背主
く、暗い…。
今回は少し読みづらいかもしれません…。
すみません!!m(_ _)m
家───施設に戻ると和貴達が俺に気づいて手を振った。
それに手を挙げて応える。
「終わったのか?」
「ああ」
脱脂綿を酒に浸し、軽く絞って和貴に渡す。
和貴がそれを見て首を傾げた。
「?なんだよ」
「膝、すりむいてるぞ。破傷風になったら面倒だ、拭いとけ」
和貴が僅かに目を見張った後、はにかむように笑う。
「バレたか」
おどけたように舌を覗かせた。
和貴に脱脂綿を押し付けてソファに座る。
「平民層の奴らは?」
「帰った」
「…お前ヤバいんじゃないの。平民達、強そうな奴連れて仕返しに来るかも」
「大丈夫だ、来ない。来るとしても、自分は来ないさ。殺されたくないからな。それに、その前に昇試に受かる」
「そっか」
和貴が安堵の溜め息を漏らす。
この国は4層に分けられている。
まず、最上層は皇帝、王族に分けられる。
皇帝は、王族ではない。なぜなら王族は政治不介入だからだ。
皇帝は、多数いる官吏から選ばれる。国民ではなく、官吏によって。
つまり、王は別にいるが、実質王と呼ばれるのは″皇帝″なのだ。
人々はこの時代を、偽帝時代と呼ぶ。
中国の三省六部制をそのまま利用している朝廷は、ほとんどが己の欲のために動いている。
大抵が貴族と平民で、最下層は官吏になれない。特例を除いて。
その下が第1層、別名貴族層だ。朝廷の半数は貴族だと思ってもいい。自分の身分と誇りを何よりも大事にし、官位を金で買う奴らだ。
そしてその下が第2層、別名平民層。
その名の通り平民。欲のために人に取り入ることを得意とする。
そして無知。飢餓の恐ろしさや石の怖さを知らない。
これは最上層、第1層にも言えるが。
────さらに下、最下層。
ここは奴隷、その子供、孤児が分けられる。
ゴミ溜めに住み、食料が得られれば幸運だと教えられる場所。
学舎がないのでほとんどが文字が読めず、さらに穢らわしいと国試も受けられない。
国試は、官吏になるための試験だ。
ただ特例がある。
────孤児。
孤児は親のいなくなった者で、奴隷だったわけではないということで平民層に上がるための昇試を受け、受かれば国試を受ける権利が手に入る。
今まで誰も受けようとしていないみたいだが、俺はそれを受ける。
必ずこの不条理な差別を終わらせる。
簡単ではないが、こっちだってかなり勉強した。
強く指を握り込む。
「───じいさん」
孤児のために特設された施設の奥、その部屋のカーテンを払いのけて中に入った。
黒髪に白髪の混じった見た目60~70ぐらいの老人が胡座をかいて座っていた。
「もうすぐ昇試だ。また教えてくれ」
「もう充分、お前は学んだと思うんだがな…」
老人が苦笑して招き入れると、俺の後ろに和貴がついてきた。
床に座ってじいさんの話に耳を傾ける。
じいさんは元官吏で、最下層のことを知り、変えるために動き、皇帝に目を付けられ、免官させられたのだ。
官吏だっただけあって、知識が豊富で、教えてもらうには最高の指導者だった。
ふとじいさんが話をやめた。
「何だ?」
「お前、背主はどうする」
背主は、試験・受かれば仕事の相棒となるバディーのことだ。
チラリとじいさんが和貴を見た。
「これから捜す」
「ふむ…お前なら真っ先に和貴を連れていくと思っていたが…。私も和貴が一番いいと思うぞ」
気付かれないように和貴に目をやる。
俯いて俺の答えを待っている。
和貴が、俺と一緒に官吏になりたがっているのは知っていた。
和貴も、あと少し勉強すれば合格するだろうとは思う。
でも───。
「和貴は駄目だ」
和貴が息を詰めて俺を見たのがわかった。
「なんで…」
「お前は、駄目だ」
和貴の目を見ずに言う。
和貴が顔を泣きそうに歪めているのがわかる。
「なんでだよ志紀!!俺、絶対お前と一緒にこの国を変える!!お前とならできるって……!!」
「駄目だ」
遮るように言って立ち上がる。
そのまま部屋を出て外に行った。
追いかけてきていた和貴が戸の前で立ち止まったのがわかった。
フードが出てこない…!!