第90話 二度目の文化祭①
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俺たちがこの学園に来てから二度目の文化祭がはじまった。
毎年テレビの取材が来るだけあってこの流川学園の文化祭は毎年大盛況で、日程も五日間と割と長い。
俺たち文研部はクレープ屋さんの屋台を出した。しかし去年ほど謀殺されるつもりはないので休憩を取りながらになるが。いや、去年もとってたけどね? でも明らかに足りてないんだよなぁ。
クレープそのものは割ともう作り慣れた。最初は生地を作るのが手間取ったけど、練習を重ねただけあってなんとか作れるようになった。
しかし、俺だけが作れるようになってもそれはそれで死ぬので準備期間の間に他の奴にも多少は作れるようになってもらった。文化祭開始と同時に沢山の人が学園の敷地内に入ってきた。瞬く間に学園中が文化祭の熱気に包まれる。
我が日本文化研究部の屋台も盛況で、去年の噂もあったせいかすぐに行列が出来上がってしまった。
まあ、その辺りは割愛。ちょこっと何か挙げるなら加奈たちが売り子になったりしてまた行列が増えたりとこいつら俺を殺しにかかってると思う。
そんなかわいい格好すればそりゃホイホイ客が集まって来るわ!
一年生二人は楽しそうに売り子やらなんやらをやっていた。まあ、小春のせいでちょっとした騒ぎになってたけどそれも俺がテキトーに睨むだけで何とか収束することが出来た。
そうしてなんとか文化祭の一日目が何とか終わりを告げた。
その日は俺も疲れ果てて家に帰るとすぐに眠ってしまった。
次の日は文化祭二日目。
今日は俺たちの屋台は午後は休みとなっているために午前の間だけ開店した。
午前も殺人的な忙しさだったが、なんとかそれも乗り切ることが出来た。午前が終わり、部室に戻ってようやく休憩に入ろうとしたその瞬間。
『………………………………』
部室の中の雰囲気が、明らかにおかしいことに気が付いた。
なんていうか……尋常じゃないような。そんな感じである。
え、なに? これから戦争でも始まるの?
「かいくん」
「な、なんだよ恵」
「時間がもったいないからはやくいくよっ!」
「はぁ⁉」
いきなり恵に腕を掴まれて部室から出ることになった俺は、ふと昨日の加奈の言葉を思い出した。
二人一組ずつ交代でまわっていくとかなんとか。
☆
部室から飛び出した俺たちは、すぐに外の喧騒に包まれることになった。
文化祭は盛り上がっており遠目にテレビの取材が見える。
「にしても……本当にどうして、わざわざ交代までして二人一組にならなくちゃならなかったんだ?」
「はぁ。本当に鈍いねかいくんは」
なんだか物凄くバカにしているような目で見てきた。
「乙女心ってやつをもう少し察してほしいよ」
無茶言うなや。
「そんなもん男の俺が察せられるわけないだろ」
だって男の子だもの。
そんな俺は恵に(いつのまにか)腕を組まれながら文化祭の喧騒の中を歩いていくことになった。
そういえば去年の文化祭もこんな感じの事があったな。あの時は恵だけじゃなくて他の奴もいて、俺は着ぐるみの中だったけど。
「つーか腕組むのやめろ」
「えーどうして?」
「駄肉が当たってるから」
この感触も慣れたかと思ったけど、最近はどうにも……変な感じがする。
なんていうか、嫌じゃないんだけどちょっとやばいというか。変にドキドキするというか。
「けちー。はぐれちゃったらどうするの?」
「手繋げばいいだろ」
ぷくっと頬を膨らませる恵の手をさっと繋ぐ。
不意打ちでもなければこいつは素直に繋ぎそうにないからだ。
文化祭は結構混雑しているのではぐれると大変だ。人の流れに流されてうっかりはぐれないように指を絡めてしっかりと手を繋ぐ。
ぎゅっと軽く握ると恵も握り返してきて、これではぐれなさそうだと一安心する。
「うぅ……」
「どうした?」
「ん。なんでもない……ちょっと、どきどきしてるだけ」
あんまり時間もないので早く行こうと恵に急かされながらも文化祭の中を歩く。
「お二人さん、寄ってかない?」
「野球部特製ストラックアウト!」
