第25話 まったく、小学生は(ry
突然だが、拘束具というものを知っているだろうか。よく漫画やアニメなんかで見る人の体を拘束する為のアレである。最近は姉妹精霊がそれを模したものを身にまとっていてとてもエロい。あのラノベを普通の書店で買うには勇気がいるので俺はア〇メイトで買った。
二次元美少女キャラが着ると(この表現で合っているのだろうか)妙にエロいが、男が着るとそうでもない。
まあ、なぜ俺が急にそんなことを言い出したのかというとだ。
「おはようございます。徹さん。昨日はぐっすり眠れましたか?」
「ああ、寝床を提供してくれたのは感謝するよ。強いて言うなら、それが拘束具に身を包んだ状態でベランダに放置されなければ最高だったね」
昨日、どうやら隣の部屋に住んでいる加奈に追い出された徹さんは俺に縋り付いてきた。その姿があまりにも無様で、流石の俺ですらも同情せざるを得ないような状態だったのでこうして寝床を提供した次第だ。
だが、内には姉ちゃんもいることだし、こんな変態を姉ちゃんと同じ屋根の下で寝泊りさせるわけにはいかない。なので、たまたま姉ちゃんが持ってきていた拘束具を拝借して、徹さんに装着させた後にベランダに放り出したのだ。
なぜ姉ちゃんの荷物の中に拘束具が入っていたのかは気にしないでおこう。
「ふわぁあああ……あ、徹くんおはよー。昨日はよく眠れた?」
「まあな。おかげさまでざっと見ただけでも腕と足に十か所ほど蚊に刺された跡がある」
「あ、姉ちゃん起きてきたんだ。朝食何食べるんだ?」
「んー? かいちゃんの作ってくれたものならなんでもいーよっ!」
「そういうのが一番困るんだよなぁ……じゃあサンドイッチでいいか?」
「わーい! かいちゃん大好きーっ!」
「だから抱きつくなって……」
うーん。こうしていると春休みのことを思い出すな。あの時期もこうやって姉ちゃんに朝食を作ってあげていたっけ。朝食どころか昼も夕も俺が作ってたけど。
と、俺と姉ちゃんのやり取りを見ていた徹さんがくわっ! と目を見開いて、叫ぶ。
「ちょっとまて海音! なんだその朝から弟ときゃっきゃウフフは! 俺がずっと思い描いていた理想の妹との朝そのまんまじゃねぇか!」
因みに、海音とは俺の姉ちゃんの名前だ。
「むふふふ。だって私とかいちゃんはらぶらぶなんだも~ん」
「ぐぬぬぬぬぬ。同じサークルの部員なのにどうしてここまで差がついたんだ。慢心、環境の違い……」
いや、それは間違いなく慢心でも環境でもアンタが変態なせいだろ。変態度で言えば姉ちゃんも負けてはいないだろうけど。
朝から賑やかになってきた所で、そろそろ本格的に朝食づくりを開始。「え? 俺の拘束はいつ解かれるんだ?」という徹さんの言葉は無視しておく。
ちゃっちゃかと朝食であるサンドイッチを作り、食卓に並べる。そこでようやく徹さんの拘束を解除。徹さん、リフト・オフ。
「ふぅ。もう少しで拘束萌えという道の境地にたどり着くところだったぜ」
「よかったですね、人に戻れて」
それにしても……。
「ん。なんだよ」
俺がジトッとした目を徹さんに向けていると蚊に刺された場所にかゆみ止めを塗っている徹さんが気づいた。
「徹さん、姉ちゃんのことを下の名前で呼んでるんですね」
「まあ、同じサークル仲間だからな。それに、黒野が二人いたらめんどいだろ」
「へぇ。まあ、いいですけど」
「ん? 何、お前シスコンなの?」
「おぉーっと、手が滑ったぁ!」
「危なっ!?」
ちぃっ! かわしたか!
