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俺は/私は オタク友達がほしいっ!  作者: 左リュウ
第8章 一年生と二度目の文化祭
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第94話 二度目の文化祭⑥

第4回キャラクター人気投票開催中!


リンク先にて投票が出来ます。


http://enq-maker.com/8dCfSjj

 加奈が去ってから入れ替わるようにしてやったきたのは美紗である。


「あの……加奈ちゃん、なんでメイド服を着てたの?」


「それは聞くな」


 だって分からないんだもの。そもそも加奈がコスプレ研究会に興味をもったからだ。

 理由を聞かれても俺に応えようもない。


「ん……じゃあ、どうして加奈ちゃんの髪に白い液体がかかってたの?」


「……知らんな」


「海斗くん、つまんない嘘つくね」


「サイドエ○ェクトだと!?」


 にっこりとした笑顔で言う美紗。まさかこいつが近○民だと思わなかったぜ。

 しかし冗談でなく今の嘘を見抜かれているような気がした。冷や汗が流れる。

 おかしい。なぜ俺はいまこんなにも「他の女の子のことを美紗に知られるとまずい」と思ってしまっているのだろうか。別にやましいことは何もないのに。


「まあ、それはいいだろ。とりあえず美紗はどこに行きたいんだ?」


 なんというか、この件に関しては本当に触れない方がいい。何しろ……その、俺にも非があったわけだし。そもそもあの時、なぜ俺はソフトクリームを手にしていたんだ……加奈じゃないが、ラブコメの神様とかいうはた迷惑な存在に愛されているんじゃあるまいな。


「わ、わたしは海斗くんの行きたいところでいいよ?」


「いや、俺は別にいいからお前の行きたいところに」


「ううん。海斗くんの、」


「美紗の、」


 と、ここで俺たちは埒が明かないということに気が付いてお互いに苦笑する。


「まあ、俺は本当にどこでもいいんだよ」


「……本当に?」


 美紗はちょっと遠慮しつつもそうたずねてくる。美紗はちょっと内向的な性格で自分の意思を押し殺すようなところがある。だからこういうときぐらいは自分の意見をちゃんと全面的に出してほしいので、俺は微笑みながら、


「ああ。俺はさっきから他の女の子たちやつらと一緒にいろんなところをまわったからな。だから、美紗の好きなところでいいぞ。むしろ、ちょっとした案内だって出来るぐらいだぜ」


「…………………………………………………………………………じゃあ、行きたいところがあるんだけどついてきてくれるかな」


 おかしい。美紗がちょっと拗ねている。なぜだ。


 とりあえず気を取り直して美紗が行きたいところというのを聞いてみると、そこは意外なところだった。


「占い?」


「う、うんっ。占い」


 こくこくと美紗は顔を少し赤くして頷いた。やっぱり女の子だし、こういう事は好きなのかな。


「占いね……どれどれ」


 俺は頷くと、ポケットから学園祭のパンフを取り出すと『占い』を探し始めた。たしかどこかに占いを出し物にしていたところがあったはず。


「あった。校舎の中に『占い館』ってところがあるから言ってみるか」


 美紗はこくこくと無言で頷いた。その目はまだちょっと申し訳なさそうな感じがしたので、俺は苦笑しつつぽんぽんと美紗の頭を軽く撫でた。


「うぁ……ん……」


「あのな、美紗。お前はもうちょっとワガママを言ってもいいんだぞ?」


「ふぇ? わ、わがまま……?」


「そう。お前、普段からちょっとため込むようなところあるからな。たまには思いきったり自分のしたいことをはっきり主張してもいいんだぞ」


「う、うん……ぁ……」


 頭を撫でていると、次第に美紗の顔が更に赤くなってきて、声もしぼんでしまう。

 俺、何か変な事でもしたかな。怖がられるようなことを……って俺のビジュアルからしてそうなんだけども。でも今さらだしなぁ。まだ慣れてくれなかったのか?


 そう思った俺はとりあえず手を放す。美紗がちょっと残念そうにしていたのは気のせいだろうか。


「あ、あのね、海斗くん」


「ん?」


 美紗はやや俯き、ポツリと呟く。


「……その、海斗くんはあんまりそういうこと、しない方がいいと思う」


「そういうことってどういうことだ?」


「し、知らないっ」


 俺が美紗の顔を覗き込むようにしてたずねると、美紗はぷいっと俺から目をそらしてしまった。そんな美紗の反応に俺は首をひねり、美紗の手を握る。


「まあいいや。んじゃ、さっそく行くか」


「あう……よくないんだけどな……」

 