歩いていると、野球部の屋台に呼び止められた。ストラックアウトをやっているらしく、それ相応のスペースも与えられているようだ。見てみれば、カップル連れがきゃいきゃいとストラックアウトに勤しんでいた。
アレと同類にされたのか……リア充死すべし慈悲は無い。
俺が野球部のストラックアウトでイチャついているリア充カップルに殺意を抱いていると、それを見た恵が何故か顔を赤らめていた。アレと俺たちを同類扱いされて顔が赤くなるほどむかついているのだろうか。気持ちは分かる。
「か、かいくんやっていかない?」
「俺は別にいいけど」
「おっ、話が早い。どうぞどうぞ!」
まあ、野球部とは実は以前ちょっとだけ関わったことがある。そのよしみでやってやろう。リア充が混じっていなければ普通にやるんだけどな。
恵も野球部の助っ人に駆り出されていた時のもあってかその時の縁かやっていくことにしたようだ。
「お久しぶりです海斗さん、恵さん」
「あの時はありがとうございました!」
「そこでものは相談なんですけど……また我が野球部にお力をお貸し頂けたらと……」
以前、俺と恵は野球部の助っ人に駆り出されたことがある。
その時にちょっと暴れすぎてしまい、あれから野球部のやつに見つかるたびにスカウトを受けるようになったのだ。
まあ俺は休日はゆっくりとアニメを見ていたいから断っている。
恵はというと、
「試合は日曜日? 朝から? わたし、日曜の朝はニチアサ見るって決めてるから無理♪」
だそうだ。
しかしこの野球部は隙あらば俺たちを野球部に引き込もうと執拗に迫って来るのだ。
「断る。それでルールは?」
「一人五球で、ポイントが高ければ高いほど良い景品がもらえますよー!」
的は全部で九つあり、それぞれ一から九までの番号が振られている。番号=ポイントで、高い番号に当てればそれだけポイントが高いという事だろう。
「しかーし! カップルさんには特別にカップルボールを一つプレゼント! このボールで当てるとなんとポイント二倍!」
「ふぇっ。か、かかかかかかっぷる!?」
「いやぁ、本当に二人はお似合いですよ?」
「よかったら写真どうですか?」
「実はカップルでチャレンジしている人でランキングをやっていてですねぇ。一番点数の高いカップル順にツーショット写真を張り出すんですよ」
「つ、つつつつつツーショット写真⁉」
恵はついに怒りが頂点に達したのか、ぼんっと顔を更に赤くした。
そりゃ俺みたいないじめられっ子とカップル扱いされればキレるよなぁ……。
まあ、でも俺の事を話してもいつも通りというか、何も気にせず普通に接してくれるのはありがたいと思っているけれど。
「つーか、恵はやらなくていいのか?」
「え、ええとあうあうあ……」
なんだこいつ。今日は様子がおかしすぎるんじゃないか。
なんだか様子がおかしい……。つーかここ最近、恵もみんなも様子がおかしいんじゃないか。
「ところで恵さん、野球部には……」
「はうっ。え、えっと、だからわたしにはニチアサがあるもんっ」
「しかし、野球部に海斗さんと入れば海斗さんは恵さんが独り占めに……おっとなんでもないですよ?」
「ふぇっ。かいくんを独り占め……え、あうう……どうしよっかな……」
おいコラまてこのBBA。
「……よーし、あの様子だと恵さんは陥落」
「これであとは海斗さんのみ……」
何か聞こえた気がするけど無視しよう。無視。
前の試合で大暴れしてしまったばかりに目をつけられたようだ。
とりあえずテキトーに流してさっさと終わらせるか。
「ちょっとまってかいくん!」
「あ? なんだよ」
「ぜ、全力でやってね!」
「はぁ?」
恵はやたらと真剣にそんなことを言ってきた。
その目が尋常でなくメラメラと燃えていたので現野球部の部長を思い出してしまった。
あいつも相当暑苦しいやつだったよなぁ……。
「ツーショット写真ツーショット写真ツーショット写真ツーショット写真ツーショット写真ツーショット写真ツーショット写真ツーショット写真……かいくんとのツーショット写真……」
ブツブツと何か呪詛のような言葉を呟いている恵さん。怖いッス。
とにかく怖かったので俺なりに真剣にやってみることにした。
前の試合の時は偶然うまくいったけど、俺ってば体は鍛えているけどスポーツそのものはあんまりやったことないからなぁ。中学の時のテニス部なんて入ったはいいがいじめられてたからテニスどころじゃなかったし。
