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1話【どうやら憑依転生してしまったようです!!】

如月夏樹(きさらぎ なつき)は、ある日、目を覚ますと、異様な状況に見舞われていた。 眠っていたはずが、目を覚ますと見慣れぬ部屋にいた。 天井が高く、広々とした空間に身を置いていたことに彼女は気付いた。 しかし、それ以上に驚くべきことは、自分が身に着けている服だった。


「フリフリのパジャマ?」


彼女は普段、オフィスでシックなスーツを身に(まと)い、堅苦(かたくる)しいビジネスマナーに(したが)うことが日常だった。 それが一変し、今やこの可愛らしいパジャマ姿に身を包んでいる。


「まさか… 夢?」


彼女はそう問いかけた。 しかし、周囲の空間があまりにもリアルで、自分の身体を触れてみても、それは夢のような錯覚ではなかった。体中が痛み、極度の疲労感に襲われていた。


「でも、こんなことって…」


あまりの痛みに自分の体を見つめると、傷や青あざだらけであることに気付いた。 その痛々しい光景に、彼女は驚きと不安を感じた。 そして、着ているフリフリのパジャマも、少し黄ばんでいるような気がした。さらに、自分の髪が長くて黒いことに気付きました。


「どうして……?」彼女は口をつぐんだ。 この体の傷やパジャマの汚れは、まるで何かがあった証拠のようだった。 しかし、どんな出来事があったのか、全く思い出せなかった。


手探りでベッドから立ち上がり、部屋の中を見回す。 しかし、彼女の記憶はぼんやりとしており、この部屋がどこなのかもわからない。


「ここは……?」


コンコンと乱暴にドアをノックする音が聞こえた。 夏樹は思わず顔を上げると、ドアが開かれ、メイド服を着た女性が部屋に入ってきた。 その女性の顔は歪みきっており、性格が悪そうな印象を覚えた。


「いつまで寝てるのよ!」 女性は怒鳴りながら、夏樹の頬をバチンッと音をたてて叩いた。


夏樹は驚きと痛みで頬を押さえながら、女性の言葉に戸惑った。 この女性は一体誰なのか、そしてなぜ自分の部屋に入ってきているのか、夏樹にはまったく理解できなかった。


「さっさと着替えて、洗濯を手伝いなさい!!!」と、女性は怒鳴りつけた。


夏樹は混乱したまま、着替える場所や方法がわからなかった。 パニックに陥り、その場に立ち尽くしてしまった。 すると、もう一度強く叩かれ、その痛みと怖さで彼女の心はさらに乱れた。


「着替えって… どこ?」 彼女はつぶやいたが、女性は彼女の状況を無視して、再び派手に怒鳴りつけた。


「気でも狂ったのかい!お前の着替えはそこ!! どうしてお前なんかがこんな部屋を一人でつかってるんだか!!」 メイドは怒鳴りつけた後、どこかへ去ってしまった。


夏樹は部屋の中を見渡し、クローゼットを見つけるとそっと扉を開けた。 中には子供用のメイド服がしまわれていた。 恐らく、彼女が昨日着ていたものだろう。 頬が痛み、これが現実世界だという自覚が彼女を襲った。


よく見ると、部屋はベッドとクローゼットに机だけといった簡素な感じで、それ以外何もなかった。 しかし、部屋は広く、天井は高い。 ベッドも天蓋付きで豪華だったが、手入れはされておらず、埃だらけで黄ばんでいた。


夏樹は自分が誰なのかわからない状況にも関わらず、とりあえず着替えて、外へ出てみることにした。 彼女はクローゼットからメイド服を取り出し、自分に合うものを選んで着用した。 着替えることで少しでも現実感を取り戻そうとした。 そして、ベッドから立ち上がり、部屋を出る決意を固めた。


部屋の外に出ると、長い廊下が広がっていた。 絨毯が豪華に敷かれ、その上を歩くと足音が消えるほど厚みのあるものだった。 廊下の両側には整然とドアが並び、それぞれが異なる部屋へと続いているようだった。 その姿はまるで、大きなお屋敷の中にいるかのようだった。


