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王冠の椅子  作者: 緋絽
第2層
17/24

苛立ち

今回、短めです。


俺と綾が歩き始めると冗官達もゾロゾロとついてきた。

口で不満を言いながらもクビにされるのは嫌らしい。

冗官のために用意された部屋に移動した。

クビになってもいいや~という奴はさっさと帰ったらしい、3分の1ほどいなくなっている。

「どうやって仕事もらえばいいんだ?」

「また父上に買ってもらおうか…」

今言った奴、クビ。査定の必要もない。

頭の中にメモをとる。

今ので月20万分、消えたな。

「……吏部試」

ある冗官の隣でボソリと呟いてみる。

「ん?何」

隣にいた男が俺の方を向く。

「あっ、いやっ。……普通は吏部試を受けて配属されるよなぁって、思って……」

「あー確かに。そういやまだ吏部試って行われてねぇよな?」

「はい、多分」

答えながら笑いかける。

視界の隅で綾が「誰だよ君!!」という顔をしているのが見えた。

「吏部試俺も受けられるかなぁ?」

「どうですかね。でも、受けるなら早く行かないと。準備が終わっちゃいますよ」

「あぁっ!!」

男が走って冗官室を出て行った。

それに数人が続く。

少し経つと男達が肩を落として帰ってきた。

「どうだったの?」

綾が頭の後ろで腕を組みながら聞く。

「……進士が優先だって」

「つまり、一昨日来やがれと。吏部らしい表現だね」

「どうすりゃいいんだ!!」

「吏部試を行わない時もあるじゃん。仕事ぶりを見て決めるんだろ?」

「…つまり?」

クスリと綾が笑った。

「土下座するなりなんなりして三省六部、御史台、府庫に頼み込めばいいじゃん。そっちの方がいいかもよ」

しばらくの沈黙。

俺はこっそり心の奥で笑う。

「えぇー!!」

冗官室からはちきれんばかりに大声が上がる。

「嫌だ!!」

「じゃあ、クビにされなよ。俺知らない」

「ぐ……っ」

男が声を喉に詰まらせた。

「じゃ、じゃあ、お前も行けよ!?」

「俺は心当たりあるもん」

「ぐぅ……っ」

綾の手を掴んで隅に連れて行く。

「何?」

「お前、バカか」

「え、なんで?」

「何で素でやってんだよ。覆面官吏の意味ないだろ」

「ちゃんとやってるって。俺、あそこまで意地悪じゃないから」

違いがわからない。

黙ったままでいると小さく胸を小突かれた。



それから毎日、冗官達と共に行動した。

ほとんどの奴らが三省六部へ行って頭を下げてきたが、一度あしらわれるとスゴスゴと帰ってきた。

なるほど、根性なしというのは本当らしい。

たった一度、どうってことないだろう。

おかげで切り捨てる奴は簡単に選ぶことができるが。

上書に名前を書きこもうとして手を止めた。

綾が鼻と口の間にペンを挟んでいる。

目があってペンをはずした。

「何?」

「……納得いかない」

「は?」

紙を破り捨てる。

「なめきってる。このままにしておくか」

散った紙片を見て綾は目を瞬かせ───ニヤリと笑った。

「それには俺も賛成だよ、志紀」



次は綾がぶちきれまーす!

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