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俺は/私は オタク友達がほしいっ!  作者: 左リュウ
第2章 秀才姉妹と一泊二日の親睦会
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第16話 親睦会一日目~集いし願い~

 親睦会は我が流川ルカワ学園から遠く離れた山奥の中にある廃校となった学校を使用して行われる。廃校になったとはいえ、校舎そのものは整備が行き届いている。

 というのも、廃校になった校舎そのものを大規模な学習塾の会社かどこかが買い取って改装・更に宿泊施設の為の寮を増設して塾の勉強合宿の為に利用するかららしい。学園は毎年、親睦会の季節になるとこの校舎と寮を借りて一泊二日の親睦会を行う。

 休憩を鋏みながらバスで走ること約六時間。長旅の末にたどり着いた寮に入る。部屋は男女別、班別に割り振られており、俺たちの班は俺、正人、葉山の三人である。

「あー、疲れた」

 部屋に着くなり正人がどっかりと腰を下ろす。塾の勉強合宿に使われているとだけあって部屋の中には学習机がある。あとは二段ベッドが二つ。部屋の中はそれなりに広く、テレビや冷蔵庫もある。

「九時に出発して、今は……三時か」

 時計を見ながら正人が呟く。

「となると今、学園の方はもうすぐ授業が全部終わる頃合いだな」

「気になるのか?」

 正人は生徒会に所属している。放課後に毎日顔を出している辺り、こいつもそれなりに生徒会と言う場所が気に入っているのだろう。

「まあな。なんだかんだで楽しいし」

「正人くん、生徒会って普段はなにをしてるの?」

「んー。まあ、生徒会に宛てられた生徒からの要望について議論したり、基本的に学園のことに関する話題が多いかな」

 うむ。仕事はしているようで何よりだ。

「確か、夕食前までは自由時間だよな」

 まるでライトノベルの中にある学園のように、この流川学園の校風もかなり自由だ。生徒の自主性がうんぬんかんぬんという名目の元、この親睦会も大半が自由時間である。

「それまで何しようか?」

「……やれやれだぜ」

 葉山の言葉に正人が某ジ○ンプ漫画の第三部主人公の口癖を呟いた。

「フッ。お前らはなにもわかってはいないようだな……」

「なん……だと……?」

 とりあえずノッておくか。暇だし。

「一つ聞いておくが、お前らは何をしにこの親睦会に来たんだ?」

『?』

 意味がわからない俺と葉山は首を傾げる。

「やれやれだぜ。どうやらお前らはこの戦場に、丸腰で来たらしいな」

「回りくどい事いってねえでさっさと話せや」

「仕方がないな。なら教えてやろう……葉山!」

「なんだい?」

 ビシィッ! と正人が葉山に指差す。顔が劇画タッチなのは気にしない。

「お前がこの学園に転校して来て、何か気づくことはなかったか⁉」

「気づくことって……そうだなぁ。設備が良いと思うし、校風も自由で良い学園だなぁって思ったけど」

「そうじゃない。生徒の印象だ」

 正人の言葉に葉山はしばらく考え、やがて「ああっ」とようやく思いついたとでも言わんばかりにぽんっと手と手を軽く叩く。


「カッコイイ男の子が多いよね!」


「…………ごめん。お前にきいた俺が間違っていた」

 ぶるりとまるで自分を庇うかのようにして身を震わせる正人。

 どうしたんだ? 別に何もおかしなことは言ってないじゃないか。確かにこの学園は美男が多いとは思う。実際、チャラいけど正人もカッコいいしな。

 ……でもなぜだろう。葉山の視線に寒気がした。部屋が寒いのか?

「そうじゃなくてだなぁ……じゃあ海斗、お前はどうだ? 生徒たちを見ていて気付いたことは。ヒント、女子だ!」

「なるほど。お前の言いたいことはわかった」

「流石だな、相棒」

「お前とは短いが濃い付き合いだからな」

 ニヤリと俺と正人は互いに笑みを浮かべる。

 隣で葉山が俺と正人を見て「……濃い付き合い(意味深)」とか言ってるけど、何をそんなにぽーっとしているのか。おかしなやつだな。

 しかし、俺は正人の考えることがちゃんと解っている。

 自信をもって俺は言う。


「幼女が一人もいないことだな!」


「このバカ野郎ッ!」

 種割れした正人の足蹴りで吹っ飛ばされる俺。トゥヘアーされたけど、俺の言ったことのどこが間違っているのか。モウヤメルンダ!

