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俺は/私は オタク友達がほしいっ!  作者: 左リュウ
SS⑤ なんちゃってDQNとBL少女
107/165

五月② 篠原正人と少女のきっかけ

かなり遅くなって申し訳ありませんでした!

ちょっと用事の方が立て込んでましたが、落ち着いてきたのでたぶん大丈夫だと思います。


 流川学園生徒会では、目安箱の中に投書された生徒からの声に対して対応するという仕事がある。

 特に今の生徒会長になってからは生徒たちからの小さな声にも出来るだけ耳を傾けるスタンスをとっており、たとえば今回みたいな生徒からの相談ごとについても受け付けている。



 また、こうした生徒の学園生活における相談事は重要度が高いので、比較的はやめに対応が行われる。

 そんなわけで、俺こと篠原正人をはじめとする我らが生徒会はいま、一年生の日向陽子さんの依頼である内気な性格を治したいという依頼を解決すべく尽力しているのだが……。



 ぶっちゃけ、状況的には芳しくない。彼女がこの生徒会室に来てから三日ほどが経っているが、なかなか彼女の内気な性格が治る気配が無い。

 日向さんは学内での人気もあるのだが、いかんせん本人がなかなか積極的に行動しないのでクラスメイトたちの輪に入ることが出来ないでいる。



 このままではだめなのだと本人も分かっているのだが、それでも勇気が湧かないとか。



「ふむ。どうすればいいんだろうねぇ……」


 とある日の生徒会室。

 ここ三日間のことを振り返ったときに東沢先輩がため息をついた。



「正直、僕には今回の案件は難しいようだ」


「まあ、東沢先輩は内気とは完全に逆の人ですよね」


「そりゃあ僕みたいなドMには積極性が求められるからね」



 それは不要な積極性だろうと思うのは俺だけではないのだろうか。

 


「うーん。どうすれば内気な性格が治るんだろうね」



 と、国沼が腕組みをして考える。

 とはいっても完璧イケメンリア充の国沼は内気な女の子の気持ちというのはさすがに分からないのかもしれない。

 ていうかそもそも、生徒会に入るのに内気という生徒は少ないと思う。



 かくいう俺も、情報収集という趣味をするうえで内気ではそれは務まらない。

 だから内気を直す方法というのは皆目見当もつかない。

 俺の人脈も内気な生徒はいないしな……まあ、内気だとそもそも情報源としてあんまり機能しないから仕方がないんだけど。



「んー。やっぱり本人の問題、なんだろうけども難しいわね。下手なこといって彼女に無駄な苦労をかけるのは避けたいし」


「なにいってるのさ西嶋さん。そういう無駄な苦労は僕にかけてくれないと!」


「黙ってなさい変態」


「ああ、素晴らしい……もっとそのゴミ屑でも見るような冷たい眼をしながら僕を罵ってくれ!」


「えーっと、とりあえず南美先輩はどうです?」


 この中で属性的に一番近いのは、おそらく南美先輩なのだが。



「……ん。わからない」


「そうですか……」



 相変わらずこの先輩は無表情だ。

 この前、妹が二人ほどいるということをチラリと耳にした。

 俺と同い年、南美先輩からすれば一つ下の楠木南帆さんもこんな感じで無表情の無口系だから姉妹というのは納得だ。


「こりゃかなり難しい依頼ですよ、今回は。会長はどうすればいいと思います?」


 そのうち、ちょっとネットとかでも体験談とかみたいな情報を漁ろうかと検討していたところ、会長がケロっとしたように、


「んー。そもそも、どうして内気な性格を治さなきゃならないんだろうね?」


 などとのたまった。

 生徒会役員一同がぽかんとして会長の方を見る。


「正直、わたしも内気な性格を治す方法っていうのは……よくわからないんだよね。それって個人にもよると思うし。だから、まずはどうして陽子さんが内気な性格を治したいと思うようになったのかを聞いてみないかな。そうすれば、少しはヒントが掴めるかもしれないし、そもそもそのきっかけになるようなことを解決するのが陽子さんの目的だとも、わたしは思うの。だから……んーと、つまりわたしがいいたいのは、内気な性格を治したいっていうのはあくまでもただの通過点に過ぎないのかもしれなくて、陽子ちゃんの本心は……本当の依頼はその先にあるかもってこと」


「でも、日向さんはただこのままじゃダメだって思っただけかもしれませんよ? 目標みたいな明確な理由があるとは……」


「うん。そうかもしれないね。だからこれはわたしの勘かな」



 会長の勘。

 俺はまだ生徒会で少ししか働いていないけど、この人の勘がよくあたるということだけは知っている。



「……わかりました。んじゃあちょっくら調べてきます」



 正直、話し合いも行き詰まりを感じていたので、ちょうどいいタイミングではあった。

 それに依頼を受けたからにはきっちりと彼女の力になってあげたいので、今はなんでもいいからヒントが欲しかった俺は、次の日からすぐに動くことにした。



 ☆



 こういうのは直接本人に尋ねるのに限る。

 そんなわけで、俺は次の日のお昼休みに日向さんを訪ねた。

 彼女は図書室で本を読んでいたので、マスターキーを使って解放した屋上まで案内する。



 ここならば誰にも邪魔は入らない。生徒会室も考えたが、もしも日向さんの『きっかけ』とやらが話しにくいものだった場合、お昼休みも作業などに利用されている生徒会室は控えた方がいいと判断した。