「いやー、すみません徹さん。ちょっと手が滑ってしまって」
「手が滑っただけでマグカップを人の後頭部に殴りつけようとしますかねぇ!?」
殴りつけようとしたとは失敬な。ただちょっと手が滑っただけなのに。
「まったく。ふざけたこと言わないで下さいよ徹さん。思わず手が滑って徹さんを始……じゃなくて永眠させちゃうところだったじゃないですか」
「お前いま始末と言いかけただろ!? っていうかアレだからな? 永眠って始末と大差ないからな?」
「それは認めましょう」
「ああ、認めちゃうんだ……」
「ですがこの俺にシスコンとは聞き捨てなりませんね。俺はれっきとしたロリコンです」
「それも認めるんだな」
いやね。もうね。俺ぐらいの境地に達すると逆に開き直っちゃうよね。
むしろロリコンの何が駄目なのか俺にはよくわからない。
ちょ――――っと幼女が好きな人のことだろ? まったく、世間の風は冷たいな。
ミ〇トさん風に言うならちょっち幼女に対する欲望を抑えきれなくなりつつある人のことなのに。
「お前がロリコンだという事実は前々から知っていたけど、まさかシスコンでもあるとは思わなかったぜ」
「だからシスコンじゃありませんよ。ちょっと姉ちゃんのことが好きな弟です」
「やっぱりシスコンじゃねーか!」
何言ってんだこいつ。
ライクとラブの違いも分からないのか。まあ、仕方がないか。徹さんだし。
「なあ、俺いま、物凄く下に見られたんだが気のせいだよな?」
「何いってるんですか。徹さんが下等生物であるなんて初めから分かり切っていたことじゃないですか」
「そこは嘘でもそんなことありませんよと言ってほしかったぜ……」
「とりあえず、はい。朝食です」
といいつつ、心優しい俺は徹さんの目の前にサンドイッチの乗った皿を置いた。うむ。我ながら完璧な配置だ。徹さんは俺の心遣いに感動しているのかはっとした顔をし、俺に一言。
「……え? 俺だけ床で食うの?」
☆
「つーわけで、朝からいろいろと大変だったんだよ……」
俺は部室に揃ったメンバーたちにさっきの出来事を報告した。報告というより愚痴に近いだろう。
「あはは。個性的なお兄さんとお姉さんだね」
『その下にくる弟(妹)は苦労が絶えないけど』
同じ苦労を分かち合う者同士、俺と加奈の声がハモる。それにしても誰かと声がハモったのって久しぶりだな。
「……海斗って、シスコン?」
「断じて違う。俺は誇り高きロリ紳士だ」
そう、俺はロリコンという名の紳士なのだ。
紳士と犯罪者予備軍は違う。俺たちはYESロリータNOタッチの信念の元、幼女には手を出さない。だがきゃつらは違う。幼女に手を出すのはただの屑。幼女とは愛でるものなのだ。
「ふぅん。でもかいくん、いやいやだった割に随分とお姉さんとの生活に馴染んでるね?」
「あのなぁ、俺だって苦労してるんだよ。姉ちゃんの朝、昼、夕のご飯を作ったり、寝ているときは風邪ひかないようにちゃんと布団をかけてあげたり、食べ過ぎないようにアイスは半分こにして食べたりさ」
「……完全にシスコン」
だから違う。別にこれぐらいのことは普通だろう?
まったく、最近のゆとりはすぐに人のことを決めつけてくる。やれやれ。これだからBBAは。
「別に姉ちゃんは嫌いじゃないんだよ。ただ行動が奇抜というかさ」
「奇抜、ですか?」
「勝手に俺の抱き枕作ったり、俺の人形を作ったり、俺の写真を盗撮したりな」
「ああ~。分かります。分かりますよ、それ。私もあの兄には困ってます」
なんか妙なところで共感された。
「……なるほど。海斗のストーキングスキルは姉譲りだったと」
「そこに気づくとは、なほっち、やはり天才か……」
さて、と。今日は何して過ごそうか。とりあえず家から既にシリーズ通して十回は読んだロリバスケ物のラノベや幼女もののギャルゲーを持ってきているのでまずどちらから消化するのかが悩ましい。
うーん。ここはやはりギャルゲーの方か。今、ちょうどロリっ娘とデート中なんだよな。
まったく、小学生は最高だぜ! 俺はロリBBA派だが、しかしそれでも小学生が最高であることは変わらない。にしても俺にも小学生のバスケコーチの話が転がってこないものか。一度でもいいから体育館のドアを開けた瞬間、メイド服に身を包んだ幼女たちに出迎えられたいものだ。
因みに俺は水崎さんを心の底から尊敬している。彼は間違いなく英雄となれるお方だろう。分からない人は「水崎新」でググろうぜ! その生きざまに皆もきっと驚きを隠せないはずサ☆
