表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化決定!】外れスキル《毒消し》で世界一の料理を作ります!~追放令嬢の辺境カフェは今日も大人気~  作者: 青空あかな


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/40

第15話:“暴れん坊サーモンとビリビリエビの川鮮丼、サワーガニの素揚げ付き”

「いらっしゃいませ! お好きな席にお座りください!」

『は~い。カフェがあって助かりました』


 エルフの御一行は、ぞろぞろぞろと中に入ってくる。

 ず、ずいぶんと大人数ですね。

 なんと全部で15人。

 一族で旅でもされているのだろうか。

 ここ最近で一番多いお客さんだ。

 しかも全部エルフ。

 ロールちゃんやネッちゃん、さすがのキャンデさんも面食らっていた。

 とりあえず、ロールちゃんと一緒にお水やお手拭きを運ぶ。

 皆さん美しいのだけど、不思議なことに……。

 顔が一緒だ。

 もしかして、姉妹とか親子なのかな?

 まぁ、失礼だから聞かないけどね。


「どのようなお料理がご所望でしょうか? キノコのスープや焼きリンゴ、オムライスなどありますが」

『看板で見たのですけど、ここは毒食材を使った料理なんですの?』


 お店に入ってくるとき、先頭にいたエルフさんが話す。

 そういえば、さっきからこの人しか話していない。

 他の方々は黙ってお水を飲んでいる。


「ええ、このカフェでは無毒化して安全な毒食材を使用しています。今日は魚やエビ、カニなどを仕入れできました」

『素晴らしいですわっ! わたくしたちはゲテモノが食べたくて各地を旅していたのです』

「ゲテモノ……」


 こんなキレイな方からゲテモノなんて単語を聞くとは。

 いやはや、人生とは不思議だ。


『毒食材はまさしくピッタリですわね。食べ応えのあるお料理がいいです』

「でしたら、“暴れん坊サーモンとビリビリエビの川鮮丼、サワーガニの素揚げ付き” などはいかがでしょうか」

『それでお願いします。皆さんもよろしいですか?』


 エルフの方々は目をつぶったままうなずく。

 なかなかに緊張感が高まる動作だ。


「では、さっそくご用意します」


 キッチンに帰還。

 ロールちゃんたち一同はというと、すでに待機していた。

 キャンデさんも厨房の隅っこにいる。


「お帰り、レベッカ。どうだった? 怪しい?」

「別に普通のエルフさんたちだよ。やけに静かだけど」

「あんなに静かなのはやっぱり怪しいね。レベッカに様子を探ってもらって良かった」

「ロールちゃん、私をダシにしないでよ。……いや、別にうまいことを言おうとしわけじゃないんだけど」

「……あひゃひゃひゃっ。レベッカのダシ……うますぎるっ……!」


 キャンデさんはツボに入ったらしく、一人で爆笑していた。


「ネッちゃんも一緒に応対してくれていいんだからね」

『あ、いや、ネッちゃんはいいのニャ……』


 こう見えて、ネッちゃんは結構怖がりなのだ。

 何はともあれ、料理を作りましょうか。

 始める前に、もう一度チラッとエルフさんたちを見る。

 相変わらず静かだ。

 リーダーさん(さっき話した人。勝手にそう呼んでいる)も、何も話さず黙っていた。

 いや、さっきより表情が硬くて暗い。

 ロールちゃんは険しい顔で呟いた。


「きっと、隠し金庫のありかを探っているんだ……」

「違うと思うよ」


 事情はわからないけど、私にできるのはおいしい料理を作ることだけ。

 おいしいご飯で少しでも気持ちが明るくなってほしい。

 そのためには、冷静な調理が必要だ。

 そう、冷静な調子が。

 目の前には懐かしい食材たち。

 深呼吸して昂るテンションを抑えましょう。

 よし……冷静にいけぇ、レベッカぁ!


