油断、後の襲撃
…かなりお久しぶりです。
4ヵ月ほども空けてしまいました…。
今回は前回の予告通り、二人がいちゃいちゃします!
―――家に帰ってすぐ、俺と綾はそれぞれの部屋に戻った。
上書を作成している時に戸がノックされ、その音で顔を上げる。
「……なんだ」
戸を開けると目の前に箸が差し出された。
「飯だよ、志紀」
「……あぁ」
受け取って席に着く。
暖かそうに湯気をあげているうどんが置かれていた。
「さっき市場行ったら麺が安くてさ。大量に買ってしまった」
「へぇ」
一口食べるとだしの香りが広がる。
「うまいな」
「掘り出し物なんだ」
「そうか」
「てなわけで明日は志紀な。で、その次が俺」
「…何が」
「何って。家事だよ、家事。君、俺に全部やらせる気?」
綾がめんどくさそうな声を出した。
そこでようやく、あぁそういえばと思い出す。昨日も、綾が飯出してくれたっけ。
「……いや、やる。飯と洗濯と風呂か?」
「そう。あとちょっとしたら風呂が沸くから、俺先に入るよ」
「んー」
今まで綾が全てやってくれていた。でも、いつまでもそれに頼っているわけにはいかない。
風呂が沸いたのを知らせる電子音が鳴る。
「お、沸いた。じゃお先にー」
「んー」
汁を飲み干す。
第2層へ来てから初めてうどんを食べた。
これまでは食べ物なんてほとんど加工せずに食べていたから―――。
食器を水ですすいで重ねる。
部屋に戻って上書の作成を続けた。
風呂から出て清潔な布で髪を拭いていると綾が居間にいなかった。
棚を見ると救急箱がない。
「………」
綾の部屋の戸に手を掛けて開ける。
「綾」
「ぅわっ」
綾が慌てたように服を下げた。
「あぁ、志紀。ビックリしたー」
中に入って救急箱に目をやる。
「……怪我したのか」
「どうも掴まれた時にあちこち擦ったらしい。ヒリヒリするんだよね。でも背中で難しくて」
ベッドまで進んで座る。
「志紀?」
「座れ」
「え?」
「やってやる。座れ、上脱いで」
「1人でできるって」
逃げようとする綾の手を掴んで無理矢理座らせる。
「ほら、上脱げ」
「~~っいいって言ってんのに」
「早くしろ」
「偉そうだなぁ」
未だに渋っている綾の手首を掴んで袖を引っ張る。
「なんなら脱がせる」
「嘘!?わかったわかった逃げないって!」
俺の手を払ってパーカを脱いだ。
黒のタンクトップ姿になって身を震わせる。
「寒っ。早くしてよ」
「ok、ゆっくりしてやるよ」
「なんでさ!?」
服をめくって背中を見る。
確かにいくつかすれて赤くなっている。
「机でぶつけたんだよ。地味にヒリヒリしちゃって痛いんだよね」
「他は?」
「えっと、肘あたりにあった気がする」
肘を掴んで見ると右の二の腕の裏が赤くなっていた。
ここは強く擦ったのか、うっすらと血が滲んでいる。
「…お前、細いな」
「え?」
「腕とか、腹とか、余分な肉がついてない」
「だって最下層だったし。志紀も同じだろ?」
「まぁ。つこうにもつかなかったし。でもお前は、俺とは違う」
「違う?」
「あぁ、なんか、女―――」
あ、と思った時には押し倒されていた。
ベッドの上で肩を膝で押さえられ首を緩く締められる。
「よかったな、志紀」
「は?」
「今、ここが最下層で、俺がナイフを持ってたら、志紀、死んでるぜ」
手に力が入る。
眉をひそめてふっと息をつく。
かなり緩くしめられているが、ナイフを突きつけられているような感覚を受けて動けない。
綾の手首を掴んで力を入れる。
「悪かったよ。ほら、降参」
「……」
「離せ、綾」
それでも離そうとしない綾に、ため息を吐いた。
腹に力を入れて体を起こす。
「うわっ」
急に体を起こされてバランスを後ろに崩した綾の背を受け止める。
「軽いんだからすぐにどけられるんだよ」
「クソー離せー」
綾を膝の上に載せたまま服を捲って救急箱を引き寄せた。
「何すんだよっ」
「こら、じっとしてろ」
「降ろせっ」
「嫌だ。また首絞められたらたまったもんじゃない」
「暴れないって!」
「誰が信じるか」
脱脂綿を酒に浸して怪我を拭う。
「クソー。体重があればなー」
大人しくなった綾の背に湿布を貼る。
「肘見せろ」
「あーはい。もう勝手にして」
ぶらんと手を投げ出してもたれてきた。
肘の傷を拭うとしみるのか少し呻くような声を出した。
血の滲んでいるところには脱脂綿を貼った。
すべて手当てし終わったとき、綾は安心しきった顔で眠っていた。
溜息をついてパーカを着せる。
安心しすぎだろう。
溜息を吐き、綾をベッドに寝かせて部屋を出た。
すみませんでした!なるべく次回も早めにアップするように頑張ります!