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俺は/私は オタク友達がほしいっ!  作者: 左リュウ
第4章 襲来するお母さんと夏休み
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第35話 モウヤメルンダ!

「そういえばこの前、みんなで合宿に行ったじゃないですか」

「そうだな」

「今思えばあの合宿も楽しかったんですけど、私たちの部活動らしいことが出来てなかったじゃないですか」

「そもそも俺たちの部活ってそんなにすることあったっけ?」

「それはそうと」

 夏休みの文研部の部室。割と整った備品とフィギュアや漫画、ゲーム機などに囲まれながら、天美加奈は咳ばらいをしつつ続けた。

「そろそろ私たちも、部活動らしいことをやってみようと思うんです」

 加奈は部室に集まった面々を見渡す。ここにいる部員は俺、加奈、南帆、恵。そしてこの前の合宿で新たに入部した渚姉妹。合宿から帰ってきた後も集まってやっていることと言えば適当にダラダラと過ごしていることだけだ。渚姉妹に至っては宿題したりしていたものの、俺はそんなもの初日に終わらせている。どうやらこの二人は計画的にやっていく派らしい。馬鹿だな。幼女の加護を受け入れれば人としての限界を超えることが出来るというのに。

「それでかなみん、いったい何が言いたいの?」

 けろっとした顔で言う恵に俺は視線を移す。あの合宿の後で恵の母親が表れて色々とあったのだが、今はそれを表情に出さない。

「まあ、つまるところ……」

 加奈はこほん、と溜めるように間を開ける。

 そして。


「夏休み明けにある文化祭の準備がまだ微塵も進んでいないので、さっさとテーマを決めて何か出してしまいましょうということなんですよね」


 毎年行われる俺たちの学校の学園祭。それはもう毎年決まってものすごい盛り上がりを見せる。近くにあるお嬢様学校と近隣の商店街などと連携して行われるそれは規模もさることながらTVの取材まで来るらしいのだからすごい。何でも今年はコスプレ大会をするとか何とか。去年なんか人気アイドルとかも呼んだりしてたしな。

 クラスの出し物も各部活動の出し物も準備にかなりの時間をかけているらしいし。

 …………。

「あれ? やばくね?」

「超やばいです」

 そう。準備にとてつもない時間がかかる。それこそ、夏休みをめいいっぱい使うぐらいに。

「とりあえず場所はここでするとして、今日中に生徒会に申請しておかなければならないのですが……どうしましょうかね?」

「『どうしましょうかね?』じゃね――――――――! どうしてそんな重要なことを今言うんだ!?」

「忘れちゃってましたてへっ☆」

「お前、そんな仕草が俺に通用すると思っているのか?」

 いくら可愛いとはいってもBBAの「てへっ☆」なんて見ても何の足しにもならん。

 そもそも今日は八月六日。既に貴重な夏休みの約四分の一を使ってしまっていることになる。

「……それで、どうするの?」

「そうだよねぇ。まずはテーマを決めてしまわないと動けないよね」

「加奈、何か考えはあるのですか?」

 美羽の言葉に加奈は少しの間考え、その言葉を口にする。

「とりあえず、名目上は『日本の文化を研究する部』なので、適当に日本の歴史関連の資料を纏めて展示すればいいと思ってます」

「でも、それだけじゃなんか面白くなーい」

 恵の言葉にこの場にいる全員が同意する。人生に一度しかない高校一年生の文化祭。どうせならもう少し楽しいことをやりたい。そんなわけで、ここから皆の意見を出し合うことになった。

「はいっ! 私、AtoZかパラダイスロストの上映会を……」

「却下。そんなことよりも俺の『紳士への道 幼女コレクション入門編』をだな」

「……却下。変態は一人でじゅうぶん。ここはスマブラの大会を」

「お前、楽しい文化祭を友情破壊ゲーでめちゃくちゃにする気か」

「……おのれディケ○ド」

「なんでもかんでも世界の破壊者さんのせいにするんじゃねー!」

「なら、わ、私の男の子レクションじゃだめかな……」

「さ、もう少し真面目に話し合おうか」

 やべえな。オラ、ゾクゾクしてきたぞ!(悪寒的な意味で)