「まずは<迷い米>を炊きますよぉ! 普通のお米より短時間で炊き上がるっ!」

「今回も始まりましたね」

「いつも通りだな」

『これがないとレベッカじゃないニャ』


 <迷い米>をザックザクと洗いまくる。

 洗えば洗うほど炊き上がる時間が短くなるのだ。

 お鍋で炊くぞ。

 炊き上がるまでは何もしない。


「今回の料理は鮮度が命ぃ! 先に<サワーガニ>を素揚げしろぉ! 水分が多いから油が跳ねるぞ、要注意!」

「すごい熱量です。レベッカの熱で揚がっちゃいそうな」

「レベッカの熱で素揚げっ……! あひゃひゃひゃっ」

『この人、笑いの底が浅すぎるニャね』


 <サワーガニ>はよく洗った後、そのまま油にポチャン。

 この食材は、元々身体に水分がたくさん含まれている。

 油が結構跳ねるけど、しっかり対処すれば問題ない。

 素揚げにすることでカリッとするし、余分な水分が抜けて味が濃くなる。

 こいつの身はしょっぱくておいしいのだ。

 ささっと油をきった後、みんなでちょっと味見。


『「う~ん、カリカリ食感最高 (ニャ)!」』


 うましっ。

 まさしくデリシャスフード。

 小さいくせにやるじゃないか。

 しばらく油を落とすことにして、<迷い米>の状態をチェック……いい感じだ。

 ふっくらでツヤツヤ。

 もう少しで炊き上がるかな。

 そろそろメインディッシュの調理に移ってよいだろう。


「<暴れん坊サーモン>んんん! 君の出番が来たぁ!」

「見ているだけで楽しくなってくるのはどうして……?」

「奇遇だな。私もだ……」

『なんだか騒ぎたくなってきたニャね……』


 本日のメインディッシュ、<暴れん坊サーモン>。

 今の時期は身も卵もおいしさが詰まっている。

 さっと下処理をすまし、お腹をかっさばく。

 真っ赤な卵がたくさん出てきた。


「まるでルビーのような煌めきぃ! 粒々は口の中で弾けるぞぉ! 食べ食べ食べ食べ食べてみてぇ!」

「『パチパチパチパチ弾ける(ニャ)!』」


 宝石みたいだけど、ロールちゃんは別にはわはわしてなかった。

 やっぱり、金銭的価値がないとダメらしい。


「<暴れん坊サーモン>の身はスライスぅ! 引き締まった身をご賞味あれぇ!」


 ピンク色の身をナイフで分厚くカット。

 元々大きい魚だし、キャンデさんがたくさん釣ってきてくれた。

 豪快にいきましょう。

 さすがは旬の魚。

 切り込みを入れた瞬間、脂が滲み出てくる。

 しかも、ただの脂ではない。

 旨みがぎっしり詰まった脂だ。

 みんなで味見。


「『はぁ~……とろけちゃうっ(ニャ)!』」


 噛めば噛むほどおいしさがあふれでる。

 旬の物は旬の時期に食べるに限るね。

 特に、ネッちゃんは大変気に入ったようで、2、3枚追加で食べていた。


「おい、ネッ! そんなに食べたら私の分が無くなるだろうが。お前は本当にネコだな」

「だから、ネッちゃんはネコじゃないのニャ! 猫妖精ニャ!」

「ネコだろうが」


 激しく論争する二人は置いといて、最後の食材を調理する。

 そう、<ビリビリエビ>。

 毒消ししても、なお腐りやすい。

 ゆえに、本当に新鮮じゃないと生で食べられないのだ。


「<ビリビリエビ>も生で食べようぅ! こいつは相当な珍味だぞぉ!」


 パリっと皮を剥いて、ピッと背綿を取る。

 ぷりん! と白い身が出てきた。

 例のごとく、みんなで味見。


「『ジュジュジュ、ジューシー!』」


 口の中にまんべんなく広がる甘みと旨み。

 この食材はデリケートで、火を通すとおいしさが半減してしまう。

 まぁ、それでもおいしいんだけどね。

 <迷い米>もふっくら炊けたので、<暴れん坊サーモン>と<ビリビリエビ>を乗せる。

 赤、白、ピンクの美しい配色。

 すんばらしい。

 では……。


「ロールちゃん、運ぶの手伝ってくれる?」

「え? あ、うん……もちろん……」


 テンションが下がったロールちゃんと一緒に料理を運ぶ。

 エルフの皆さんは、絵画のように黙ってお待ちになられていた。

 ロールちゃんは料理を運ぶと、すぐに壁際へ戻ってしまう。


「お待たせしました。“暴れん坊サーモンとビリビリエビの川鮮丼、サワーガニの素揚げ付き”でございます」


 料理をテーブルに置く。

 リーダーさん以外は、片目を開けて眺めていた…………緊張するぞ。


『ず、ずいぶんと賑やかなお店なんですね。少々びっくりしてしまいましたわ』

「あ……すみません」


 なぜかリーダーさんは冷や汗をかいていた。

 さっきからなんか様子が変だ。

 いったいどうして……。

 しばし考えると、一つの可能性が浮上した。

 も、もしかして、偉い人の御一行?

 それで、リーダーさんが接待を命じられたとか。

 だとするとまずい。

 あんなに騒いだら接待失敗じゃん。

 ああもう、またやらかした。

 ロールちゃん一同は壁際で静かにしてるし。


『それでは気を取り直して……いただきま~す』


 エルフの皆さんは揃って、あ~んとご飯を口に運ぶ。

 騒いだ過去は変えられない。

 どうかお口に合ってくれ!

お忙しい中読んでいただきありがとうございます


少しでも

・面白い!

・楽しい!

・早く続きが読みたい!

と思っていただけたら、ぜひ評価とブックマークをお願いします!


評価は広告下にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にタップorクリックしていただけると本当に嬉しいです!

ブックマークもポチッと押すだけで超簡単にできます。


何卒応援よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
i000000
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