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でもこういうのが楽しめるのはいいね!

 なにをしてもキャラクターと関わってしまうので、こりゃあまいったと思いながら下校。


 椿蕾は電車通学のようで、最寄りの駅まで散歩がてら送って行った。


 知っている町並みの知らない部分とか見れて、ちょっと興奮したし、なんならこの駅だって作品には登場するから、聖地巡礼だ……と、俺の中のオタクが顔を出しそうになった。


「明日からも、よろしくお願いします!」


 駅でさよならをする時、ぺこりとお辞儀をして改札の向こうへ行った彼女をみると、とてもギャルになるとは思えなかった。


 いや、というか。


 このままでは、()()()()


 ギャルになるルートに行けない。


 彼女がギャルになる理由はたった1つなのだ。


 1学期に友達ができなくて、それを姉に相談したら、その姉がギャルだったから、結果ギャルになってしまったから、という理由である。


 そしてクラスメイトから逆に怖がられてしまい………という流れである。


 主人公2人の邪魔をするキャラであるが、どこか憎めない魅力的なキャラクターになっていくのである。


 しかし。俺、友達になっちゃったよ。え、やばいじゃん。友達いないって言えないじゃん。どうすんの?


 まあ頭で考えても分からんので、街並みを眺めながら我が家に帰ることにした。



 ____________




「ただいまー」


 玄関のドアを開けてそう言うと、奥から母親がやってきた。


「遅かったのうお主」


 あ、これ違う!神様だ!


「あなた、神様ですよね?」


「おう、いかにもじゃ。またお主の母親の体を借りてやってきたぞ!」


「なにしにですか?」


「それは色々説明することがあるからじゃ。こんなとこじゃなくて、リビングいくぞ」


 おお、なんだか本当のお母さんのようなセリフだ。


 俺は靴を脱いでリビングに行く。


「それで、説明することって?」


「今日のお主を見ておったのじゃ」


「え?」


「お主を見て、忠告しておかねばと思ってな」


 忠告。怖いこと言うな。でも心当たりありまくり。


「えーっと、無闇にこの世界を乱すな、とかですか?」


「おお、わかっておるのか!なら良い。あまりにも元の世界と違う流れになってしまうとーーー」


「しまうと?」


「世界が滅びる」


 突拍子もなさすぎて、現実味のない言葉だった。

 でも、頭で理解できない言葉ではない。

 ある種、予想できた話でもあった。


「まあ、お主をこの世界に入れてやった時点である程度話が変わってしまうのは覚悟しておったがのう。どの程度の変化で世界が滅びてしまうのか、わしも完璧には分からんのじゃよ」


「なるほど……」


「そのために、定期的にお主と話をしにくるというわけじゃ!」


 世界の神というだけあって、バランサーの役割も兼ねているみたいだ。


「……言いたいことはとてもわかりました。俺も、この世界は滅びてほしくないです……!大好きな世界だから、夢だったとしても、滅んでほしくはない!」


「熱い魂を持っておるな!良いぞ!」


 神様もご満悦だ。

 この感じを見ていると、神様は俺の敵だったりはしないみたいだ。


「ただ、お主が既に物語に関わってしまった時点で、いまから関係を減らしても逆効果になるかもしれん。だから、むしろ積極的に関係を持っていって欲しいのじゃ」


「……なるほど?」


「つまり、いっそのこともっと物語に関わっていけということじゃ。神様の許可じゃよ」


 あまりちゃんとは理解できないが、今から急に物語に関わらないようにしても、元のストーリーには戻らないっていうことだろうか。


「……わかりました。じゃあ、今日行きたいところがあるから、お母さんには夜ご飯いらないって伝えておいてください。神様ならできますよね?」


「それくらい自分で伝えて欲しいものじゃが……まあ良い。優しい神様じゃからな!」


 別に自分で伝えてもいいのだけれどね。神様がなにができるのか知りたい気持ちもあった。



 ____________




 夜。神様の力で夜ご飯を1人で外に食べに行くことができるようになった俺は、ある()()()の前に来ていた。


 そして、気分は大絶頂。顔には出してない(つもり)であるが、鼻息とかはめちゃくちゃ荒くなっていると思う。


 だって。だってだって。だってここは、『ききょう』。あの桔梗奏が働いている、実家の定食屋さんなんだよ!!!!!


 今の俺の家の近くにあることは知っていた。

 だから、来てみたかったんだ。まあそれだけの理由ではないのだけれど。


 がらがら、と店の戸を開ける。


「いらっしゃい!」


 奥から元気な声がして、思わずこれにはにっこり。


「何名で……って、え?アンタ、今朝の……!」


「え、えぇ!!ぐうぜん、ですネェ〜!!」


 わざとらしい演技なってしまったが、店に来たら偶然桔梗奏がいた感じにしたかった。


「……まあとりあえず入りな」


「ありがとうございます……!!」


 やった!憧れの『ききょう』に入れたぞ!!


「ここ、知ってたの?」


「はい!昔から家族と来てたんです。ここの生姜焼き定食が大好きで!!」


「……そう」


 あ!嬉しそうな顔した!!!!この店が褒められると嬉しいの、知ってるよ!!!!どうせ関わるなら笑顔を見たいところなのだ。


 俺はこの店の名物が何かも知り尽くしている。オタクなんだよ、実は。


「なんだい、奏の知り合いかい?」


 奥からおじいさんの声がする。知ってる声だ!

 桔梗奏の祖父で、この店の店主である。


 俺に向かって話しかけてる……よね!?!?


「そうです!同じ学校のクラスメイトなんですよ〜」


「おおそうかいそうかい!奏は昔っから友達が少ないからよ。仲良くしてやってくれ!」


「ちょっと、爺ちゃん!」


 あ、恥ずかしそうな顔してる!いいなぁ、家だとこういう感じなんだよなぁ。未回収イベントを見た気持ちで彼女らを見る。


 そして、ここに来た理由はマンガ飯再現メニューを食べに来たということ以上に、桔梗奏に桜さんの印象を確認しておきたかったのだ。



「今日はなんか変な感じになっちゃってごめんなさい。どうしても桜さんと仲良くなってほしくて」


「ああ、まあ大丈夫だったよ。でも、どうしてアンタはあの子をそんなに気遣ってるの?」


「あー……」


 やっぱ気になりますよね。またもや本当のことを言うわけにもいかないので。


「桜さん、どうやら結構世間に疎いお嬢様みたいで、勝手ながら、わたしだけじゃなくて色々な人と仲良くなって欲しくなったんです。桔梗さんは、またわたしと違うタイプの人だろうから」


「ふぅん。会ったばっかなのに仲良いんだね」


 仲良いって言われた!?あの桜燈と!?!?

 喜ぶべきじゃないかもしれないが、嬉しくなってしまうのはオタクだからなのか友達が少なかったからなのか。


 というか、疑問が生まれた。


「なんで会ったばかりだって知ってるんですか??」


「あーそれね。ふふ、あの子帰り道で、アンタのこと楽しそうに話してたよ。親切な人と知り合えたーって」


 桔梗奏の顔が綻ぶ。


 あれ、あれ?あれれ……


 なぜだか顔がとても熱かった。


 オタクとして、大好きなキャラクターは放っておかなかった。当たり前の感情だろう。


 だけど、無性に恥ずかしくて、照れてしまうのは、桔梗奏の笑顔が可愛いからと、純粋に褒められたことと、まあそんなところなんだろう。


 あくまで心は冷静なつもりで、でもやっぱり恥ずかしくて。


 その後生姜焼き定食を食べている間も、ずっと全身が熱かった。


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