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俺は/私は オタク友達がほしいっ!  作者: 左リュウ
SS⑤ なんちゃってDQNとBL少女
109/165

ifストーリー 美紗ルート①

久々の更新です。お待たせしました。


美紗のifストーリーです。

本当は美羽も出して姉妹セットになる予定でしたが、やはり他のキャラと同じ扱いということで個別に変更。



 俺がその女の子と出会ったのはまったくの偶然だった。

 四月という出会いと別れの季節に、俺たちは出会った。

 まあ、出会いそのものはごくごく単純にクラス替えによるもので。



 二年生になった俺たちは、偶然なのか神様のイタズラなのかは分からないけど同じクラスになった。

 その時、俺たちは互いに互いの存在を何とも思っていなかった。

 俺は「あの姉妹、きれいだな」ぐらいにしか思わなかった。



 二年生に進級してクラス替えが起こったところで、俺の日常は変わらない。



「では、クラス委員長は渚美紗さんに決まりました」



 ぱちぱちぱちと拍手が教室内に響き渡った。

 俺はてきとうに拍手しながら、ぼーっと外の風景を眺めていた。



「次に副委員長を決めたいと思います」


 

 どうやらこのクラス、委員長と副委員長は男女一人ずつ輩出しなければならないらしい。

 クラスの男子たちを観察していると、あの綺麗な女の子(渚美紗だっけか)と一緒に活動できるという条件は魅力的だけど、副委員長はめんどくさそうだしやりたくない。そんな輩が多い。



 春の陽気にうつらうつらして、少しの間意識が途切れる。

 はっとして目を開けた辺りで、聞き捨てならない声が聞こえてきた。



「副委員長は黒野海斗くんに決定しました」



 ぱちぱちぱち、とこれまた拍手が。

 わけが分からないまま呆然とする俺。

 後で正人に理由を聞いてみると、どうやら先生がテキトーに作ったくじ引きで決定したらしい。



 俺は逃げ場のないと分かり、ため息をついた。くじ引きならばある意味平等だし、ここで俺が断ってしまうのもフェアじゃないだろう。

 放課後にはさっそく仕事を頼まれたということなので、俺は観念して放課後は教室に残った。



 ☆



 教師からさっそく頼まれたのは、教室の中に掲示物を張っていくという作業だった。それと、簡単な掃除。掃除当番なるものはもう決まっているものの、今日は進級してから初日ということもあって大して教室を使用していないので、委員長と副委員長が簡単に掃除を済ませておくということになったのだ。



 めんどくさい……と思いながらもテキパキと手を動かしていく。

 こういうのはさっさと終わらせてしまうに限る。そうすればさっさと帰ってフリーダムな時間をエンジョイすることが出来るのだから。



「……………………」


「……………………」



 黙々と作業をすること二十分。ここでようやく掲示物の張り出しが終わった。初日だというのに思いの他多かった。次は掃除だ。

 こういうのは役割分担をしたら早く終わるもんだ。



「えっと、じゃあ役割分担したいんだけど。いいか?」


「え、あ、は、はいっ」


 さっきからまったく喋らないかと思ったらこの少女……渚美紗は、どうやら俺のことが怖いらしい。なんかめっちゃ怯えているんですけど。

 まあ、確かに俺の外見はお世辞にも優しい少年……のようには見えないだろう。



 見た目だけなら完全に不良。でも中身はただのアニオタなのである。

 この見た目だけで喧嘩をふっかけられたことだって何度もあるし、怯えて逃げていく生徒なんか何人もいた。



 でも今となっては普通に友達のいる普通の男子高校生なのだと周囲の男友達には認識されている……はずだ。うん。

 しかし、この渚美紗という女子生徒とは今日が初対面とも言ってもいいだろう。

 去年までは違うクラスだったし、俺は一組でこの子は四組だったはずだ。



 教室の位置も全然違う。むしろ遠い。

 だからこの渚美紗という女子生徒に関しては、俺は友達からちょっと聞いた程度の知識しか持ち合わせていない。


 例えば、毎回テストでは学年一位をとっているとか、気弱で恥ずかしがりやなところがまたいいとか。シスコンの姉がいることとか。



 だからというかなんというか、俺はこの子とどう接していいのかがよく分からない。

 渚美紗も俺の方を見て怯えてるし。

 仕方がない。このまま戸惑っていても作業が進むわけでもない。



「じゃあ、渚さんは箒で床を掃いてくれるか? 俺はまず先に机を拭いてから美紗さんが箒で掃いた床を雑巾で拭くから」



 渚美紗はこくりと頷いた。

 俺は掃除用具入れから箒を取り出すと、渚美紗に手渡す。その時もちょっとビクビクと怯えられていた。


 なにこれちょっと悲しいんですけど。

 うん。そりゃあ俺が自分の外見が怖そうに見えるってことは自覚しているけど……でも俺、何もしてないじゃん。むしろめっちゃ真面目に掃除してるじゃん。

 とはいっても、もうこういう風に怯えられるのは慣れてるから別にいいんだけどな。



 そんなわけで、俺はテキパキと机を拭いていく作業を始めた。別に机を拭く必要はないと思ったのだが、さすがに女子が箒で掃いた直後に床を拭いていくというのは角度的というかスカートの奥というかそういう意味で大変なことになりかねないので仕方がなく机を拭く。