「そうですね。真面目に話し合いましょう。ではここは、大真面目にジオラマの展示でいきましょう。テーマは夏らしく水陸両用で。それではみなさん、解散」

「却下だBBA」

「みなさん。もう少し真面目にしたらどうですか」

 美羽の呆れたような一言に全員が痛いところを突かれたように黙り込む。

「せっかくの文化祭ですよ? もう少しみんなが楽しくなるようなことにしましょう」

「そ、そうですね」

「ごめんね。私が間違ってたよみうみう」

「……反省」

「ごめんなさい。お姉ちゃん」

「ああ。BBAにしては良いこと言うじゃねえか」

 どうやら皆、自分のしたいことばかりを先行させすぎて少し暴走してしまったようだ。ならばここは、公平な立場である美羽に決めてもらうとしよう。

 美羽は部にいる全員を見渡した後、威厳をもった声で一言。


「私秘蔵の美紗コレクションの展示でいきましょう。美紗コレと称し、部室内には美紗の写真を高画質で展示! 更に私が盗さt……げふんげふん。とあるルートから入手した美紗のとっておきのお宝動画も出します! これで誕生から現在までに至る、可愛い可愛い美紗をすべて遡ることが出来ます!」


 ぐっ、と拳を握りしめてまるで幸せな夢でも見ているような顔ではあったが、ヨダレが出てるのは指摘しないでおこう。

 まあ。何にしても。


『却ッッッッッ下!』


 その後、なかなか申請が来ないと心配した正人、葉山、国沼が来てくれた時に、正人が「なかなか決まらないならここは定番の喫茶系にしたらどうだ。ここには料理できるメンバーが揃ってるし、さっさとメニュー決めて、材料揃えて内装さえ変えれば本番までは特にすることもないしな。普通に喫茶店でいいんじゃね?」という一言もあり、部内に日本文化の資料を展示するとともに部室を喫茶店に改装することで俺たちの醜い争いが終結したのだった。


 ☆


 【日本文化研究部 女子部員の部屋】(5)


 加奈「ということで浴衣喫茶に決まり、申請も無事通りましたが……みなさん、クラスの方は大丈夫ですか?」

 恵 「私となほっちは大丈夫だよ!」

 南帆「……適当に展示するだけ」

 恵 「かなみんたちは大丈夫なの?」

 美紗「私たちのところはお化け屋敷だから、時間帯さえ合わなかったら大丈夫だよ」

 美羽「美紗、さっき話し合ったみたいに今からでもサキュバスをする気はありませんか?」

 美紗「や、やだよぅ」

 加奈「美紗も色々と大変ですね……」

 南帆「それで恵、そっちはどうなってるの?」

 恵 「んー? 何のことー?」

 美羽「確か、あのまま家に帰らずに海斗くんのところに泊めさせてもらってるんですよね」

 恵 「あれれ~? いつの間にかみうみうのかいくんの呼び方が『海斗くん』になったのかな~?」

 美羽「そ、それは今は関係ないでしょっ!」

 美紗「あ、あの……私も気になります」

 恵 「それでは、あでぃおす!」

 加奈「逃げましたね。恵だけずるいです。私、お隣さんなのに……」

 南帆「……こうなったら強硬手段に出る必要がある」

 美紗「強硬手段?」

 美羽「どういうことですか?」

 南帆「……あとで話す。ふっふっふ」


 ☆


「とりゃー! ここで変身だよっ!」

「うおっ! ちょっ、おまっ」

 恵の放った攻撃によってテレビ画面の中にいる俺のキャラクターのHPゲージが0となった。これで十連敗である。1000倍に加速されてはどうしようもない。勝てるわけねーだろ! でもカッコいい。

「はーい、ごはん出来たよー」

 姉ちゃんの言葉に俺たち二人は振り返る。見てみると、姉ちゃんが三人分の夕食を既にテーブルに並べていた。手伝おうとしていたのにどうやら随分とゲームに熱中(一方的な虐殺だったけど)していたらしい。手伝うつもりだったのに姉ちゃんだけに準備をさせてしまったのは不覚だ。