すばるん? そっちの方は読んでいると嫉妬以外の感情が沸いてこない不思議。だが、小学生は最高という意見に関しては同意である。畜生、俺もまほまほやメイド服の下にあるスパッツを拝みたい。ひなたちゃんのパンツを手づかみしたい。つーかすばるん、お前ちょっとそこ代われ。いや、代わってくださいお願いします。
「海斗くん。今まさに逮捕されても文句は言えないような顔をしていますよ?」
「もうっ。かいくん、いったい何を考えていたの? この犯罪者っ」
「……変態」
「ちょっと待て。お前ら酷い言い草だな」
別に何も変なことは考えていないのに。失礼な奴らだ。
……それにしても。
「はぁ……」
「? ため息なんかついて、どうしたのですか?」
きょとんとした顔で俺を見てくる加奈。今日も相変わらずの美貌。キラキラと窓から差し込んでくる朝の太陽の光が金色の髪をキラキラと輝かせており、その白い肌もあってかなり可愛い。
そんな加奈をじっと見つめる。
「な、なんですか……?」
不思議と、加奈の頬が少し赤らんだ。そのままもじもじそわそわドキドキとしているかのように指をいじる。俺は、そんな加奈に向かって真実を述べた。
「いや、幼女のことを考えていた後に見るBBAほど虚しいものはないな、って」
「あ、もしもし警察ですか?」
「なほっち、ちょっとこれ使ってかいくん取り押さえてくれない?」
「……了解 (ガチャッ)」
「HAHAHA。おいおいお前ら、手錠っていうのは犯罪者に使うものだぜ? 使う相手を間違うなんて、おちゃめさんだな☆」
だから外してくださいお願いします。
「……海斗。オサレな人は言った。『手錠をしなければお前を捉えられない。手錠をしたままではお前を逃がさない。絶対にだ』」
「それ最後、別の混じってるからな?」
つーかオサレの欠片もなかったんだけど。
「あ、そうそう。移動手段はどうするんだ?」
その辺のことをまだ加奈に聞いていなかったので、俺はこの機会に聞いてみることにした。加奈の言う別荘に行くまでには電車に乗るかバスに乗るかだが、どちらも結構な額の資金が必要になるのだ。
「ゴ……じゃなかった。兄さんに頼もうかと思ってます」
「お前いま実の兄をゴミと言いそうになっただろ」
「失敬な。私の兄ですよ? ゴミなんて言い方するはずないじゃないですか」
「そうか。悪かった、俺の勘違いだったよ」
「まったくです。私はゴミクズと言おうとしたのに」
「俺の謝罪を返せ。今すぐにだ」
相変わらず扱いが酷いな、あの人は。でも徹さんだからね。仕方がないね。
「どうせついてくるにきまってますしね。夏休みに襲撃に来るのも読めていましたし、来たからにはせいぜい移動手段として使わせてもらいましょう」
「でも全部で八人だよね? 乗れないんじゃない?」
「大丈夫です。ワンボックスカーをレンタルさせるんで」
「となると、俺も姉ちゃん誘ってみるか。つーか、どうせ言わなくても勝手について来るだろうし、こっちもワンボックスカーでも借りて男子と女子に分かれて乗るか」
「……それで問題ないと思う」
こうして、今日の部活動は皆で合宿のことについて話し合った。
そんな時間が俺にはとても新鮮で、嬉しくて。こんな時間を俺が過ごせるのも全部、姉ちゃんのおかげであって、そういう意味では姉ちゃんにはとても感謝している。
あと俺は、断じてシスコンではない。ロリコンという名の紳士だ。
準備が進み、日は流れる。
そして、合宿の日はやってきた。
【日記 7月30日(火)】
明日はついに合宿の日だ。
ぶっちゃけると文研部に合宿って必要なのかな? と思ったりもしたけど、気にしないでおこう。気にしたら、負けだ。
今日もママと話し合いをした。
けど、やっぱり聞く耳をもってもらえず。
合宿に行くことを伝えると「そう」とそっけなくて、冷たくて、まるで私のことなんて興味のないような返事がかえってくるだけ。
やっぱりあの人は、私のことが嫌いなのだろう。
でないと、こんな……こんな、転校なんて嫌がらせをするはずもない。
文研部は私がようやく見つけた居場所。
だから絶対に、ママなんかに……ううん。あの人なんかに負けたくない。
さて、とりあえず合宿の準備にでも取り掛かりますか!
まずは鞄にDXダブルドラ〇バーを詰め込まないとねっ!




