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俺は/私は オタク友達がほしいっ!  作者: 左リュウ
第8章 一年生と二度目の文化祭
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第93話 二度目の文化祭⑤

遅くなって申し訳ありません!

 美羽が帰ったあと、適当にスマホをいじっていた。そして次にやってきたのは加奈である。


「今度はお前か」


「む。なんですかその言い方は。わたしはずっと楽しみにしていたんですよ? はやく海斗くんと一緒に文化祭をまわりたくてお昼も喉を通らなかったんですから」


「お昼は喉に通らなくてもガ○プラは組み立てられるんだな。…………手に塗料がついてるぞ」


「はうっ!?」


 加奈はいまさら自分の手についた塗料に気が付いたのかしまったとでも言うような顔をした。

 そしてぷくっと頬を膨らませる。


「むぅぅぅ。良いじゃないですか別に。でも、楽しみにしていたのは事実なんですよ?」


「そりゃどうも。昼飯まだなら、何か食べに行くか」


「はいっ」


 加奈は微笑むと、ぎゅっと俺の手をつなぐ。俺も加奈の手を握り返して、俺たちはまず屋台のある場所へと向かった。


「何食べる?」


「♪」


「…………おい」


 加奈はいつの間にか俺の腕に抱きつく形で歩いていた。

 金色の髪や豊満な胸がぎゅっと腕に押し付けられている。

 随分と機嫌がいい。今にも歌を歌いそうなほど。


「なんですか?」


「だから、何食べるって聞いてるんだけど」


「んー。じゃあ、あそこにパンケーキを売っている屋台があるようなので、そこに行きましょう」


「了解」


 加奈は楽しそうな笑顔を見せてくれる。なんでか分からないけれど、楽しんでくれているようで何よりだ。一緒に列に並ぶ途中、加奈に見惚れてぼーっとしている男が彼女と思われる女性に白い眼を向けられていたが、まあ確かにこの笑顔に見惚れるのは分からないでもない。俺は別に見惚れたりしないけど。


 とはいえ同時に俺のことを妬みの籠った視線で見られるのはいかがなものか。はぁ。俺が今、いったいどれだけ苦労しているのか教えてやりたい。

 何しろ非効率極まりない文化祭のまわり方をしているのだから。なんで他のやつらと交代で文化祭を回らなければならないのか。


 しばらく待って、ようやくパンケーキの購入に成功。包に収まっているパンケーキをもぐもぐと食べる。

 加奈の方はというと、一口食べたあとなぜかじーっと自分のパンケーキを見つめている。


「海斗くん海斗くん」


「なんだ」


「食べ比べっこしませんか?」


「は? なんで。どっちも同じ味じゃん」


「し、してみたいんです。……だめ、ですか?」


「別にいいけど……」


 と、俺が言うと加奈はぱぁっとその喜びを露わにした。もしも加奈に尻尾がついていたらぶんぶんと振っていそうだ。獣耳加奈……割とアリかもしれない。


「じゃあ、ほら」


 食べ比べをご所望のお姫様に俺は自分の分のパンケーキを差し出す。それを見た加奈はまじまじとそれを見ながら、ゆっくりとした動作でその小さな口を開く。なぜか本人がちょっと緊張しており、頬が赤いせいか何やら変なことをしている気分になってくる。


「ん……おいしいです」


「そりゃ同じのだし」


「そ、それじゃ、海斗くん。わたしのもどうぞ」


「おお、さんきゅ」


 とりあえず一口は一口として俺も加奈のパンケーキを一ついただく。


「はい。あーん♪」


「…………」


 わざわざ「あーん」なんて事を言う必要があるのだろうかと疑問に思わないでもないが、だからといって断るにはタイミング的にも不自然なのでおとなしく口の中に放り込んでおく。

 食べてみるとやっぱり味に大差はない。こんなことして何が楽しいのかと疑問に思ったのだが、加奈はというとじーっと俺が一口いただいたパンケーキを見ていたかと思ったら、ぱくっと思いきった様子で食べた。


「なぁ、お前こんなことして何の意味があったんだ?」


「んにゅっ……か、海斗くんは知らなくてもいいです……」


 加奈はそういって顔を真っ赤にしていた。


「ふくらませたり赤くなったり、お前のほっぺは忙しいな」


 そう言って、加奈の柔らかい頬をつつく。ぷにぷにとした感触がして気持ちいい。

 癖になりそうだ。


「や、やめてください」


「いや、お前の頬って割と良い感触するんだよな……なんか癖になりそうなんだけど」


「癖になりそうって……」


「まあ、自重はするよ」


 さすがに女の子の顔を何度もぷにぷにするのはちょっとどうかと思うしな。

 というわけで最後にちょっとこいつの頬をぷにぷにしておこう。


「うう……」


 指でぷにぷにと加奈の頬をつついていると次第にその頬が赤くなってきた。こんな人目のあるところで加奈に羞恥心を抱かせたと描けばどこかアレな感じだが、やっていることはただ頬をつついているだけである。

