表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化決定!】外れスキル《毒消し》で世界一の料理を作ります!~追放令嬢の辺境カフェは今日も大人気~  作者: 青空あかな


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/40

第13話:冒険者パーティーのお話

「「ヤバい!!」」

「ひぃぃっ!」


 一口食べた瞬間、少年たちは揃ってヤバイ!! と叫んだ。

 ヤ、ヤバイってなに?

 もしや……まずかったってこと?

 なんという大失態。

 とんでもないミスを犯してしまい、サラサラと灰になっていく……。


「これはすごい! まさしく史上最高のオムライスですよ!」

「俺、こんな旨い物食べたことねえ!」

「まさかこのような名店があるなんて、私のグルメブックに記載しなければ!」


 ヤバイとはまずいという意味なのかと思っていたけど、どうやら真逆のようだった。

 少年少女は目をキラキラさせてオムライスを食べている。

 いやぁ、安心した。

 まずかったらどうしようかと思ったよ。


「特にこの卵の柔らかさが素晴らしいです! スプーンを乗せただけで切れてしまうほどの柔らかさなんて! 先輩に驕ってもらったSランク魔物<ドラゴニックブロイラー>の卵より格段においしいです!」

「しかもこのソースはなんだ! 弾ける酸味! たゆたう甘み! こいつは卵とトマトの芸術品だあ!」

「私独自の調査でも、この味に匹敵する料理を出せる店は王国内にもありません! 私史上初、星4つを差し上げます!」


 大変な声量で感想をお話しされる。

 あの~、静かに食事したいって言ってませんでしたっけ?


「「いったいどんな食材を!」」

「え、ええ、ここでは無毒化した毒食材を調理してまして……卵とお肉は<どくどくチキン>を使いまして、ソースは<トキシントマト>と<魔女リンゴ>を……」

「「それはすごい!」」


 最後まで言い切らぬうちに、わあああ! と拍手された。

 冒険者の人ってリアクションが激しいのかな。


「ライスには<満月茸>も入ってますよ。ぜひ、卵と一緒に食べてみてください」

「「……これはもう、とろみの二重奏!」」


 やっぱり、私の声は結構大きいのだろうか。

 キッチンと食堂は半分吹き抜けで繋がっているしね。

 とにかく冷静な調理を心掛けなければ。

 この先、王様みたいな偉い人とか来たら大変だよ?

 まぁ、ありえないけど。

 少年少女のお客さんはモグモグと食べ、すぐにお皿は空になった。

 とりあえず、キャンデさんの時みたいに殺してくれ! とか言われなくてよかった。


「「ごちそうさまでした! 本当においしかったです!」」

「こちらこそ、完食いただいてありがとうございました。では、お皿を下げますね」


 お皿を持ってキッチンへ。

 いつものように、こっそり近寄るロールちゃんとネッちゃん。


「なんかリアクションの激しい人たちだなぁ。わたし、警戒しちゃうかも」

「ロールちゃんは警戒心が強いもんね」

『でも、変な人たちではなさそうだニャよ』


 仲良く話している彼らを見ていたら、こちらの気持ちまで明るくなってきた。

 笑顔が一番だね。


「せっかくだから、<ポイズンハーブ>のお茶でもサービスしようかな。」

「『賛成 (ニャ)!』」


 お湯をこぽこぽと注ぐ。

 これも料理に分類されるかもしれないけど、別にテンションが上がって騒ぎはしない。

 さすがにそこまで自分を見失ってはいないのだ。


「<ポイズンハーブ>のお茶ですよ~」

「二人とも……さっきはごめん!」


 お茶を持っていったら、突然黒髪少年が頭を下げた。


「いや……俺も悪かった。自分のミスを棚に上げて、お前らのせいにしちまった」

「私こそ申し訳ありませんでした……。あんな簡単な魔法も使えないなんて、修行不足もいいところです」


 黒髪少年の言葉に続くように、茶髪少年と金髪少女が呟く。

 彼らが話すたび、最初のギスギスした空気はやんわりと丸い雰囲気になっていった。

 喧嘩でもしていたのかな?

