番外編 占米野メイの冬休み③
メイの目の前に広がっているのは未知なる世界。小学生の女の子がいきなりフリルの多用されたひらひらな服を身に纏い、手にまじかるすてっきなるものを持って振り回して光線を発射している。
正直、なぜいきなりあのステッキから光線を発射しているのか、どうやって一瞬にして小学生の女の子がフリフリの衣装に着替えたのとか、分からないことだらけだったが、メイは確かに目の前の世界に魅入られていた。
なんでもわかるはずの自分が理解できない現象が起こっている。それは当然だ。なぜならこれはフィクションだから。しかし、そのフィクションの物語に惹きこまれている自分がいる。
第二話が終わって海斗がディスクを取り換えている間もぼーっとしていた。物語の余韻に浸っていた、という方が正しいか。
端的に言うと、
「面白いわね」
「だろ!? そうだろ!?」
なんとなく好奇心から見てみたものだが、これが意外と面白かった。海斗は自分の勧めたアニメが面白いと言ってもらえて嬉しいのか機嫌がいい。
「二巻もあるけど、どうする?」
「お願いするわ」
「了解っと」
海斗は第二巻のディスクをいれて再生する。その後も三巻、四巻とどんどん鑑賞会は進んでいき、最後まで見ることが出来た頃には既に外は暗くなっていた。
巻数が変わるごとに感想を言い合ったり、海斗から解説を入れてもらって、他愛ないおしゃべりも織り交ぜる。環境が変わったおかげもあるのだろう。不思議といつもと比べて饒舌になった。
「はぁぁ~。いやぁ、何度見てもるなたんはかわいいし面白いなぁ」
海斗はほっこりとした顔をしており、メイも予想外の面白さに最終回の余韻に浸っていた。
そして再びパッケージを手に取って眺める。
「アニメって、面白いモノなのね。知らなかったわ」
「幼女アニメはいいぞぉ。幼女アニメはこころをぴょんぴょんさせてくれる。リリンが生んだ文化の極みだぜ」
海斗は海斗なりに余韻に浸っていたようだが、外が暗くなっていることに気が付いたメイはやや名残惜しみながらも立ち上がる。
「お、そろそろ帰るのか」
「ええ。外も暗くなってきたし」
「んじゃあ送るわ」
「いいわよ別に」
そこまで甘えるつもりは無い。そもそもメイが海斗と出会ったのは完全に偶発的な出来事であり、アニメを見たのも好奇心によるものだ(面白さは予想外だったが)。
今日初対面の人に迷惑をかけられない。
(それにしても、あの黒野海斗って話に聞いていたのよりぜんぜん印象がちが……)
ようやく。そこで彼の名前に引っかかる。
(黒野……?)
その苗字をメイはつい最近耳にした覚えがある。いや、最近どころかつい昨日。
「ねぇ、あなた……姉がいたりしない?」
「ん。姉ちゃんならいるけど」
「その人の名前って、海音?」
「そうだけど、え、なに。姉ちゃんの知り合い?」
「知り合いも何も昨日……」
そこでふと思う。彼は見た感じ昨日の事を知らないようだ。というかあの黒野海音なる女性についても正体不明のままだった。とはいえ、探ろうとは思わない。探ったら探ったで厄介なことになりそうだし。
「……なんでもないわ」
「そっか。でもまあ、姉ちゃんの知り合いなら仲良くしてやってくれたら嬉しい。姉ちゃん、すごくいい人なんだ。美人だしスタイルもいいし性格もいいし明るいし、それに……」
海斗はそれからしばらく姉の良い点をつらつらと挙げていく。どうやら本当にメイと海音を仲良くさせたいようだ。というより、姉に悪印象を与えないように気をつかっているように思える。
(本当にお姉さんが好きなのね)
またもやこの不良と知られている少年の一面を知った。その後、海斗は帰る準備をしてから戸締りをしてメイと一緒に部室を出た。夜はもうすっかりふけていて、夜風も容赦なく二人を襲う。時刻はもう夜の七時過ぎ。
