音の復活――広場が息を吹き返す
暗転していたステージに、
ふいに点々と光が芽吹くようにインジケーターが灯り始めた。
カッ…カッ…カッ…
まるで心臓が再起動するように、
各デバイスのランプが順に脈打ち、連鎖していく。
次の瞬間――
マイクが、
ヘッドセットが、
スピーカーが、
“音を取り戻した”。
わずかな通電のノイズが、広場全体に細い命の線を描く。
■期待の静寂
ざわめいていた観衆が、一瞬で黙り込む。
混乱の声は止み、
「……戻った?」
「音だ……今、音が……」
そんな囁きだけが静かに広がり、そして飲み込まれていく。
やがて、無音の海は――
期待で満ちた静寂へと姿を変えた。
誰もが息を止め、ステージを見つめる。
■三人の“呼吸”
玲美は胸の奥から、そっと息をすくい上げるように吸い込んだ。
喉の奥に、確かに音の温度が戻ってきている。
イオンはヘッドセットを軽く叩き、
返ってくる微かなフィードバックに目を細める。
イオン(小声)
「……戻った。」
涼子は指先で弦をひと撫でし、
その振動が腕を伝って心臓の鼓動と重なるのを確かめた。
そしてふと顔を上げ、広場をぐるりと見渡す。
彼女の視線が、観衆の震える期待を拾い上げる。
■最初の波紋
涼子が軽く、
ためらいがちに、
それでも確かな意志を込めて――
ギターの弦を、ひとつ鳴らした。
ピンッ。
小さく、透明で、どこまでもまっすぐな音。
それは広場の中央に落ち、
静まり返った空気の湖に、ゆっくりと波紋を広げていく。
次の瞬間――
観衆の中から、抑えていた感情が一気に弾ける。
「おおおおっ……!」
「戻ったぞ!」
「音だ! 音が来た!」
拍手が、歓声が、
熱を帯びた息が一斉に立ち上がり、
広場は再び――いや、かつてないほど力強く、
生き返った。




