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俺は/私は オタク友達がほしいっ!  作者: 左リュウ
第9章 修学旅行とこれからのこと
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第101話 修学旅行に行こう

 更新が遅くなって申し訳ありません!

 あっという間に時間が経って、ついに修学旅行当日となった。俺はあの日、みんなでお泊り会をした日からずっとそわそわとしていた。深夜のテンションだったとはいえ、とんでもないことを考えてしまったからだ。あれ以降、何度も何度も考えては違うだろうと振り切ってきた。けどなかなか捨てきれない。

 ……あいつらが俺を好きだとかなんだとか。

 違う違う違う。あいつらが俺に対してあれやこれやしてくるのはあくまでも安心できる男友達だからだ。俺はただのロリコン紳士。年を食ったBBAなんぞに用はない。あいつらもそれが分かっているからこそ、……その色々できるのだろう。まあ、お年頃の男子高校生に不用意に割とボリュームのある胸を押し付けたりほっぺにキスしたりしないようによーく言っておかないと。

 修学旅行の朝の目覚めはよく、俺は昨夜のうちに準備をしておいたのでトランクをごろごろと引きながら、加奈と一緒に学園へと歩いて行った。加奈と部屋が隣な為に、家を出てからしばらく俺たちは二人っきりになる。それがなんとなく落ち着かない。

 特にあのお泊り会以降。

 今こうしている間はあのドキドキが感じられない。


「…………」


 なんとなく胸を掴んでみる。やっぱり何も感じない。


「海斗くん?」


 不意に、俺の様子を変だと思ったのか加奈がひょこっと俺の顔を覗き込んできた。

 今さらだが加奈の顔はかなり整っている。ていうか可愛い。唇も柔らかそうだし。

 そりゃ男子共も惚れるのは仕方がないと思う。

 だがそれがなんだ。顔が良いのなんか知っているし、何より俺はこいつのロボオタという本性を知っている。……のは分かるんだけど、どうしてちょっとした優越感を抱いてしまうんだ俺は。


「あの、どうかしたのですか? なんだかさっきから本当に様子がおかしいのですけど……いや、海斗くんが一年中、幼女にハァハァしてる不審者なので様子がおかしいのは当たり前なのですが、そういう意味とはまた別で様子がおかしいですよ?」


「お前は言葉が一言二言多いぞ。マジで」


 ……なんで俺はこんなにもボロクソに言われている女の子にちょっとドキドキしてるんだ。くそぅ。さっきまで何もなかったのに。俺はそんな女の子にボロクソに言われて喜ぶ変な趣味は持ち合わせていないのに。ていうか、あれだ。あの日から俺は絶対におかしい。一度、考えてみた結果がこれだよ! なんか一回だけとはいえ「好き」という結論に至ってしまったばっかりに意識しまくりだよ。しかもそれが一人じゃなくて部員全員てどういうことだよ! 意識してるにしてもフラフラしすぎだろ俺! いや、別に意識してないんだけども!


「やっぱり何かおかしい……」


「おかしくないおかしくない。さっさと行くぞ」


 俺は無理やりごまかして歩を進めた。

 こんな調子じゃ、修学旅行も大変そうだ……。


 ☆


 京都までは駅までバスでそこから電車……というか新幹線に乗ることになる。班ごとに分かれて席についた。俺たちの席は俺、正人、葉山で一角が埋まっている。


「ふぃー、よーやく乗れたか。さーて、何かお菓子でも食べよっかなー」


 ほくほくとした顔で鞄を漁るのは正人だ。ていうかもうお菓子を食べるのか。まだ乗り込んで間もないのに。ガサガサと鞄を漁る正人に対して、葉山がすっと鞄から何かを取り出した。


「実は僕、クッキーを作ってきたんだけど……あの、もしよければ」


「おおっ、マジで!? 食う食う!」


「俺も食べていいか?」


「勿論だよ海斗くんっ!」


 葉山が作ってきたというクッキーはかなりおいしそうだ。しかもいろんな形がある。星だったり、丸かったり、四角、三角といった形だけでなくりんごやブドウ、といった果物シリーズ、果てはイヌやネコ、キリンやライオンといった動物シリーズまで。食べてみるが美味しい。程よい甘さでこれならいくらでも食べることが出来そうだ。