 私の疑問に答えるかのように、黒髪少年が話した。


「僕たちは新米冒険者パーティーなんです。でも、なかなかクエストが上手くいかなくて……ちょっと喧嘩してしまったんです」

「疲れと空腹で気分も最悪でさ。解散の話まで出たんだぜ」

「解散する前に食事でも摂ろうということで、私たちはこちらのカフェに伺いました」

「そうだったのですか」


 だから、来店したときはあんなに空気が悪かったのか。

 黒髪少年は笑顔で話してくれた。


「あなたのお料理のおかげで、僕たちはまた新しい一歩を踏み出せます。ぜひ……お名前を教えてくださいませんか?」

「レベッカ・サンデイズと言います」

「「名前までおいしそうだ!」」


 ……それはどうなんですかね。

 私が名乗ると、少年少女が握手しながら自己紹介してくれた。


「僕はビギナンです。こんなんでもリーダーをやってます」


 黒髪少年はビギナン君という名前だった。

 14歳くらいかな。

 私より少し幼く見えた。

 短い髪に爽やかな笑顔がよく似合っている。

 片手剣の名手になりたいそうだ。


「俺はレッシャー。この中じゃ一番の年長者だ」


 茶髪少年の名前はレッシャー君。

 私と同じ16歳だった。

 両手剣が得意とも教えてくれた。


「私はマイシンと申します。パーティーでは主に回復役を担っております」


 マイシンちゃんはサラサラの金髪ヘアが羨ましいね。

 攻撃魔法は得意じゃないけど、まずは回復魔法を身に着けたいそうだ。


「僕たちは絶対にあなたのことを忘れません。レベッカさんはご飯で僕たちを救ってくれたんです」

「本当にありがとな。下手したら冒険者の夢を諦めるところだったよ」

「まさしく、人の心まで救う料理人ですね」


 ビギナン君たちが褒め称えてくれていると、キャンデさんが帰ってきた。


「おーい、クエストついでに別の毒魔物を狩ってきてやったぞー……うおっ!」

「「“惑乱の凶星!”」」


 キャンデさんを見るや否や、ビギナン君一行は彼女を取り囲む。

 大金を見た時のロールちゃんみたいに目が輝いていた。

 

「「こんな大物冒険者までいるなんて、とんでもない食堂だ!」」

「お、おいっ! 私がここにいることは誰にも言うんじゃないぞっ!」

「「ええ、それはもちろん! その代わりサインください!」」


 キャンデがタジタジとするほどの勢いで、彼らはサインを求める。

 Sランク冒険者なんて、新米パーティーには憧れの存在なんだろう。

 剣や鞄、ポーションの空き瓶にまでひとしきりサインをもらうと、お別れの時間になった。


「レベッカさん、おいしいご飯を本当にありがとうございました。これはお礼です」


 ビギナン君たちはどさりと、何個かのキレイな石っころを置く。


「これは何で……うわっ」

「はわわ……」


 私を押しのけるように、ロールちゃんがドカッと走ってきた。

 震える手で石を持つ。


「こ、これは……Sランクのレア魔石! しかも、こんなにたくさん! どうやって手に入れたの!」

「ダンジョンの罠に落ちたら、偶然見つけたんです。お料理の代金として、どうぞお受け取りください」

「いや、さすがに貰いすぎで……」

「ありがたく頂戴しますね!」


 丁重にお断りしようとしたけど、ロールちゃんの声でかき消された。


「「絶対また来ます! ありがとうございましたー!」」


 ビギナン君たちは笑顔で手を振りお店を出ていく。


「……はぁ……はぁ……もう二度とサインなどしないぞ……」

「冒険者のお客さん、これからもジャンジャン来てくれないかなぁ……精一杯のおもてなしをするんだけど……」


 キャンデさんは息も絶え絶えになっており、ロールちゃんはウットリとレア魔石を眺めている。

 やっぱり手の平返していた。

 まぁ、彼女が幸せならそれで良いのだ。

 無事、三人目のお客さんたちも笑顔で見送ることができた。

お忙しい中読んでいただきありがとうございます


少しでも

・面白い!

・楽しい!

・早く続きが読みたい!

と思っていただけたら、ぜひ評価とブックマークをお願いします!


評価は広告下にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にタップorクリックしていただけると本当に嬉しいです!

ブックマークもポチッと押すだけで超簡単にできます。


何卒応援よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
i000000
― 新着の感想 ―
[良い点] いつも楽しく読んでます! ロールちゃんの豹変ぶりが落ちになってて毎回どんなお宝(おかね?)で変わるか楽しみですね~ 料理も考えるの大変と思いますが、おいしい食べ物頑張ってください! …
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