 けっしてやましいことをしているわけじゃないのに……どこか罪悪感が出てくるのはなぜだろう。


「……うん。やっぱ自重じゃなくてもうやらないことにする」


 罪悪感が半端ない。

 俺が指をひっこめると、加奈はそれを見てどこか残念そうな表情を浮かべる。


「なんか物欲しそうな顔してるんだけど」


「そ、そんなことありませんよ?」


「本当に?」


「……実はちょっと気持ちよかったです」


 素直でよろしい。


「もう……してくれないんですか?」


「お前さっきやめてくださいって言ってただろ」


「うぅ……でも、海斗くんの手つきってどこかいやらしいっていうか気持ちいいっていうか……」


「いやらしいってお前、人の手をなんだと思ってるんだよ」


 別にいやらしいことをしているつもりはないんだけどなぁ。でもさっきから周囲の男の眼がどこか羨ましそうな、死ねとでも言っているかのような雰囲気的にもしかしてこれはいやらしいことなのだろうか。


「え、割と評判なんですけど。海斗くんの手つき」


「どこで!?」


「主に………………の間で」


 気のせいだろうか。『女子』という単語を口にした加奈本人がやや不機嫌になっている。


「ていうか海斗くん。手当たり次第に女の子に手をつけるのやめてくれますか?」


「つけてねーよ!」


 本当に人をなんだと思ってるんだこいつ。


「わたし知ってますよ! 海斗くんが一年の女の子にもちょっかいだしたでしょう!」


「あれは一人でたくさんの荷物運んでたから手伝っただけだろ!」


 文化祭の準備の時にたまたますれ違って、その子が体に不釣り合いの大荷物を抱えてフラフラと危なっかしい足取りだったから手伝っただけなのに……。これでも俺と一緒に居る加奈たちが悪い目で見られないように頑張ってるんだぞ。


「でも、そのあとその子の頭をなでなでしたんでしょう!?」


「いや、だって本当に頑張ってたからちょっと励ましてあげようかなって」


「三年生の先輩(女子)にもちょっかいを出してたそうですね!」


「あの先輩、幼稚園に通ってる妹のお迎えがあるのに先生から掃除頼まれてて困ってたから。幼女の為なら当然だろ?」


「だから掃除をかわってあげたと」


「本当は俺が代わりに迎えに行ってあげたかったんだけどな。ちょうどあの河合さんとこの里枝りえちゃんは俺がいつも見守っている子の一人だったから顔から性格、趣味嗜好までバッチリ把握してたんだけどな。でもお姉ちゃんが良いと思って泣く泣く変わったんだ」


「え、見守っているとかそれは初耳……じゃなくて! なんでその先輩にもなでなでしたんですか!」


「いや、別にいいって言ったのにわざわざ戻ってきてくれたから……なんかめちゃくちゃ謝って来たし。落ち着かせようと思って。あと、頑張ってたから」


「更に他校の女の子にまでちょっかいだして!」


「だからちょっかいなんて出してねぇって! 道に迷ってたから案内したり変なのに絡まれてたから助けたりしただけだ!」


「複数!? 複数なんですか海斗くん!」


「だってそんなのに(頻繁に)出くわすんだから仕方がないだろ!」


「本当にラブコメの神様に愛されてますね! わたしもなでなでしてください!」


「お前結局それが言いたかっただけだろ!」


 とりあえずお姫様のご要望通りに頭を撫でておく。

 加奈は気持ちよさそうに目を閉じた。どこか顔がだらしないのは言わないでおこう。


「あ、それとさっきの海斗くんの手つきの評判の件なんですけど」


「おう」


 もうここまで言われたんだからいまさら何を言われたところで驚かないし反応もしない。


「正人くんがそれはもう海斗くんのなでなでについて熱心に語ってくれて女の子からもやってほしいと依頼が殺到して……」


「正人ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 いや、確かにあいつにそういうことをした覚えがあるような……気がするんだけども!


「ホント、海斗くんはいったいどれだけの女の子にフラグを建てたら気が済むんですか」


「だからフラグなんて建てた覚えはないんだけど……」


 建てた覚えのないフラグのせいでこうして加奈にぷんすかと怒られなければならないなんて俺は納得できない。

 とりあえず加奈をなだめながら文化祭を見て回る。


「そういえば、さっき南帆はコスプレしたんですよね?」


「ああ。相当恥ずかしがってたけどな」


 その恥ずかしがっている様子がかなり可愛かったんだけど……次はいつあんな南帆を見られることやら。


「んー。わたしもちょっと興味あります」


「それなら、行ってみるか」


 コスプレ研究会のところに行ってみると、快く引き受けてくれた。ていうか料金は払うと言っているのに無料でコスプレをさせてくれるという大サービス。

 加奈は衣装をじーっと見比べてどれを着るか迷っているようだ。


「海斗くん。こっちのミニスカメイド服とチャイナ服、どっちがいいですか?」


「お好きなのをどうぞ」


「むぅ。どうせなら選んでくださいよ」


「めんどくせーな……じゃあそっちのでいいんじゃね」


 と、俺が指差したのはミニスカメイド服の方である。理由は特にない。しいて言うなら、俺は今現在、ソフトクリームを食べており、左手が空いていた。そして加奈が左手に持っていたのがミニスカメイド服だったのだ。


「わかりましたっ。海斗くんがこっちの方がいいっていうなら、ちゃんとご奉仕しますね!」


「おいばかやめろ」


 周囲の男性客からの視線がすごく痛いから。もう圧死されるレベル。

 ていうかコスプレ研究会の部員たちからの視線もちょっと「これってもしかして……」みたいな目で見てくるんだけどやめてくれない!?