 俺は机を拭きながら、チラリと渚美紗を見る。

 長い黒髪に透き通るような、それでいて柔らかそうな白い肌。

 儚げな雰囲気はなるほど。確かにこれが「守ってあげたくなる」とでもいうような感じなのだろう。



 ふと、渚美紗がこちらに視線を向けてきた。となれば当然、視線はバッチリ合ってしまう。



『!!』



 俺たちはつい視線をそらしてしまう。

 向こうは俺のことを見てさぞかし驚いただろう。こんな悪人面の男と視線を合わせてしまったのだから。

 だってその証拠に、さっきよりもビクビクと怯えたように肩を震わせてるもん。




 俺にできるのは、これ以上彼女を怯えさせないようにするぐらいだ。

 淡々と、として黙々と掃除を続けた。



 ☆



 そんな日々が一ヶ月ほど続いた。割と委員長と副委員長の仕事は多いもんだと思いながら仕事をこなす毎日の中で、俺と渚美紗の仲は深まった…………なんてことはなかったでござる。

 彼女は相変わらず俺に怯えたままだったのだ。



 うん。まあ、仕方がないね。うん。仕方がない。

 一緒に仕事をしているといっても俺が悪人面をしているのは紛れもない事実だし。

 ゆっくり、気長に行こう。気長に。





 委員長と副委員長の仕事は放課後にかかわってくることがたまにある。

 今日もそのパターンだった。

 今度はプリント整理の仕事だった。



 この前配ったアンケートのプリントの整理をしてほしいとのこと。

 整理とはいってもただアンケートを並べるだけではなく、アンケートの設問の答えをすべて記録して、統計して、結果をまとめた表を作ってほしいのだとか。



 これは時間がかかるな……とは思ったが、二人でやればはやく終わることが出来るかもしれない。だが問題は、アンケートの一枚一枚がやたらと設問が多いことだ。

 二人で手分けすれば大丈夫。担任だってそれを見越しているはずだとタカを括り、俺たちはさっそく作業を始めた。



 ちなみに普段は自分たちの席で離れて作業をしているので、今回もそれだ。プリントを半分……いや、俺は自分の分を少し多めに持って行った。

 相手は怖がられているとはいっても女の子だし、男の俺としてはこれぐらいの見栄は張りたい。



 黙々とアンケートの記録をとり、纏めていく。とりあえず今はノートとかに記録しておいて、清書の時に渚美紗の集計分と数を合わせる。

 俺の席は、教室の後ろの方にある。対する渚美紗は、俺から見て少し離れた右斜め前の席。



 そんな位置関係だからだろうか。

 俺は、さっきからチラチラと時計を気にする渚美紗を視界に何度も捉えてしまっていた。

 どうやら今日は急ぎの用事があるらしい。



 時計を見ては、焦るように作業を急ぐ美紗。それが何度も繰り返されていく。



(見た感じ、どうやらかなり重要っぽいなぁ……)



 俺ってばあいつから怖がられているし、いきなり話しかけても怖がられるだけだろうなぁ。

 でもかなり急ぎのようだし……ああ、でも気持ち悪いとか思われたら気まずいよな。

 なにしろ俺は副委員長であいつは委員長。仮に完全に嫌われたとしてこれからどうしても一緒になるわけだし。



 でも……ええい、ままよ!



「なあ、渚」


「ひ、ひゃいっ!?」


 

 急いでいたせいかかなり集中していたのはわかるけど、でもそんなにも驚かなくてもいいじゃん……ちょっと傷つくぜ。



「放課後、何か急ぎの予定でもあるのか?」


「え……」



 ぽかんとした表情で俺を見てくる渚美紗。



「いや、無理して言わなくてもいい。ただ、何か急いでいるなら行ってもいいぞ。後は俺がやっとくから」


「で、でも……わたし、委員長だし、黒野くんにだけ仕事を押し付けて帰るのも……」



 困惑したような表情になる渚美紗に俺は思わず苦笑する。



「たかが委員長、副委員長の仕事ぐらいでそこまで大げさに考えなくてもいいって。それに押し付けるっていうのも違う。あくまでもこれは俺が引き受けただけだからな。お前が気にする必要は一切ない。それに幸い、俺は放課後は暇してるしな。多少遅くなろうと大丈夫だ」


 

 そう考えると帰宅部ってマジで最強だな。



「う……でもやっぱり……」


「あー、もう。いいからさっさと帰れよ。何か急ぎの用があるんだろ?」


「で、でも……その、大丈夫、だから……」


「あーはいはい。ほらほら、さっさと荷物を持つ」



 痺れを切らした俺はつい、席から立って渚美紗のもとへと近づき、荷物を無理やり持たせて立ち上がらせる。その時につい彼女の手を持ってしまった。

 仄かに伝わってくる体温。華奢な手に甘い香りに思わずドキッとしてしまったが、表情には出さない。



 そして、それをごまかすように俺は渚美紗の机の上にあるプリントを無理やり奪い取った。



「後は俺がやっておくから。お前の仕事はもうない。さっさと行け。じゃあな」




 渚美紗を教室から無理やり追い出す形で、俺は一人になった。

 それからも淡々と作業を続け、終わったころにはもう外は真っ暗になっていた。





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