「くそっ! どうなってるんだここにいる男共は! お前ら、女に興味はないのか⁉」

『無い』

 BBAはな。幼女は別だ。

「まったく。お前らはこういうお泊りイベントの利点を何もわかってない。こいつを見ろ!」

 ごそごそと正人が鞄から取り出したのは――――、

「カメラ?」

 葉山がなんで? とでも言いたそうにしている。俺だってそー思う。

「このタイプ……他の機種よりも低価格の割に画質も良いし、メモリの容量も多い。しかし他のタイプと比べてデザイン性の悪さ若干の使いづらさはあるが、安い値段で良い画を撮りたい時には向いているタイプだな。購入層も家族連れじゃなくてお前のような独り身も多いし」

 ブツブツと俺がカメラを見て解説していると正人が、

「お前、やたらとカメラに詳しいな」

「まあな。普段から結構使うし」

「何に?」

「そりゃもちろん、ようじょ……」

「…………」

「…………………………………………………………………………趣味に」

「お前いま言い換えたよなぁ⁉」

「嘘は言ってないぞ」

「嘘であってほしかったよ!」

「やだなぁ。ちょっとマイカメラを持って幼稚園や小学校の周りをうろつくだけだって」

「もし俺が想像していることが正しいとするなら、お前は今すぐにその趣味を止めるべきだ!」

 何を言っているのかまったく聞こえないな。

「っつーか、お前だってそのカメラを何に使うつもりだよ」

「決まってるだろ。盗撮だ」

「人のこと言えねぇ!」

「バカめ! ということはお前も盗撮だということを認めるのだな⁉」

「ハッ!」

 違う。違うんだ。別に盗撮なんてしていない。たまたま起動していたカメラがたまたま幼女たちの神聖な御姿を捉えただけなんだ。決してわざとではない。

「まったく。これだからロリコンは」

「誰がロリコンだ」

「ほぅ。否定するか」

「ああ」

「……次にお前は、『買ったぁああああああああ!』と言う」

 急に何を言い出すんだこいつは。そんな漫画のようなことが起こるわけ……

「ここに俺の知り合いの妹(8歳)の写真があるんだが、一枚一〇〇〇円でどうだ?」


「買ったぁああああああああああああああああああああああああああああああああ!」


「…………」

「…………ハッ!」

 こほん。

「おい正人。盗撮は犯罪だぜ?」

「ぼったくり価格で人の知り合いの幼女の写真を買ったやつに言われたくはないなぁ!」

 くっ。なんて汚い手を使いやがる。

 とりあえずこの一〇〇〇円を支払って入手した写真は犯罪者予備軍の正人の手に渡らないように、可及的速やかに保存しなければ。とりあえず家に帰ったらスキャナーをかけるとするか。

「まあまあ。落ち着いて二人とも」

 葉山がやけににこやかな笑顔で俺と正人を見ている。何かいい事でもあったのだろうか。

「まだ正人くんが盗撮をするって決まったわけじゃないしさ」

「いや、するけど?」

 大丈夫か生徒会。

「とにかく、だ。俺が言いたいのはこの学園の女子は全体的にレベルが高いということだ!」

「あっそ」

「そうなんだ」

「…………」

「盗撮に関しては止めはしねぇがほどほどにしろよ」

「頑張ってね、正人くん」

 さて、ギャルゲーギャルゲーっと。うひょおおお! りんごちゃん可愛いよおおおおおおお!

