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〜マンイーター〜果実パイは甘くて苦い その3

少し短めです。


楽しんで頂ければ幸いです。

 

 アレクトラの返事の後、入ってきたのはローガンだった。


「旦那、せっかく街に着いたんだ。一杯どうです?」


 そういってグラスをあおる振りをした。アレクトラは苦笑して頷いた。


「良かろう。どうせならユーリエも誘うとしよう。」


 そういって立ち上がったアレクトラとローガンは、ユーリエの部屋へと向かった。


 扉の前に立ち、ノックをしながら呼びかける。

 だが返事はなく二人は顔を見合わせた。


「よっぽど疲れが溜まってたんでしょう。」


 寝てるのだ、ローガンは言外に伝え、アレクトラと共に階下に降りた。


 空いていた適当な席に座り、ローガンが女将に酒を頼む。


「エールを二つ。急ぎで頼む。」


「はいよっ!」


 快活な返事と共に奥に引っ込んだ女将は、すぐにまた現れた。

 手には木製のカップを二つ持っていて、つまみの皿も持っている。


 ローガンとアレクトラは女将から酒を受け取ると、互いに軽く打ち合わせた。


「無事に街までたどり着いたことに。」


「ローガンの剣捌きに。」


 ローガンはカップの中身を一息に飲み干すと、すぐにまたおかわりを頼んだ。


 アレクトラのカップにはまだ半分ほど残っている。


「しかし、一時はどうなるかと思ったが、こうやって無事に酒が飲めてよかったよ。」


「全くだ。ローガンのお陰だな。」


「やめてください。むしろ二人がちゃんと着いてきてくれたんで助かったんですよ。」


 ローガンは照れ臭そうに顔を背けた。顔が赤いのは酒のせいではないだろう。


「それを言うのであれば、ユーリエこそ一番褒めてやらねばならんだろうな。わしやお主と違って野宿の経験などないのだから。」


「ちげえねえ。大したもんだ。」


 二人は年下のユーリエのことを褒めながらエールを楽しんだ。


「そういえば、あのソードウルフは美味かったな。」


「絶品だったのう。」


「旦那、胃袋掴まれちまったんじゃないか?」



 ローガンがニヤニヤと頬を緩めながらカップを傾けた。


「仮に掴まれておったとしても、旅の仲間だ。ダメなことはないだろう。」


 アレクトラは誰に言うでもなく呟いた。だがローガンがめざとくその言葉に食いついてくる。


「ほほう、てことは掴まれたことは否定しないわけだ。」


「まあな。」


「かっかっ!それはいい!」


「お主だってそうだろう。」


「俺には細かい味は分からんよ。塩気がありゃ美味いし、味がなけりゃ不味いのさ。」


「まさに冒険者の舌というわけだな。」


 二人は笑い合い、それぞれの酒を愉しんだ。森での遭難によって、互いの距離は随分縮まったみたいだ。


 十年来の友人のようだとアレクトラは思った。そして、同時にここにはいないもう一人のことも考えた。


 違う。改めて考えたのではない。気がつけば目で追っているし、考えてしまっていた。


 アレクトラは己の中の感情に戸惑い、また自嘲した。


(若い女性と旅に出ているからと、わしは何を浮かれておるのだ。)


 だが、ふとこれが違う女性と仮に旅に出たとして同じような感情になっていただろうか、とも考えてしまう。


 答えなど出ず、アレクトラは己のくだらない考えを洗い流すかのようにカップの酒を一息に飲み干した。


 女将にお代わりを注文する。


「いい飲みっぷりだな、旦那。おい、俺ももう一杯だ!」


 ローガンはどこまでわかっているのだろうか。悩むように酒を飲み続けるアレクトラを、面白そうに観察していた。

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