 俺の制止もむなしく、加奈は試着室に入り、すぐに着替えて出てきた。


 肩が丸出しで、ミニスカートのおかげでかなり際どいことになっている加奈さんのご登場である。白と黒のカラーリングのメイド服は肩のせいだったりミニスカートのせいだったりでかなり刺激的に見える。


「んと……どうですか?」


「……かわいいんじゃねぇの」


「えへっ。海斗くんが喜んでくれたようで、ホッとしました」


「は、はぁ!? 別に喜んでねーし!? 勘違いしてんじゃねーよ!」


 思わずツッコんでしまった。加奈はちょっと恥ずかしそうにしながら近づいてくる。ちなみにここは教室で、人目もある。いくらなんでも適当に選びすぎた。これでは加奈がただ人目を集めてしまっただけだと思った俺は制服の上着を加奈にかけて、教室の外に連れ出す。

 コスプレ研究会の部室のすぐ傍には物置として使われている部屋があり、そこに加奈を連れ込む。


「ど、どうしたんですか海斗くん」


「どうしたもこうしたもねぇよ。えーっと……その、悪かった。なんつーか、いくらなんでも変な服を適当に選びすぎた。今すぐ着替えてこい」


「えーっ」


 と、言ってごねるのが解りきってるからわざわざ教室の外まで連れ出してきたんだよなぁこれが。


「だって、わたしこの服でまだ海斗くんににゃんにゃんしてませんよ?」


「しなくていいからな!?」


「むぅ。人目につかないところに連れ込んだのはにゃんにゃんするためじゃ……」


「ちげーよ! そんな格好でうろうろしてるトコ、なんつーか……他の男に見られたくなかったというか……」


 いや、でも本当にどうしてそんなことを思ったんだろう。加奈に無遠慮な視線を向けられるのが……なんか嫌だったというか。わからない。


「と、とにかく! そういう格好するなってことだよ」


「あ、だから上着を貸してくれたんですね」


「……せめてもう少し肌を隠せよ」


 ていうか本当にこれだと変なことをするために倉庫に連れ込んだみたいじゃないか。


「ふふっ。でもせっかくですから、この格好で海斗くんにご奉仕しちゃおうかな?」


 加奈がいたずらでも思いついたような、妖艶な笑みを浮かべながらにじり寄ってきた。

 俺は手に持ったままだったソフトクリームが溶けているのにも気づかず、じりっと後ずさる。


「ふっふっふっ。ここに逃げ場はありませんよ?」


「お、おいばかやめろ。何をするつもりかは知らんがとにかくやめろ」


「いやです。えいっ♪」


 加奈はにこっと笑顔を浮かべるといきなり抱きついてきた。露わになった太ももの感触とか、漂ってくる華のような香りとか、ぽよんとした胸の感触とか、温もりとか、色々とやばいことになりそうな自分を自覚しつつ、俺は必死に脱出しようともがいた。

 そしてその時、俺は手にソフトクリームを持っているのを忘れていた。


「ひゃうっ!?」


「あっ」


 そのせいで、加奈の顔にソフトクリームがついてしまう。その冷たさに驚いたのか、加奈は一度その手を緩めた。俺はこれ幸いにと脱出する。

 脱出して、そこでようやく俺は加奈の現状を確認することが出来た。


 顔には白いソフトクリームがついていて、溶けて液体となったソフトクリームがぽたぽたと加奈の露出された太ももに垂れていた。太ももに垂れたソフトクリームであった白い液体がつつっと床に落ちる。

 さらに口回りにも白い液体となったソフトクリームがついていて、加奈は衣装を汚さないように、手で受け止めていた。


「ううっ……なんですかこれ」


「あ、悪い。俺のソフトクリームだ」


「海斗くんのソフトクリーム……もう、どうしてそんなものを持ってるんですか」


「暑かったから……っていうか、いきなり抱きついてきたお前が悪いだろ今のは」


「だって、海斗くんのためのご奉仕メイドになれる機会なんてそうそうないですし」


「ならなくていいからな!?」


 その後、加奈の顔をふくために倉庫を出たら、俺が白い眼で見られたのは言うまでもない。

 俺は何も悪くないのに……。


「どうですか? 『加奈たんのご奉仕メイド☆』とか興味ありません?」


「ねぇよ」




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リンク先にて投票が出来ます。


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