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4級冒険者ショート集  作者: 大石次郎


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藁の火 前編

「ふむ」


軽く魔力を込めた鍛冶ハンマー+1で熱された大曲刀(シャムシール)を火花を散らして調整し、水に浸して冷やす。

補修素材として鉄粉+1とメタルジェムを使った。予算内ではまぁベストだろう。強化はできていないがここまでは元通りのシャムシール+1に直せている。


「仕上げを済ませれば完了だが、装飾は専門外だの。刀身と柄は直してるから商会に言ったら安く済むだろう」


「いい仕事だな、ドルフ」


平服の4級戦士職のタケシは柄から外された状態の刃零れは直ったシャムシールの刀身に満足そうだった。


短命種のロングフット族のタケシは、ついこの間まで冒険者ギルドの戦士スクールの実習を受けていた気がするが、いつの間にかいい面構えのワシと同じ4級認定の冒険者になっていた。


まぁワシは鍛冶師(かじし)だがの。


「ドルフ、今月はちょっと早いが地下2階に潜らないか?」


「ふん?」


ワシはここ10年、1月ダンジョンに潜って素材等を収集し、次の1月はこれらを売ったり加工したり加工した物を売って、手が空くと街の鍛冶師の商会の手伝いに入り冒険者達の装備品の修理や補強をしながらダンジョン周りの情報収集をし、またダンジョンに潜る。という暮らしを繰り返していた。


長命種のドワーフ族であるワシはあまり変化しない。


「2階、浅層(せんそう)だな。もう大した物は無いんじゃないかの?」


ワシらの暮らすメーリク市はよくある迷宮(ダンジョン)を中心に発達した街。

ここのダンジョンは発見から半世紀は経っている。まだ生きているダンジョンではあるが、浅層はもう探索され尽くしておる。


「実はこの間、さっさと引退した同期のヤツからいい情報を買ったんだ? へへっ」


「んん~?」


ワシは鍛冶ハンマー+1で自分の肩を叩いて体内の鉄分を感じながら、妙にバツが悪そうにも見えるタケシからの、いかにも危うそうな誘いに困惑しておった。



数日後、装備を整えたワシはタケシ達と共にメーリクのダンジョンの地下2階へと降りてゆく魔除けの利いたエレベーターに乗っていた。

ここのダンジョンはルートは限られるが中層まではエレベーターが通っている。


「ふむ」


得物の大斧(グレートアクス)+1を担ぎ直す。


いい情報、とやらはダンジョン2階の局所的な変動に伴い発生していた未踏派エリアを発見した。という物だった。

どうもそこそこ売れるメーリクムーンストーンの原石が多く露出したポイントがあるとか。ここを頂く。


が、未踏ということは浅層でもリスクは高い。

タケシに協力することにしたが、3つ条件を出していた。



1つ、回復役(ヒーラー)を雇うこと。


2つ、鍵師(かぎし)等の罠対応できる職の者を雇うこと。


3つ、ギャラから差し引いて構わないから高価なダンジョン離脱アイテム、脱出の鏡、を全員分用意すること。



保守的だがやはり生存率が変わってくる。備えるべきであった。


結果、ワシ以外に、


「前髪、変じゃないですか?」


ノーム族クォーターのロングフット族の4級僧侶職のヌゥと、


「あー、こういう不確定な仕事はやらないんだけどなー、あー、ポーカーの借金が・・チッ」


小柄な獣人族、白鼬人(ワーオコジョ)の4級忍者職のザンムシカが加わっていた。


エレベーターが止まった。


「よ~し、タケシ隊。再出発だ! 儲けるぞぉ?」


「・・何だかのぉ」


エレベーターを出ると、早速、中規模な魔除けの野営地になっている。これくらいの層だと観光客までいて接客専門のヤツらが幅を利かせている。攻略に来た冒険者は普通、ここは素通りだ。


