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俺は/私は オタク友達がほしいっ!  作者: 左リュウ
第9章 修学旅行とこれからのこと
146/165

第105話 告白から

「…………………………………………」


 次の日の朝、俺の目覚めは最悪だった。昨日からずっと頭の中がもやもやしていて。

 旅館の中でメイと会っても視線をあわせることも出来ない。

 どこか恥ずかしいような、そんな感じがしてしまう。


「おはようございます」

「おはよう、海斗くん」

「ん……ああ……」

「かいくん、どうしたの?」

「……元気ない」

「い、いや、そういうわけじゃないんだけどな……」


 元気がないというより、どうすればいいのか分からない。そんなところだ。いきなり告白されて、どうすればいいのか分からなくて。なんていうか、いきなり爆弾を投下された感じだ。特大の。


「おーっす」


 ぼーっとしていると正人がやってきた。かと思ったら、俺の肩をガシッと掴むとそのままどこかへと引っ張っていく。


「ま、正人!?」

「ちょーっとこいつ借りてくぞ」


 そのまま俺は正人に引きずられながら、昨日メイから告白を受けた場所まで引っ張られた。昨日の事を思い出してしまい、少し顔が赤くなる。そんな俺の様子を見た正人が、


「その様子だと、なんかあったみたいだな。告白でもされたか?」

「ばっ!?」


 否定しようとしたものの、どうやら見抜かれているらしい。


「…………そうだよ」


 こいつに嘘をついても意味はないし、そしてなんとなく……告白されたという事実に、嘘をつきたくなかった。


「告白、された。メイに」

「それで、悩んでるってわけか」

「…………」


 俺は静かに頷いた。


「はじめてのことだったから、こんなの。よく分からないんだ……ていうか、なんて答えていいのか……驚いてて、わからなくて……」

「なんでそんな悩んでるのか、俺にはさっぱりわからねぇな」

「お、お前な。人の気もしらないで……」

「いや、だってそうだろ。お前はただ驚いてるだけで、肝心なところで悩んでいない」

「肝心なところ?」

「お前がその告白してくれた人を好きかどうかってこと」


 言われて俺は気がついた。俺は、ただひたすら驚いているだけで……戸惑っているだけで、メイのことをどう想っているのか考えていなかった。メイが勇気を振り絞ってしてくれた告白に、俺は真正面から向き合っていなかった。


「そこ、お前の悪い癖だぞ海斗」

「正人……」

「そうやって、逃げようとするところ」

 

 正人は容赦なくその一点を突いてきた。


「逃げるなよ」

「ッ……」

「俺はまだ子どもだからわかんねぇけどさ。逃げていいことだって世の中あると思う。逃げなきゃ心が折れてしまうようなこととかさ。でも、これは違うだろ。逃げていいわけないだろ」


 正人の言葉は次々と心に突き刺さる。でも棘があるわけじゃない。こいつがただ、大切なことを俺に伝えようとしているという事が分かる。


「逃げちゃいけないこともあるはずだ」

「…………」

「お前は、中学の頃っていう過去から逃げてここに来た。それは悪いことじゃない。世の中、どうしようもないことがあるってことぐらい、子どもの俺にも分かる。でもお前が今、悩んでいることは違うはずだ。逃げていいことじゃないはずだ。ちゃんと向き合わなくちゃならないことのはずだ」


 俺はただただ黙ってそれを聞いていることしか出来なかった。俺は逃げ癖がついていたんだ。中学の頃の経験を言い訳に、逃げてばかりになっていた。


「いいか、海斗。お前はヘタレだ」

「か、返す言葉もないな……」


 こうもビシッと言われると本当に返す言葉もない。


「ヘタレを卒業しろとは言わん。だがせめて向き合え。自分の想いを伝えてくれた子と。そして、自分の本当の気持ちとだ」

「自分の、気持ち」

「そうだ。いつまでも今のまま暮らしたい。みんなと平和にほのぼのと。それは間違ってはいないんだろう。でもな、お前の言う『今のままの暮らし』っていうのは自分の想いを伝えてくれた子の気持ちを踏みにじった上で成り立っている物なのか? そうやって成り立ってもいいのか?」


 ☆


「…………………………………………」


 加奈は、旅館のエントランスに一人でぼーっとテーブルについているだけだった。

 昨日メイが海斗に告白する現場を見てしまった。

 それがとてもとてもショックだったのだ。

 考えてもみなかった。誰かが海斗に告白するなんて。

 したかったのは確かだ。でも、その事実が実際に訪れるのがこんなにもショックだとは思わなかったのだ。


「あら、おはよう」

「!?」


 突然、声をかけてきたのはその件のメイである。


「お、おはようございますっ」

「どうしたの? 何か様子が変だけど」

「いや……別に、なんでもないですよ」

「昨日の告白を見ちゃったことなら気にしないでいいわよ?」

「……そんなわけにもいきませんよ…………ってええええええええええええええええ!?」


 メイはクスクスと笑っている。加奈としては、なんでそんなにクスクスと笑えるのか分からない。というか、普通にバレてたというのが気まずい。


「ええと……ごめんなさい……」

「気にしないで。どうせ、言おうと思ってたことだから」

「ええええ?」


 そうこうしていると、恵たち他のメンバーたちがやってきた。


「あれ? みなさんどうしてここに……」

「……メイに呼ばれた」

「そう。わたしがみんなを集めたの」


 メイはニコニコとした笑顔を崩さないまま、ここにいるメンバーを見た。

 これから言うであろうメイの言葉が、自分たちのこれからを左右するものであることを予感した。




「わたし、海斗くんに告白したわ」




 加奈の予感は的中し、メイは特大の爆弾を間髪入れずに放り込んできた。



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