第17話:魚があった!(Side:ワガマリア③)
「ワガマリア、何をやっているの。騒がしくしないでちょうだい」
「そうだ、そうだ。子どもだからうるさくしていいわけじゃないんだぞ」
さらに面倒くさいことに、お母様たちが出てきた。
ああ、もう。
一瞬ウンザリしそうになったけど、名案が思いついた。
お母様たちに押し付けちゃえばいいのよ。
きちんと対応していただきましょう。
そう、大人なのだから。
ほくそ笑みながら、そっと気配を押し殺す。
「「こ、国王陛下! どうして、こちらに!」」
王様を見るや否や、驚きの表情となるお母様とお義父様。
愉快で仕方ないですわね。
「レベッカ嬢の食事を食べたくて来たのじゃよ。ついさっき、ワガマリア嬢からサンデイズ食堂も再開したと聞いたのでな」
「「なっ!?」」
目を見開いて呆然と佇む二人。
まさか、王様が来るなんて思いもしなかったんでしょう。
お母様たちは焦った様子で王様に話す。
「こ、国王陛下。お言葉ですが、レベッカの料理など陛下のお口に合うはずはありませんわ」
「妻の言う通りでございます、陛下。あんな娘が作った食事より、王宮の料理の方が何倍も美味しいでしょう」
「いいや、それが違うのじゃ。ワシは一度レベッカ嬢が作った料理を……と言っても菓子じゃがの、食べたことがあるんじゃよ。あのクッキーは本当に美味かったのぉ。いつまでも忘れられないのじゃ」
「「そ、そうなのですかっ!?」」
ふーん、王様はお義姉様のお料理を食べたことがあるんだ。
別にどうでもいいけど。
「というわけでの、ワシは今日サンデイズ食堂を尋ねたというわけじゃ。まずはレベッカ嬢に挨拶したいの」
「お待ちくださいませ!」
すかさず、お母様が叫ぶように言った。
お義姉様を追放したことが知られたら困るもの。
ククク、どうするのかしら?
「ひょっとしてレベッカ嬢はいないのかの?」
「い、いえ、います! どうぞお入りくださいませ。食堂は奥の部屋でございます」
「失礼するぞよ」
王様は衛兵と一緒に食堂へ向かう。
それを緊張した様子で見送るお母様たち。
ざまぁ見なさい。
あたくしに雑用を押し付けまくるからよ。
ハーッハッハッハッ!
心の中で高笑いしていたら、お母様がキッ! とこちらを向いた。
「ワガマリア、あんたがどうにかしなさい! 料理を代わりに作りなさい! レベッカがいないことがわかったら、サンデイズ家は大変よ!」
「そうだ、そうだ! ワガマリアが何とかしろ! 料理を作れ! レベッカを追放したことを隠し通せ!」
「ええ!?」
お母様が告げ、お義父様が賛同する。
またこのコンボ……。
いい加減にしてちょうだい。
しかも、お義姉様の追放を隠し通せって。
「ええ!? じゃ、ありません! あんたが一番若いんだから、あんたがどうにかするべきでしょ!」
「そうだ、そうだ! ワガマリアがどうにかしろ! 一番若いんだから!」
だから、さっきからなんなのその理屈は!
一番若いって、子どもだから当たり前でしょうが。
というか、若いとどうしてやらなきゃいけないの。
自分たちでやんなさいよ!
お母たちはさらに腹立たしい言葉を続ける。
「ちょうどいいわ、これをワガマリアの花嫁修業にしましょう。こんな素晴らしいチャンスをもらったこと、感謝しなさい」
「うむ、そうだな。ちょうどいい機会だ。王様の食事が造れる機会なんてそうそうないぞ。感謝したまえ」
「はぁ!?」
なに勝手に話を進めてるのよ。
この人たちは本当に横暴極まりない。
「あたくし、お料理なんか作ったことありませんわ! 無理です!」
「つべこべ言わずやりなさい! 子どもは大人の言うことを聞きなさい! 子どもなんだから!」
「そうだ、そうだ! 言われた通りにするんだ! 子どもなんだから!」
「子どもかどうかは関係ないでしょうが!」
右からはお母様、左からはお義父様の罵倒の声が襲い掛かる。
……ぬあああああ!
ストレスで精神が崩壊しそうだ。
「どうしたのかの~? なんだか騒がしいようじゃが~。ワシは魚料理が食べたいの~」
お母様たちと言い争っていると、王様ののんびりした声が届いた。
あたくしたちは揃ってビクリとする。
「な、なんでもございませんわ! ……ここは私たちがどうにかするから、早く料理を作ってきなさい。魚料理をね!」
「そうだ、そうだ。急いで料理を作らんか。魚料理をな!」
お母様に背中をぎゅうう! とつねられる。
そのまま、お母様とお義父様は食堂へと向かう。
仕方がないので、とりあえずキッチンへ来た。
「ああ、もう。お母様は横暴なのよ! 年齢は関係ないでしょうがっ」
そこら中の棚や箱の中をひっくり返す。
すぐに料理できそうな食材を探しまくる。
残っているのは、野菜の切れ端とかよくわからない粉とかだけ。
お肉とかお魚みたいな、食材はないの?
ガサゴソ探していたら、お義姉様の言葉を思い出した。
そういえば……
(いつも食材を使い切るようなレシピを考えているの。余って腐らしちゃうともったいないからね)
とか言っていたっけ……。
「少しくらいは保存しておきなさいよおおおお! あたくしが困るでしょうがあ!」
お義姉様に対する憎悪が湧き上がる。
追放されるとわかったら、後のことも考えて準備しておくべきでしょう。
でも、早くしないと王様が……。
焦りながら片隅にある大きな箱を開けたときだ。
中に凍った何かが入っていた。
……これはなに?
お腹のところがふっくらとしたお魚だ。
冷凍しているから硬いけど、生きているときはタプタプしてそうな雰囲気。
背中には小さな紫の斑点模様もついている。
初めて見るお魚だった。
――ふーん、珍しい魚じゃない。王様もきっと喜ぶわ。この魚を使いましょう。
食材が見つかってホッと一安心。
ああ、良かった。
これで料理を作ればいいじゃないの。
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