「おうっタケシ! 景気はどうだ?」


「まぁまぁだ」


「ドルフじゃないのっ、ちょっとウチの道具見てよ?」


「地上で商会に通してくれ」


「ヌゥちゃん今日も可愛いね!」


「知ってます」


「ザンムシカ! 金返せよっ」


「はっ? お前に借りてねぇしっ、チビだと思って見くびってたら、眉間に手裏剣ブッ刺すぞっ?!」


素通りと言いつつそれなりに構われるが、拠点に張り付いてる連中は地上の商会周りも行き来しておって狭い界隈。致し方ない・・


ともかく観光スポット化した野営地は抜けた。


「改めて2階は久し振りだの」


メーリクダンジョンの2階は苔と石のフィールドだ。あちこちが苔に覆われ、様々な比較的安価な鉱石の類いが露出し、その性質を持った魔物も発生する。


苔に関しては環境、魔物、共に毒や感染症を招く物も少なくない。


ヌゥとザンムシカは防毒系アクセサリーを身に付け、耐性のあるワシとタケシも戦闘では前衛になるので年の為に防毒系アクセサリーを身に付けていた。


「ライトボール」


設置された魔力灯(まりょくとう)があるエリアから離れるので、ヌゥは照明魔法を数個灯して宙に浮かべた。


「オイラは暗闇でも結構見えるけどなっ」


「貴方はね」


「あ~ん?」


ザンムシカがヌゥに絡んで毛むくじゃらな両頬を掴まれておるが、まぁいい。


「目指す場所は、オドロ通り、の先だろう?」


「ああ、その先に未踏派エリアがある。といっても辞めたヤツの(パーティー)が途中まで行ってるんだがな」


「未踏派エリアは基本的にはギルドに報告する物だぞい?」


「今からそれ言うかなぁ? 大丈夫だって。深入りはしない。アイツらのやり残しをサクッと片すだけさ」


タケシは気楽に言った。



途中、苔の生えた流動体モンスター、モススライムに有毒のパープルモススライムの群れや、浮遊する一つ目の岩の魔物レビテーションロックに加え大型種のラージレビテーションロックの群れに襲われたりしたが、そこは浅層のモンスター。


前衛2人に飛び道具(手裏剣)使いにヒーラーといる4級パーティーの敵ではないの。毒対策もできておる。


メーリクダンジョンはダンジョン主が健在なまだ生きておるダンジョンであるので、トラップの類いは解除や破壊や仕様済みになってもしばらくすると自動再建する。


そこはザンムシカの罠探知と罠解除のスキルで対処していった。

忍者は鍵師程のトラップ対処能力は無いが、浅層のトラップは大した物ではないからの。

いちいち、


「ほら、オイラの手柄!」


とアピールしてくるのが面倒だったがの。


岩の隆起したところ等はヌゥ用にロープを渡して進ませた。


「ヌゥ、自分でちゃんと歩かんかっ?」


ヌゥはこういう場面では引っ張られるに任せてロクに自力で登らん。


「離脱アイテムだけじゃなくて浮遊アイテムの費用も出してくれれば良かったと思います」


「いや出費が嵩んでさ。まぁ大した遠出じゃないさ」


タケシはあくまで気楽な調子だったの。


毒苔が毒胞子を撒いているエリアでは、


「クリアヴェール」


ヌゥが浄化の光の膜を張って進むことになった。アクセサリーでゴリ押しもできるが装備品等に付着して時間差で繁殖することもあるし、死なないまでもアレルギーを起こすことはあるからの。


まぁルートは解明されておるが、荒れている(初期はこの程度でも死屍累々であったそうな)オドロ通りと呼ばれる通路を抜けた先の脇道のそのまた脇道のまたまた脇道に進んだ先に、


「ふむ」


通路の質感の違う、断層の様になった変動の跡の裂け目があった。その先にも通路が見える。


「なる程、この位置だと2階のCの13の転送門(てんそうもん)に繋がってないかの?」


「御名答! 俺の同期もその転送門に飛んだらエリアが変動していて酷い目に遭ったんだよ」


「オイラ達も酷い目に遭うんじゃないよな?」


「敵はわかってますし、大丈夫ですよ。ブチ殺して差し上げましょう」


そう、タケシの同期情報で変動エリアに巨大な岩の蝎のモンスター、ギガロックスティンガーが出ることはわかっておった。


「僧侶の台詞ではないの」


「天に召させて差し上げますわ」


「・・・」


物は言いようだの。


「酷ぇ」


「ロックスティンガーは3階のモンスターだ。わかってりゃ余裕さ」


思う所がないではないが、ワシらは公式には未踏となっておるCの13転送門に繋がっておるらしい変動エリアに入っていった。

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