「ほいっ」
とりあえず俺は肩慣らしとばかりにボールを軽く放ると、バゴンッ! という音と共に『5』と描かれたパネルを吹っ飛ばした。「げふうっ⁉」と、パネルの背後にいた野球部員に当たった気がするけど気にしないことにした。
「おい、大丈夫か?」
「バカだな。海斗さんが投げるのにそんなところにいるからだ」
「あ、こいつ一年だから冬休みの試合の時の事知らないんだった」
失敬な。人を化け物みたいに。
とりあえず高得点を狙うなら『6』~『9』を狙う必要があるのか。
「頑張ってねかいくん。ツーショット写真のためにも!」
「あのなぁ……」
俺は半ば呆れながらもパネルを次々と破壊していった。
バコッ! メキョッ! ベキベキベキッ! ドゴォッ! と俺が投げるたびにパネルの方から変な音が聞こえてきたけど無視だ無視。
終わった時にはなんか周囲の被害が甚大になっていた気がするけど知らね。
「こりゃ新しく作った方がマシだな……」
「おーい、予備持って来い」
「あいよ」
手馴れているなぁ。まあ、ストラックアウトなんて壊れやすいもんだろうしなぁ。
予備があるのは当然か。
ちなみに景品は他の屋台で使える商品券だった。
ありがたくもらっておこう。
「はい、というわけでツーショット写真撮りますよー」
「らしいぞ」
「う、うん……」
「………………………………」
ツーショット写真を楽しみそうにしていた割にいざ撮影に入るとなると俺との距離が五メートルぐらい開いているのはなぜだろう。
「ほらほらもっと近づいてー」
「だとさ。ほら、さっさと来い」
「う、うん……」
おかしいなぁ。恵はこういうの、もっと率先してくっついてきそうなのに。やたらとノリノリで。
こいつも丸く(?)なったもんだなぁ。だがここでいつまでもいるわけにはいかないので無理やり恵を引き寄せる。
恵は南帆ほどではないにしろちょっと身長が低い方。彼女の華奢な肩にちょっと戸惑ってしまったが、それでも離さないようにぐっと肩を持って引き寄せる。
「うううううー……や、やっぱり恥ずかしいよぉ……」
「我慢しろ。さっさと終わらせるぞ」
とりあえず逃げないように片手で抱き寄せるようにする。恵と密着状態になってほんのりと女の子特有の甘い香りが漂ってきた。細くて柔らかい体。抱き寄せただけで崩れてしまいそうな。
そういった『女の子の感触』に少しトクン、と心臓の鼓動がはねたかのような錯覚を覚えた。
頬も何故か分からないけど赤くなってきて、体の内側がかぁぁっと少しだけ熱くなってきたかのような。ツーショット写真は別に構わないけど文化祭という場でやるからか? なんかちょっとドキドキしてきた。
「…………」
気が付けば恵が俺の事をじっと見つめていた。その視線に気づくと、俺も不意に恵の瞳を見つめ返してしまう。
「ど、どうしたんだよ」
「えっ、いや、えと……かいくん、ちょっと顔が赤くなってるなって思って……」
「そんなの……気のせい、だろ。うん」
「そ、そっか……そだよね。うん」
見つめ合っていたことに気が付いて俺たちはすぐに視線を逸らしてしまった。
う。なんだこの雰囲気……なんか甘くて、くすぐったいような……。
「え、えーっと、お二人とも、そろそろ撮ってもいいですか?」
『ッ! お、お願いしますっ!』
どうやら随分と恥ずかしい状態になっていたらしい。
顔が赤いままだったが、その後パシャッとシャッターを切る軽い音が響いた。
☆
「はっ、いま恵からラブコメの波動が……」
「? どうしました富音さん」
「あの男……うちの恵に何を……」
「えと、富音さん? いま会議中……」
「ゴォォォォォトゥゥゥヘルゥゥゥゥゥウウウウウウウウウウ!」
「ちょっとアンタいきなりどこに行こうとしてるんですかぁ! 会議中っつてるだろうがぁああああああああああああああああ!」
☆
なんだかんだでもう三十分経っていたらしい。
恵は加奈たちに強制連行されていた。
「……海斗。次は、わたし」
「ああ、やっぱまだ続くんだこれ」
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