「ごめん姉ちゃん。手伝うつもりだったのに」

「いいんだよかいちゃん。ささ、一緒に食べよ。恵ちゃんも」

「はい。いただきます」

 現在、この家には俺と姉ちゃん、そして恵がいる。

 因みに恵は合宿から一度も家に帰っていない。

 というのも。

 あの後。

 恵が「今日は帰りたくないの……」と言って駄肉を押し当てて抱きついてきたので俺は真面目に対応したのだ。

「姉ちゃーん」

「なーにかいちゃん」

「恵がうちに泊まりたいって言ってるんだけど泊めてもいい?」

「うん、いいよー」

「だって。よかったな」

 俺はこの時の恵の気持ちを察してちゃんと対応したのにその当の本人ときたらげんなりとした顔をして、

「ああ、うん……そだね」

 と、どこかガッカリしたように言ったのだ。まったく、これだからBBAは。せっかく心の広い姉ちゃんが泊めてもいいっていってくれたのにどうして残念がるのか。

 しかし、どうして帰りたくないかと聞くと。

「なんかさ。今帰っても冷静に話し合いが出来ないって思っただけだよ」

 と、答えた。恵も恵なりに色々と考えているのだろうか。

「にしても、ちゃんと送り届けますってあの時、姉ちゃん言ってたのに、大丈夫なのか?」

「だいじょーぶ! 別に今日中に送り届けるなんて一言も言ってないからね!」

「おおっ、さすが姉ちゃん! 頭良いな!」

「えへへ~。でしょでしょ~」

「私が言うのもなんだけど、それはちょっと違うんじゃ……」

 そんな些細なことは気にするな。

 だが、こんなのは結局、馬鹿なガキの現実逃避だということは俺も姉ちゃんも重々承知している。そして所詮は子供の現実逃避だと分かっているからこそ恵のお母さんは何もアクションを起こしてこない……と考えていたのだが、帰ってきて少しした時に姉ちゃんが言っていたことが気になる。

 姉ちゃん曰く、


「かいちゃん。今回のことはそう難しいことじゃないんだよ? 恵ちゃんがお母さんに我儘を言えばそれで終わりのヌルゲーだよ!」

「でも姉ちゃん。恵は十分、我儘を言っているような気がするんだけど」

「あはは。何ていうかねぇ。今回のことは恵ちゃんにも、お母さんにも問題があるんだけどさ。あのお母さん、今回のことでかなり驚いてるんじゃないかな」

「何に? つーか、そんな風には見えなかったけど」

「母親としての立場っていうか、メンツっていうか、そういうのもあるからねえ」

「……立場と子供、どっちが大切なんだか」

「そりゃ子供だよ。特に恵ちゃんの母親はその傾向が強すぎるぐらいだね」

「いや、それこそ本当にそう見えなかったけど」

「母親のエゴと愛情がごっちゃごちゃになってるんだろうねきっと。でも、あのお母さんは変態的なぐらいに恵ちゃんのことが大事だと思うよ?」

「どうして」

「んー。まあ、これから向こうの方から色々とアクションをとってくるだろうし、あの時、あの場所がどこだったのかをちゃんと思い返してごらん。お姉ちゃんが言えるのはそれだけだよ」


 らしいのだが……うーむ。よく分からん。更に言えば姉ちゃんは「かいちゃんは特に何もしなくても大丈夫だよ~」らしい。どうやらこの家に恵を連れてきた時点で俺と姉ちゃんの役目は終わったとか何とか。もう姉ちゃん一人でいいんじゃないかな。


 ☆


 翌日。

 俺と恵は揃って学校に向かった。朝は姉ちゃんお手製の朝食を有り難くいただいた。姉ちゃんの手料理は世界一美味い。その後、姉ちゃんはサークル活動があるとか何とかで大学へ。