「美味しいな! 葉山、お菓子作りが出来たんだなぁ」


「うん。こういうときの為に練習しているんだ」


 と言っているが、このお菓子を振舞う相手を間違っている気がする。だってここにいるのは俺と正人という野郎が二人。普通、こういうのは女の子相手に振舞うものだ。


「でも、海斗くんには及ばないけどね」


 といって照れる葉山。女の子だったらさぞかし可愛かっただろう。だがこいつは男だ。残念なことに。

 俺と正人はその後も一心不乱に葉山お手製のクッキーを食べ続けた。会話も弾み、かなり充実した出足の修学旅行だ。

 食べ進めていくと、とうとうクッキーが最後の一枚になってしまった。俺と正人は互いにじっと目を合わせる。


「……しょうがない」


「……半分こにするか」


 意見はすぐに一致した。正人が器用にパキッとクッキーを二分割した。

 それを互いに口に放り込む。うん。美味しい。

 なんだか今さらこういうことをしてみるのは恥ずかしい。そんなことを正人も思ったのか頬を赤くして照れながらぷいっと視線を逸らした。俺もである。


「ごちそうさまでした」


 なぜか葉山がニコニコと笑顔になっていた。しかもすげぇ良い笑顔。

 そして近くの席では美紗がガリガリと一心不乱に何かを描いていた。やめろ。何かわからんけどその手を今すぐに止めるんだ。


 そんなこんなで俺たちはすぐに京都についた。一度、旅館に言って荷物を置く予定になっているので俺たちは男子と女子に分かれて部屋に向かい、荷物を置いていく。

 最初は旅館で休憩時間。俺はちょっと外の空気を吸いに出た。

 文化祭も終わって季節的にはもう冬になっている。

 制服姿だとやっぱり寒い。


「ありゃ、かいくん?」


 振り返ると、恵が同じように旅館から出てきたところだった。


「恵? どうしたんだよ」


「んー。ちょっと外に出てみようかなって。なんかワクワクしてさ」


 えへへ、と可愛らしく微笑む恵。その笑顔にちょっとドキッとしてしまうのはたぶん何かの思い過ごしだ。ていうかなんなんだよ俺は。ここ最近、頭がおかしいんじゃないか。俺がこいつらを好きだとかいう変な妄想したり。


「って、かいくん、自分の頭を叩いてるけど、どうしたの?」


「な、なんでもねぇよ」


「えー、ホントにぃ? どれどれ。ちょっと恵せんせーに見せてごらんなさい」


 恵が面白がったような表情をして「おいで」というポーズなのか両手を広げてくる。不意に目に入るのは……制服の上からでも分かるその二つのふくらみ。今まではなんとなく知っているぐらいだったけど……改めて見れば、やっぱりこいつも大きいよな……。前にこいつが勢いよく立ち上がった時にたゆんって揺れたの見たし。いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや。何を考えているんだ俺は。俺は年中無休で幼女のことを考え続ける至って健全なロリコンなのである。

 たかが駄肉が大きかったり揺れたりする程度で動揺してどうする。


「かいくん、やっぱりちょっとおかしいよ。なんかぼーっとしてるもん」


「し、ししししししししししてねぇし!?」


「むぅ~。とにかく、せんせーに見せて見せて」


「おいこらてめぇ! 結局『せんせー』って言ってみたいだけだろ!」


「えへっ。バレた?」


 とかなんとか言いつつも、一切悪びれる様子がない。それどころか俺の頭を無理やり両手でつかんでぐいっと引き寄せる。


「!!?!!?!??!???!」


「むぅー。別にどこか頭をぶつけているわけじゃないよね~。じゃあなんだろ……」


 いやそんなことはどうでもいいから! む、胸がこんなにも近くに……! しかも恵は大きい方だから……ていうか、当たってる。当たってるぞ……!

 勢いよく立ち上がればたゆんと揺れるほどのボリュームの胸に顔を押し付けられて俺としては窒息死しそうなこと以前にこう、ドキドキが半端ないことになっている。柔らかいし、温かいし、むにゅってしてるし……。いやまてとにかくやばいやばいやばいやばいやばいんだって!


「ん――――! ん――――!」


「ほぇ? かいくん何か言った?」


「ん――――――――――――――――!」


 ここでようやく、俺は恵の胸から解放してもらった。ぶはっとようやくまともに酸素を供給されて息を整えていく。その隙にやかましい胸のドキドキも収まるように努力しているが、これがなかなか収まらない。


「かいくん、どうしたの? 病気? 熱? 風邪? だったら保健の先生に……」


「ちげーよ! て、ててててててていうか! お前なにやってんの!?」


「えぇー?」


「む、むむむむむむむ胸! 胸に当たってたし! お、女の子なんだからこういうことむやみやたらに男にしてんじゃねー!」


 うわぁ。きっと俺、今顔は真っ赤だ。

 こんな時は姉ちゃんの話を思い出そう。確か、姉ちゃんが異世界に行って女の子を一人シスコンにしてきたとかいう嘘か真か分からない土産話でも思い出せばきっと落ち着くはずだ……。


「かいくん」


 と、俺が姉ちゃんの土産話のことについて思い出そうとすると、不意に恵がポツリと俺のことを呼んだ。


「な、なんだよ」


「何か勘違いしているようだけどさ、こーいうこと、かいくん以外の男の子にしないよ? こーいうことするの、かいくんにだけだし」


 どこか頬を赤らめてそんなことを言う恵は――――なんというか、かわいい。

 ていうか、それ、どういう……、


「お、俺、ちょっと用事あるから!」


 気が付けば俺は恵に背を向けて走っていた。

 なんていうか、それ以上はその場にいられなくなっていた。

 

「やっぱりおかしい……かいくん、どうしたんだろ。みんなに相談しようかな」


 後に残された恵がそんなことを言っているなんて、俺は知る由もなかった。



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