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俺は/私は オタク友達がほしいっ!  作者: 左リュウ
第9章 修学旅行とこれからのこと
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第108話 恵の告白

2ヶ月もお待たせしてしまい、申し訳ありません。


それと、前回の海斗の発言では告白は「ホワイトデー」に行う予定でしたが、それをクリスマスに変更。

加奈の発言も「バレンタインデー」から「クリスマス」に変更しました。


何度も変更してしまい、申し訳ありません!


諸事情により更新ペースは遅れますが、物語もクライマックスなので次の更新も出来るだけ早くお届けできるように頑張ります!



 修学旅行から帰ってきてからというもの、部室の空気は明らかに変化していた。

 きっかけは分かっている。メイが俺に告白してきたことによるだろう。なぜか後輩である小春と南央の様子もちょっぴり変化していることからして、おそらく二人も知っているだろう。


 更に言えばここ最近、家に帰って、布団にもぐりこむ時間が増えた。

 布団の中で、俺はあらためて心を整理する。

 父さんと話したことで自分の中でそれなりに心の整理がついた。

 あらためて、これまでのことを考える。


「つーかさぁ……うぬぼれ、じゃ、ない、よなぁ……」


 考えているのはみんなのことだ。みんな、というのはつまり……その、俺に好意を寄せてくれている子たちのこと。


「多分だけど……ていうかメイは確実にだけど……多分、みんな、俺のことを好きでいてくれているんだよなぁ…………」


 うぬぼれじゃなければだけど。いや、うぬぼれじゃない。多分。

 心の整理が出来たことで、俺を好きだと言ってくれている女の子が出てきたことで、俺はあらためてこれまでの自分がいかに鈍かったか、そしてみんなが俺に好意を寄せてくれていることが分かった。


「ああああああああああああああああああああ! もう俺のバカバカバカバカバカバカか俺はッ! なんで今まで気づかなかったかなぁ!」


 布団をかぶってごろごろとベッドの上を転がる。あ、やべ。落ちた。痛い。痛いけど今はそんなことはどうでもよくこれまでの自分の言動に恥ずかしさが頂点に達する。ああ、この、黒歴史ノートを公開している気分! なんで俺はここまで鈍かったのかなぁああああああああああああ! もう! いや、そりゃ俺の中では基本的に、


 幼女or姉ちゃん>(越えられない壁)>その他大勢


 ぐらいだったし! いや、幼女に目がくらむのは男として仕方がないことだ。何せ男はみんな潜在的にロリコンだっていうぐらいだし。そうだ。男はみんな本能的にロリを求めているんだ。


「はふぅ……ちょっと落ち着いたな。うん……うん。落ち着いた。落ち着いたぞー、黒野海斗」


 ぜんぜん落ち着いていないぞという幻聴がきこえてきたがスルーだ。

 更に布団の中でもぞもぞごそごそとしていると、不意に家のインターホンが鳴った。

 今日は日曜日だ。特に誰かと会う予定もないはずだし……誰だろう。


「やっほー、かいくん」


 扉を開けてみると、そこにいたのは恵だった。




「………………」

「………………」


 突然やってきた恵をとりあえず俺は家の中に入れ、お茶を出す。席に着いたはいいが何となくお互い無言になってしまう。ここ最近、部室の空気はいつもとは違っている。理由は分かるのだが、まあ、そこにはみんな触れようとはしなかった。

 だからこそ、今の状況で二人きりというのは気まずい。


「えっと……それで、今日はどうして、その、いきなり?」

「り、理由がなくちゃ来ちゃだめ?」

「いや、別に…………」


 扉を開けた時はいつもの恵だった(気がする)のに、部屋に案内したらいきなり態度が小さくなった。というより、ちょっと……緊張しているような。

 そりゃ、俺だって緊張している。何しろ、好意を持ってくれている、とてもかわいい女の子と部屋で二人っきりなのだから。……前までは、別にここまで緊張することも無かったんだけどさ。




「ごめん。うそ。今日は、理由があって来たの」




 沈黙が場を支配しようとした時、恵が切り出した。

 その顔は赤い。とても。


「えっとね、メイちゃんから……かいくんに告白したって、聞いて……」


 話してるのかよあいつ! いや、部室の空気からして何となく知っていたけど!

