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俺は/私は オタク友達がほしいっ!  作者: 左リュウ
第2章 秀才姉妹と一泊二日の親睦会
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第19話 親睦会二日目~絶望~

 私は昨日と今日、黒野海斗という一人の男子生徒を観察してみて、一つ分かったことがある。

 それは、あの男はどうやら洗脳技術を得意としているらしい。

 ロリコン趣味のある変態にも関わらず、加奈をはじめとして色々な美少女達が彼のそばに寄り添っている。まったく。本当にうらやま……けしからん。ええ、けしからんですとも。

 妹すらも時々、黒野海斗を見つめてはぽーっとすることがある。

 これは由々しき事態だ。

 こうなったら私がもうそろそろ本当に、本格的に動かなければならないのかもしれない。


 ☆


 俺は恵と共に寮のところまで戻ってくると、ちょうど他の班員たちも戻ってきていたようで、さっそく調理に取り掛かった。今回作るのはカレーである。

 加奈曰く、「やはりこういったお泊りイベントにはカレーが鉄板でしょう」という意見を取り入れる形となったが、誰一人として反対はしなかった。反対する理由もないし、カレーならば無難といえるだけでなく、嫌いな人もあまりいないだろうという理由からだ。

 さっそく準備に取り掛かる。

 調理そのものは外で行う。というのも、小学生たちもこの寮を使ってお泊り行事をしているので当然のことながら中の食堂にある設備は無理だし、そもそも中で行ったとしても一学年まるまるをカバーできるだけの広さはない。

 この班には料理上手が多いので、俺が懸念していたありがちな料理下手なヒロインの作った料理を食べなければならないというようなある種のご褒美であり罰ゲームでもあるような状況になることはそれほど心配する必要もないだろう。

 まあ、それはあくまでも、最初は加奈だけに言えることだったのだけれども、どうやら渚姉妹は料理ができるらしい。よかったよかった。


 ☆


 くっくっくっ。

 ついにこの時が来ましたね。この瞬間を待っていました!

 黒野海斗に一泡吹かせることのできるこの時を!

 私は考えていました。洗脳技術を用いて美少女達をはべらせる黒野海斗をこらしめるにはどうすればいいのか。

 そういえば加奈とごにょごにょしたという噂もありましたね。どこから流れたのかデマだったという噂で鎮静化したらしいですが、あれもきっと黒野海斗が裏から手をまわしたに違いない。

 せめて妹があの男の毒牙にかかってしまう前になんとかしなければ。

 真正面から立ち向かっても勝てないことは分かっている。

 仮にも不敗神話を築くだけの男子だ。

 実際、彼が負けたなどという噂は聞いたことがない。

 ならば搦め手にまわるまでだ。

 私はこっそりと家から持ち出してきた秘密兵器、激辛タバスコをポケットの中から取り出す。仮に見つかっても調味料の一つとしか認識されないので問題はない。辛いもの好きといえば済む話だ。

 本当は辛いものは苦手だけれど、どうせこれを口にするのは黒野海斗である。

 てきぱきと手際よく料理を完成させた私たちはさっそく盛りつけに移った。

 席の順番は左から加奈、黒野海斗、その隣に私。その向かい側に左から美紗、葉山くん、篠原くんといった順番だ。私は盛り付け担当を買って出ると次々とご飯の上にカレーを盛りつける(盛りつけるという表現で正しいのかはわからないが)。一つ、二つ、三つ。その三つは美紗たちの側に渡った。ということは今度は私たちサイドの番だ。

 私はてきぱきと三つのカレーを盛りつけると一つにこっそりと秘密兵器タバスコを流し込んだ。少し赤くなってしまったがまあばれないだろう。

「どうぞ」

「ん」

 勝った!

 第三部、完ッ!


 ☆


 女子陣の奮闘によって、てきぱきとカレーは作られた。

 見た目もなかなか美味しそうだ。どちらかというとカレーは甘口派であり、今回のこのカレーも甘口に仕上がっているとあって食べるのがかなり楽しみである。

「どうぞ」

「ん」

 渚美羽からカレーが手渡された。おおっ、美味そう。にしても不思議だな。最近の甘口カレーって赤いんだな。

 感心しつつも周りを見渡す。

 どうやらあとカレーが行き渡っていないのは俺、加奈、渚美羽だけらしい。加奈は料理を終えてから少し席を外している。そして俺は真ん中に座っているということなので、手渡されたカレーを最奥、つまり渚美羽の席に置く。

