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王冠の椅子  作者: 緋絽
最下層
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施設にて

今日は短いかも…

施設に入る前、俺は綾を振り返った。

鼻歌を歌ってご機嫌な綾が首を傾げる。

「…それ、脱げ」

「は?」

「フード」

俺の言っている意味がわかったようで被っているフードを摘む。

「悪いけどコレ、俺のチャームポイントだから嫌」

「チャームポイントってなんだよ。怪しいな。俺お前の顔知らないんだけど」

綾が肩をすくめる。

「知ってても知らなくても変わらないだろ」

「脱げ。背主止めるぞ」

「なんて奴だ君はーーっ!!血も涙もない!!」

「大いに結構。俺はいざとなれば1人でも受ける」

「どうすんのさ、それ」

綾が肩を落とす。

「まぁ、いいか。美しすぎて倒れても知らないよ」

「そこらへんは心配してない。脱げ」

「酷いなー」

バサリとフードが落ちる。

肩より少し短い髪を後ろで括っていた。額に血の滲んだ後がある。

中性的な顔立ちで、少しつり上がった目が面白そうだと物語っている。

なかなか綺麗な顔をしている。

「…それ、どうした」

額を指差して訊く。

「え?あぁ傷?さっき君が平民相手に喧嘩してた時、流れ弾…じゃなくて流れ石が当たってさ。不覚にもね」

少し痛むのか顔をしかめた。

「君に夢中になりすぎた」

「素敵なラブコールだな」

戸の取っ手を掴んで開け、綾を中に入れた。

「はー施設ってこんななのか」

綾が珍しそうに周りを見渡す。

「…そういえばお前、奴隷でもないのに、どうして施設にいなかったんだ」

国試が受けられるってことは奴隷ではない。でも孤児なら施設にいるはずだ。それなら俺が知らないはずがない。

綾が一瞬黙り込んでから顔を上げた。

どこか痛むような笑顔。

「あいつらの思い通りになってやるものかって思っただけだよ」

「あいつら?」

「上の人間さ。平和ボケしたね」

綾が肩をすくめる。

「へぇ」

「聞いといてなんだその反応はー!!」

「深く聞くと面倒そうじゃん、今の」

「うっ。なんて淡々と答える奴なんだ」

綾が衝撃を受けたように僅かに仰け反る。

「────志紀じゃないか。帰ってたのか」

声のしたほうを向くとじいさんが俺を見て笑っていた。

「あぁ、じいさんか」

「隣の子は?見かけない子だが…」

じいさんが体を折って覗き込む。

「あぁ、こいつは…」

「初めましてご老人。俺は綾です。この度志紀の背主になりました」

「…あ、あぁそうか。…俺?でも君…」

「ご老人、何か引っかかっても気になさる必要はありませんよ」

ニコニコと人懐っこく綾が笑う。

それを見ながら俺は思う。

嘘っぽい。嘘で塗り固められているように見えて仕方ない。

「そうかね?まぁ、ゆっくりしていきなさい」

「はい」

綾が小さく会釈する。

じいさんが奥に引っ込んだのを見ると俺は綾の手を掴んで古ぼけたソファに座らせた。

「わっ何!?」

脱脂綿を酒に浸して搾ると立ち上がろうとしている綾を押さえて隣に座った。

後頭部を掴んで脱脂綿を額の傷に当てる。

「痛っ」

少し体を動かした綾の目を見た。

「我慢しろ。ほっといたお前が悪い。動くなよ」

「う…」

再び脱脂綿で血を拭うと新しい脱脂綿を当てて固定した。

「終わったぞ」

「どうも。うっわー俺愛されてるぅ」

ソファに座った綾がカラカラと笑う。

「破傷風になられたら面倒なだけだ。いざとなれば俺はお前を捨てられるよ」

「ふうん?」

綾が額の脱脂綿を触りながら相槌をうった。


その時、ガタンと音がしてそっちを見ると和貴が立っていた。



なるべく定期的にupしていきたいです…

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