メイド達が素早く出入りし、掃除や仕事をしている光景が廊下に溢れていた。 彼らの動きは粛々としており、部屋々で静かな作業が行われているようだった。


夏樹は一瞬、この豪華な雰囲気に圧倒されたが、自分がいる状況を理解するためにも、勇気を振り絞って廊下を歩き始めた。


キョロキョロと挙動不審になりながら進んでいくと、階段が目に入った。 しかし、そこへ進もうとした矢先、先程部屋に入って来たメイドに服を掴まれ、強引に別の部屋に引きずり込まれた。


「アンタ!!絶対に通常階段は使うなと言ったはずでしょう!!」


メイドは怒りに震える声で叫んだ。


夏樹は驚きと恐れの中で、メイドに髪を掴まれる。 彼女は必死に言葉を詰まらせながら訴えた。


「す… すみません! 何も覚えてなくて…!!」


彼女の声はか細く、不安に満ちていた。 自分の記憶の欠落に戸惑いながら、夏樹はこの不可解な状況に打ちのめされていた。


メイドはニヤリと笑った。


「そうかい。とうとう気が狂ったわけかい。 なら出て行きな。 公爵家の未来を潰す前にね。」


彼女の言葉に夏樹は戸惑いを隠せなかったが、メイドに手を引かれて使用人用の階段を下りることに従った。 階段を降りると、勝手口らしき場所から外へと放り出された。


外は明るい陽光が差し込み、庭園が広がっていた。 夏樹は一瞬、周囲の景色に目を奪われたが、まだ混乱が晴れない。


夏樹は混乱の中で立ちすくみ、次に何をすべきか見当もつかなかった。 自分が追い出されたこと、そしてここが公爵家であることだけが彼女の頭に残っていた。 自分が誰なのか、何者なのか、全くわからなかった。


小さな足で外へ出ることができるのかどうか不安がよぎったが、それでも前に進むしかないと決意した。 彼女は壁を探して、壁をつたって門を探し始めた。


お腹が鳴っているが、周囲に食べるものはなかった。 しばらく歩いていると、噴水が見えた。 彼女はお腹が空いていたため、とりあえず噴水のところへ行き、水を飲んだ。 後でお腹を壊しそうだが、とりあえず飲めるだけ飲んだ。ふと水面に映った自分の姿を見ると、長い黒髪に加えて、瞳がピンク色をしていることに気づきました。 その異様な目の色に驚き、目を見開きました。


すると突然、「あ~もしもし、お嬢さん?」と声をかけられ、夏樹はビクリとしてバッと振り返った。 そこには白髪のフワフワした髪の毛で紫の瞳をして、ローブを着た幼い少年がにこやかな笑みを浮かべて立っていた。


「えっ、あの…私・・・。」

「ん~、ここの水は腹を下すと思うよ?」


彼は同じ歳くらいの少年であることは間違いないのに、ゆったりとした、まるでお爺さんのような口調で話していた。 夏樹は彼の言葉に何故か少し気が抜けてしまうような感覚を覚えた。


「見たところ、メイドみたいじゃが、飲み水はもらえんのかいのう。」


彼の言葉に夏樹は戸惑いながらも、自分でもどう返事をしていいのかわからなかった。 彼は自分に対してどのような関係性を持っているのか、なぜここにいるのか、疑問が頭をよぎるが、言葉が出てこない。


「お嬢さん、落ち着いてでええから、話してごらん。 何があったんじゃ。


少年の声はとても心地よく、夏樹は安心感が広がるのを感じた。


「私… その、今追い出されたばかりで、その… 記憶もなくて、どうすればいいのか分からなくて…。」


彼女は戸惑いながらも、少年に向かって自分の状況を素直に打ち明けた。

そして、涙がポロポロと溢れた。 何故だかわからない。 しかし、少年の落ち着いた声に包まれると、彼女は不思議な安心感を覚えた。 彼女はそれまでの混乱と不安を少しでも忘れるように、涙を流しながら少年に向かって話し始めた。


「私は… 日本にいたの。 ただのOLで…。 寝て起きたらここにいたの。 メイドさんに叩かれて、髪をひっぱられて、追い出されて… どうすればいいのかわからなくて…。」


夏樹は声を詰まらせながら、少年に自分の過去と、現在の混乱した状況を説明した。 彼女は自分がどうやってここに来たのか、どうすれば帰ることができるのか、全くわからなかった。