メイの隣を歩く海斗はマフラーをしていない。それどころか手袋すらしていないし、このままだと寒そうだな、とメイは思った。何しろマフラーに手袋という完全防備のメイですらちょっと寒い。
そしてこんな時間に外を出歩いていることに気が付いたメイはふと夜空を見上げる。
「どした?」
隣で海斗が不思議そうな顔をしてメイの事を見てくる。
顔は覗かないようにさりげなく配慮しているということに気づいてメイは苦笑し、
「……私、こんな時間に外を出歩いたことがないの。だから、ちょっと新鮮で」
「へぇ。そりゃ珍しいな」
確かに珍しいと思う。なにしろメイの家庭環境は普通ではない。家に囚われている、という表現が誇張でも比喩でもないのだ。そんな状況だった。
「ええ。本当に、珍しいわ。こんなこと、今までなかった」
人生で初めてこんな時間までダラダラと過ごして夜道を歩いている。
まるで夢のように。
そして出来ればこの夢は、覚めてほしくない。
「……コンビニ寄るか」
海斗の唐突な言葉にメイは首をひねる。
「コンビニ?」
「そう。コンビニ。寒いし、何か買おうぜ」
その声と、目が。
メイのことを気遣っているような。
そんな気持ちが、こもっている。
海斗はすぐにコンビニから肉まんを買ってくるとメイに手渡す。
「ほれ」
「あ、ありがとう」
そのまま海斗は包を開けてぱくっと肉まんをかじる。メイはというと、コンビニという存在は知っていても今までそこで何か物を買ったことはなかったので肉まん一つが新鮮だ。
海斗のまねをして包を開けて、ぱくりと肉まんに小さくかぶりつく。
しばらくもぐもぐと二人で肉まんを食べつつ歩いていく。海斗は肉まんを一足先に食べきってしまい、包をくしゃくしゃに丸めて近くにあったゴミ箱に放り投げる。
「なんかさ。お前、色々と大変そうだけど……まあ、なんだ」
海斗は少し頬を染めて、照れ隠しをしているのかちょっと視線をそらしながら、
「……あんまりため込みすぎるのもよくないぞ。たまにはこうやって普段はしないようなことして、ストレスは発散させといた方がいい」
メイは思わず驚いたように目を見開いた。まるでメイの悩みを、境遇を完璧にとは言わなくてもだいたいの事情を察しているように思えたからだ。
「なんかさ、詳しいことはよくわかんないけど……ただの世間知らずなお嬢様ってだけとは思えないし。なんかお前、どこか苦しそうに見えたから。家の事でなんかいろいろ、あるんだろうなって」
……苦しそう。
苦しんでいる?
私が?
「……………………」
――――ああ、そうなんだ。
「あら。随分と察しがいいのね」
――――私は、苦しんでいたんだ。
「普段は鈍いって言われるけどな」
海斗は文研部の部員たちからは普段、鈍い鈍いと言われているのでこういった反応は珍しい。
海斗は知る由もなかったが……海斗がメイのことを指摘した「苦しそうに見えたから」。その言葉で、メイは自分の心に気づいた。メイは環境に慣れてしまったと思っていた。だが慣れてしまっても心は苦しかったのだ。
そんなことも忘れていた。
「ふふっ」
「どうした」
「いえ。噂の不良さんにそんなこと言われるとは思わなかったから」
「…………不良さんだってたまにはこういうことも言うんだよ」
海斗は自分の言ったことが恥ずかしくて照れているのかぷいっと視線をそらす。
「あら。照れているの?」
「て、照れてねぇし!」
明らかに照れている。
メイはなんだか隣を歩く少年がいきなりかわいくなったような気がした。
「そういうお前も、今日部室に来た時よりなんか……柔らかくなったな」
「……そうかしら」
「ああ。なんかまだ話しかけやすい雰囲気にはなった」
自覚はない。けどきっと、彼が言うのだからそうなんだろう。