 ……つーかあのサークル、確かストーカーサークルだったよな。大丈夫なんだろうか。俺のプライベートとか色々と。部屋が隣同士なので加奈も誘おうと思ったのだが、どうやら機能は徹夜でジオラマ作りに没頭していた様子で寝不足気味らしい。ちゃんと夏休みを有効活用できていて何よりだ。

 部室に着くと、既に冷房のきいた部屋で南帆がゲームに没頭していた。画面の中のピーマンみたいなキャラクターが光の中に消えろ! と叫びながらなんかビームを撃っている。

「おーっす」

「おっはよー! なほっち!」

 むぎゅうっ、と恵が南帆に抱きつく。しかしそれでも南帆のコントローラー捌きに乱れはない。画面から目を離さないまま南帆が「……おはよう」と呟いたところで部室のドアが開いた。

「おはようございます」

「お、おはよう、ございます……」

 今度は渚姉妹の到着だ。渚姉妹は鞄の中からそれぞれの私物を取り出した。いつもは筆記用具と宿題だったが、昨日の時点で終わらせていたらしく、今度は別のものを円卓の上に並べる。

 美羽が取り出したのが美少女が沢山出てくる漫画。

 美紗が取り出したのが美少年が沢山出てくる漫画。

 姉妹揃ってこうも差が出るとは。この二人の親はいったいどこで教育を間違えたのだろうか。

 しばらく経ってから加奈が加わり、こうしてこの部活の一日が始まる。

 このメンバーは何気に優秀な人材しかいないためか(俺を除く)、文化祭準備の計画の方はテキパキと進み、昨日のうちに食材調達のめどもたった上に内装についてもある程度プランが固まった。メニューについても速攻で決まり……と、ベリーイージーな展開だった。あとは日本文化についての資料を纏めることなのだが……それは俺の仕事になっている。会議の段階で特に役に立てなかったのでこの部分は俺が引き受けることにしたのだ。まあ、パソコンの操作には慣れている方なので楽勝だ。

 そんな中、加奈はスマホの操作を終えると満足げな溜息をもらす。

「はふぅ。やっぱり昨日の<ヒロスト>は最高でした」

 加奈が言っているのは最近、割と人気のある<ヒーローストライク>というアニメのことだ。内容としては熱血ロボットアニメで、特撮とロボットを合体させたようなものになっている。主人公機の必殺技がキックだったり、バイクユニットに乗ったりするだけでなく、他の機体と変形合体までしてしまうというギミックが人気をよんでいる。

「あ、私も見た見たー! 良いよね、あの合体シーンは熱かったよ! 私もついワクワクしたもんっ」

 と、恵が言っているが……おいテメエ。昨日もそもそと夜中にリビングの方から何か聞こえてくるかと思ったらテレビつけてやがったのか。俺なんか、お前と姉ちゃんに気を使って携帯の画面で<魔法幼女ぷりてぃ☆まりん>を見てたんだぞ。ざけんな。俺だってまりんちゃんをリビングのテレビで見たかったんだぞ!

「……今週になってようやくパチさんが活躍した」

 パチさんとは、ヒロストの人気キャラクターである。その人気もネタ的な人気である。パチさんははハゲでキャラデザ公開当初は「パチンコ玉」「ハゲ」と言われていた。そして名前もパチ・コーンという名前からパチンコ玉確定となり、劇中での活躍も、初登場時に秒殺されたり出撃と同時にマシントラブルでパチさんの機体だけが爆散したり、出てくると毎回ネタのような被害にあっている、と散々な目にあっているキャラであった。もっと言うなら、調子乗った台詞を言うと次の瞬間にはすぐに爆散している。