「あれ?」

 渚美羽が勝ち誇った表情をしながらぼーっとしていたのでさっさとトレイから俺と加奈の分のカレーを取る。とりあえず一つは加奈のところに置くとして、と。

「申し訳ありません。遅くなりました」

「いや、いまちょうど準備が終わったところだぞ」

「そうですか。よかったです……美羽?」

「え? あ、はい」

 はっとした渚美羽はまるで夢から覚めたかのようなリアクションを見せると慌てて席に着いた。

 そして俺の顔を見るなり――なぜか、ほほ笑んだ。勝ち誇っているように見えなくもない。

 いや、今回の親睦会では基本的ににらみつけるの攻撃をして俺の防御力を下げることしかしなかったので笑みを見せられるのは悪いことではない。むしろ喜ばしいことだ。

 班長である正人(※奴隷)が全員が揃ったのを見計らってから、言う。

「そんじゃあ、全員そろったことだし、いただきますっ!」


 ☆


 私は勝利を確信していた。

 これであのDQNから美少女達を解放してやることができる。

 腕力で勝てないのならば知恵で勝負すればいいのです。

 ふっふっふっ。これで私のハーレムが完成しました。

 勝利の余韻に浸った私はさっそくカレーを一口――――、


 ☆


「いやー、やっぱり合宿といえばカレーが定番だよなー」

「それに関しては完全に同意見ですよ」

 確かにこういう場所ではカレーという食べ物はド定番と言えるだろう。実際、他の班を見てみるとカレーが多い。中にはBBQ派もいるのだが、カレー六割BBQ三割残りその他一割といったところだろうか。

 と、ふと俺は隣の渚美羽の様子が少しおかしいことに気がついた。

 ぷるぷると肩を震わせて口元を押さえている。顔が心なしか……いや、完全に真っ赤だ。

「ど、どうした? 渚美羽」

 そんな俺の問いかけに渚美羽は、

「……な、なんれも、ありま、しぇん……」

 どうみてもなんでもあるのだが。

「な、なんか凄いつらそうだぞ?」

 からそうともいう。

「し、しょんなことありましぇん!」

「いや、そんな泣きそうな顔をされても……」

 説得力が皆無である。

 顔が真っ赤になってヒー! ヒー! ヒーヒーヒー! と辛そうにしているし。本当に今にも泣き出してしまいそうな顔だ。

「と、とりあえず落ち着け、な?」

「落ち着いてましゅっ!」

「無理するなよ……」

 そもそもどうしてこんなことになっているのだろう。カレーを食べる前は勝ち誇ったような笑顔を向けてきたのに、カレーを食べた直後からこんな調子である。カレーが辛すぎた? でもこのカレーは甘口だし、俺も食べてみたけれどフ○イムスタイルにスタイルチェンジするほど辛くはない。

 けど、実際に渚美羽はこんなことになっているし。

 もしかして俺の味覚がおかしいのか? ま、まさか! 俺の体内にある幼女メダルのせいでグ○ード化が進行しているのか!? だったらせめて変身させてくれ! いや待てよ。もしもグリ○ド化したら俺はひたすら幼女を求めるのか?

 なんだ。今となんら変わらないじゃないか。心配すること無いな。

 あっ、でも味覚や視界がああなるのは嫌だな。それを考えると明日のパンツの人は辛かっただろうな。

「う、うううう……」

「!?」

 俺の「無理するなよ」という言葉に反応したかのように渚美羽が再びスプーンを手にとってカレーを一口食べる。

「~~~~!」

 今度はフレイムド○ゴンかなー。

 進化したか。

 などとぼんやりと考えていると美紗が心配したように、

「お姉ちゃん……辛いもの苦手だったはずなんだけど……」

 ああ、だから反応がこんなにも大げさなのか。

 っていうかそろそろ本格的にやばそうだな。

「大丈夫か? 水飲め、水」

「ふぇ、ふぇきのほどこひはうけまふぇん!(※訳:て、敵の施しは受けません!)」

 なに言ってんだこいつ。

 やれやれ。これだからBBAは。もう辛さに絶望してファ○トムでも生みだしちまえよ。

 ん? 待てよ。俺からファン○ムが生まれたらどんなのが生まれるんだろう。

 はッ! ま、まさかッ! 幼女ファ○トムかッ!?

 おっとこいつはカレー食ってる場合じゃねえ、今すぐ絶望しなければ!

