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俺は/私は オタク友達がほしいっ!  作者: 左リュウ
第2章 秀才姉妹と一泊二日の親睦会
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第11話 姉妹

 日本文化研究部の部室は校舎の片隅にある。

 今や俺たちのプライベートスペースと化したそこに溢れているのはアニメのBDや漫画、ギャルゲーにガ○プラ、はたまた特撮ヒーローの変身グッズなどなど、娯楽に満ち溢れている。

 そんな日本文化研究部の部室の中央には卒業生が演劇か何かで使ったと思われる円卓が置かれており、それぞれの席に俺たちはついてそれぞれの放課後を過ごしていた。

 天美加奈はプラモデルを作り。

 楠木南帆はゲームに勤しみ。

 牧原恵は特撮ヒーローのBDを鑑賞し。

 俺、黒野海斗は萌えロリ幼女の登場するギャルゲーに没頭していた。

 これが普段の俺たちの放課後の過ごし方である。期末テストも終了し、あとは結果を残すのみとなった俺たちは解放感に浸っていた。

「はふぅ。よーやくテストが終わって私も一安心だよ~」

「それで、テストのデキはどうなんだよ」

「ふふん。今回はまあまあだよん」

 テスト前に文研部(日本文化研究部の略である)でテスト勉強したからな。

 ていうか俺も結構、手伝ったんだからそれなりにデキがよくないと報われた気がしない。

「そういえば、明日には成績が返ってくるらしいですね」

「……今回は私も自信がある」

「奇遇ですね。私もです」

「よーし、それじゃあ明日はみんなで確認しよっか! 勝負だよ、勝負!」

 恵はこういうが大丈夫なのだろうか。確かにみんなでテスト勉強はしていたものの、言うなればそれは付け焼刃。成績は上がったのかもしれないが、そこまで劇的に向上するわけがな……


 翌日。

「やったぁ! 七位になっちゃったよ~!」

 劇的に向上するわけがな……いやあった。

 昼休み。

 中庭に集まった俺たちは恵の報告を聞いて驚愕した。

 あるぇ~? こいつ前は確か赤点ギリギリじゃなかったっけ? それなのになんで上位十人に入っちゃうの?

「えへへ~。みんなのおかげだねっ!」

「いやいやいやいやいやいや。ちょっと待てお前。え? なんで? 勉強って日々の積み重ねってセンセーに習わなかったの?」

「私って、よく昔からお母さんに『恵はやればできる子だね』って言われたんだ~」

 マジモンのやればできる子かよこいつ! つーかできるなら初めからやれや!

「お、俺は普段から必死に勉強して努力を積み重ねているというのに……!」

「やーい凡人凡人~」

「うっせえ!」

 くっ。素直に嬉しがれば可愛らしいものの、こうまで凡人呼ばわりされればなんか腹立つぞおい。


「あ、因みに私は四位です」

「……私は五位」


「…………」

「…………」

「……ねえ、ちなみにかいくんは?」

「二位」

「…………」

「やーい凡人凡人」

「ひ、酷いよかいくん!」

 ふははははは! ざまあみろ。ひれ伏せ愚民!