 フヒヒヒヒ……。

「うぉいお前ら! それでも男か!」

「なんだよ盗撮男」

「お前らも参加しようぜ!」

「断る」

「なんで」

「メリットがない」

「あるだろ! 全体的にレベルの高い女子たちの無防備な姿を拝めるんだ!」

「BBAの無防備な姿を拝んで何が楽しいの? バカなの? 死ぬの?」

「僕もあんまり女の子には興味ないしね」

「もう駄目だこいつら! 俺の手に負えねぇ――――――――――――!」

 叫ぶ正人。でも忘れていないだろうか。この生徒会役員おまえも盗撮をしようとしているのだが。

「お前らは男として駄目だろ! こう……色々と!」

「お前は人として駄目だけどな」

「……実は、さっきの俺の知り合いの妹(8歳)の写真、バリエーションが数種類あるんだが」

「仕方がねえな。親友の頼みだ。協力してやるよ。俺の全力を尽くそう」

「一枚一〇〇〇だ」

「全種類五ダース買おう」

 幼女の写真の為なら、喜んでBBAを生贄に捧げよう。

「海斗くんも参加するの?」

「まあな。幼女の写真の為ならBBAを生贄リリースすることは厭わない」

「うーん……」

 どうやら葉山は悩んでいるようだ。そこで正人が、

「……実はここに俺が生徒会のデータから失敬して製作した流川学園美少年大図鑑が」

「僕も喜んで参加させてもらうよ」

「No1~No3の全部で三冊。一冊二五〇〇円だ」

「全種類五ダース買うよ」

 割とアッサリと堕ちた葉山。まあ、こいつに撮られるのならBBA共も本望だろう。

「それで、どうせ女子の入浴でも盗撮するんだろ? 犯罪者」

「誰が犯罪者だ。つーか、そんなことしねーし」

「ん?」

 おかしいな。ラノベでもこういう展開は入浴を狙うというのが相場で決まっているものなのに。

「甘いな。俺が狙うのは……女子会だ!」

「女子会?」

「そう! 女子たちが無防備な表情や仕草、それらを一度に魅せるのがお泊りベントにおける夜の女子会と言う場!」

『ふーん』

「しかも……しかも! お泊りイベントともなればパジャマ装備は確実ッッッ! 女子のパジャマ姿という普段の学園生活では拝むことの出来ない聖衣! それをこの目に焼き付け、更に他の男子たちにも供給することが俺の使命ッッッ!」

『ふーん』

 本当に大丈夫なのだろうか、この学園の生徒会は。

「お前らもなんだかんだで興味ないか? 女子の夜の会話!」

『無い(ね)』

「……お前らが男を捨てているという事は嫌と言う程わかった」

 失敬な。俺は紳士としての心を捨ててはいない。

「ともかく! 作戦決行は就寝時間の二十二時ジャスト。それでは諸君、幸運を祈る!」

 もうやだ。この生徒会役員。


 ☆


 私は妹の美紗、加奈と一緒に寮の部屋で一息ついていた。乗り物を使った長旅とは不思議だ。特に体を動かしていたわけではないのに疲れるのは何故だろう。

「夕食までは自由時間でしたね、確か」

 加奈が親睦会のしおりを見ながら言う。

 この学園は自由な校風が売りらしいのだけれど、さすがに予定がアバウトすぎる気する……と思うのは私だけだろうか。

「美羽と美紗はそれまでどうしているのですか?」

「私は部屋にいようかな……」

 美紗は大人しい、というか人見知りなところがあるのでこの反応は予想できた。

「お姉ちゃんは?」

「私も部屋でゆっくりとします」

 妹がいるのならば私もここにいる。当然のことだ。

「私に気を遣わなくてもいいんだよ?」

「そういうわけではありません」

 気をつかってるとかそういうわけじゃなくてただ単純に美紗を愛でた……げふんげふん。

「おっじゃましま――――す!」

 突如として部屋に乱入してきたのは、牧原恵という少女だ。後ろから楠木南帆という少女もついてきた。ええーっと、確か<日本文化研究部>に所属していたんだ。私の妹がアレなんで加奈たちの趣味を知っても特に驚きはしなかった。

