第41話 おのれ財団B!
おのれ財団Bめ。
コンセレガイアメ〇リ68000円とか高すぎるよ!
あの後、なんとか理由をつけて美紗と別れた俺は学校の敷地外……というか、敷地外ギリギリの場所にある電柱へとやってきた。どうしてストーカーは電柱の陰を好むんでしょうね。俺にはまったく分からんわ。
「で、何の用ですか」
俺は少しムスッとした顔で富音さんに問いかける。何しろこっちは手伝いに来た生徒会の仕事をほっぽりだして来たのだ。そりゃ機嫌も悪くなる。しかも外って……直射日光をじりじりと受けているのでかなり暑い。
「何の用もなにも。どういうことですか?」
「はい?」
富音さんはこのクソ暑い中、汗ひとつ書かずにいつものように凛とした表情を崩さずにいれるところは素直に凄いと思うが。つーか質問を質問で返されるのはきついッスよ。
「さっきから恵がせかせかと働いているようですが」
「まあ、そりゃ今日はこういうことしてますしね……まさか恵がせかせか働いているのはどういうことですか! みたいなことを言いに来たんじゃないでしょうね」
「違いますよ。恵はせかせかと働いているのにどうしてあなたは他の女の子といちゃいちゃラブラブしているんですか?」
「はァ?」
何を言っているんだこのBBAは。だが目の前のBBAは表情を一切変えず、むしろ真剣そのものである。
「見てましたよ。恵は一生懸命働いているのにあなたは別の女の子……確か美紗さんでしたっけ。とにかくその子と廊下を歩きながらいちゃいちゃラブラブ……死ねばいいのに」
「それが大人のセリフですか!?」
第一、俺はいちゃいちゃラブラブしてないのに。ただ荷物を一緒に運んだだけじゃないか。本当に女は歳をとると劣化するな。まさか脳みそまでやられているとは。
「何か言いましたか? 歳をとると……なんとか(ニッコリ)」
「いえいえまったく何も。ですからそのアイアンクローを止めてくれませんか? さっきから頭に亀裂が入ったような痛みが走るんですが」
何こいつエスパー?
「そもそも、今の恵を見せてくれるんじゃなかったんですか」
「見せますよ。まあ、今日は無理ですけど」
「? 今日は?」
ん。やっぱ知らないのか、この人。
「一応、確認したいんですけど富音さん」
「なんですか」
「今の恵の趣味って、知ってます?」
富音さんは少し考え込んだ後、昔の記憶を思い出すかのようにした後、思い返した記憶をしっかりと吟味しながら、
「……昔は毎夜のように恵の部屋に忍び込んでいたのですが、ここ最近は私の仕事が忙しくなったり恵の部屋のセキュリティも厳しくなってきましたからね……出来て恵の寝顔の盗撮ぐらいでしたから、趣味までは把握しきれていません」
「おおう、今サラリととんでもない事を聞いたけどそこはスルーしましょうか」
「あっ、でも中学ぐらいまでの趣味なら知ってます。読書ですよね?」
「…………」
――かいくんかいくん! 小説版仮面ラ〇ダーW読んだ? まさかサイクロン単体変身をやってくれるとは思わなかったよ! あ、今度、コンセレガ〇アメモリの九十九本セットが発売されるんだよね! 六万八千円だけど私、絶対に買うよ! まさかジョーカージョーカーやサイクロンサイクロン、ヒートトリガーのツインマキシマムや単体変身サイクロンまで出してくれるなんて私、財団Bを信じてたよ!
「……………………読、書……?」
読書なのか? いや、ラノベも読書に入るだろう。たぶん。やっぱわかんね。……いやでも、富音さんのイメージする読書とはかけ離れているから……富音さん的には読書じゃない、のか?
