表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王冠の椅子  作者: 緋絽
最下層
8/24

不条理な世界へ

み、短い…!お待たせしました!それなのにこの短さ!卑屈になりそうです☆


───施設で俺は志紀から手当てを受けていた。

志紀が脱脂綿の上をゆっくりとなぞる。

「痕、残るかもな」

「……うん」

ちらりと志紀を見ると、いつものような仏頂面に戻っていた。

感情の読めない、仮面。

怒ってるのかな?

「あ、あのさ志紀」

「ん?」

「……ごめん。本当は俺達の為に官吏になってくれるって…わかってたんだ。だけど…今まで俺と志紀はいつも一緒だったから…だから背主になれば、またずっと一緒にいられるって…思って…」

「………」

無言で俺を見つめている。少し、肩身の狭さがきつくなる。泣きたくなってきた。

「…ごめん…。寂しかったんだ…。甘かった…。そんなんでついていける世界じゃないのに…」

俯くと涙がこぼれそうになった。

少し前、志紀に八つ当たりした自分が恥ずかしい。

唇を噛んだ。

よくもあんなことが言えたものだ。下手をしたら足を引っ張ってしまうかもしれないのに。───けれどそれより、志紀に見放されるのが怖かった。

呆れられたくない。

───と頭に手がのった。

驚いて顔を上げると志紀がぎこちなく笑っていた。

「…いいよ…、俺だって…言葉が足りなかったし…」

「…志紀…」

「俺はお前が背主でもやっていけるとは、思う。だけど、俺とお前がここを離れたら一体誰がここの奴らを守るんだ?」

あ…そうか。

「俺は、和貴なら皆を守れると思ってる。……俺は外から世界を変える。だから、お前には中から変えてほしい」

未来を絶望するのではなく、明るい希望を。「持ちたい」ではなく、「持つ」へ。そうしてもいいのだと、中と外から意識を変える。

なんと乱暴な方法か。はさみ打ちだな。とても、志紀らしい。

知らず知らず笑みが浮かぶ。

「うん、わかった」

「……頼む」

「志紀は言葉足らずだな。いきなり駄目だって言ったら混乱するに決まってる。あれ、俺悪くない気がしてきた」


志紀が傍目には気づかないだろうが、少しブスッとした顔になった。

「今までは通じてた」

「今まではね。でも志紀、外へ行ったらもう、それは通じないんだよ。少し練習していかないとね」

拗ねたようにそっぽを向く。

「志紀、頑張ろうな」

ちらりと俺を見て微笑んだ。

「あぁ」



俺と綾が受ける試験は昇試→会試→殿試の順に行われる。

あれから10日後、昇試を受けた俺達は余裕で通過しさらに1ヶ月後の会試に備えることになった。

ただ、平民になったから今すぐに最下層から出なければいけない。

「………志紀ぃぃ」

施設にいた子供達がぐずりながら周りに群がってきた。

「……次会うまで、死ぬなよ」

「うん…」

少ない荷物を担いでじいさんの方を向く。

ボロボロな古い紙片を差し出してきた。

「一応私の住んでいた家だ。よかったらここで暮らしなさい」

「どうも」

「志紀、頑張れ」

和貴がクシャリとした笑みのまま言った。

「……あぁ」

歩き出そうとしてふと立ち止まる。

和貴が訝しげに眉をひそめた。

「ありがとな」

ちょっと笑って歩き出す。

戸の傍にもたれていた綾が隣に立った。

多分、これから先、俺が感謝の気持ちを抱くのは和貴だけだろう。

冷え切っていたものをゆっくり溶かしていった。

あの明るさと人懐っこさに幾度助けられたろう。

ふわりと風が吹く。

第2層への門を一歩跨いだ。

この章はこれにて終了!次回から第2層の章、スタートです!(どの層も関係なく出てくるけどね!)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