「うおおおおおおおおお! 絶望しろ俺ぇええええええええええ!」

「まってかいくん! 絶望してファン○ムが生まれたらかいくんが死んじゃうよ!」

「幼女ファ○トムが生まれるなら構わん! この命くれてやる!」

「わー。後半のセリフ、普通ならかっこいいのになんでしょーもない感じにしか聞こえないんだろうね」

「ドラゴン! 俺に力を貸せ!」

「貸さないと思うよ?」

「くたばれ魔法使い!」

「ああ、絶望に失敗しちゃったら幼女ファ○トムが生み出せないもんねぇ」

「くそぅ! 頼むフェ○ックスさん! 今すぐ太陽から帰還して俺を絶望させてくれ! 間に合わなくなってもしらんぞー!」

「そういえばフェニッ○スさんどうなるんだろうねぇ。あれ私的には終盤で超パワーアップして帰ってきて退場するフラグだと思うんだけど」

「いやまて。某幹部ポジ怪人のように人間として生きて工事現場で働いているかもしれないだろ!」

「あれ? かいくん絶望しなくていいの?」

「…………」

「…………」

「うおおおおおおおおお! 絶望しろ俺ぇええええええええええ!」

「またそこから始めるんだね!」

「くそっ! 幼女のことを考えると胸がきゅんきゅんして絶望できねぇえええええええええええ!」


「かいくんを絶望させる方法……。かいくんの目の前で幼女をJKにまで成長させれば……」


「たすけて魔法使いさん! 今すぐシャバドゥビして俺を助けて! あなた様が最後の希望です!」

「物凄い手のひら返しだね!」

 幼女をJK化させるだと?

 えげつねェな……。

 思わず念○力でゴリラを具現化してしまいそうだ。

「……二人とも、美羽のことを忘れてる」

『あ』

 そういえばそうだった。

「……大丈夫か? 渚美羽」

「ずいぶんと今更ですねぇ!」

 どうやら俺と恵がふざけている間に収まったらしい。

「ち、ちょっと水をもらってきます」

 俺と恵がふざけている間にずいぶんと水を飲んだらしく、既に水はカラッポだ。

「――――ッ!」

 こ、これは!

「あっ、待ってくれ。俺もいく」

 一人でつかつかと行く美羽を追うようにして俺は席を立つ。それを見た南帆が、

「……海斗。もしかして、美羽が心配?」

「いやまったく。ただ俺の幼女センサーがこの近くで幼女がお食事をしているのを察知したから見学に行こうかと」

 さてと、盗撮は出来ないがせめてこの目に幼女の神聖なお姿を焼き付けるとするか。

「……うん。それでこそ海斗」

「ええ。私も一瞬、美羽を心配しての行動だと思いましたけど気のせいだったみたいです」

「いやぁ、かいくんはぶれないねぇ」

「? お、おう」

 というわけで、俺はうきうき気分で席を立った。

 カレーはまた後で食べれば良いだろう。まずは幼女を目に焼き付けてで栄養補給せねば。


 ☆


 私は、かいくんがストーキングに行ったのを見送ると、「そういえばさ」と奴隷……じゃなかった。まさやんが怪訝な顔をしながら言った。

「なんで渚美羽さんだけあんなに辛そうにしてたんだ?」

「……美羽のだけ激辛カレーだった」

「え? なほっち食べたの?」

 こくり、と頷くなほっち。

 どうやらなほっちは辛いものがイケる口らしい。

「でもどうしてでしょう? みんなは美羽がカレーをよそうのを見てましたよね?」

 みうみうが自分で自分のカレーを激辛にするとは考えにくい。

 そもそも辛いものが苦手らしいし。ああ、でもあえてチャレンジしてみたというのもあるけれど、それでも今この場でするような子には見えない。

「んー。じゃあ誰がみうみうのカレーに細工したのか?」

「でもよ、あの状況じゃカレーに細工するのは難しいよなぁ」

「そこなんですよね」

 うーんと唸るみんな。

 よし、ここは……。

「みんな!」

 私の一声でみんながいっせいに私のほうに視線を向ける。

 その視線を一身に受けて私は一言。


「――――犯人は、この中にいるっ!」


 言ってみただけだけどね。うん。犯人なんて微塵も分からないけどね。でも面白そうだから言ってみた。それと「――――犯人は、この中にいるっ!」というセリフは人生で一度は言ってみたいセリフランキング(牧原恵調べ)にランクインしていたので言ってみただけだ。

 この先のプランなんてまったく考えていない。

 でも。

 ……ふふふっ。面白くなりそうだなぁ。

 かいくんがいないと面白さが薄れるし、ちょっと暇つぶしでもしちゃおうっ!

 ノープラン迷探偵、恵ちゃんの登場だ!


サブタイトルの「絶望」の詐欺感。


シリアスだと思った? 残念! ネタでした!


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