「もう一つ聞きますけど、恵の部屋の中を探ったことは?」
「させてくれません。小物も何もかもしまってあるんですよね。棚に至っては布で覆って隠してますし。まあ、下着の入ってるところはまさぐり放題なんですけどね」
「あんたマジで通報するぞ」
「大丈夫ですよ。一ミリたがわず元の通りに配置するなんて朝飯前ですよ」
「そういう問題じゃなくね?」
☆
「疲れた……」
生徒会でのお手伝い一日目が終わり、俺たちは帰路についた。俺たちの後方にはスタ〇ド、もとい、富音さんが待機している。周りのBBA共は楽しそうにお喋りしているが俺としてはス〇ンドの存在を認知しているだけに落ち着かない。こえーよ。
「そういえばもうすぐコミケですね。私、とっても楽しみです!」
「今まで行く機会がなかったからねぇ」
「……私も楽しみ」
付け加えるならば、俺もかなり楽しみだ。
俺たち初参加組はそれぞれ初めてのコミケに対して思いをはせる。俺が狙うは紳士御用達幼女アニメのお風呂ポスター……。フヒヒ。良いねえェ! 最ッ高だねェ!
「かいくん、とてつもなく変質者の顔をしてるんだけど」
ほっとけ。
交通費やその他諸々の必要経費は既に確保済み。同人誌? 買いたいのはやまやまだがもう少し耐性をつけてからだな。まずはお風呂ポスターに心乱さずにいなければ……でないと出血多量で死んでしまう。鼻血で。
「かいくんって、意外とウブだよね」
「うっせえ!」
必ずクリアマインドの境地に至ってやるからな!
「では、私と美紗はそろそろ自宅に戻って着替えなどをとってきます」
「んじゃあ、私となほっちも一度戻るね!」
「お前、家出してるんじゃねーのかよ……」
「今、家にママがいないからね。それにそろそろ頼んでいたウ〇ザードリングの劇場版セットも届く頃だし」
随分と適当な家出だなおい。
「つーか、着替えとってきたらまた戻ってくるのかよ。そのまま家に帰れよ」
『やだ』
「こ、このBBA共……!」
いや、なんだかんだでちゃんと片付けとかしてくれるからそういう面で文句は言えないんだけどさ。
すぐにBBA共はそれぞれの自宅へと一旦戻った。そしてその場に残ったのは俺と加奈だけで、思えばこうして二人っきりで下校するのも随分と久しぶりな気がする。
「…………」
「…………」
みんなを見送って、しばらく無言で歩き出す。特に話す話題も見当たらないし、何よりも今日は疲れたからな。喋る体力が残ってないのだろう。因みに正人はまだ残って作業を続けている。
あいつとはまだそんなに長い時間を一緒にしたわけじゃない。だけど、見た目がちゃらい割になんだかんだ真面目なところがあったりするし、優しい奴だってことは解る。けど、少し心配だな。働きすぎなんじゃないのか。
……今度、時間を見つけて差し入れでも持っていくか。
と、さっきまで沈黙を保っていた加奈が、急に顔を上げた。その視線は俺じゃなくて、どこか別の方に向けている。これがあさっての方向というものか!(御大将風に)
「さ、寒くなってきましたね!」
「いや、すげえ暑いんだけど」
「て、手が少し寒くないですか?」
「いや別に」
「き、急に手をつなぎたい気分になってきませんか?」
「なってないけど」
「海斗くんのばかぁ!」
「なぜに!?」
俺、今ものすごく理不尽な理由で怒られてね?
「うぅ~…………」
加奈は何故だか物凄く機嫌が悪い。ぷくっと可愛らしく頬を膨らませている。
どうにか機嫌を直せないものか。でないと俺の美幼女コレクションにどんな被害が及ぶかわからない。どうにか機嫌を直せないものか。
「なんで怒ってるんだよ」
「べ、別に……なんでもないですっ……もうっ、せっかく二人きりなのに海斗くんは……」
「せっかく二人きりって、そんなの帰る時はいつもそうじゃん」
「そ、そーいう問題じゃなくてっ! わ、私にとっては、こうして海斗くんと二人でいる時間も大切なんです」
「あ、そうですか」
「も、もちろんっ! みんなと一緒にいる時間も大切ですよ! でもでも、海斗くんと二人でいる時間はそれはそれで別といいますか、何といいますか……あぅぅ」
「お前なに一人で顔赤くしてんの? 熱でもあるの? それともこの暑さでやられたの?」
本当にBBAという生き物は分からない。だがこれが幼女なら……幼女かなたんなら……。
――でもでも、かいとくんと二人でいる時間はそれはそれで別といいますか、何といいますか……あぅぅ。
――かいとくんかいとくん、だいすきです! えへへ……。
やべぇ。凄く萌えるんですけど。まったく、金髪幼女は最高だな!