 ていうか恵のやつ、緊張のし過ぎでメイのことに勝手に位に命名したあだ名で呼ぶことを忘れてるぞ。


「……その時ね……わたし――――ドキッてしたんだ」

「…………っ」


 どくん、と心臓の鼓動が跳ねる。

 恵の言葉はとても真剣で、必死さが籠っていて、無視することも、聞き流すことも出来なかった。


「かいくんがね、メイちゃんと付き合うことになったらどうしようって……思ったら……胸が、きゅうってなって……」


「…………」


 ドキドキドキドキと心臓の鼓動がさっきからやけにうるさい。

 まるで不意打ちだった。心の整理がついたと思っていたけど、なんか、こう、急に来ると……やばい。


「だから……わたしも……伝えたいって思ったの。かいくんの気持ちは分からないけど……後悔、したくないし」


 それを告げると、恵は呼吸を整える。頬が紅く染まって恵の豊かな胸が呼吸に沿って上下する。

 時間がスローに引き延ばされたような気がして。

 今の、決意を固めた恵は、その魅力を何倍にもしたんじゃないかと錯覚するぐらい……かわいい。

 ただただ緊張して恵の顔をぼーっと見ている事しか、俺には出来なかった。その間に恵は呼吸を整え、勇気を振り絞り、その言葉を――――告げた。




「――――――――わたし、かいくんのことが好き」




 告白してくれた恵の表情は笑顔だった。

 顔は真っ赤だけど、笑顔はまるでヒマワリのようで、華やかで、魅力的な笑顔だった。

 俺は恵に対して何も言うことが出来ず、不意打ちのような告白に言葉が出なかった。すると、当の恵はというとぷはぁ~と息を吐き出した。


「えへへっ。い、言っちゃった…………」

「お、おう……」

「むぅ~。なに、その反応。これでもけっこー、勇気出したんだよ?」

「ご、ごめん……」

「んーん。ていうか、急に押しかけて、急に告白しちゃったの、わたしだし。そりゃ混乱するよね。わたしでもびっくり。超展開過ぎるもん」


 てへへと笑う恵は、どこか吹っ切れたような、そんな感じだ。


「はぁ……告白出来て、よかったぁ……」

「…………あの、喜んでるところごめん。その、返事、なんだけど」

「うん、待つよ。だいじょーぶ!」


 恵は笑顔のまま、そう言ってくれた。なぜか俺はホッとしてしまう。


「だって、メイちゃんの返事も保留にしてるもんね。かいくんって今、いっぱいいっぱいだろうし」

「うん……悪い。その、メイにも言ったんだけど、クリスマスには、返事するから」

「ん。楽しみに待ってる。緊張するけどね」


 頬が桜色に染まっている恵は、とてもかわいい。特に今は、いつも以上にかわいい女の子になっていると思う。


「……待たせることになってごめん」

「だってわたし、ずっとかいくんのこと好きだったもん。これぐらい待てるよ」


 ずっと好きだったと来ましたか……。

 あーもう、だめだ。顔が赤い。


「ん。わたし、もう帰るね。今日はこれを言いに来ただけだし」

「おう」

「かいくんも、考える時間が必要だろうし」

「そうだな」

「…………むぅ。そっけないなぁ」

「余裕ないんだよ。察しろ」

「え~。BBAに対して何も思わないんじゃないのぉ~?」


 恵がからかうようにしてそんなことを言ってくる。こ、この野郎……。


「う、うるさいな……。ていうか、お前分かってて言ってるだろ」

「今まで鈍感さんだった分のお返しだもん」

「うっ」


 そ、それを言われると弱いけど。


 恵は俺を多少からかって満足したのか、そのまま本当に帰り支度をしはじめた。

 だけどその足取りは若干、急いでいるようだ。どうやら向こうも向こうで恥ずかしいらしい。扉の前に立った恵はいつもの小悪魔的な表情をしていて、


「かいくん、多分、これからもっと大変だよ? わたし一人にこんなにドキドキしちゃって大丈夫?」

「……さあ、な。でも、逃げずに……向き合おうとは、思う」

「ん。分かっているならよろしい」


 恵の言わんとすることは俺にも分かる。だからこそ、せめて、これから逃げずに向き合うつもりだ。

 みんなの気持ちと。


「じゃあ、ね。かいくん。また、明日。学校で」

「ん。また明日」


 ぱたん、と。

 恵は扉を閉めて、部屋から出て行った。

 俺は恵を見送ると、その場に座り込む。

 メイの告白だけでもかなり緊張しているのに、恵の告白までも受けてしまった。でも、まだ、これだけで終わらないんだろうなとは思う。


「……はぁ。俺、どうなっちまうんだか」


 今の俺には、そう呟くことが限界だった。


 ☆


「………………っ」


 自分の家の部屋に着くや否や、恵はぺたりとその場に座り込んだ。

 ついに言った。言ってしまった。

 海斗に、告白してしまった。

 ドキドキが収まらない。

 顔は真っ赤のままだ。


「はぁ~…………言っちゃった……言っちゃったよう……」


 メイが告白したと聞いて、胸がきゅんとなった。チクッともした。

 海斗の気持ちが何にせよ――――メイに気があるにしても、せめて自分の気持ちぐらいは伝えておきたかった。

 なんとか立ち上がって、ベッドに沈み込む。

 好きな男の子のことを頭に思い浮かべながら、恵はぎゅうっと抱き枕をだきしめた。

 そうしていなければ、どうにかなってしまいそうだったから。




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