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王冠の椅子  作者: 緋絽
第2層
14/24

………だいぶ、お久しぶりです。はい。

ようやく彼が登場!

廊下に出てチャームを宙に投げる。

光を受けて光った。

「忙しくなりそうだね」

綾が楽しげに言う。

「気は抜けないぞ。いつ手のひらを返されるかわからない」

「そうだけど。でも、やっと一歩進んだわけだろ?一歩進めたら後はその道を止まらず走り抜けるだけ」

「…そうだな」

───翌日、礼部へ行くと藤堂尚書が自分の背主らしき男と話していた。

「お、来たね」

「入ります」

「もう入ってるけどね」

俺と綾の胸にチャームが付いてないのを見て尚書が口元を歪めた。

「流石。覆面官吏としての自覚があるみたいだ。あれを付けていたらどこの誰だかばっちりわかってしまうからね」

「…仕事は」

「その前に会ってほしい人がいる」

「人?」

「そう。あ、そうだった。こちらは私の背主の帆島(ほしま)侍郎(じろう)。私と同等の権限を持つよ」

「どうも。加瀬 綾と申します」

綾がにこやかにそう言った。

侍郎は補佐官の事を云う。

帆島侍郎が軽く笑った。

「…ようこそ、礼部へ。私は、帆島(ほしま) (すばる)だ。…侍郎を、受け持っている」

「お?私といる時とは違って随分饒舌だな、昴」

「…ほっとけ…」

藤堂尚書がフンと鼻を鳴らして俺達の方へ向き直る。

「普段は寡黙な奴なんだが、今日は

よく喋る」

帆島侍郎の目が俺にとまる。

「……礼部へ配属されました。真壁志紀です。……よろしくお願いします」

「……あぁ」

帆島侍郎が笑った。

おかしい。敵意を感じない。

眉をひそめる。

同じ部署に入ったとしても、嫌がられるだろうと思っていた。

いつ誰に見られてもいいようにそういう素振りを見せないだけなのか。

俺達が覆面官吏だから──。

胸の中心が気持ち悪い。

ぽっかりと穴があき、その穴に合わない大きさの渦が無理矢理体をねじ込んでくる。

ふっと息をついた。

嫌な気分だ。それが長い長い紐となって体中にまとわりつく。

このままでは雁字搦めにされてしまう。

深い溝にはまっていくような不快感に顔をしかめた。

「あなたは、何を考えてる」

一瞬空気が止まる。

「……え」

「帆島侍郎、あなたに聞いています。何を考えておられる」

「…何も、考えていないが」

「ではそれは素なわけか。素で私達と絡めると?」

「何が、言いたい」

「私達は最下層です。何か厭うようなことがあるはずだ」

混乱した顔をする帆島侍郎に苛々する。

内心、舌打ちをして口を開きかける。

「志紀、それじゃわからないよ」

綾が被せるように言った。

綾を睨むとクスリと笑った。

「……綾」

「志紀は、言葉足らずなんですよ。ほら、前にも言われただろ、志紀。言葉が足り無さすぎるって。君、今まさにその状態」

「ほう?」

楽しげに藤堂尚書が笑う。

「あのですね、帆島侍郎。志紀が言いたいのは、何故最下層である私達に、一瞬もためらうことなく笑いかけることができるのかってことなんです」

口を挟もうとして綾が2人に見られないように背中を軽く叩いた。

束の間綾と目が合う。

黙ってろと言われた気がした。

思わず閉口する。

ずっと渦巻いていたものが、ゆっくりとけていく。

綾が言った事は、嘘ではない。俺が言おうとしていたことより随分ソフトになっただけだ。

危なかった。思い切り、答えを聞く前に詰ってしまうところだった。

小さく息をつく。

「…理由は、ない。私は全て等しいと、思っている」

「だってさ、志紀」

フードから見える口がつりあがる。

わかったというように頷いてみせた。

「あぁ、そうだ。会ってもらいたい人がいたんだ」

「……ついて来い」

帆島侍郎が戸を開けて出て行った。


次はまたまた新キャラ登場!

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