「ああ、俺も今朝見てきたけどさ、違和感あったわ。俺たちのパチさんがあんなに活躍するわけないだろ!」

「大丈夫ですよ。次の次回予告でガッツポーズしたパチさんの機体が後ろからの攻撃で爆ぜてましたから」

「それを聞いて安心した」

「主人公のひろきゅんとライバルのレイきゅんの台詞もよかったよね」

 これは美紗、なのだが……まあ、うん。ヒロストは腐女子にも人気だからなぁ。

「『ヒロ、お前は俺のものだ』ってやつか?」

「うん。レイきゅんが『ヒロ、お前は俺のものだ。俺とずっと一緒にいろ!(意味深)』って……」

 いや、(意味深)はついてなかったような気がするんだけど。

「幼馴染の二人は再開して対話の為に一緒のホテルに泊った回があったでしょ? あの時のひろきゅんとれいきゅんに何が……ううん。そこは妄想力で補うのが私。……いつもは強気なれいきゅんだけど、話を有利に進めたひろきゅんがいきなりれいきゅんに跨ってネクタイを引っ張るの。れいきゅんは恥ずかしくなって頬を赤くして、それを見たひろきゅんが『レイくん。昔はあんなに強気だったのに、今日はどうしたの?』『くっ。やめろ……俺は……』『どうしたの? 顔が赤いよ? それとも……僕じゃだめなのい?』『……ヒロ、俺は……』えへへ……」

「モウヤメルンダッ!」

 くっ。確かにあの回はとてつもなくホモホモしかった割にストーリー上、幼馴染だった二人の対立を決定づけるシーンというとてつもなく重要なシーンなんだけどな……。

「そういえば、今度のコミケにヒロストの同人誌が多くなりそうですね」

「まあ、結構人気だしな。ロボと燃えと萌えと腐を上手に取り込んだ作品だし」

 コミケか。俺は普段から同人誌なるものは見ないからな。グッズには興味あるけど。

 しかし、あの頃は行く暇がなかったからなぁ……色んな意味で。

「コミケ……行ったことないんだよな」

「私もですね」

「……私は基本、夏休みはゲーセン巡りに忙しかったから」

「あはは。私はママに勉強しなさいって言われてて、そういうのに行くのは許してもらえなかったからなー」

 うんうんと頷く俺たち四人。そんな俺たちを見た美羽がケロりとした顔で。

「では、行きましょうか? コミケ」

「……え、お前、行ったことあるの?」

 俺の質問に対して美羽は別段表情を変えずに頷く。

「ええ。美紗の付き添いでファンネル要因になってます。あとは私の好きな百合ジャンルのものを求めて」

 ……俺たちの委員長がこんなにオタクなわけがない。

「何というか……意外すぎる」

「私からすればあなたが行ったことないようなこと自体が意外ですが」

「いや、ほら。俺も一度、同人誌にチャレンジしてみようと思ったんだよ。でもさ、たまたま姉ちゃんが貸してくれた本が幼女もののエロ同人誌だったわけよ」

「それで?」

「……そういうシーンのページを開いた瞬間、俺は意識を失った。次に目を開けた時、そこに広がっていたのは大量の鼻血にまみれた同人誌だった」

「そ、そうですか……」

「うーん。私はコスプレとかに興味あるかなぁ」

「あ、じゃあ私が作るよ」

 恵の言葉に美紗が思わぬ提案を出してきた。この姉妹、実はこの部で一番オタクなのではないだろうか。

 その後もコミケの話題で盛り上がることになり、予期せぬ形で俺のコミケデビューが決まった。

 目指すは企業ブースの<魔法幼女ぷりてぃ☆まりん>の限定グッズ(迫真)


 ☆


 その日の夕方は姉ちゃんの帰りが遅くなるとかで俺たちで夕食を作らなければならなかった。つーかあのストーカーサークルで帰りが遅くなるっていろんな意味で心配だよ。弟しては。

 夕食を食べ終えて、さあこれからどうしようかとした、そんな時だった。

 突然、家のインターホンが鳴り響く。こんな時間に誰だろうと思いながらも鍵を開けると、そこにいたのはやたらと大きな荷物をもった南帆、加奈、美羽、美紗……この鞄、そう。合宿の時に見た、まるでどこかに泊まりに行く時の荷物のような……いやまさかな。

 だがそんな俺の予感を的中させるように南帆は相変わらず表情をあまり表に出さない顔のまま。


「……来ちゃった」



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