 ☆


 もう文化祭が始まってから何時間も経っているが、人の流れが衰える気配はない。むしろ多くなっているような気がする。その中をかきわけて歩いていく。

 占い館は『占い研究会』が行っている出し物である。そこそこ繁盛しているらしい。

 向かってみると、確かにたくさんの人が並んでいた。しかし割合的にはカップルと女性が多い。


「なんか女の人が多くね?」


「う、うん。なんでも、すごく当たるって評判なんだって」


 まだ文化祭二日目なのにもうそんなにも評判になっているなんてそれだけ凄いということだろう。すごく当たると美紗の聞いた評判もあながち間違いじゃないのかもしれない。

 並んでいる人たちからも「すごく当たるって評判なんだって」というような言葉が囁かれていた。


「へぇ。なんか楽しみだな。ところでここってどんな事を占ってくれるんだ?」


 まさかコインを使う占いで、なおかつ「俺の占いは当たる」とか言うんじゃあるまいな。なんかエイに乗ってバトルや裁判に参加してそう。


「えと……その……」


 美紗は何か言いにくそうに口ごもっていた。どこか恥ずかしそうにしている。


「そ、それは行ってみてからのお楽しみで……」


「ん。それもそうだな」


「あはは……」


 美紗は何かをごまかすようにして笑ったが、まあそれもすぐに分かるだろう。

 しばらく並んでいると、ようやく俺たちの順番がまわってきた。


「どうぞ」


 占い研究会の部員であろう女子生徒に案内されて、俺たちは部室に入る。ちなみにその占い研究会の部員であろう女子生徒は黒いマントに黒いフードをすっぽりと被っているというよくあるちょっと怪しい魔法使いのような格好だった。……この格好、前にもどこかで見たぞ。流行ってるのか?


 占い研究会の部室は広さ的には普通の教室の半分ぐらいだろうか。

 部室の中は暗幕が張られていて薄暗い。とはいえまったく見えないというわけでもなく、怪しい光でライトアップされており、暗い中でも美紗の顔は見える程度のものだった。


「き、緊張するね……」


「そうだな」


 ぎゅっと手を繋いで美紗と一緒に少しずつ奥へと進んでいく。暗幕が張り詰められた室内にいたのは、さきほどの案内した部員となじように黒マントに黒フードをかぶった女子生徒。

 その女子生徒が俺の顔を見た瞬間、どこかはっとしたような表情をして、そして……微笑んだ。


 なんだろう。占い師にしか視えない何かが視えているのだろうか。

 そう思った瞬間、その女子生徒は白くて細い指でつまんで、フードを脱いだ。

 ぱさっ、とフードが下りる。フードの中から現れた顔は美少女と言っても差支えない程のかわいい女の子。クールな瞳に前髪ぱっつんのロングヘアに紫色のリボン。彼女の髪が部屋の絶妙に調節されたライトに照らされている。


「いらっしゃい。占い館へようこそ。私は占米野しめのメイ……今日は私が、あなたたちの運命を占ってあげる」


 記憶の中から何かを語りかけてきそうな、声で、彼女はそう告げる。

 うーん。どこかで会ったような……気がするんだけどなぁ。

 俺が首を傾げていると、彼女がくすっと妖艶な笑みを浮かべた。


「あら。私に運命でも感じちゃったのかしら?」


「いや別に。ただどこかで会ったような気がしたからな」


「……そう。ふふっ。おかしな人。新手のナンパかしら?」


「BBAなんぞナンパするか」


「…………」


 視線を感じる。横……というか、美紗から。


「海斗くん」


「な、なんでしょう」


「いったいどこで攻略したの?」


「してねぇよ!?」


 くそぅ。どいつもこいつも俺のことを手当たり次第に女の子に手を出すようなやつみたいなこといいやがって。俺はごくごく普通の男子高校生だ。ちょっぴり喧嘩が強い以外はごくごく普通なのだ。

 こんな知らない間に女の子を手当たり次第に攻略してしまうようなやつじゃない。


「…………」


「…………」


 二人同時に「嘘つけ」とでも言いそうな視線を送っている。ていうか占い師よ、どうしてお前までそんな目で俺を見る。


「とにかく、占いましょうか」


 ため息とともに、占い師こと占米野しめのメイの占いがはじまった。

 彼女は水晶玉に両手をかざしてどこか別のモノを視ているような眼をする。

 なんか雰囲気あるな……。


「そちらのあなた、名前は?」


「な、渚美紗です」


「美紗さんね。名前さえ分かればあとは……そう……」


 すると、メイの指の動きがぴたっと止まる。そして彼女は瞳に不思議な色を宿しながら、その柔らかそうな唇から少しずつ言葉を紡いでいく。


「あなた……今朝はとても今日の文化祭を楽しみにしていたようね。それこそ、今日こそが一番重要な日なんだと言わんばかりに」


「えっ」


 いやいや美紗よ。文化祭は大半の人が楽しみにするようなもんだし、これぐらいはちょっと考えれば誰だって簡単に当てることができ……、


「朝ご飯はトーストに野菜、目玉焼き……トーストにはバターを塗ったようね。飲み物はオレンジジュース。お姉さんと一緒に仲良く食べたのね。両親は今日はお仕事でこれなかった。とても残念がっていたわね。特に父親の方が。普段はよく妄想……げふんげふん。ご自分の世界に浸っているようね。あなたの隣に座っているその男の子とそのお友達とのカップリングが最近はあなたの中のトレンド、と。あとは……」