不思議と彼にそう言われるのならそれも悪くない気がした。
しばらく歩いてメイは自分の家の近くに来ると静かに歩みを止めた。
「この辺りでいいわ」
「そうか?」
「ええ。すぐそこだから」
「そっか……っと、そうだ」
海斗は鞄の中からごそごそを何かをあさると、箱のような物を取り出した。
見てみるとそれはアニメのブルーレイボックスである。
今日見たのとは別のアニメのようだ。
「これは?」
「俺のオススメ作品だ。本当は持って帰ろうとしたんだけど、お前に貸すよ」
「私に? いいの?」
「ああ。アニメ、あんまり見たことないんだろ? だからこれ、貸すから暇な時に見てみてくれ。これも面白いぞ」
ボックスを受け取ると、海斗は視線をそらす。この短時間で分かった。海斗がこうするのは照れている時だ。
「……えと、なんか家の事でなんかあってさ、疲れて癒されたいときとかにでも見てもいいぞ」
どうやらそれが言いたかったらしい。
メイはわざわざそんなことを言ってくれる海斗がちょっぴりかわいくて。
「ふふっ。そうさせてもらうわ」
冷静に考えればこういう場面で女の子に手渡す物としてアニメのブルーレイボックスはちょっと似合わないだろう。だがそれがなんだか海斗らしくてメイはくすっと笑う。
その日はそれで別れた。メイは受け取ったボックスを持って部屋の中に戻る。家に帰ってもやはり誰もいない。だけどぜんぜん寂しくなんかなかった。
静まり返った家の中。メイはたった一人のはずなのに、そんなことは全然気にならなくなっていた。
暇なんてあるわけない。だって、一晩でこのボックスに入っているアニメを全部みて、海斗を驚かせてあげるのだから。
その日は占迷野の家に、一晩中アニメの音が響き渡っていた。
☆
「全部見たわ。面白かった」
「早いな」
次の日。
メイはまた部室にやってきた。
「無理して一晩で見なくても、ゆっくり見てもよかったんだぞ」
「無理なんかしてないわ。面白かったから、一気に見ちゃったのよ」
「そっか。そりゃよかった」
「ところで……その……」
メイは昨日、聞きそびれてしまったことがあった。だがそれを改めて訪ねるのはちょっと恥ずかしい。
「どうした」
「……そ、そういうのはどこに行ったら買うことが出来るのかしら?」
と、メイが指差したのは海斗の持っている、先ほどメイが返したアニメのブルーレイボックスだ。
ほとんどまともに自分で買い物をしたことのないので、こういう物をどういったところで買ったらいいのか分からなかった。だがそれを聞くのはなんだか少し恥ずかしい。まともに買い物も出来ない子と思われてしまうのではないかと考えてしまう。
だが海斗はそんなことは意にも介さずに考えこんだ様子を見せ、
「俺は基本的にアニメグッズの専門店で買ってるかなぁ。通販サイトで買う方が安いんだけど、俺は基本的に専門店だな」
「どうして通販サイトで買わないの?」
「専門店で買うと店舗ごとに違う特典がついてくるんだよ。逆に通販サイトで買うと店舗特典がついてこない。俺は特典グッズが欲しいから、専門店で買うんだよ」
「なるほどね。勉強になるわ」
「勉強することでもないと思うんだけどな……ていうかさ。お前、様子を見た感じそういう専門店の場所とか知ってるのか?」
「…………知らないわ」
何しろ昨日はじめてアニメを見たのだ。そんな専門店のことなんて知るはずもない。
「んー。まあ、今は冬休みだしな。暇だし、案内するよ」
「いいの?」
「おう。アニメを見はじめようとしているやつの手助けをするのも部活動だしな。たぶん!」
割とガッシリとしている胸を張る海斗。
メイはそんな海斗を見てくすっと笑い、
「なら、お言葉に甘えてエスコートをお願いしようかしら」
人生で初めて、誰かと一緒に買い物に出かけるという行為に及んだ。