「とりあえずのぅ、ここを出てみんか。面白い事になりそうだからのぅ。」 と言って、少年は私の手を優しく引いた。 その瞬間、ふわりと宙を浮いた。


初めての宙に浮く感覚に、私はヒヤリとしたが、不思議と足がついていることに気付いた。 しかし、どこに足がついているのかわからない恐怖が私を襲った。 青ざめてしまった私に、少年は優しく声をかけてきた。


「ん? 恐いかのう。 恐いなら儂に抱き着いてればええよ。」


そして、彼はさらに引き寄せて、優しく私を抱きしめてくれた。 その温かい抱擁に、私の心は安らぎを感じ始めた。


「あの… 魔法使いですか?」


「んーや。儂はしがない辺境伯じゃ。 まぁ、色々事情があってのぅ。 とりあえず儂の家に行こうかのぅ。」 と言って、空の上を進み始めた。


「あの… えっと、辺境伯って、アニメとかでしか見たことがないのですが…。」


「ほぅ、アニメ。なんじゃそりゃ。」


私は苦笑いしながら「そうですよね。」と返してしまった。


「じゃが、1つだけ言えるのは、ここはお前さんにとって異世界という事だけじゃな。」


私は自分が異世界に来てしまったのだと理解した。


「やっぱり帰れたりしないですよね。」


「うむ。帰るのは難しいじゃろうな。 じゃが、安心せい、最悪、お前さんの面倒はワシがみる。」


彼の言葉に、私はほっとした。 少年は私の不安を理解してくれているようだった。


「ありがとうございます…」と私はそっと呟いた。


少年はどうみても子供にしか見えなかったが、その魔法の使い手としての姿勢や振る舞いから、私は彼に対して安心感を覚えた。 彼が魔法を使っているという事実は、未知の世界に迷い込んでしまった私にとっては心強いものだった。


転生ものが物凄く流行る理由は、実際に転生した人が多かったからだったりして、などとくだらないことを考えられる余裕がでてきた。


「まずは家に帰って、お前さんが飲んでしまった汚れた水をどうにかせんとなぁ。薬を用意するかのぅ。」 と言われ、私は毒を飲んでしまったような気分になった。


夕陽が沈むころにやっと家らしき教会に辿り着いた。 よく見ると、少年の着ている服は祭服に近しいものであり、彼が教会の子であることがわかった。


「あの、名前は・・・。」


「そうじゃった。ワシはキルエル・クラリアスじゃ。 キルでええよ。」


ゆっくりと地面に着地して、キルは私を家にあがらせてくれた。


家は凄く庶民的だった。 木のテーブルに木の椅子、ベッドが1つ。 そして後はびっしりと本棚があった。



キルエルは木の棚を開けて何かを取り出し、急須の中に魔法で水を注ぎ、魔法で温められた急須から湯のみにお茶を注いで渡してくれた。


「これが薬じゃ、飲むとええ。」と言って、小さな丸薬を私にすすめた。


「ありがとうございます。」私は感謝の言葉を述べながら、丸薬を受け取った。


椅子に座って、薬を飲み、ゆっくりと熱いお茶をすすった。 この瞬間だけは日本にいる感覚がして、心の底から落ち着いた。


「どうじゃ、ええ飲み物じゃろ。 ワシの祖国で流行っとるんじゃ。」


キルの言葉に、私は微笑みながら頷いた。 彼の心遣いに私は少しホッとした気持ちになった。



「はい、とても美味しいです。」


「先ずは、そうじゃのう。記憶がないと言うておったな。 お前さんは、メルドロイド公爵家に嫁ぐ予定の、ユリエラじゃ。 家は確か南の方にあるホルマックス伯爵家の娘じゃな。」


「じゃあ、私嫁ぐ予定の家にいたって事ですか?」


「左様、メルドロイド公爵家は今頃大騒ぎじゃてのう。」


「何故ですか?」


「お前さんが、あの屋敷を離れた時点でお前さんの強大な魔力を吸い取って張られていた結界が崩壊してる頃じゃからじゃ。お前さんは、無理矢理嫁がされようとしていたんじゃ。まぁ、公爵はお前さんが酷い目にあっていた事なんぞ、知らんかったじゃろうがな。 無理矢理というても何不自由ない生活をさせ、倅と結婚させようとしておったはずじゃ。 それを誰かが邪魔していただけが、お前さんが置かれている状況じゃな。」