「海斗くんは最低ですね」

「……女の子あいてに大人げない」

「はっ。BBAなら心は痛まないね。元はと言えばこいつが悪いんだし」

「かいくんが謝ってくれないと私、部室の萌え幼女アニメのBD-BOXに思わず手が出ちゃうかもしれないよ……ううっ」

「マジすんませんしたっ!」

 額をゴリゴリと地面に擦りつけながら土下座する俺、カッコいい。

「自分調子のってました! この卑しい犬めをお許しくださいませ!」

「うわっ。女の子あいてに土下座なんてプライドないのかいくん」

「プライド? そんなもの幼女と比べたらゴミ当然だね」

「かいくんは生粋の変態だね!」

「変態じゃねえ! 紳士と呼べ紳士と!」

 変態とは失敬な。俺は誇り高き紳士だ。波紋使っちゃうぞ。

「紳士は紳士でも意味が違うよね。むしろ向こうに失礼だよね」

「こ、こっちの紳士だって負けねえぞ! 波紋戦士なんかには負けねえぞ!」

「ふーん。じゃあそっちの紳士は何が出来るの?」

「……聖域(※幼稚園)をいつも見守ってます」

「それどう見ても幼稚園の周りをうろつく変質者だよね」

「……スタンドとして幼女を守護することが出来ます」

「それはただのストーカーだよね」

「因みに俺は近接パワー型だ」

「紳士関係ないよね。もうそれはただのスタンドだよね」

「だめだ。やはり本場の紳士には勝てないのか」

「勝ち負けの話じゃないよね。それ以前の話だよね」

 すまない全国の紳士諸君。

 君たちの素晴らしさをこのBBAは理解できなかったようだ。因みに俺はスタンドの中ではハミパが好きです。

「むしろ不信感をよりいっそう募らせたよ」

 くっ。このままでは何の罪のない紳士たちに冤罪が……!

「まあ、紳士(笑)のことはどうでもいいじゃないですか」

「(笑)ってなんだコラ」

「なら犯罪者」

「誰が犯罪者だ!」

 無実の罪で警察にしょっぴかれたのは良い思い出。

 ……無実だから。本当に無実だから。家のパソコンの中にある秘密フォルダの中にある小さな女の子たちの写真は関係ないから。いやホント、マジで関係、ないから。

「それにしてもまた二位ですか、海斗くん」

「それがどうしたんだよ四位」

「やーい万年二位~」

「うっせえ!」

 密かに気にしてたのに!

「でも、本当に気になるんだよなぁ」

「何がですか?」

「いや、俺って確かに万年二位なんだけどさ、前のテストは一位とれるって思ってたんだ。何しろ総合点が満点-1だったから」

「? ということは」

「そう。一位のやつって全部のテストで満点をとってることになる。たぶん、毎回」

「それは、凄いですね」

「……驚愕」

「ほわぁ。すごいねそれは」

 さすがに全教科満点は次元が違い過ぎる。というか今までに見たこともない。

「だから一位の人がどんな人なのかちょっと興味あるんだよな」

 テストの成績は個人にテスト結果が記載された紙が渡される。上位何人が皆の前に張り出されたりとかはしないので知りようがないのだ。

「どんな人なんだろうな~会ってみたいな、一回」

 効率的な勉強法を是非とも教えてもらいたいものだ。


 ☆


 私、渚美羽なぎさみうは教室の自分の席で手渡されたテスト結果を見て悔しい思いを募らせていた。

 真っ白な紙の上には総合順位三位という文字がぴちっと記載されており、それがよりいっそう敗北感を募らせる。ずっと満点で一位をキープしている妹に届かないのは仕方がないとは思っても、なぜ二位ではないのか。

 これで学園に入学してから三回目のテスト。

 その三回すべてが三位である。

「ううっ……どうしても二位がとれない」

「え、えっと。元気だしてお姉ちゃん」

「み、美紗ぁ……」

 妹である美紗に思わず縋り付きたくなる。だけど私はお姉ちゃん。妹である美紗の前でそんな姿を見せるわけにはいかない。

「美紗ぁぁぁ。悔しいよぅ。二位がとれないよぅ」

「よしよし」

 しっかり、しないと。

 私がしっかりしないといけない。妹のこともそうだけれど、なによりこのクラスの事もある。

 そう。このクラスの委員長である私がしっかりしないと。だってこのクラスにはあの<鬼の海斗>がいるのだから。私がしっかりしないといけないんだ。

 こんな私の姿をクラスのみんなに見せるわけにはいかない。

 ……クラスのみんなが「ああ、またやってる。可愛いなぁ」「委員長は可愛らしいなぁ」とか言ってるけど気にしない。

 と、とにかく! こんなところをクラスのみんなに見せるわけにはいかないので美紗と中庭に移動することにした。とりあえず世界一可愛い私の妹と一緒にお昼ご飯でも食べて落ち着こう。

 だけどそういえば昼休みの中庭は人が多かったような気がする。だが何故だかガランとしていて、私は近くにいた生徒に事情を聞いてみることにした。

 するとその生徒は、

「あ、ああ。今はほら、黒野海斗がいるだろ? だから近寄りがたくてさ……」

 なんと。まさか鬼の海斗が中庭を占拠しているらしい。

 これは委員長として注意をしなければならない。今まではその悪評の割に大人しくしていたので注意できなかったが、こうも大っぴらに中庭を占拠されては委員長として動かないわけにはいかない。