☆
「ねぇ」
「なんだ」
「わたし、電車ってはじめて乗るんだけど」
「マジかお前!?」
学校を一緒に出て駅にたどり着いた時に知った衝撃の事実。
お嬢様とは分かっていたがまさか電車に乗ったことがないほどまでとは思わなかった。
「加奈もお嬢様だけど、普通に電車には乗ったことがあるしなぁ……お嬢様って言っても色々あるんだな。いや、よくよく考えてみればうちの部員って割とお嬢様育ちが多いような気が……恵も割と裕福な家庭だし。うちの学校私立だしまあそう考えれば自然か」
しみじみとしていると、ふと海斗はメイの様子に異変があったのを感じ取る。
「……………………(むすっ)」
「おい、なんで拗ねてるんだ」
「別に。なんでもないわ。あなたは他の女の子にうつつをぬかしていなさい。私は先に行くわ」
べしっ。
「…………」
拗ねたメイはなんときっぷも入れず改札口を通ろうとした。が、当然のことながら改札口はきっぷを入れない者を通しはしない。
しかしメイは首を傾げて再び通ろうと歩く。
べしっ。
「…………」
改札口は通せんぼしたままメイを電車に通そうとはしない。それもそのはず。だってきっぷを入れていないのだから。
そこでメイは思い出した。電車というものはお金を支払わないと乗ることが出来ないのだ。メイはごそごそと財布を取り出す。
海音が置いていったものだ。彼女曰く、「お小遣い」らしい。中には結構な額が入っていた。端的に言えば札束が入っていた。その中から諭吉を一枚取り出すと、改札口にあった穴の中へと入れる。入れようとする。
「通らない……お金を払うのではなかったのかしら」
「あー、すんません通してください。おいこらクロ! きっぷ! きっぷ忘れてるぞ!」
その後、二人分のきっぷを買った海斗がやってきて、海斗もメイと一緒に駅員さんに頭を下げた。
そんなことがあってから何とか電車に乗り込むことが出来て、ちょうど空いていた座席にメイと海斗は座ったところで、海斗はため息をついた。
「疲れた……」
「電車って乗るだけでも疲れるものなのね」
「いや普通はこんなにも疲れないからな?」
海斗はメイの方を横目で見つつ。
「つーか、さっきなんでいきなり拗ねたんだよ」
「……拗ねてなんかないわ」
「うそつけ」
今さらバレバレの嘘をつくのも苦しくなってきたメイは海斗から視線をそらしながら、ぽそっと小さな声で白状する。
「……あなたが他の女の子の話をしているからでしょう」
「他の女の子? ああ、加奈たちのことか……つーか、そもそもなんで俺の『友達』の事を言っただけでそんなに拗ねるんだよ」
「友達……友達、なのね」
「ああ。俺の大切な友達だ!」
どうやら海斗を見る限り本当にただの友達として思っているようで、そこに他の感情が混じっていないような気がしたメイは機嫌を直した。
「そう」
「おう! ……って結局、どうして拗ねたんだよ。加奈たちが関係あるのか?」
「さあ? それはあなたの胸に聞いてみるといいわ」
「???」
結局、わけがわからないまま電車に揺られること一時間半。海斗とメイはアニメグッズ専門店が多く立ち並ぶ場所へとやってきた。確か加奈はオタク通りなどと言っていたが。
「…………凄いわね」
昨日はじめてアニメを見始めたメイにとってはまさに圧巻の一言だった。見たこともないアニメのポスターやポップが大量に張られており、目がチカチカしそうだ。アニメグッズ専門店も多くてどれに入ったらいいのか分からない。それにとにかく人が多い。こんなにもアニメが好きな人が一か所に集まっているのかと驚いた。それに女の子も多い。自分と歳の変わらない、もしくは自分より年下だったり年上だったり、同年代の女の子もたくさんいた。
「それじゃあ、まずはこっちから行くか」
