月海の少女
まっくらの 満月の夜に
大きな海の上に
一人で ぽつんと
立っている 少女がいた。
白いワンピースの少女
深夜2時の海に ひとりぼっち。
真冬の冷たい風が 凍えるような心
ますます孤独にして
でもそれも最後だから 我慢して 海に立つ。
世界は平和で 明日もやってくるけど
少女にとっては関係ない。
少女はそれを今 終わらせる 権利がある。
最後にするため 踊っている。
最後にするため 歌っている。
世界を最後に するために
初めて歌う 崩壊の歌。
世界中の子供 歌い出す。
世界中の大人 泣き出して。
世界最期の歌を 少女が歌ったから
もう世界は 終焉を迎えている。
浄化されゆく この光景
人が死んでく この夜景
蒸発するように 叫びが聞こえるように
生き物たちは 消えていく。
大きな満月の光を 浴びて 少女は
泣きながら 歌っている。
真夜中の海は 冷たくて 真っ黒で。
白いワンピースの少女は 凍えて 震えて
でも歌は ブレなくて。
歌を1章 2章 3章
歌い上げる頃には もうみんな死滅していた。
光に消えて 蒸発していった。
地球上の生き物 まったくいなくなって
世界すべてが 真夜中のよう。
やがて地球ぜんぶが 海になって
深海のなか 少女も消えていった。
神様の少女 役目を終えて
月も海も 穏やかに
世界は静かに 終わりを迎えた。
世界は真っ暗の海の中。
満月だけが 照らしてる。
ぽっかり浮かんで 照らしてる。