それに比べて……。
「ど、どうしましたか? 急に、その、み、見つめて……」
顔が赤い。少し恥ずかしそうにしている。ここまではいい。
だが……。
「BBA、か…………ッ! 畜生……! 畜生ッッッ! 許さねぇ……こんな酷い行いをするやつを、俺は絶対に許さねぇえぞ! おのれゴル〇ム! ゆ゙る゙ざん゙!」
豊満な胸。抜群のスタイル。最悪だ。どうしてこんなことに!
「どうしていきなり見つめられたかと思ったら物凄い勢いで落胆されなければいけないのでしょうか」
「……自分の駄肉に聞け」
「そこは素直に胸って言ってくれませんかねぇ!?」
「笑止! 胸っていうのはなぁ、スットン共和国民のような胸のことを言うんだ! パ〇パラ隊のことじゃないぞ!」
「だ、だって仕方がないじゃないですか……勝手に大きくなってしまったんですし……」
「ハ? ハァ!? ハァァァアアア!?」
「どうして一人ハ〇ハァ三兄弟?」
「ハァハァ……幼女かなたんハァハァ」
「いや、そっちのハァハァじゃなくて」
「俺も光速の世界にいきたいぜ。そうすれば全国の幼女をくまなく見守れる」
「拘束の世界の間違いなんじゃないですかねこの変態」
「話は聞かせてもらった。変態は殲滅する!」
「こんなところで何してるんですか明日野元指令」
「明日野元指令と言えばAGEか。ジェ〇アスOカスタムはかっこよかったよな! MOEでカットされなくてよかったぜまったく」
「ええ。私、あのオ〇ライトさん無双回を見てすぐに作りましたよ。ジェノ〇スOカスタム」
「マジで?」
「はい。肩の部分と頭部とバックパックを作るだけでよかったので」
「今度、見せてもらっていいか?」
「いいですよ」
「俺、AGEの魅力は量産機にもあると思うんだ」
「私もです。世代毎に技術が発達していくというのが良いですよね。量産機の進化もインフレせずに割と地味ですし、そこがそそります」
「前世代のガ〇ダムのデータを使用した進化、って感じがよかったな」
「ええ。まったくです。……それで、私たちはいったい何の話をしていたんでしたっけ?」
「幼女の素晴らしさについて」
「そうそう。それそr……って違いますよね! うわ、危ない! 普通に流されてましたよ!」
洗脳失敗。
どうやら加奈を幼女好きの紳士――いや、この場合は淑女か?――へと導くにはまだ何かが足りないようだ。
「もうっ、酷いです海斗くんっ!」
「いや、酷いも何もさっきの会話は幼女ところからすべて俺の本心だけど」
「……こ、今度、一緒にガ〇プラ買いに行きます? ジェ〇アスⅡをディー〇ァカラーにするぐらいなら海斗くんにも出来ますよ?」
「教えてくれるの?」
「は、はいっ! 『二人で』一緒に練習しましょう! ……て、ててっ手取り足取り、お、教えてあげますっ!」
「ん。そんじゃ、頼むな」
「はいっ!」
どうして『二人で』のところをとてつもなく強調して言ったのだろうか。
まあ、加奈が笑顔だから、そこは特に気にするところでもないか。
そうして俺たちは、生徒会の手伝いをしながら夏休みを過ごしていった。
それは昨年とは比べ物にならないぐらい楽しい夏休みで、そして……ついにこの夏メインイベントともいえるべき、コミケ当日が訪れた。
アイシールド21は個人的に名作。
世界編も日本代表メンバー決まった辺りはワクワクした記憶が。
最初は正直言ってつまらなかったけど今ではAGEは二番目ぐらいに好きな作品。二週目からだと更に楽しめる上に小説版のデキがやばい。
ガンダムもいいけど量産機もかなり魅力的。
流石にOカスタム作れる技量は自分にはないのでこの夏はジェノアスⅡディーヴァカラーに挑戦してみます。