メイはぼーっとしていると海斗に手を引っ張られて何件かあるアニメショップの一つに連れて行かれる。
中はさらにすごかった。いろんなグッズや本が置いてあるし、店内にアニソンもかかっている。
「あっ……この曲……」
昨日、海斗と一緒に見たアニメのオープニング曲だ。
「おお。『まじかる☆るな』のオープニングだな。そういえば奥にこれのCDとかが売ってるコーナーがあるからいくか。そこにブルーレイも売ってるしな」
「え、ええ」
CDコーナーに行ってみると知らないアニメのタイトルばかりが並んでいて、その中にお目当てのものはあった。
「やっぱ今さら初回限定盤は残ってないよなー。通常盤だけどいいか?」
「構わないわ」
「あとはそうだなぁ。ブルーレイコーナーに行って好きなの見てみたらいいんじゃないか? 気になるのがあったらそれ買えばいいしな」
メイはそれから気になったCDをたくさん買いつつ、自分で手に取ってみて気になった作品のブルーレイもカゴに突っ込んでいく。財布の中には札束がねじこまれてあったけど札束だけでは足りないかもしれないと思った。
今度は本のコーナーへと進んでいく。
「これは……小説?」
「それはラノベだ」
「らのべ?」
「ライトノベルって言うんだけどな。アニメ調のイラストを盛り込んだのがラノベだ」
「小説とどう違うの?」
「うーん。なんだろう……ラノベと小説の違いをあらためて説明するのは難しいっていうか、ぶっちゃけラノベも小説といえば小説なんだけど……」
考え込む海斗にメイはつい笑ってしまう。
「……なんだよ」
「ふふっ。あなたでも分からないことがあるのね」
「そりゃそうだ。俺が知っているのは知っていることだけだからな!」
と、ドヤ顔で言う海斗。だがメイは「言われてみればそうね」と返すのみ。悲しきかな。まだメイに伝わらないことはたくさんある。
ラノベの次はコミックのコーナーへと向かう。
「あ、これ……」
「それは『まじかる☆るな』をコミカライズしたものだな」
「コミカライズ?」
「要するにアニメを漫画にしたものってことだ」
「そうなの。……なかなか綺麗な絵ね」
ぱらぱらとめくってみると、アニメで見た女の子のキャラクターが漫画になっていた。思わず感心してしまう。
「そうなんだよ。この人の絵って結構綺麗でさぁ。俺は特に一枚絵が好きなんだよな。いやはや。この人をコミカライズの担当にした人はマジでいい判断したと思うよ? うん」
ついでにそれを購入して、二人はアニメショップを出た。大量の袋を持ちながら、二人は街中を歩いていく。
「にしてもお前、たくさん買ったなぁ……」
「そうね。お買いものしたの、生まれて初めてだからついはりきっちゃったわ」
「買い物したの生まれて初めてって……お前、本当にお嬢様なのな」
海斗の視線の先にはぱんぱんに膨らんだ買い物袋。特に一番CDの数が多い。
「音楽、好きなのか?」
「好きというより、唯一許された娯楽だからかしらね」
メイに許された唯一の娯楽。それが音楽だった。とはいっても、クラシックなどの親が許可したものだけだったが。音楽には精神を落ち着かせるために聴くことを許されていた。メイ自身、音楽はそんなに嫌いでもなかった。
「ふーん……」
と、そこで海斗はふと何かを思い立ったようにぽんっ、と自分の手を軽くたたく。
「よし、ちょっと待ってろ」
「え?」
「すぐに戻ってくる」
そういって海斗はどこかに走り去ってしまった。メイはといえば、すぐそばにあったベンチに座らされてぽつんと一人になってしまった。突然の事で何か分からなかったけど、買ったばかりのグッズを見ているのも面白いと思ってそのまま大人しく待つことにした。
だがそんな彼女に近づく不審な影があったことに……彼女はまだ気づいていなかった。