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4級冒険者ショート集  作者: 大石次郎


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マッスル日和 後編

「よーしっ! ミッター訓練生っ、デシカーノ訓練生っ、まず僧帽筋(そうぼうきん)の張りを自主確認!」


旧葡萄園の空き地で訓練着のミッターと訓練着でもフードは被ってるデシカーノを相手に早朝から俺こ指導を始まった!


「若干張ってる気がしますっ!」


「いや、俺はぁ訓練するつもりは・・」


「身体感覚! 身体認識! それがマッスルの基本だ。僧帽筋1つからそれがわかるっ。怪我、事故、故障、負傷っ! その全ては正しい感覚と認識で大いに回避率を上げられるっっ。マッスルを見詰める時、マッスルもまた君達を見詰めている! 相互マッスル理解っ! 復唱っ!!」


「相互マッスル理解っ!!!」


「難解過ぎるだろぉ~・・」


そうして始まった午前中のトレーニングは、柔軟、筋トレ、柔軟、栄養及び水分補給、柔軟、筋トレ、柔軟、栄養及び水分補給、柔軟、筋トレ、柔軟、栄養及び水分補給、柔軟、筋トレ、柔軟、栄養及び水分補給、柔軟、筋トレ・・・


「筋トレしかしてないだろぉ~うっっ??!!!!」


珍しくテンション高いなデシカーノ。


「柔軟と水分及び栄養補給もしているぞ?」


「ビタミン、アミノ酸、タンパク質、クエン酸、ナトリウム・・」


「ミッターがオカシクなってきるだろぅ~っ?!」


「まて、デシカーノ。少年は、マッスルとの対話、を始めつつある」


「やめさせろぅっ! 友達の息子何だよ~っ?!」


ともかく、午前中のトレーニングは終わり、冷水浴によるクールダウン後、90分、きっかり昼寝をし、水分と栄養を補給後、時間掛けて呼吸を意識した柔軟。


その後、軽い竹の棒を使った基礎的な棒術と槍術の稽古を軽くゆっくり目に行った。


「ビギナーとはいえ急に随分、柔い鍛練だなぁ~?」


「期限は3日でまだ子供な上にほぼ基礎訓練を受けていない。後に思い出して自主練できるようにするのが肝心だと屈筋も言っている」


「屈筋は会話しないけどなぁ~っ。まぁ」


熱心に稽古しているミッターを横目で見るデシカーノ。


「面白がってるならいいけどよぉ~」


竹の訓練後、今日初めてポーションによる回復を行った辺りで、今日から3日間宿の仕事を早番に切り替えてもらったネイエンもトレーニングに合流した。

ネイエンのレッスン料は出世払いだ!


「よし、午後の稽古2部は竹を使った素早い特訓だ! ネイエンは実戦を経ているから対応できるな?!」


「はいっ、できマッスル!」


「俺もできマッスル!」


「デシカーノは?」


「言わないぞぉ~っ?」


手強いな、デシカーノ。まぁいい。ミッターはネイエンと、俺はデシカーノと組んで素早い竹棒の訓練を始めた。


ふふん、ミッターとネイエンでは技量に差があるが、ミッターはワーリザード特有の頑強剛力さを早くも発揮しつつあるな。よしよし。


「モリモッサ! 俺の方が速いからなぁ~っ?」


さすがに4級盗賊のデシカーノは圧倒的に素早いっ。風と飛行を禁じ手にしている俺じゃ、近接でも押されるくらいだっ。


「さすがだデシカーノ! これは俺の稽古にもなるぞっ? ハハハッ。有益マッスル!」


速い竹棒の訓練はミッターに脱水症の兆候が見られるまで続き、水分と栄養補給後、柔軟をして、本日の稽古は完了となった。


「意外と早く終わりましたね!」


「俺はまだやれますっ」


「長くトレーニングすればいいという物でもない」


「しかし、早くは終わったなぁ~、ミッター達は少し仮眠を取らせてから、どこか観光にでも連れて行ってやればどうだぁ~?」


お、存外気の利いたことを言う。ヒラメ筋もビックリ。


「デシカーノさんは行かないんですか?」


「デシカーノ先生も行きましょう!」


「先生はマッチョだけだ。俺は苦手さぁ、先に宿に戻ってるわぁ~」


言いつつ、デシカーノは旧葡萄園の岡からトボトボ帰りだしてしまった。


「ミッターは後で届ける! また明日なっ」


「帰っちゃったね」


「うん」


「さて、どうした物か?」


俺はミッターとネイエンを改めて見てみた。稽古で疲れてはいたがワクワクした様子だ。うむ!


「よし、小一時間仮眠後、俺が翼で時計塔まで一飛びしてやるぞ!」


「やったーっ!」


「空飛ばしてほしいって思ってたっ」


バルタン族あるある。乗せて飛んでほしい、と期待される。だ。

実際成立させるにはそれなりのパワーはいるがなっ! これもマッスルマッスルっ。



仮眠後、一応2人とも安全帯は付けてもらい、纏めて背に乗せると、俺は翼を広げた。同時に旋風を展開し、2人の身体を軽く浮かせた。


「わぁ~っ?」


「浮いたーっ!」


「ハハハッ、俺はタダのバルタンじゃないっ。4級風使いのモリモッサだぞっ?! マッスルぅ~・・フライト!!」


飛翔を始めた!


