼夜問わずいつでもサテキャを撃てたんだぜ! 装甲だって硬いんだぜ! そんなのが全部で三機もあったんだぜ! だからMGお願いします! HGAWのDX発売は嬉しいけどね!


 しばらく歩いていると、正人と合流。「朝からこんな間近で加奈さんを見れるなんて……眼福だ」とかなんとか言っていた。が、俺の事情を察してくれているのか、正人は俺と一緒にさっさと先に進むことに合意してくれた。

 加奈は最後まであうあうと何か言っていたが、無視。これが幼女ならば余裕で心が揺れまくりブレまくりだったのだろうが、所詮はBBAだ。

 正人と共に学校に入る。周囲からはさっ、と視線を背けられる。ちなみに正人は、「あの黒野海斗と対等に話せる生徒会のすげーやつ」というポジションらしい。これが意外と、情報収集に役立つのだそうだ。危害を加えると俺からの制裁が待っていると思われているのでマジモンのDQNから絡まれることもないのだそうだ。まあ、正人に危害を加えたら制裁するのは確かなんだけど。

 とりあえず校舎の裏の方に移動する。ここなら人けもないので周囲からの視線に晒されることもないだろう。


「ああ、ぶっきらぼうだけど正人くんのことを心の底から愛して想っている海斗くん、流石だよ!」


 葉山だ。久しぶりだなぁ。文化祭実行委員の方があってなかなか顔を合わせられなかったけど。


「ああ、おはよう」

「お、おおう。お前は二学期も相変わらずだな……ってーか、お前どこから沸いてきた」

「海斗くんの正人くんを想う強い心に魅かれてきたのさ」


 正人がなぜかビクビクと震えていた。どうでもいいか。


「あ、そうそう。会長が、お前らにお礼を言ってたぞ。手伝ってくれてありがとうってさ」

「んなこたどうでもいい。つーか、なんでこんなところに来たんだよ」

「そりゃお前! 加奈さんの登校を見守る為だろうが!」


 正人が騒いでいると、そのタイミングを見計らったかのように校門の方が騒がしくなってきた。俺たち三人は(俺と葉山は正人に強制的にではあるが)物陰から件の校門の方に視線を向ける。

 案の定、加奈が登校してきた事に生徒たちがざわついているだけだった。あいつらのやることは理解できん。美幼女が登校してくるならともかく、たかがBBAの一人が登校してくるのにどうしてそこまで騒ぎ立てるのか。

 加奈はきょろきょろと辺りを見渡すと、目ざとく俺たちを見つけた。その瞬間、にこっと満面の笑みを浮かべる。その笑顔にまた周囲の生徒が沸く。


「可愛い……」

「ああ、天使だ……」


 どうやらここの生徒は総じてアホらしい。


 ☆


 あっという間に放課後が訪れた。今日も俺は夏休み前と特に変わったことのない学校生活を送り、放課後になると部室にやってくる。

 文化祭前のせいか、校内は夏休み前の放課後よりも騒がしい。だが、俺たちの部室に近づくにつれてその喧騒も静けさに変わっていく。


「うーっす」


 部室の扉を開けると、中にいたのは我がクラスの委員長と副委員長である渚姉妹だった。


「あ、海斗くん」

「こんにちは。あなた一人だけですか?」

「逆に聞くが、二人だけか?」


 同じクラスである俺たちではあるが、基本的に部室に来るまではバラバラの別行動だ。一緒に歩いていても俺が脅して(以下略)になるだけだが、渚姉妹に対するマイナスイメージを極力、避ける為だ。


「そうですけど」

「んー。じゃあ、全員揃うまで待つか」


 部室の中にある円卓の席に着く。ちなみに俺の席の隣は美羽、その隣に美紗、そして俺の真正面に恵、その隣に南帆、そしてその隣、俺の隣でもある席に加奈である。特に決めたというわけでもないのだが、これが何となく定位置になってしまっている。

 とりあえず全員が揃うまで、俺は適当にラノベを読むことにした。表紙? もちのロンで幼女キャラですよ。HAHAHA!