「当たってます当たってますからもうやめてぇ――――!」


 美紗が若干涙目でメイのことを止める。

 ていうかすげぇ……。なにこいつ占いってレベルじゃないだろ。


「でも、一つアドバイスするなら……何が、とは言わないけれどライバルが多いわね。少しは一歩前に踏み出して、頑張った方がいいわよ?」


「…………ッ。は、はいっ」


「?」


 なんだろう。最後のはちょっと意味が分かりにくかったな。

 何のことだろう。


「次はあなた、ね」


 フフッ、とメイは妖艶に微笑む。なにこれちょっとこわいんだけど。主にプライバシー的な意味で。


「お、俺は遠慮……」


「遠慮しなくてもいいわよ」


 俺が止める前にメイは水晶玉で勝手に占いをはじめた。

 選択権すらないのか……。


「あら。あなたはとても興味深い運命をしているわ」


「具体的には?」


「そうね。私からあなたに贈る言葉は……」


 どうやら今からやるのはプライバシーを暴かれる方向性ではなさそうなのでほっと安堵する。


「爆発しなさい」


「大雑把すぎるだろ!」


「冗談よ」


「なんだ冗談かよ……」


「冗談と書いて冗談マジよ」


「意味わからんわ!」


 冗談なのかマジなのか結局どっちなのか。

 ゴー○イシルバーゴールドモード並みのどっちなんだ感。


「とりあえず私からあなたに贈る言葉はこれよ」


「今度はなんだ」


「この女ったらし。手当たり次第に声かけちゃって。女の子なら誰でもいいのね。このロリコン」


「俺泣いていい?」


 最近の俺の扱いがひどいような気がする。


「すごい……当たってる」


「俺いますげぇ泣きそう」


 美紗までそんなことを言うのか。どこが当たってるというんだ。俺は別に女ったらしなんかじゃないというのに。幼女を守護することに命を懸けている立派なオトコなのだ。生まれ変わったら幼女のス○ンドになりたい。


 しかしこいつ……。


「お前、なんでそんな拗ねてるの」


「あら。拗ねてなんかいないわ」


「いや、普通に拗ねてるじゃん」


 だってなんか不機嫌そうにしているし。

 なんとなくわかるんだよな。なんとなくだけど。


「でも、本当に興味深い運命をしているわ。こんな人は初めて」


「だからどういうところが……」


「運命の赤い糸の数が多すぎてこんがらがってる」


「その中から可及的速やかに幼女との赤い糸だけを抽出してくれ」


「残念ながら幼女との赤い糸は存在しないわ」


「ちっくしょぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 俺は今日ほど占いが当たらなればいいのに、と思ったことはない。


 ☆


 俺にとってのショックな占いが終わったのち、残りの時間を一緒にぶらぶらしながら過ごす。もちろん、はぐれないように手を繋いで。

 俺はとりあず渇いた喉をジュースで潤していた。オレンジジュースがしみるぜ……。


「あはは……海斗くん、元気出して?」


「うう……バカな。幼女との赤い糸が存在しないなんて嘘だ……」


 がっくりと肩を落とす。美紗は苦笑いで一緒に歩いてくれている。


「そういえば、占いはアレでよかったのか? なんか美紗はプライバシーを暴かれただけのような気がするけど」


「大丈夫だよ。海斗くんと一緒にいるだけでわたし、楽しいから。……ううん。幸せ、っていった方が正しいかな」


「オーバーだなぁ」


「そうかも。でも、ホントだよ?」


 そういって、美紗はにこっと笑顔を見せる。眩しくて、優しいその笑顔に少しだけドキッとしてしまった俺は何かをごまかすようにして言葉を探す。

 と、とにかく何か喋らなければ……。


「何か飲み物でも飲むか?」


「……うん。飲む。ありがとう」


 美紗が同意したので、俺はどこかに飲み物を買いに行こうとした瞬間……。美紗は、俺の持っていたジュースのストローに口をつけた。そしてちょこっとだけジュースを飲むと、今度は照れくさそうに微笑んだ。


「…………えへっ。美味しいね」


「え、あ。そ、そだな……うん」


 俺は美紗がとった行動にぽかんとしつつ……関節キスという単語が以前の頬にされたことを思い出させてつい顔が赤くなる。いやいや何を動揺している。たかが間接キス如きで。


「て、ていうか、美紗って意外と大胆なんだな」


 俺は恥ずかしさをごまかすようにしてそんなことを言う。美紗はというと、たずらっぽく微笑んで、その指を唇にそっとあてる。


「そんなことないよ。ただ今のは……占いのおかげかな?」


「……?」


 俺は首をひねりつつ、残りの時間を美紗と一緒に楽しく過ごしたのだった。





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