 そして俺は、正直に内気を治す方法について生徒会側でも方法に悩んでいるということを話して、そもそもどうして高校に入って急に内気を治したいと思ったのかをたずねてみた。



「んと……どうしても話さないと、だめですか?」



 もじもじと頬を染めて恥ずかしそうにする日向さん。

 おおっ、もしかしてこれは……やはり会長の勘が当たっているのかもしれない。



「あ、いや。無理に話さなくてもいいよ。話したくないことを無理やり聞き出すつもりはありませんから」



 というより、『きっかけ』が何かあると分かっただけでもかなりの進展だ。

 ここはいっちょ、気合を入れて日向さんについて調べてみるかな。

 ……なんて思っていたら。



 驚くべきことに、日向さんは迷った果てにちょっと何かを決意したかのような目をして。



「い、いいえ。言いますっ。言わせてくださいっ」



 と、意外にもそのわけを話してくれた。

 どうやら日向さんはそのきっかけとやらが、彼女本人にとってはかなり重要なことらしい。

 内気であるはずの彼女が対して面識のあるわけでもない俺なんかにそんなことを話すまでの決意をさせたのだから。



 ていうか、そもそも彼女からすれば生徒会に投書をすることすら勇気を要したはずだし、こうして屋上で男子生徒と二人きりになることだってかなり勇気を振り絞ったはずだ。

 彼女をそこまでして帰りたいと思わせるきっかけ。



 情報やを名乗る身としてはかなり気になる。

 わたし、気になります!



「じ、実は……」



 そうして、日向さんは『きっかけ』を語ってくれた。




 ☆



 それは、ある日の帰り道のことだったらしい。

 日向さんは学校帰りに母親から頼まれた買い物をするためにいつもとは少し違う道で帰っていた。更に普段通らない慣れない道であったために迷ったり、商品を見つけるのに時間がかかり、時間も少し遅くなってしまったのだ。

 だが、それがいけなかったのだろう。



 見た目も麗しい日向さんは、このあたりにある別の高校の不良五人組に絡まれてしまった。

 ていうかよくよく聞いてみると、日向さんの通ってたとかいう道も普段はそいつらの溜まり場の近くである。

  


 そんなところの近くを通りかかれば、そいつらの標的になるのは必然といえた。

 ていうか治安悪すぎだろう。

 途端に五人組の不良に絡まれて身動き取れなくなってしまった日向さん。



 知らず知らずのうちに路地裏にまで連れていかれて、もうダメかと思った。

 だけどその時。



「た、助けてくれた方がいたんですっ!」



 日向さんは、それはもう目をキラキラと輝かせながら語ってくれた。

 ピンチの日向さんの目の前に颯爽と現れた男の子。

 その子が瞬く間に不良たちを蹴散らして日向さんを助けてくれたという。



「わたし、もう一度あの人にあいたくて。でもその人、言ったんです。『お前が内気なのは分かるけど、ちゃんと助けてぐらい言え。じゃないと助けが間に合わねぇ』って。だから、わたしその時に心の中で誓ったんです。いまの自分を変えて、またこの人に会いに行こうって。今の内気な自分を変えて、この人に会って……ちゃんとお礼を言おうって」


「お礼を言う?」


「はい。わたし……助けられたとき、お礼をちゃんと言えませんでしたので……」



 なるほど。その時、直前に怖いめにあったこともあるのだろうが、自分の内気な性格のせいでちゃんとお礼を言えなかったことを後悔している。

 だからこそ、助けてもらった人にお礼を言えなかった内気な自分を変えたい、と。



「なるほどなぁ……うん。わかった。じゃあ、とりあえずその日向さんのことを助けてくれた人をちゃんと探してみるよ。んで、内気な性格を治すのも並行していこう」


「はいっ」



 ……俺としては、もう内気な性格を治す必要はないと思うんだけどな。

 なにしろ生徒会への投書をはじめとして日向さんはもう自分で変われている。

 その助けてくれた人に言えなかったお礼を言いたいという思いから自分で変わることが出来ているじゃないか。



 ということは、あとは俺の情報屋としての腕の見せ所。

 なんとしてでも、そのお礼のしたい男の子というのを探し出して見せる。



「えっと、それじゃあ日向さん。その助けてくれた男の子ってどんな人だった?」


「あ、うちの学校の制服を着てました」



 ふむ。それなら大分、限られてくるな。

 かなり探しやすくなった。



「髪は茶色に染めてて、目つきは悪くて、正直最初はこの人も不良さんなのかなって思ってました。でもぜんぜんちがくて。かっこよくて……あの、ぶっきらぼうでしたけど、ちゃんとわたしのことも気にかけててくれて……あと、とっても強かったですっ! すごいんですよ。五人組をぱぱーっと倒しちゃったんですっ!」



 ……約一名、心当たりがあるんですけど気のせいですかね。 




第三回、人気投票開催中です!


もうそろそろ締切りです。


発表もすぐにいたします。


お楽しみに!

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