「…………」

「…………」

「…………」


 この部室にいる三人、揃いもそろって本を読んでいるのでとにかく会話がない。だが、美羽がさっきからチラチラと隣にいる俺のことを見てくる。本に隠れてその表情そのものはよく見えないけど。

 というか、合宿の時に美羽から俺と美紗との話をきかされて、一緒に行動したりして。そこからあの海の時の出来事をきっかけに美羽は俺に対する態度が随分と柔らかくなってきた気がする。

 まあ、たまにこうしてチラチラと俺の方を見てくるようなことはあるんだけど。


「美羽」

「は、はいっ!?」


 目に見えて慌てだした。なんでだ。

 わたわたと、いつもはキリッとしてる美羽らしくもなく慌てて、手元の本をばたばたと落としそうになっている。


「な、なんですか!?」

「いや、さっきからチラチラと見てくるからどうしたのかなって」

「べ、べべべべべ別になんでもありませんっ! ばかぁ!」


 怒られた。やれやれ。これだからBBAは。すぐキレるから嫌なんだよ。つーか、誰がバカだ。こう見えても学年二位だぞ。

 その後も何回かこんな感じの事が起こったものの、ようやく部員が揃った。


「それでは、今日からそろそろ本格的に文化祭の準備に移ります」


 全員が揃った部室。部長である加奈は珍しく部長らしいことを言った。


「まずは確認として、私たちの部は喫茶店をやります。メニューは決まってきましたが、あとは大まかに分けると食材、衣装、内装などの問題がありますね」

「はいはいは――――い! 衣装はベタにメイド服なんかが良いと思いますっ!」

「他のところと被るだろ、それは」

「……じゃあ、制服のまま?」

「それでいいだろ」

「うーん。それはそれで何か寂しい気がしますが」

「それはもう、とてもとても美紗のコスプレが見たいです(せっかくの文化祭ぐらいは、制服でなくてもいいでしょう)」

「美羽。お前、建前と本音が逆になってるぞ」

「謀りましたね!?」

「ようやくわかった。お前、実はバカだろ」

「あ、あの……」


 そろそろ会話が脱線しかけたところで、美羽の欲望の餌食にされようとしている美紗がおそるおそるといった風に手を挙げた。


「どうした、美紗」

「え、えっと。か、海斗くんの好きな衣装にしてみたらどうかな……」

『!!!!』


 美紗のこの一言により。

 部室の空気が、一変した。

 な、なんだこの緊迫感……俺はいったいどこにいる? あれ? ここ部室じゃなかったっけ。何このプレッシャー。いつの間に固有結界が発動したんだ?

 女子達の視線が、俺に集まる。

 ……いやいやいや。何この空気。え? 本当になにこれ。


「……そうですね。ここは海斗くんに決めてもらいましょう」

「え?」

「流石は美紗。私の可愛い可愛い、自慢の妹。適切な一言ですね」

「は?」

「そーだよねぇ。ここは、かいくんのだ――――い好きな衣装に着替えちゃおっか」

「ちょっ!?」

「……海斗。好きな衣装を言って。私たちはそれに着替える」

「ちょっとまて」

「な、なんでも言って……? その、私、がんばる、から……」

「いやいやいや」


 気が付けば、俺はいつの間にか壁際まで追い詰められていた。あれー? おかしいなー。

 どうしてこんな状況になっているのかなー。

 まるで時間を止める能力に目覚めて最高にハイってやつになってたのに、相手も時止め能力を得て一気にピンチに陥ってしまった状況ぐらいにやばい。

 まずい。逆らえば、命は、ない……ッ!


「お、俺は……」

『俺は?』


「そりゃもちろん、小学生の(ry」


「はい、それでは会議に戻りましょう」

『異議なし』


 せめて最後まで言わせろよ。





一番好きなガンダムは、ガンダムDXです(小並感)

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