 むしろ、加奈たちとは今ではそれなりに仲の良い友人になった、というところだろうか。

 しかしあの黒野海斗と一緒にいるということだけは納得がいかない。この子たちは騙されているのだ。

 私がしっかりしないと。妹だけでなく、この可愛い可愛い美少女たちを護らなければ。夜が楽しみですね。ふふふ……げふんげふん。

「恵、そっちの班は大丈夫なのですか?」

「大丈夫だよ~。だって私たちの班の女子は私となほっちしかいないからね!」

「はぁ」

 部屋に美少女が四人もいる。うふふふふふふふふふ。……げふんげふん。

「いやぁ。夜のパジャマパーティが楽しみだねぇ」

 私も楽しみですよ。うふふふふふ。

「? 恵たちは部屋が違うからそんなことは出来ないんじゃ……」

「一応、可能と言えば可能ですよ加奈。一応、就寝時間外に部屋から出なければ部屋を移動しての就寝は許可されてますよ」

「そ、そうなんですか?」

 まあ、あの生徒会長がこの親睦会のしおり作りに関わったというし、意図的に夜の女子会が出来るようなルールにしたに違いない。……生徒会長、最高です。

「あ、本当だ。書いてました」

「……大半が自由時間だから初日の予定に関してはしおりを確認しなかった」

「みうみうはしおりを読み込んでるんだねぇ」

「え、ええ。まあ」

 それはもう楽しみでしたから。夜の女子会。美少女達のパジャマ姿。

 うふふふふふふふふふふふふふふふ。

「で、でも就寝時間は用心しなければいけませんね。バカな男子は何をしでかすかわかりませんから。特にあの黒野海斗はなにをしでかすか……」

 そうだ。ここにいる私の美少女たちを護るのが私の使命だ。用心しなければ。

 だがそんな私の決意とは裏腹に、

「海斗くんが? それはないですね」

「……ありえない」

「うん。ないよね。絶対」

 だめだ。この子たちは黒野海斗を侮りすぎている。

「なぜそう言い切れるのです?」

「だって……ねぇ?」

「……私たちのパジャマ姿には興味なさそう」

「だよねぇ。かいくん、私たちのパジャマ姿か幼女の写真、どっちをとるかって聞かれたら迷わず写真って答えるよね」

「まさか。そんな変態がこの世にいるわけないじゃないですか」

 こんな美少女たちよりも小さな女の子。どっちも魅力的ですけど写真と本物どっちをとるかなら本物でしょう。

『…………』

 なんだろう。この反応。

「そうならどれだけよかったことか……」

 ぼそっと加奈が何か言ったけど、私にはにわかには信じられない。そんな生粋の変態がこの世にいるわけがない。

 仕方がない。この無垢な美少女達を守るにはどうやら私が動くしかないようだ。私の直感では必ず奴……否、奴らは現れる。必ずだ。

 さてと。私物のトラップでも女子寮周辺にでも仕掛けておきましょうか。

「お姉ちゃん、そのやたらとゴテゴテした荷物、なぁに?」

「気にしなくていいんですよ、美紗。これはゴキブリを駆除するための道具です」

「ゴキブリを駆除するのに手榴弾とピアノ線がいるの?」

「最近のゴキブリはしぶといですからね。仕方がないですね」

「ゴキブリを駆除するのにセンサー感知式の固定砲台がいるの?」

「最近のゴキブリはやたらと素早いですからね。うっかりしてるとベルトにさしているメモリを盗られちゃいますよ」

「ゴキブリを駆除するのにクレイモア地雷がいるの?」

「最近のゴキブリは吹き飛ばすのに限りますからね。まずは足から潰そうかと思いまして」

「……さ、最近のゴキブリって凄いんだね」

「ええ。美紗も気を付けるのですよ」

「う、うん……」

「私はちょっと女子寮周辺に用があるので少し席を外します」

「い、いってらっしゃい」

 ふう。どうにかごまかせたようだ。美紗がちょっとドン引きしていたのはきっと錯覚だろう。どうやら私もかなり疲れているようだ。

 可愛い可愛い私の妹。そして私のハーレムたち。

 必ず守り通して見せますからね。うふふふふふふふふふふふふふ。


「海斗くんと正人くんと葉山くん……部屋で何やってるんだろう……うふふ腐腐腐」

 美紗が将来に対して若干の不安を感じさせることを言ったような気にするのだが、私はそれを意識の外に押し込めた。


 ☆


『アッ――――――――――――――――――――!』

 何故かわからないが急に俺は背筋がぞくっと冷たくなり、意味もなく叫んだ。

 な、なんだ。俺の身に何が起こったんだ。

「くっ。なんだ今の不気味な気配は」

「そうかなぁ。僕としてはなんだかほっこりする感覚なんだけど」

「? そ、そうか?」

 何故だろう。葉山の笑みには危機感しか感じられなかった。

「それにしてもやる気でねーなー」

 確かに幼女の写真は欲しいがターゲットがターゲットだからな。

「ちなみに、ここの寮ってめちゃくちゃ広いだろ?」

「ああ。そうだな。俺らの学園の生徒が使ってもスペースがありあまってるからな」

「それでさ、さっき他の学校がここの寮に来たんだけど」

「それが?」

「ほら、ここら辺にに小学校があったよな」

「ああ。そこにいけないのが至極残念だ」


「……今、その小学校の三年生が学校行事でここの寮でお泊り会やってるらしいぜ」


「おいお前ら、今すぐ作戦を練るぞ。見取り図を持ってこい。カメラも貸せ。俺が改造しいじって暗闇でもくっきりと撮れるようにしてやる。準備を怠るなよ。目の前の障害は全て叩き潰せ。これは戦争だ。繰り返す、これは戦争だ。俺たちの全戦力をもってこのミッションを完遂させるぞ」

 やれやれだぜ。どうやら本気を出す時が来たみたいだな。


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