「え!? 戻らなくて良いのでしょうか?」


「お前さんを酷い目にあわせていた家に戻りたいのかのう?」


「戻らなくて… 良さそうですね。」


「どうしたいかはこれを読んでからにしてみてはどうじゃ。」


キルの言葉に私は驚きつつも、少しずつ現状を受け入れつつあった。 彼の提案に従い、渡された物を読み始めると、私の選択肢が明確になるかもしれないと期待を込めて。



渡された本のタイトルは【麗しき殿方との甘い宮殿】で、中身はよくある乙女ゲームを小説化したような内容だった。 驚くべきことに、ヒロインの立場は最初から悪役令嬢ユリエラになっていた。 私だ! と思った。


物語は、先程キルエルさんが少し説明してくれたように、無理矢理お金で伯爵家から私を買い取るような形で婚姻を結び、公爵の「適当に」という言葉に使用人が誤解して、ユリエラを酷い扱いをして育てるというところから始まっていた。 だから私は叩かれたりしていたのかと納得してしまった。


その後、公爵の息子であるネロフライトと出会い、酷い目にあっている事実が明るみになり、そこからネロフライトに愛されるというストーリーが展開されていく。


「ははは・・・でも、これ読んじゃうと、何故か戻る気失せますね。」


「まぁ、最初はそうじゃが、何人かええ男が現れるみたいでのう、その物語は変なところで終わっとるんじゃ。」


と言われて、私は最後のページを見てみると、「私が選ぶのは・・・・」で終わっていた。 それはユリエラが最後にどの男を選ぶかは想像に任せますという意味だった。


どうやら本当にこの物語の主人公として転生してしまったようだ。 私も何度か乙女ゲームをプレイしたことはあるので、理解はできるけど、攻略キャラクターについてしっかりと読んで、慎重に選んだほうが良さそうだということがわかったので、本を最初からじっくりと読むことにした。


一人目の攻略対象はネロフライト・メルドロイド。 公爵家の嫡男であり、執着溺愛系の男子。


二人目はラティー・メロウト。 メロウト王国の第一王子であり、継承権を破棄した遊び人タイプ。


三人目はセトラ・ハイドシュバルツ。 ハイドシュバルツ公爵家の嫡男であり、王国の騎士で体育系の男子。


四人目はパピルスという最年少の魔法士団長。 可愛い系の男子。


最後は… ノエル・クラリアス? 教皇…? この人は結構謎めいている。


「この、ノエル・クラリアスって人はキルの血縁者か何かですか?」


「あー、そいつは孫じゃな。今ソイツ教皇やっとらんよ。 ワシが今教皇じゃから。」


「へー、孫かぁ・・・って孫!? キルって何歳ですか?」


「さぁ、数えとらんからのぅ。ただ言える事はその物語通りではないという事じゃ。 その物語だとワシ中盤で死んでるらしいからのぅ。」


「え!? あっ、大司教が命を落とすって、キルの事ですか?」


「らしいのぅ。ちなみに、ラティー王子じゃが、遊び人なんてとんでもないくらいに堅実で落ち着いた感じの王子に育ちそうじゃぞ。 近頃、立太子式も済ませておるようで時期王じゃな。 セトラは騎士ではなく、軍を目指すそうじゃ。」


「軍!? って何ですか・・・。」


「外用の兵士じゃな。」


どうなってるのよ。 何もかも物語を外れて滅茶苦茶になってるってわけ? それに、公爵家が2つ。 現実味が全然ない。 目の前の少年はお爺さんみたいだし。


「とりあえず寝てみたらどうじゃ?ベッド使って良いぞい。」 と言われて、私はヘトヘトだったので眠ることにした。 席を立った時に、読書に夢中になって気付かなかったけれど、簡単につまめる食事を側においてくれていたようで、無意識のうちにそれを食べていたようで、お皿が空になっていた。 空腹も今はもうない。 心おきなく眠れそうだ。 ベッドに入ってみると意外とフカフカだった。


読んで下さってありがとうございます!!

私の書いた全てのファンタジーロマンス作品を閲覧されている方向けのコメントになってしまいますが、アキトさんの作ったこの星で起きた出来事全てを書き記していく所存です。

どうか応援、イイネの方よろしくお願いします。モチベに繋がります!!今回もモチベが続く限り、よろしくお願いします!

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