「み、美羽ちゃん。そんなに怒らなくても……」

「そういうわけにはいきません。今日こそはあの黒野海斗の悪行を懲らしめるのです」

「か、海斗くんは別に学校で悪い事してないんじゃないかな」

 妹がなぜか黒野海斗のことを下の名前で呼んでいたことが多少気になったものの、まあ今のところは置いておこう。今は委員長としての責務を果たすのが先だ。

 私たちは中庭に赴くと、なるほど確かに。人けが殆どなかった。

 が、だからこそ向こう側から聞こえてくる声が聞き取りやすくなっていた。恐らくあの鬼が高笑いでもしているのだろう。現状を把握する為に私はそっと耳を澄ませた。


『やったぁ! 七位になっちゃったよ~!』


 ……黒野海斗はかなり女の子っぽい声の人物のようだ。

 ていうかあれ? これは完全に女子の声じゃないのだろうか。


『えへへ~。みんなのおかげだねっ!』


 これは女子生徒(?)


『いやいやいやいやいやいや。ちょっと待てお前。え? なんで? 勉強って日々の積み重ねってセンセーに習わなかったの?』


 これは、紛れもない黒野海斗のものだ。


『私って、よく昔からお母さんに「恵はやればできる子だね」って言われたんだ~』


 恵。これは恐らくこの女子生徒の名前だろう。

「黒野海斗、なんて男でしょう。女子生徒を連れ込んであんなことやこんなことを!」

 うらやま……じゃなくてまったくもってけしからんですね。ええ。

「い、いや。これは普通にテスト結果を報告しあってるだけのように聞こえるんだけど……」

「美紗、それはきっと気のせいです。あの黒野海斗ですよ? 勉強なんかするはずないじゃないですか。考えても見てください。あの黒野海斗が日頃から勉強して努力を積み重ねている姿なんて想像できませ……」


『お、俺は普段から必死に勉強して努力を積み重ねているというのに……!』


 …………………………………………………………できま、せ、ん?


『やーい凡人凡人~』

『うっせえ!』


「……仲、よさそうだね?」

「……気のせいです」

 そう。気のせいだ。そうに決まっている。


『あ、因みに私は四位です』

『……私は五位』

 まだ二人もいた⁉ っていうか何気に秀才揃いですね。黒野海斗は頭の良い女子が好みなんでしょうか。


『……ねえ、ちなみにかいくんは?』


 む。黒野海斗の順位。私は万年三位とはいえ、これでも普段から努力を積み重ねているんです。

 それに比べて不真面目な黒野海斗はどうせ最下位に決まってま……


『二位』


 ……す?


『やーい凡人凡人』

『ひ、酷いよかいくん!』


 その後も会話が続いたらしいのだが、私の耳にはまったく届かなかった。

 いや、そんなことよりも。

 え? 二位? あのDQNが? え? ちょっ、え? 私の日々の努力って? え?


 ☆


 私はとぼとぼと教室までの道を歩きながら、妹である美紗に慰められていた。うう。

「み、美羽ちゃん?」

「うう……まさか黒野海斗が二位だったなんて」

 そして私は、決意を固める。

 どうやら黒野海斗は秀才の女の子を連れ込んであんなことやこんなことといったうらやまけしからんことをしているようだ。となれば私の妹が狙われる可能性が高い。

「い、いや。海斗くんたちはとても楽しそうに会話してただけだよ?」

 嗚呼ああ、かわいそうに。

 妹はショックのあまり幻聴が聞こえてくるようになったようだ。

「お姉ちゃん、現実逃避は止めようよ」

 天国の妹の声がきこえる。だけど止めないで。

「どうして私いつのまにか殺されちゃってるの……」


「……黒野海斗は、私が倒します!」


「お姉ちゃん、それ完全に私怨だよね?」

 ……そんなことはない。たとえテストでずっと負けて悔しいからってそれは一切かんけいない。そう。私は委員長だから仕方がなく、クラスのみんなの平和のために仕方がなく行動するのだ。

 し、私怨じゃありませんからねっ!


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