夕暮れの旧葡萄園から飛び上がる。


「凄い! この街、こんな綺麗だったんだっ」


「青鱗谷の夕暮れも綺麗だよ?」


「そうなんだっ。いつか行ってみるね!」


「うんっ!」


うむ。俺は子供達を背に乗せて普段と違い姿勢が平行になるよう注意して、メーリクの東の時計塔へと翼を向けた。


「住んでいる場所が美しく見える瞬間がある物だ。その内、自力でもそう見えるよう頑張るんだぞ?」


「どの筋肉の助言ですか?」


「僧帽筋ですか? モリモッサ先生!」


「今のは三角筋だっ!」


「あははっ」


「へへへっ」


本当は無許可着陸禁止の時計塔にそうして到着し、3人で日が沈むを見詰めた。ぬんっ!



最終日は実戦訓練をすることにした。

ネイエンを再びダンジョンに入れるのは時期尚早と後見人になったヌゥにも反対されたので、場所は市の外の草原だ。

安価だが一応討伐依頼は出ていたふわふわの毛玉の様なモンスター、ファンシーラットの群れの駆除の仕事を2人に任すことにした。

デシカーノも鷹と馬の中間の飛行獣(ひこうじゅう)ヒポグリフを自腹で借りて付いてきている。


ミッターは手槍と小振りのナイフ。ネイエンはソウルダガーと投擲ナイフで武装。


「ネイエンは11体、ミッターは4体仕止めてみせるんだ! ネイエンは動きの確認と、万一の時のミッターのサポートをする。互いの動きをしっかり把握するんだぞ?!」


「「相互マッスル理解っ!!!」」


「そうだっ!」


「気を付けろよぉ~」


2人はファンシーラットの群れに跳び掛かった。


「みゅ~っ!」


戦意を挫く、ファンシーラット達の鳴き声っ。だが、俺の生徒達は怯まなかった。


「はっ!」


ネイエンが速い。最初の投擲ナイフの4連射で4体のファンシーラットを仕止め、続け様にソウルダガーで3体を斬り伏せる。


「わぁーっ!」


メッターもファンシーラットと交錯っ。うーん、結構体当たりで小突かれてるが喰い付かれるのは回避して、手槍で1体仕止めた。よし!


「行かせないっ」


自分が引き受けていたファンシーラット3体が有利と見たメッターの方に駆け寄ろうとしたのを、背後からの投擲ナイフで仕止めるネイエン。いい反応だ! あと1体。


「このぉっ!」


体当たりの擦りだけでなく、動きを覚えられて鉤爪でも少々引っ掻かれてしまってるが、手槍で2体仕止めるメッター。こちらも残り1体。悪くない。


「マッスルっ!!」


ネイエンはソウルダガーではなく、素手で最後のファンシーラットに組み付くと、スープレックスで脳天を割って仕止めたっ。いいブリッジだ!


「あっ」


メッターは疲労と出血と痛みと汗で握りが甘くなってたらしく、手槍を隊で弾かれてしまった。ナイフ1本になる。


「落ち着けよぉ~、メッター!」


「冷静マッスル! 身体の筋肉の感覚を忘れるなっ」


「はい!! 来いっ」


「みゅ~っ!」


本性を剥き出し、牙と爪でメッターに襲い掛かる最後の一匹のファンシーラット!


メッター冷静だった。ナイフの鞘を投げ付けて牽制し、


「ええいっ」


一瞬の隙を突いて突進し、眉間に深々とナイフを突き刺し、ファンシーラットを仕止めた。


「よぉしぃ~っ!」


「やったねっ」


「よくやった。お疲れマッスル!」


「はぁはぁ、ありがとうございます・・」


そのまま貧血で倒れてしまったから、俺達は大慌てしてしまった。



ポーションと毒消しで治療後に改めて街の治療院でも見てもらったが、メッターは問題無かった。


少額の報酬は2人で山分けして小遣いということになり、ヌゥの宿の食堂で2人でパフェ等の甘くて冷たい物を食べて祝勝会となっていた。


俺、デシカーノ、ボランティア帰りで相変わらず疲れているがビューティーポーションを飲むことは忘れないヌゥの3人は離れた席からそれを見ていた。


「あの子の父親は古い友人だが、田舎で、貧乏だったのに一代でそこそこ財を成していてさぁ。結果、やっかまれてあの子はちょっと郷でイジメられてたんだよぉ~」


「面倒ですね」


「ふむ、そんなことが」


「正直、親が金を積めば個人指導の口はあったと思うが、単純に強くなって返ってもマズい気がしてなぁ。モリモッサくらいでちょうどいいかってよぉ~」


・・ん?


「どういう意味だ?」


「とにかく助かったぜぇ~」


「ネイエンに悪い影響がないか心配ですが」


「どういう意味だ?!」


釈然としないが、メッターとネイエンは仲良く元気そうだったので、良しとするか。めでたしマッスル!!

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