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陽花の秘密
おにぎりころがる
まさにおむすびころりん
いやいやここは現代だ。
なぜ昔話の風景が目の前に広がっているのだ?
ずいぶんレトロなおじいさんとおばあさん。
まるで江戸時代にタイムスリップしたような
いよいよ頭がおかしくなってきたようだ。
歴史研究部の復活のため中学に入ってからの一年間、図書館に毎日入り浸っていたものの部員は自分一人だけ。
さしたる活動報告もできぬまま、春休みを迎えてしまった。
そして、おむすびころりん
一人も部員を獲得できなかったら今年も満足な活動場所も得られず、図書館に毎日一人過ごさなければならない。
だいたい全校生徒の何人がこの歴史研究部の存在を知っているのだ。
部活が数々の賞をとった栄光の時は、父が学生だった頃。
30年も前の話だ。
「おむすび食べますか?」
誰もいないはずの図書館に声が響いた。
髪の毛をツインテールに結んだ犬顔の女の子が僕に向かって微笑んだ。
どうやらこの学校の生徒らしい。
真新しい制服を着た少女がだった。
「新入生かな」
おむすびを受け取り、口にいれたとたん
先程のおむすびころりんの世界へすっとばされた。
気づくと少女の姿はなかった。